余命1年の君に恋をした

パチ朗斗

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52話  誘い

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「はいよ!」

「………ここだ!」

  俺の上げたトスに合わせて福田がジャンプをする。

  福田のスパイクはラインギリギリに刺さった。

「ナイス裕一」

「いや、蓮翔のレシーブが上手かったからだよ」

  俺らは今、一週間後に控えている球技大会への練習をしていた。今日からちゃんとしたメンバーでの練習だ。と言っても今はまだ、女子では上葉以外来ていないが。

「やっぱり、福田君ってこういうのも上手なんだね」

「そうかな?バレー部の仁美にそう言われるとは、光栄だね」

「なんか、上葉って堅苦しいイメージあったけどよ、案外優しいっつうか、丸いよな」

  俺が福田の方を見てるといつの間にか隣に来ていた海斗がそんなことを言ってきた。まぁ、海斗の言いたいこともわかる。

  委員長という肩書きのせいもあるだろうけど、やはり見た目があまり派手じゃないというのが堅苦しさを感じる要因の一つだと俺は思う。何より話し方や所作が優等生という感じがして、どうも近寄り難かった。

「俺、福田ってヤツがどうも俺らと同じ人間だと思えねぇよ」

「んな事言ったら俳優だってそうだろ?」

「でもよ、イジメようと思ってる相手に対してあんなに爽やかにいられるか?」

  そりゃそうだ。たとえ福田がとてつもない演技派だとしてもそれを一切感じさせないなんて出来るんだろうか?

  もしかしたら、福田は二重人格なのかもしれないな。まぁ、そもそもあの噂が嘘なのかもしれないし。 

「まぁどちらにしろ、今日話せば分かるだろ」

「一人で大丈夫か?」

「あぁ。心配してくれてありがとな」

  瑠魅たちはまだ来てないみたいだな。俺らが早く来すぎたってのはあるけど。

「よし、じゃあ折角だし二対二でもやらない?」

「お、いいね。じゃあ俺と蓮で組むか」

「そうだな。俺と海斗のコンビネーションを見せてやるか」

  ずっとスパイク練習って言うのにも飽きてきてたし、ちょうど良いな。

「できれば、僕が蓮翔と組みたいんだけど」

「俺と?」

「うん。やっぱり蓮翔の上げるボールが一番打ちやすいからさ」

「まぁ、俺は良いけど……どうするよ、海斗」

「良いんじゃないか?やっぱり試合で勝てた方が楽しいもんな」

  異様に俺に関わろうとする福田。やっぱり何かあるんだろう……それが分かればこっちとしてもやりやすいんだが。

「よし、じゃあいくぜ?」

  さて、今はバレーに集中しよう。サーブは海斗からか。

「いけっ、裕一!」

  海斗め。早速俺の方を狙ってきたな。二人しか居ないからスパイクを確実に入れるにはこのレシーブに全てを掛けるしかない。

「良いボールだ……」

  福田は海斗の方に狙いを定めて鋭いスパイクを叩き込んだ。海斗はそれに反応出来ずに棒立ちしていた。

「これ……取れる?」

「狙いは良かったよ。けど福田君のスパイクの安定性はかなり強力だからね……とりあえず切り替えてこっ」

「ナイス裕一。良くスパイクいけたな」

「ボールの高さ的にいけると思ったからね」

「さすがだわ」

  さて、次はこっちのサーブか。

「はい、蓮翔」

「ん?あぁ、サンキュ」

「あとさ。放課後、時間貰って良いかな?」

  ボールを渡しに来た裕一はいつもの優しそうな目付きとは一転して鋭い目付きで俺の方を見てきた。どういった要件かは分からんが、こっちとしても好都合だ。

「あぁ、良いよ」
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