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30話 再確認
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「なぁ、ホントにこれで帰るのか?」
授業が終わってついに下校時間だ。
今日は海斗同様、瑠魅もバイトがないので一緒に帰ることにしたのだが……。どうやら瑠魅は二人乗りをしたいようだ。
本来は俺がチャリを引きながら瑠魅と帰る予定だったから若干焦っている。
理由としてはやっぱり心の準備をしてないからだな。
「二人で一緒に帰れる機会が少ないでしょう?一緒に帰れる時ぐらいは良いかなって」
そんな風に言われたら断れないって……。
いや、でもな……これは不健全だ。俺たちはまだ……その……付き合ってないしな、うん。体が密着するような事はよろしくないと思うんだ、うん。
「どうかした?」
「あ、ううん。たださ、やっぱり二人乗りって危ないじゃん?」
直接言うのはちょっと恥ずかしいからオブラートに包んだけど……。これはちゃんと伝わってるか?
瑠魅はちょっとズレてるからな。知っておいて損のない常識ぐらいはちゃんと教えた方が良いよな。
まぁ、大事な部分は俺が恥ずかしくて言えてないけど……。
「そっか……そうだよね。じゃあ行こっか」
瑠魅は少し悲しそうにするも、すぐに笑顔になって校門の方へと向かっていった。
俺もそれに続くようにチャリを引きながら瑠魅の後を行く。
~~~~
「あ、瑠魅。ちょっと待っててくれる?」
「ん?どうしたの?」
俺と瑠魅は雑談をしながら俺の家に向かった。
途中で建物が視界から消えて、その代わりに緑色に染まった稲が両側になびく、家までの一本道に出た。
その道を瑠魅と通っていると、ふと思い出したことがある。
千年桜への挨拶だ。前までは習慣でほぼ毎日欠かさずにやっていたのに、最近はめっきりやらなくなっていた。
せっかく思い出したのだから、これを機に久々にやるか。
俺は道端にチャリを停めて千年桜のある空き地へと入っていく。
すると後ろから足音がしたので、振り返ると瑠魅も後ろを着いてきていた。
「私もやるわ。私の起源だもの、あの木は」
「そういえばね。時々忘れるけど、瑠魅は千年桜の思念体なんだもんね」
そう考えると、ホントに不思議だな。
「っ……!瑠魅、さん?」
「フフッ。どうかした?」
俺が静かに千年桜を眺めていると、手に柔らかい感触があり、次の瞬間ギュッと握られた。
どうやら、瑠魅が俺の手を握ってきたようだ。しかも、指を絡める握り合う恋人繋ぎで、だ。
俺は不意にそんなことをされて血が顔に上って熱く、赤くなっていく。
そんな顔を見られるのが嫌で、俺は瑠魅から視線を外した。
「さ、早く済ませて家に行こう」
「あ、え、ちょ、ちょっと!」
そう言った瑠魅は手を握り、楽しそうに笑いながら俺を引っ張るようにして千年桜へ向かう。
少し驚いたものの、瑠魅の明るさに当てられ、俺もつられるようにして笑った。
………こんな特別な事をされると、瑠魅への想いが一層強くなってしまうようで、怖かった。
瑠魅を手放したくないと言う"独占心"が湧いてしまう。
歪んでいるのだろうか?この想いはずれているのだろうか?
分からない。分からないけど、なんでか俺の瑠魅への愛は異常なほどに大きくなってきているようだ。
授業が終わってついに下校時間だ。
今日は海斗同様、瑠魅もバイトがないので一緒に帰ることにしたのだが……。どうやら瑠魅は二人乗りをしたいようだ。
本来は俺がチャリを引きながら瑠魅と帰る予定だったから若干焦っている。
理由としてはやっぱり心の準備をしてないからだな。
「二人で一緒に帰れる機会が少ないでしょう?一緒に帰れる時ぐらいは良いかなって」
そんな風に言われたら断れないって……。
いや、でもな……これは不健全だ。俺たちはまだ……その……付き合ってないしな、うん。体が密着するような事はよろしくないと思うんだ、うん。
「どうかした?」
「あ、ううん。たださ、やっぱり二人乗りって危ないじゃん?」
直接言うのはちょっと恥ずかしいからオブラートに包んだけど……。これはちゃんと伝わってるか?
瑠魅はちょっとズレてるからな。知っておいて損のない常識ぐらいはちゃんと教えた方が良いよな。
まぁ、大事な部分は俺が恥ずかしくて言えてないけど……。
「そっか……そうだよね。じゃあ行こっか」
瑠魅は少し悲しそうにするも、すぐに笑顔になって校門の方へと向かっていった。
俺もそれに続くようにチャリを引きながら瑠魅の後を行く。
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「あ、瑠魅。ちょっと待っててくれる?」
「ん?どうしたの?」
俺と瑠魅は雑談をしながら俺の家に向かった。
途中で建物が視界から消えて、その代わりに緑色に染まった稲が両側になびく、家までの一本道に出た。
その道を瑠魅と通っていると、ふと思い出したことがある。
千年桜への挨拶だ。前までは習慣でほぼ毎日欠かさずにやっていたのに、最近はめっきりやらなくなっていた。
せっかく思い出したのだから、これを機に久々にやるか。
俺は道端にチャリを停めて千年桜のある空き地へと入っていく。
すると後ろから足音がしたので、振り返ると瑠魅も後ろを着いてきていた。
「私もやるわ。私の起源だもの、あの木は」
「そういえばね。時々忘れるけど、瑠魅は千年桜の思念体なんだもんね」
そう考えると、ホントに不思議だな。
「っ……!瑠魅、さん?」
「フフッ。どうかした?」
俺が静かに千年桜を眺めていると、手に柔らかい感触があり、次の瞬間ギュッと握られた。
どうやら、瑠魅が俺の手を握ってきたようだ。しかも、指を絡める握り合う恋人繋ぎで、だ。
俺は不意にそんなことをされて血が顔に上って熱く、赤くなっていく。
そんな顔を見られるのが嫌で、俺は瑠魅から視線を外した。
「さ、早く済ませて家に行こう」
「あ、え、ちょ、ちょっと!」
そう言った瑠魅は手を握り、楽しそうに笑いながら俺を引っ張るようにして千年桜へ向かう。
少し驚いたものの、瑠魅の明るさに当てられ、俺もつられるようにして笑った。
………こんな特別な事をされると、瑠魅への想いが一層強くなってしまうようで、怖かった。
瑠魅を手放したくないと言う"独占心"が湧いてしまう。
歪んでいるのだろうか?この想いはずれているのだろうか?
分からない。分からないけど、なんでか俺の瑠魅への愛は異常なほどに大きくなってきているようだ。
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