余命1年の君に恋をした

パチ朗斗

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10話 変化

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  瑠魅がこの学校に転校してきて二週間が経った。 

  最初は俺としか会話しなかった瑠魅だったけど、段々と他の人たちと話すようになってきた。

  それでも、放課後は飽きもせずに俺の家に来ている。

  どうやらお気に召した本があるらしい。でも、無防備すぎるのが問題だ。どうしても意識してしまう。

  そんな生活をしているせいか、最近の俺はおかしい。

  何でか、最近ずっと俺の脳裏に瑠魅の顔がチラつく。

  でも、瑠魅の顔を見ると何でだか恥ずかしいような緊張のようなものがして、直視できない。

  俺は鈍感な主人公でも箱入り娘でもない。十五年生きてきた俺の直感が告げてきている。

  それ、恋じゃね?と。

  いやいやいや、有り得んて。俺が瑠魅に?いやいやいや、ないないない。

  瑠魅は女友達と言うか、妹みたいなもんだし。妹に恋とか……危ない匂いしかしないぞ。

  でも、実の妹じゃないし、同い年だし……。

「えぇ、じゃあ今日の授業はここまで」

  相手は勝手が分からなくて頼ってきてるんだぞ?それを無碍にできるか!

  ただの好意に恋愛の好意で返すなんて、失礼極まりない。

「なぁ、蓮」

  もういっそ言ってみるか?あなたのことが好きですって。

  でも、今の関係が無くなってことだろ?それは嫌だ。

「なぁ、おい」

  それなら、俺が俺のこの気持ちを抑え込めば良い。そうすれば誰も傷つかない。

「蓮翔!」

  はっ!今は授業中だった!

「はいっ?!」

  反射的に声が出ちゃったじゃん。声が裏返った。もう最悪。

「お、おう。まさかそんなに元気に返事されるとは」

「…………今は授業中だぞ?何で歩いてんだ、海斗?」

「はっ?もう授業終わったわ」

「へ?」

  いつの間にか終わったん?気が付かなったわ。

「全く……寝不足も程々にしろ」

「あ、あぁ……そうだな」

  とりあえず、今は瑠魅の事を考えるのはよそう。思考が沼って変な事を仕出かしたら嫌だからな。

「で、どうした?」

「一週間後にゴールデンウィークじゃん?何する?」

「ああ、そういえばな」

  毎年、大型連休は四人で遊んでるしな。あと二人は今回のクラス替えで別れちまったけど、毎日会うし、会話もする。

「そうだな。じゃあ今日の放課後俺の家で話そうぜ。あの二人も誘ってよ」

「だな」

  言いたいことは言い終えたのか、海斗は「じゃ」と行って自分の席に戻った。海斗を目で追うと、瑠魅の姿が目に入る。

「そう言えば、瑠魅はどうしよう……」

  瑠魅には瑠魅の計画があるだろうし、邪魔する訳にはいかないよな。

  俺らの会話の中で一人ぼっちってのも気まずいしな。

  …………言い訳はこんぐらいで良いか。要は俺が気まずいんだろ。自分の気持ちに気付いてどう言うふうに接すれば良いのか分からない。

  最近ずっと感じてる、俺は最低だ。勝手に舞い上がってよ。

  瑠魅は可愛いよ。関われば関わるほど瑠魅の魅力が分かる。

  出会って日は浅いし全部を知ってる訳じゃない。

  俺の事情で瑠魅を傷つける訳にはいかない。俺の胸の内を明かすしかないのか?

  そうだな。瑠魅に告白して壮大に振られよう。諦めがつくはずだ。

  もうこの関係ではいられない。ハッキリ言ってすげぇ怖い。このぬるま湯にずっと浸かっていたい。

  でも、こんな気持ちで瑠魅と一緒に居るのも辛い。いつか、本当に取り返しのつかない事をする前に、ここで断ち切る。

  冴えない俺が夢を見すぎたんだ。ただ、それだけさ……。
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