42 / 89
41話 勉強 2
しおりを挟む
「よし、じゃあ続きをやろうぜ」
あの後、結局俺がお茶を出した。まぁ、当たり前なんだけど。
これが終わったら一旦休憩にするのもありだな。確かお菓子が冷蔵庫の隣にあったし。
「任せたぜ、姫乃さん」
「ふふっ。任せなさい!」
「ん。任せる」
実技科目は基本暗記だ。つまり、どれだけ覚えられるかがキモだ。もちろん、提出物もあるからじっくりという訳には行かないが。
実技は教科書さえあれば提出物ぐらいなら簡単に終わらせられる。
そう。つまり、姫乃に教えてもらうものは基本的にない。単語の覚え方だって人それぞれだしな。
「…………」
「…………」
「…………」
気まずくはないが……姫乃に悪いな。教える側なんてそうそう無いのに……。でも、勉強に関しては人それぞれだもんな。教えるのが好きな人も居れば、黙々とやりたい人だって居るし。
ここで無理に質問とかするのは気を使わせるよな?
「…………」
「…………」
「…………」
シャーペンの走る音以外何も聞こえない空間の中、ついに一人のシャーペンが止まる。そう、俺だ。だが、これは仕方がない。だって教科書と対応してるはずのノートブックに変なこと書いてあるんだから。
マジでどゆこと?これ、どこを見ればこの空欄を埋められるん?
「…………」
俺はこの沈黙を破るための勇気がなくひたすらににらめっこしていた。こんなことしてて分かるなら苦労しないんだがな……。ここは腹を括るしかねぇ!
「………なぁ、姫乃」
「どうしたの?」
「この単語、なんだか分かるか?」
「どれどれ……あぁ、これはね───」
姫乃が俺の教科書を指さしながら丁寧に教えてくれた。ついでにその単語の暗記方法まで教えてくれた。
「おぉ、なるほどな。こりゃわかりやすいな。ありがとな、姫乃」
「あ、ううん。助けになったなら良かったよ」
姫乃は教えるのが上手いな、と思う。小学校の先生とか上手くやれそうだな、と思う。あっ、決して姫乃が教えられるレベルがその程度とかっていうワケじゃないからな?
でも、やっぱり俺の周り人たちはスペック化け物な気がするぞ。姫乃は実技科目だけだが、あの亮や海斗と張り合えるだけのスペックがある。
姫乃が毎回満点を取れるのはやはりその記憶力があるからだろう。俺はどうも覚えるのが苦手で、小学校の記憶なんて皆無だし、中学校の記憶だって三年生の後半ぐらいしか覚えてない。それも朧気だ。
俺ってもしかして若年性認知症とかだったりしないよな?それに物覚えが悪いし……。でも、あのものすげぇ痛かった頭痛以来、忘れ物は少なくなった。というか無くなった。
なんでかは知らねぇが、とりあえず神からの荒治療とでも思っておこう。
うぅ……思い出したら、また頭が痛くなってきた。マジであの頭痛は金輪際味わいたくねぇな……。
「何かあったら気兼ねなく言ってね?」
そう言ってニコッと笑った。その顔が眩しすぎて俺は視線を逸らした。
あの後は先程と変わらずに勉強は進んだ。……ある一つを除いて。
俺はさすがにこの状況にいたたまれなくなり、姫乃に話しかける。
「俺は気にしないけど……姫乃は俺の隣にずっと座ってるのか?」
さっき教えてもらった時に自分の場所に戻るかと思いきや、荷物を持って俺の隣に座ったのだ。それからずっと顔が赤いし……。
その表情がなんか色っぽくて時々盗み見ていたのは内緒だ。
俺としては役得なんだが、その表情は俺の心臓に悪い。
「あ、ごめん。もしかして……迷惑だった?」
「あ、いや。俺としてはありがた……いや、気にしてないんだがな?瑠魅の視線がね?」
そう。これを言うことを決めたのは瑠魅のあのジト目が原因だ。そんな顔でずっと見られたらさすがに集中出来んて。
「瑠魅ちゃん、どうかしたの?」
「那乃ちゃん……ダメ」
「え?何が?」
姫乃は天然な部分があるからなぁ……。何がとは言わんが、男子に近づけてはならんものが二つほど俺の視界の端で動いてるんですね。嫌でも目に移るってどんだけデカ……こんなことを考えるのは失礼だな、うん。
「ほら、瑠魅もあぁ言ってるしさ?」
「そっか……うん、わかった。分からないところがあったら言ってね?もちろん瑠魅ちゃんもね」
「あぁ、わかった」
「うん」
そう言ってさっきまで居た場所に座り直していた。
さて、俺の心臓は最後まで持つのだろうか。今から心配でならん。
あの後、結局俺がお茶を出した。まぁ、当たり前なんだけど。
これが終わったら一旦休憩にするのもありだな。確かお菓子が冷蔵庫の隣にあったし。
「任せたぜ、姫乃さん」
「ふふっ。任せなさい!」
「ん。任せる」
実技科目は基本暗記だ。つまり、どれだけ覚えられるかがキモだ。もちろん、提出物もあるからじっくりという訳には行かないが。
実技は教科書さえあれば提出物ぐらいなら簡単に終わらせられる。
そう。つまり、姫乃に教えてもらうものは基本的にない。単語の覚え方だって人それぞれだしな。
「…………」
「…………」
「…………」
気まずくはないが……姫乃に悪いな。教える側なんてそうそう無いのに……。でも、勉強に関しては人それぞれだもんな。教えるのが好きな人も居れば、黙々とやりたい人だって居るし。
ここで無理に質問とかするのは気を使わせるよな?
