余命1年の君に恋をした

パチ朗斗

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35話 ともだち

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「蓮にあんな特技があるとは思わなかったぞ」

  体育が終わって教室に向かう途中、俺の隣を歩く海斗がそんな事を言ってきた。

  俺、そんなに運動音痴に見えるか?

「そうか?まぁ、ジャンプサーブしか出来ないけどな」

「いや、謙遜する必要は無いよ。蓮翔君はかなり上手だよ」

  そう言って俺と海斗との間から福田が現れた。なぁ……マジで、福田の距離がバグってないか?そう思うのは俺だけか?

  とりあえず、福田はコミュ力が高いとか、そう言う次元じゃないのだけは確かだ………たぶん。

「そ、そうか?」

  俺は不覚にもどもってしまった。まさか、こんなところで持病のコミュ障が発症するとは思わなかった……悲しいな、全くよ。

「というか、二人の息がピッタリすぎてビックリしたよ」

「だろ?なんて言ったって俺らは最高のコンビだからな」

「恥ずくねぇの、そんなこと言ってよ?」

  俺は海斗の言葉に対して、トゲのある言葉を吐いたが、内心は驚きと安堵、嬉しさなどの感情が込み上げてきていた。

  そんな風に俺の事を思ってくれていたと思うと、ちょっとだけ自信がつく。

  いつか、こんな本音が言えると良いのだが……今は無理だな。恥ずすぎる。

「でも、ホントに不思議な人だね、蓮翔君って」

「はっ?俺が不思議?」

  急に福田が変な事を言い出すもんだから、俺は反射的に素っ頓狂な声を出してしまった。

「そうだな。たしかに蓮は不思議だよな」

  すると、福田の奥からも、その言葉に同調するような声がした。その声の主はもちろんのこと海斗だ。

  俺は唖然とするほかなかった。今まで自分が不思議な人間だなんて思ったことも、思われたこともなかったからだ。

「君はなんだか、人を惹きつける何かがあるんだよね」

「え……?はっ?どゆこと?」

  福田は妙にスッキリしたような顔をしながら、笑顔でそう言ってきた。

  自分の心の中にあるモヤモヤしたものをちゃんと言語化できてスッキリしてるんだろう……たぶん。

  まぁ、そうだとしたら尚更納得は出来ないんだけど。なに、俺には人を惹きつける何かがあるの?なら、なんでこんな生活送ってるん?

  そんなのがあるならもっと友達多くて良くないか?出来れば彼女も欲しいな。

  ───なんて事を考えてると、海斗も何かを思い付いたのか俺の方を見てきた。

「それだよ、それ。蓮って特段イケメンってワケでも話上手ってワケでもないけど、一緒に居て安心?みたいのがあんだよなぁ」

  若干失礼な言葉の羅列はあったが、だいたいは褒め言葉だった……よな?

  まぁ、海斗野郎に安心感を感じられてもなんとも思えんけど。

「どうだろう、良ければ僕と友達にならない?」

「えっ?」

  一瞬、脳がその言葉を理解出来ずにいた。言ってくる相手も相手だが、言葉もまた言葉だ。え、なに?友達になろうだって?

  現実でそんな事を言うやつ初めて見たぞ。あぁ言うのって二次元だけじゃないのか……。

  と、他人事のように思っていると、福田が不安そうな顔を浮かべているのが視界に入った。

  そこでやっと俺は現実に戻って来ることが出来た。海斗がこんな顔をしてもちょっとぐらいしか良心が痛まないが、福田とかがそんな顔をすると、さすがにな……って思う。

「…………えぇとな。俺的にはもう福田のことは友達だと思ってたぞ?だから、まぁ……えと、よろしく、みたいな?」

  なんかこんな事を言うのが気恥ずかしくて、福田の方を見ながら話せなかった。けど、言いたいことはちゃんと言えた。

  もちろん、それがちゃんと伝わってるかは分からんが。

「………そっか。ありがと、

「っ………あ、あぁ。よろしくな……えと、裕一ゆういち

  俺らしくもなく沢山吃ったが、まぁ、悪くなかったと思えた。
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