19 / 89
19話 謁見
しおりを挟む
「こ、ここは……?」
「…………」
「蓮、翔?」
俺は咄嗟に声のした方に視線を向けた。
「瑠魅っ……!」
なんで、こうも久々に会ったかのように、嬉しいのか。再会、と言うにはあまりにも短くて。でも、瑠魅が近くに居ると……手が届く範囲に居る。
でも、なんだか瑠魅が遠くにいるように感じた。
「な、なんで瑠魅が?」
「分からないの……でもね。私ね、あの声をどこかで聞いたことがあるの」
俺は、神太さんが言っていた事を思い出した。さっきは気が動転していて忘れていた。
なんで俺が、瑠魅が遠い存在と感じたのか、わかった気がする。
「ごめん、瑠魅」
「え、え?ど、どうしたの?」
「神太さんから……全部聞いた」
「……………そっか。聞いちゃったんだね」
瑠魅は視線を下げて寂しそうにニコリと笑った。
「心配しないで。こうやって蓮翔と話せたから」
「お、俺っ……ーーー」
『決断の時は来た。さぁ、答えを言えよ。ハル』
「…………」
またしても脳内に声が響く。ハッキリと言って気分が悪い。
てか、この場所絶対に退屈だろ。全面真っ白で何も無いじゃんか。
声の主も見つからないし。てか、ハルって誰だよ。
俺が心の中でそう愚痴を零していると、後ろから足音がした。
「やはり、私が犠牲になるのはダメなのか?」
俺の目の前まで歩いてきたのは、瑠魅のお父さんである神太さんだった。
神太さんは何も無い空間に向かいそう言い放つ。
『ダーメ。なんのためにそこにいる男を連れて来たと思ってんだ?』
「し、しかし……!彼は本当に無関係なんだ!」
『約束は、約束だろ?』
「「「っ………!!」」」
背筋がゾクッとした。体が無意識に震え始めた。どうやら、俺の言うことは聞いてくれそうにない。
瑠魅に関してはしゃがみ込んでしまい、顔色を伺うことは出来ない。
神太さんは顔を少し顰める程度だった。
『言ったよね?彼女を人間にする代わりに、僕の要求を叶えるってさ?僕がどれだけ頑張ったか分かる?分からないよね?そうだよね?君如きが分かるはずないさ。君は分からないなりに僕に尽くせよ。なんで口答えするの?僕は君よりも格上の神なんだよ?本来なら関わりすら持てない上位の存在。ねぇ、分かってよ、てか、分かれ。さっさと僕の要求を呑めよ。君にはそれしか道は無い。さぁ、わかったと言え』
「…………」
すんごい早口で色々言ってきたが、なんでこうも聞き取れるんだ?実は滑舌がスゲェ良いのかな?
まぁ、脳内に直接話しかけてきてるからかも知れねぇな。
「それは出来ない」
『はぁ?自分はお願いするだけして、僕の要求は無視ですか?良いご身分な事で。もう殺してやろうか?いや、殺して欲しいと思うほどの苦痛を一生与え続けてやろうか?お前は自分の立場を理解しろよ。こんなちっせぇ町の神でイキってんじゃねぇよ。自分の身の丈を理解できないカスは一生カスのままなんだよ。テメェは偉くも何ともねぇんだから偉いヤツに媚びでも売ってヘラヘラしてろよ。歯向かうとか、本当におかしいんじゃねぇの?なぁ、何とか言えよ、カス』
「………」
気分が悪いんだが?なぜ他人の悪口を聞かなきゃならねぇんだよ、それも脳に直接とか。
「あの……要求ってなんなん?」
「蓮翔君!?」
『……なんだ。下界のカスか。お前には関係ないからしゃしゃり出てくるなよ。ウザイんだよ、そういうのさ』
「………」
ボロクソ言われたんだが?俺のメンタルが超合金レベルだから良いが、これがガラスメンタルだったら、死んでるぞ?
「俺と関係があるんじゃないのか?だから連れて来たんだろ?」
『黙れカス。まぁ、そうだね。君のような低能相手でも穏やかに接してあげよう。なんて言ったって神だからね』
「「…………」」
なぁ、こいつ殴って良い?良いよな?
