余命1年の君に恋をした

パチ朗斗

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53話  最悪な再開

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「待っていたよ、蓮翔」

「俺も話があるんでな」

  福田に言われた空き教室のドアを開けると、そこには既に福田の姿があった。

  窓の外を眺めているその姿はイケメンだから許されるのだろうな。俺がやればただのイタいやつがせいぜいだろう。

「話は聞いてるよね、海斗から?」

「………わざと海斗に伝えたのか。俺を警戒させるために」

  それっぽいことを言ったが、つまりどういう事なんだ?俺に対して福田自身が敵意を持ってる事を俺に伝える利点……意識させること?それとも宣戦布告か……。

「そう身構えないでよ。ここには蓮翔と僕以外誰も居ないから」

  リンチにするつもりは無いと。あくまで漢気アリの喧嘩って訳か?そういうのは苦手なんだよな。

  だが、こっちも聞きたいことがあるんだ。ずっと話させとくのは俺にとってはマズイ。

「なぁ、俺からも質問、良いか?」

「ん?あぁ、その答えは限りなくノーに近いよ」

「どういうことだ?」

  まだ質問すらしてないんだが?まさか……俺の心を読んだのか?

「どうせ、姫乃の事を好きなのか、とかそういうのでしょ?」

「………そうだ。よくわかったな」

  なるほど、なら宣戦布告ではないか。そうなると、俺をイジメようとする理由は?まさか、ただの口実とか言わないよな?

「君がある程度僕を意識して警戒してくれればなんでも良かったんだよ。まぁ、言っちゃえば君の意識を僕に向けるための口実だね」

「………ありゃ」

  やべ、変な声出た。まさか俺の予想が当たるとはな。やはり、あの頭痛以来俺の脳は冴えているのかもしれない。あれが俗に言う電気ショック治療……?か。

「どうやら僕には特殊な力があるようでね。信じないかもしれないが………僕は神の声を聞くことが出来る」

「………………そっか」

  これは面倒なことになった。どうやら福田はアッチ系の人らしい。この世に完璧な人間は居ないと言われるが、さすがにこれはな……。まぁ、俺も患ったことあるしな。

  俺は無意識のうちに暖かい目なるものを福田に向けていた。きっと昔はこの視線を俺も浴びていたのだろう……こんな気持ちなんだな、見てる側って。

「つまり、神のお告げ的な何かで俺に接触したと?」

「そうだね。と言っても聞こえるようになったのはココ最近の話だけどね」

  なるほど……設定の凝ってるタイプか。俺の場合はその場の雰囲気とかに便乗してる、その場限りのキャラだったな………。

「実はある神が君に真実を伝えると言っていてね。僕がその補助に選ばれたのさ!」

「なるほど……で、どんな神?」

「どんな神、か……。そうだね……君が最も嫌いな神様、とだけ言っておくよ」

「残念だが、俺に神の知り合いは居ない」

  だんだん話がズレていってる。俺の聞きたいことは聞けたしこのまま有耶無耶ってのも別にいいか。

  さすがにこのノリにずっとは俺の精神が羞恥的なもんで持たん。なんで見てる方が恥ずかしいんだろうな?

「本当にそうかな?まぁ、会えばわかるよ」

「………っ!!」

  その瞬間、俺の全身に強烈な寒気を感じた。今までの人生で初めて感じる感覚のはずなのに……一度、どこかで……。そんな感覚さえある。

『やぁ……』

「…お前……」

  この声を聞いた瞬間、心の底からどす黒いものが溢れるのが分かった。自分でも抑えるのがやっとな程の、凄まじい憎悪。初めてのはずなのに……話したこともない、会ったこともないはずなのに………俺はコイツを神と理解し、その上でコイツをこの上なく嫌悪した。

  不敵な笑み……と言うにはあまりにも醜い。笑み自体は爽やかなのに、なぜか気味が悪く、醜悪に見えたその笑み。

  少しずつ俺の頭を痛みが襲ってきている。コイツのせいだろう。

『まさかこんな穢れた地に再び姿を現すことになるとはね』
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