余命1年の君に恋をした

パチ朗斗

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34話 バレー

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「前のロングホームルームでも言ったけど、基本的にトスは俺に上げて」

  今は体育の時間だ。まだ球技大会の練習の時期じゃない。だが、男子はバレーなのだ。なので、俺と海斗と福田は同じチームになってイメージを掴もうってことになった。

  ちなみにあと三人の男子は、神永君に須恵道君、田所君だ。冗談抜きで会話をした経験がない。

  あのコミュ力の化身足る福田はなぜかあの三人とも楽しそうに話してる。マジでどうなってるの、そのコミュ力?

「俺の本気を見せてやるぜ」

  ネットを挟んだ向こう側のコートには二年二組の男子の姿がある。ちなみに俺のクラスは一組。……どうでも良いか。

「よし、やるぞ!」

  福田が元気良くそう言って前に出てくる。

  俺らは基本的にローテーションをしないポジション固定の形だ。

「さぁ、サーブをどうぞ」

「俺らのチームから?てか、俺?」

「うん、任せた。ガンバ」

「お、おう」

  福田は俺に微笑みながらボールを持ってきた。そのイケメン爽やかスマイルは俺に効果抜群だからぜひやめて欲しい。

「ふぅ。入るかな……」

  俺は福田から受け取ったボールを見つめながらそう呟いた。

  そして、エンドラインに立った俺は、相手コートを見据えて、深呼吸をする。

「これはただの授業だ。気楽にいこう」

  俺はエンドラインから更に離れてからボールを高めに前へと上げた。

  これはいわゆるジャンプサーブ。俺ができる唯一のサーブだ。

  カッコイイと言う理由でずっと練習していた。だからこれ以外のサーブは多分出来ない。

  俺の打ったサーブは狙い通り、相手コートのエンドラインギリギリに落ちる。

「良かった。とりあえずサーブミスは気にしなくて良さそうだ」

  そう安堵していると、目の前に居る海斗と目が合う。いつもよりも目を大きく開けていて、今にも目ん玉が出てきそうなほどだ。

  どうやら俺がバレーのサーブができているいることに驚いてるのだろう……多分。

「はい、ボール。蓮翔君ってバレーのサーブが得意なんだね」

「まぁな。サーブは任せろ」

  そう言って再度ボールを受け取る。

  俺は本格的なバレーをしたことがないから分からないが、サーバー?って一回一回変わらないのか?

  …………まぁ、こういうルールもあるんだ程度で良いか。本格的なバレーをする予定は全くないからな。

「フッ……!」

  俺はもう一度ジャンプサーブを相手コート目掛けて放つ。今度はど真ん中に打ち込んだ。

  ど真ん中は狙いやすいからスピードが出やすい。それに奥を狙う必要も無いから少し叩き落とすイメージで出来るからかなり低いボールが出る。

  案の定、俺のサーブを受けようとした相手は反応出来ずに見逃す。

「そろそろミスるか……」

  俺は福田から褒め言葉とボールを貰いエンドラインに立つ。
  
  俺は別にサーブを打つためにバレーをしているわけじゃない。連携を強めるためにやってるのだ。ならば、ここは引くべきか。

  もちろん、周りからはそう悟られないようにするけど。

「オラっ!」

  俺は先程よりも更に高く飛んで相手コートのエンドラインに狙いを定める。

  俺の打ったサーブはギリギリエンドラインを超えた。

「ミスっちまった。すまん」

  俺はみんなの方を見てから一言謝ってコートに入る。

「お前……実はハイスペックとかじゃないよな?ラノベの主人公みたいな」

「たまたまだ。それよりも集中だ」

  海斗の隣に立つとそんな事を言われた。こればかりは偶然に偶然が重なっただけだからどうしようもない。

  それに、サーブは上手くてもレシーブはそこそこだ。悪目立ちしない程度でしかない。

「おっと。ついに俺の実力を魅せる時が来たッ!」

  相手からのアンダーサーブ。ふんわりとした軌道で海斗の方へと落ちてくる。

「ほら、蓮」

「オッケイ」

  海斗から丁度良い高さのレシーブが飛んでくる。

  俺はそのボールを海斗の奥に居る福田へ向けて高く上げる。

「そう来ないとね」

  俺の上げるボールに合わせて福田がジャンプする。

  福田のスパイクは一切のブロックを受けずに相手コートへと叩き込まれた。

「ナイス、福田」

「いや、あれは二人のおかげだよ。ナイストス」

  海斗の褒め言葉をそのまま返した福田は俺らの方へ向かってきてハイタッチを求めてきた。

「よし、この調子で頑張ろう」

  ハイタッチをした後、イケメン爽やかスマイルを浮かべながら自分のポジションへと戻って行く。
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