え、許可?んなもん要らねぇよ。
『簡単に言えばね。君はそこにいる神……ハルに売られたんだよ、内緒でね』
「え?」
「………」
俺が視線を向けると、神太さんは視線を逸らして下を向いてしまった。
どうやら、本当らしい。ここに味方居らんかね?居らんか……。唯一の希望……瑠魅は現在進行形でダウンしてるし。
『可哀想にね。けど心配しなくて良いよ。僕が可哀想な君の命を貰ってあげるから』
「え?」
「………」
『僕の要求はね……君の寿命だよ、蓮翔』
「………え、ヤダよ」
あら、ヤダ。反射的に出てしまったわ。もう、ダメなんだから。
あ、ヤベェ。何がって色々ヤバいけど……。
視界の端に写った神太さんは頭を抱えていた。どうやら、俺の思考以外にもやばい点は尽きないようだ。
『それが君の答えかい?』
「そうだ、と言ったら?」
『そうだね。もはや君には存在価値は微塵もないし、殺そっかな』
「え?」
思考ぶっ飛んでて草。いや、草すら生えんて。いや、どうなってんのよ、神様。
「…………」
「蓮、翔?」
俺は咄嗟に声のした方に視線を向けた。
「瑠魅っ……!」
なんで、こうも久々に会ったかのように、嬉しいのか。再会、と言うにはあまりにも短くて。でも、瑠魅が近くに居ると……手が届く範囲に居る。
でも、なんだか瑠魅が遠くにいるように感じた。
「な、なんで瑠魅が?」
「分からないの……でもね。私ね、あの声をどこかで聞いたことがあるの」
俺は、神太さんが言っていた事を思い出した。さっきは気が動転していて忘れていた。
なんで俺が、瑠魅が遠い存在と感じたのか、わかった気がする。
「ごめん、瑠魅」
「え、え?ど、どうしたの?」
「神太さんから……全部聞いた」
「……………そっか。聞いちゃったんだね」
瑠魅は視線を下げて寂しそうにニコリと笑った。
「心配しないで。こうやって蓮翔と話せたから」
「お、俺っ……ーーー」
『決断の時は来た。さぁ、答えを言えよ。ハル』
「…………」
またしても脳内に声が響く。ハッキリと言って気分が悪い。
てか、この場所絶対に退屈だろ。全面真っ白で何も無いじゃんか。
声の主も見つからないし。てか、ハルって誰だよ。
俺が心の中でそう愚痴を零していると、後ろから足音がした。
「やはり、私が犠牲になるのはダメなのか?」
俺の目の前まで歩いてきたのは、瑠魅のお父さんである神太さんだった。
神太さんは何も無い空間に向かいそう言い放つ。
『ダーメ。なんのためにそこにいる男を連れて来たと思ってんだ?』
「し、しかし……!彼は本当に無関係なんだ!」
『約束は、約束だろ?』
「「「っ………!!」」」
背筋がゾクッとした。体が無意識に震え始めた。どうやら、俺の言うことは聞いてくれそうにない。
瑠魅に関してはしゃがみ込んでしまい、顔色を伺うことは出来ない。
神太さんは顔を少し顰める程度だった。
『言ったよね?彼女を人間にする代わりに、僕の要求を叶えるってさ?僕がどれだけ頑張ったか分かる?分からないよね?そうだよね?君如きが分かるはずないさ。君は分からないなりに僕に尽くせよ。なんで口答えするの?僕は君よりも格上の神なんだよ?本来なら関わりすら持てない上位の存在。ねぇ、分かってよ、てか、分かれ。さっさと僕の要求を呑めよ。君にはそれしか道は無い。さぁ、わかったと言え』
「…………」
すんごい早口で色々言ってきたが、なんでこうも聞き取れるんだ?実は滑舌がスゲェ良いのかな?