「…………」
「…………」
「…………」
シャーペンの走る音以外何も聞こえない空間の中、ついに一人のシャーペンが止まる。そう、俺だ。だが、これは仕方がない。だって教科書と対応してるはずのノートブックに変なこと書いてあるんだから。
マジでどゆこと?これ、どこを見ればこの空欄を埋められるん?
「…………」
俺はこの沈黙を破るための勇気がなくひたすらににらめっこしていた。こんなことしてて分かるなら苦労しないんだがな……。ここは腹を括るしかねぇ!
「………なぁ、姫乃」
「どうしたの?」
「この単語、なんだか分かるか?」
「どれどれ……あぁ、これはね───」
姫乃が俺の教科書を指さしながら丁寧に教えてくれた。ついでにその単語の暗記方法まで教えてくれた。
「おぉ、なるほどな。こりゃわかりやすいな。ありがとな、姫乃」
「あ、ううん。助けになったなら良かったよ」
姫乃は教えるのが上手いな、と思う。小学校の先生とか上手くやれそうだな、と思う。あっ、決して姫乃が教えられるレベルがその程度とかっていうワケじゃないからな?
でも、やっぱり俺の周り人たちはスペック化け物な気がするぞ。姫乃は実技科目だけだが、あの亮や海斗と張り合えるだけのスペックがある。
姫乃が毎回満点を取れるのはやはりその記憶力があるからだろう。俺はどうも覚えるのが苦手で、小学校の記憶なんて皆無だし、中学校の記憶だって三年生の後半ぐらいしか覚えてない。それも朧気だ。
俺ってもしかして若年性認知症とかだったりしないよな?それに物覚えが悪いし……。でも、あのものすげぇ痛かった頭痛以来、忘れ物は少なくなった。というか無くなった。
なんでかは知らねぇが、とりあえず神からの荒治療とでも思っておこう。
うぅ……思い出したら、また頭が痛くなってきた。マジであの頭痛は金輪際味わいたくねぇな……。
「何かあったら気兼ねなく言ってね?」
そう言ってニコッと笑った。その顔が眩しすぎて俺は視線を逸らした。
あの後は先程と変わらずに勉強は進んだ。……ある一つを除いて。
俺はさすがにこの状況にいたたまれなくなり、姫乃に話しかける。
「俺は気にしないけど……姫乃は俺の隣にずっと座ってるのか?」
さっき教えてもらった時に自分の場所に戻るかと思いきや、荷物を持って俺の隣に座ったのだ。それからずっと顔が赤いし……。
その表情がなんか色っぽくて時々盗み見ていたのは内緒だ。
俺としては役得なんだが、その表情は俺の心臓に悪い。
「あ、ごめん。もしかして……迷惑だった?」
「あ、いや。俺としてはありがた……いや、気にしてないんだがな?瑠魅の視線がね?」
そう。これを言うことを決めたのは瑠魅のあのジト目が原因だ。そんな顔でずっと見られたらさすがに集中出来んて。
「瑠魅ちゃん、どうかしたの?」
「那乃ちゃん……ダメ」
「え?何が?」
姫乃は天然な部分があるからなぁ……。何がとは言わんが、男子に近づけてはならんものが二つほど俺の視界の端で動いてるんですね。嫌でも目に移るってどんだけデカ……こんなことを考えるのは失礼だな、うん。
「ほら、瑠魅もあぁ言ってるしさ?」
「そっか……うん、わかった。分からないところがあったら言ってね?もちろん瑠魅ちゃんもね」
「あぁ、わかった」
「うん」
そう言ってさっきまで居た場所に座り直していた。
さて、俺の心臓は最後まで持つのだろうか。今から心配でならん。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
お飾り公爵夫人の憂鬱
初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。
私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。
やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。
そう自由……自由になるはずだったのに……
※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です
※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません
※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります
彼を追いかける事に疲れたので、諦める事にしました
Karamimi
恋愛
貴族学院2年、伯爵令嬢のアンリには、大好きな人がいる。それは1学年上の侯爵令息、エディソン様だ。そんな彼に振り向いて欲しくて、必死に努力してきたけれど、一向に振り向いてくれない。
どれどころか、最近では迷惑そうにあしらわれる始末。さらに同じ侯爵令嬢、ネリア様との婚約も、近々結ぶとの噂も…
これはもうダメね、ここらが潮時なのかもしれない…
そんな思いから彼を諦める事を決意したのだが…
5万文字ちょっとの短めのお話で、テンポも早めです。
よろしくお願いしますm(__)m
さよなら私のエーデルワイス〜侍女と騎士の初恋〜
佐原香奈
恋愛
小さな村で幼馴染として育ったエマとジャン。小さい頃からジャンは騎士を目指し、エマはそれを応援していた。
ジャンは成人する年、王都で開かれる各地の騎士団採用試験として行われるトーナメント戦に出場するため、村を出た。
一番の夢であった王立騎士団入団は叶えられなかったものの、辺境伯家の騎士団に入団することになったジャンは、胸を張ってエマを迎えに行くために日々鍛錬に励んでいた。
二年後、成人したエマは、ジャンが夢を叶える時に側にいたいと、ジャンの夢の舞台である王立騎士団で侍女として働くことになる。しかし、そこで待ち受けていたのは、美しい女性と頻繁にデートするジャンの姿だった。
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる