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28話 主人公?
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「……………」
瑠魅の家に行ってから一週間が経った。
ついに瑠魅は学校に登校できるまで回復していた。
まぁ、俺としては瑠魅のあんな姿を見たあとだから、なんとも複雑な気分だけど。
それに、瑠魅が一週間も学校に登校してなかったからか、瑠魅の席には人集りができている。
あぁいう風景を見ると、瑠魅がちゃんとクラスに馴染んで、しっかりと友好関係を築けてるんだな、って感心する。
きっと、瑠魅は質問攻めにあってるんだろうなぁって思う。
そりゃ、一週間も休んでいたのだから、俺と違ってみんなは気になることがあるだろう。
俺はこの一週間、毎日欠かさざず瑠魅と電話していたから、今日登校することも、瑠魅の体調が良くなってきていたことも知ってるからな。
でも、毎日電話していたなかで変わったことがあった。それは、瑠魅はあの日俺が言ったことを気にしてか、時々テンションが沈む時や、インターホン越しに聞こえたあの声の時があった、という事だ。
ここだけの話、瑠魅が素の状態で接してくれたのが嬉しかった。
なによりも、瑠魅が無理をしていない。それだけで俺は嬉しかった。
「楽しそうだな、瑠魅」
俺は自分の席から遠目でその人集りの中心である瑠魅を見ていた。
瑠魅はみんなに愛されてんるんだな。
瑠魅の笑ってる姿を見て俺は安堵した。
「お前はいつも達観してるよな」
「海斗か。なんでこっちに来たんだ?瑠魅の近く居れば良いものを……」
「隣の席の子が眩しすぎて近くに居れない件」
「なんだ、そのふざけたタイトルは」
ヒッソリと現れたと思ったら真顔で急に変な事を言い出す。マジで海斗はやばいヤツだな。
海斗が俺の机に軽く座り、瑠魅の方へと視線を向けた。
「可愛いよな」
「そうだな」
「スタイル良いよな」
「そうだな」
「告ってみようかな」
「そうだな」
「…………」
「ん?どった?」
変な事を言い出すから適当に返してたらなんかジト目で見てくるんだが?
何かあった?俺、こんな目を向けられることをした記憶ないんだが?
「お前、俺の事嫌いか?」
「どうした、どうした。俺変なこと言ってた?」
マジで何があったん?何をやらかしたのか全く記憶にないんだけど。
もしかして、俺が適当に流してたのがバレたのか?でも、そんなことでキレるほど短気じゃねぇよな……。
「鈍感って怖ぇわ」
「誰が鈍感だ」
俺は別に鈍感じゃないと思う。女の子に飢えてる身としては、なんで女子から好意を向けられて気付けないのか、訳が分からん。
そういう奴は一回死んでくれ。マジで許さんぞ、リア充共が!
「はぁ……こりゃ重症だぜ。瑠魅ちゃんどころか、姫乃も大変そうだ」
「何か言ったか?」
「いんや。お前のバカさ加減にウンザリしてただけだ」
「いや、海斗だけには言われたくねぇぞ」
それだけを言って視線を瑠魅の方へ向けた。瑠魅の姿を見てるだけで、海斗のせいで荒んでいた心が落ち着くからな。
「お前と瑠魅ちゃんってどんな関係なん?あんま接点も無いのに、変に仲良過ぎじゃないか?」
「接点なら沢山………」
そう言いかけ、そう言えば、と思う。
俺自身は瑠魅とどんな風に会ったかっていう経緯を知ってるが、ほかの人たちは知らないわけで……。
傍から見れば俺にだけバグった距離感で話しかてるヤバい転校生なわけで。つまるところ、俺もムーブだけ見れば主人公してるわけだ。
「海斗。俺はもしかしたら主人公なのかもしれない」
「………お前もそんな冗談が言えるんだな」
俺に憐れみの視線を向けてくる。
まぁ、自分でも違和感があるくらいにはありえない言動だなとは思うけど。
「っ………」
「っ………!!」
俺と海斗との間で会話が途切れ、無意識のうちに瑠魅の方へ視線を戻した時、瑠魅と目が合った。
あまつさえ、俺と目があった瑠魅は何故か笑顔で小さく手を振ってきた。
その笑顔で海斗は顔を真っ赤にしていた。
もちろん、そんな不可解なことをすれば周囲の視線も俺らの方へ向いてくるわけだ。
「気まずっ」
「それな」
だが、目線の先に居た俺らの顔を見て興味を失ったのか、すぐに視線を瑠魅に戻していく。
お前ら、その行動はかなり失礼だからな?まぁ、ずっと見られるのは恥ずかしいから良いけど、すぐに視線を外されるのもそれはそれでちょっと悲しいんだわ。
「…………」
「どうした、海斗?……姫乃がどうかしたか?」
海斗の視線の先にはこちらを……特に、なぜか俺の方を睨みつける姫乃の姿があった。
なんでそんな泣きそうな目で俺を睨むんすか?俺、何かやりました?
俺がピンと来てなさそうな顔をしてると海斗はため息をついてからまたジト目を向けてきた。
「はぁ……もうホントになぁ……超が付くほどの鈍感だよ、お前」
「何について言ってるんだ?おい」
海斗はその質問に答えず、意味もなく教室を出ていった。
あの人集りの隣にある自分の席にだけは近付きたくないようだ。
「ハハッ。そう思うと、ちょっとダセェな」
俺はそう独り言を漏らして勝手に笑っていた。
~~~~~~~~~~~~~~
作者には分かります。やっと恋愛系の小説になることが!ここまでかなり長かったですが、これからはちゃんとした恋愛小説をお届け出来ると思います、多分。
誤字脱字、質問や感想等ありましたら気軽にコメントお願いします。
瑠魅の家に行ってから一週間が経った。
ついに瑠魅は学校に登校できるまで回復していた。
まぁ、俺としては瑠魅のあんな姿を見たあとだから、なんとも複雑な気分だけど。
それに、瑠魅が一週間も学校に登校してなかったからか、瑠魅の席には人集りができている。
あぁいう風景を見ると、瑠魅がちゃんとクラスに馴染んで、しっかりと友好関係を築けてるんだな、って感心する。
きっと、瑠魅は質問攻めにあってるんだろうなぁって思う。
そりゃ、一週間も休んでいたのだから、俺と違ってみんなは気になることがあるだろう。
俺はこの一週間、毎日欠かさざず瑠魅と電話していたから、今日登校することも、瑠魅の体調が良くなってきていたことも知ってるからな。
でも、毎日電話していたなかで変わったことがあった。それは、瑠魅はあの日俺が言ったことを気にしてか、時々テンションが沈む時や、インターホン越しに聞こえたあの声の時があった、という事だ。
ここだけの話、瑠魅が素の状態で接してくれたのが嬉しかった。
なによりも、瑠魅が無理をしていない。それだけで俺は嬉しかった。
「楽しそうだな、瑠魅」
俺は自分の席から遠目でその人集りの中心である瑠魅を見ていた。
瑠魅はみんなに愛されてんるんだな。
瑠魅の笑ってる姿を見て俺は安堵した。
「お前はいつも達観してるよな」
「海斗か。なんでこっちに来たんだ?瑠魅の近く居れば良いものを……」
「隣の席の子が眩しすぎて近くに居れない件」
「なんだ、そのふざけたタイトルは」
ヒッソリと現れたと思ったら真顔で急に変な事を言い出す。マジで海斗はやばいヤツだな。
海斗が俺の机に軽く座り、瑠魅の方へと視線を向けた。
「可愛いよな」
「そうだな」
「スタイル良いよな」
「そうだな」
「告ってみようかな」
「そうだな」
「…………」
「ん?どった?」
変な事を言い出すから適当に返してたらなんかジト目で見てくるんだが?
何かあった?俺、こんな目を向けられることをした記憶ないんだが?
「お前、俺の事嫌いか?」
「どうした、どうした。俺変なこと言ってた?」
マジで何があったん?何をやらかしたのか全く記憶にないんだけど。
もしかして、俺が適当に流してたのがバレたのか?でも、そんなことでキレるほど短気じゃねぇよな……。
「鈍感って怖ぇわ」
「誰が鈍感だ」
俺は別に鈍感じゃないと思う。女の子に飢えてる身としては、なんで女子から好意を向けられて気付けないのか、訳が分からん。
そういう奴は一回死んでくれ。マジで許さんぞ、リア充共が!
「はぁ……こりゃ重症だぜ。瑠魅ちゃんどころか、姫乃も大変そうだ」
「何か言ったか?」
「いんや。お前のバカさ加減にウンザリしてただけだ」
「いや、海斗だけには言われたくねぇぞ」
それだけを言って視線を瑠魅の方へ向けた。瑠魅の姿を見てるだけで、海斗のせいで荒んでいた心が落ち着くからな。
「お前と瑠魅ちゃんってどんな関係なん?あんま接点も無いのに、変に仲良過ぎじゃないか?」
「接点なら沢山………」
そう言いかけ、そう言えば、と思う。
俺自身は瑠魅とどんな風に会ったかっていう経緯を知ってるが、ほかの人たちは知らないわけで……。
傍から見れば俺にだけバグった距離感で話しかてるヤバい転校生なわけで。つまるところ、俺もムーブだけ見れば主人公してるわけだ。
「海斗。俺はもしかしたら主人公なのかもしれない」
「………お前もそんな冗談が言えるんだな」
俺に憐れみの視線を向けてくる。
まぁ、自分でも違和感があるくらいにはありえない言動だなとは思うけど。
「っ………」
「っ………!!」
俺と海斗との間で会話が途切れ、無意識のうちに瑠魅の方へ視線を戻した時、瑠魅と目が合った。
あまつさえ、俺と目があった瑠魅は何故か笑顔で小さく手を振ってきた。
その笑顔で海斗は顔を真っ赤にしていた。
もちろん、そんな不可解なことをすれば周囲の視線も俺らの方へ向いてくるわけだ。
「気まずっ」
「それな」
だが、目線の先に居た俺らの顔を見て興味を失ったのか、すぐに視線を瑠魅に戻していく。
お前ら、その行動はかなり失礼だからな?まぁ、ずっと見られるのは恥ずかしいから良いけど、すぐに視線を外されるのもそれはそれでちょっと悲しいんだわ。
「…………」
「どうした、海斗?……姫乃がどうかしたか?」
海斗の視線の先にはこちらを……特に、なぜか俺の方を睨みつける姫乃の姿があった。
なんでそんな泣きそうな目で俺を睨むんすか?俺、何かやりました?
俺がピンと来てなさそうな顔をしてると海斗はため息をついてからまたジト目を向けてきた。
「はぁ……もうホントになぁ……超が付くほどの鈍感だよ、お前」
「何について言ってるんだ?おい」
海斗はその質問に答えず、意味もなく教室を出ていった。
あの人集りの隣にある自分の席にだけは近付きたくないようだ。
「ハハッ。そう思うと、ちょっとダセェな」
俺はそう独り言を漏らして勝手に笑っていた。
~~~~~~~~~~~~~~
作者には分かります。やっと恋愛系の小説になることが!ここまでかなり長かったですが、これからはちゃんとした恋愛小説をお届け出来ると思います、多分。
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