まぁ、脳内に直接話しかけてきてるからかも知れねぇな。
「それは出来ない」
『はぁ?自分はお願いするだけして、僕の要求は無視ですか?良いご身分な事で。もう殺してやろうか?いや、殺して欲しいと思うほどの苦痛を一生与え続けてやろうか?お前は自分の立場を理解しろよ。こんなちっせぇ町の神でイキってんじゃねぇよ。自分の身の丈を理解できないカスは一生カスのままなんだよ。テメェは偉くも何ともねぇんだから偉いヤツに媚びでも売ってヘラヘラしてろよ。歯向かうとか、本当におかしいんじゃねぇの?なぁ、何とか言えよ、カス』
「………」
気分が悪いんだが?なぜ他人の悪口を聞かなきゃならねぇんだよ、それも脳に直接とか。
「あの……要求ってなんなん?」
「蓮翔君!?」
『……なんだ。下界のカスか。お前には関係ないからしゃしゃり出てくるなよ。ウザイんだよ、そういうのさ』
「………」
ボロクソ言われたんだが?俺のメンタルが超合金レベルだから良いが、これがガラスメンタルだったら、死んでるぞ?
「俺と関係があるんじゃないのか?だから連れて来たんだろ?」
『黙れカス。まぁ、そうだね。君のような低能相手でも穏やかに接してあげよう。なんて言ったって神だからね』
「「…………」」
なぁ、こいつ殴って良い?良いよな?
え、許可?んなもん要らねぇよ。
『簡単に言えばね。君はそこにいる神……ハルに売られたんだよ、内緒でね』
「え?」
「………」
俺が視線を向けると、神太さんは視線を逸らして下を向いてしまった。
どうやら、本当らしい。ここに味方居らんかね?居らんか……。唯一の希望……瑠魅は現在進行形でダウンしてるし。
『可哀想にね。けど心配しなくて良いよ。僕が可哀想な君の命を貰ってあげるから』
「え?」
「………」
『僕の要求はね……君の寿命だよ、蓮翔』
「………え、ヤダよ」
あら、ヤダ。反射的に出てしまったわ。もう、ダメなんだから。
あ、ヤベェ。何がって色々ヤバいけど……。
視界の端に写った神太さんは頭を抱えていた。どうやら、俺の思考以外にもやばい点は尽きないようだ。
『それが君の答えかい?』
「そうだ、と言ったら?」
『そうだね。もはや君には存在価値は微塵もないし、殺そっかな』
「え?」
思考ぶっ飛んでて草。いや、草すら生えんて。いや、どうなってんのよ、神様。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
彼を追いかける事に疲れたので、諦める事にしました
Karamimi
恋愛
貴族学院2年、伯爵令嬢のアンリには、大好きな人がいる。それは1学年上の侯爵令息、エディソン様だ。そんな彼に振り向いて欲しくて、必死に努力してきたけれど、一向に振り向いてくれない。
どれどころか、最近では迷惑そうにあしらわれる始末。さらに同じ侯爵令嬢、ネリア様との婚約も、近々結ぶとの噂も…
これはもうダメね、ここらが潮時なのかもしれない…
そんな思いから彼を諦める事を決意したのだが…
5万文字ちょっとの短めのお話で、テンポも早めです。
よろしくお願いしますm(__)m
私の大好きな彼氏はみんなに優しい
hayama_25
恋愛
柊先輩は私の自慢の彼氏だ。
柊先輩の好きなところは、誰にでも優しく出来るところ。
そして…
柊先輩の嫌いなところは、誰にでも優しくするところ。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
さよなら私のエーデルワイス〜侍女と騎士の初恋〜
佐原香奈
恋愛
小さな村で幼馴染として育ったエマとジャン。小さい頃からジャンは騎士を目指し、エマはそれを応援していた。
ジャンは成人する年、王都で開かれる各地の騎士団採用試験として行われるトーナメント戦に出場するため、村を出た。
一番の夢であった王立騎士団入団は叶えられなかったものの、辺境伯家の騎士団に入団することになったジャンは、胸を張ってエマを迎えに行くために日々鍛錬に励んでいた。
二年後、成人したエマは、ジャンが夢を叶える時に側にいたいと、ジャンの夢の舞台である王立騎士団で侍女として働くことになる。しかし、そこで待ち受けていたのは、美しい女性と頻繁にデートするジャンの姿だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる