余命1年の君に恋をした

パチ朗斗

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7話 昼休み

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「あのぉ……食べにくいんだけど」

「気にしないで」

  そうは言ってもな……。さすがに目の前で俺の食事風景を見られるのは気恥しいんだよな。

  それに、瑠魅に対してなのか、なんでお前なんかが、という意味合いなのかは定かでは無いけど、凄い視線を感じる。

  こんな中でご飯食えるか!

はご飯食べないんですか?」

  これ以上罪を重ねる訳には……。ここはどうにかしてそこまで親しくないよアピールを!

「…………」

「え、あの、町下さん?」

  無視ですか?なんでですかねぇ。俺、何かやりましたか?

「瑠魅」

「え?」

「そう呼んでくれないと、ヤダ」

「っ………!」

  か、可愛すぎかよ!いつものクールな感じとは違って容姿相応の対応。

  これが、真のギャップ!

「る、瑠魅、さん……」

「………」

  な、なんで!?また無視ですか!?

「呼び捨て、でしょ?」

「くっ………」

  そ、それはヤバいって!さすがに初日でそれはさ!

  ほら、みんな、えっ?って顔してるよ。見えてないの?

  てか、これ以上は心臓が持たん!緊急離脱じゃボケェ!

「あぁ……なんか男子トイレでご飯を食いたい気分だな」

  いや、どんな気分だよ。アホすぎんか、俺。

  俺は弁当を今までにないほどのスピードでたたんだ。そして、勢いよく立ち上がってそのまま教室から逃げるように出た。

  あの視線だけで人を殺せそうな無言の圧力を受け続けるのは耐えられない。

  まさか、トイレ飯をすることになるとは今まで考えもしなかった。

  俺は教室から1番近い男子トイレに駆け込み、弁当を食べ始めた。

「どんな顔して教室に戻れば良いんだよ」

  あんな意味わからねぇこと言った後に普通に教室に戻れるほど、俺のメンタルは強くねぇんだよ。

「俺の大好きな唐揚げをこんな場所で食べることになるなんて……」

  俺は目に見えない涙を流しながら唐揚げを頬張った。

「唐揚げはどこで食ってもうめぇや」

  いつの間にかトイレで食ってることすら忘れていた。それほどに唐揚げの美味さが身に染みていた。

  自分がトイレで弁当を食べてると気づいたのは、弁当を食い終わって弁当をたたんでいる時だった。

「もう食べ終わったのか?」

「あ、海斗。どうした?」

「いや、五分ぐらい待っても帰ってこないからさ。みんな謝ってたぜ。(視線で)殺そうとしてごめんって」

「え………」

  あっぶねぇ。俺、殺されるところだったのかよ!?過激にも程があるだろ!

「とりあえず戻ろうぜ」

「あぁ。ちょうど食べ終わったところだしな」

  まぁ、昼休みはまだ良い方だ。小休憩って言うのか?授業と授業の間の短い休みには先輩後輩入り交じってたからな。

  なんとも言えない表情で廊下から見てくるんだ。

  俺はただ寝てるだけだぜ?ただ、俺の机の前に転校生の瑠魅が居るってのが問題なんだ。

「はぁ……」

「羨ま死ね」

「え?」

「ん?どうかしたか?」

「い、いや……」

  すんげぇやばい事聞こえたんだけど、気のせいですかね?

「まぁ、詳しいことは聞かねぇが、なんで仲良いんだ?」

「俺が知りたいわ」

「やっぱ、羨ま死ねってやつだ」

「こいつ、やっぱり言ってやがった」

  まぁ、いつも通りだな。

  俺は海斗の後ろに着いて行き、教室の前まで来た。

「幸運を祈る」

「えっ?」

  それだけを言って海斗は勢いよくドアを開けた。

「野郎ども!連れてきたぜ!」

  その声と同時に教室に居る生徒の視線が俺らの方に向く。厳密には俺の方をだ。

  あの目、俺は知っているぞ。あの目は瑠魅にも向けられていた目だ。そう、これは、お前に質問したるわ!って言う意思のある目だ!

「お前……」

  つまり、こいつは俺の事売りやがったんだ!なんて野郎だ。

「海斗、覚えておけよ!」

「ハハッ」

  この後、男子と女子からリンチという名の質問攻めにあったのは言うまでもない。

  そして、その中にちゃっかり海斗が居たこともな。コイツ、ゼッテェ許さねぇからな!

  そんで、瑠魅は他人事のように窓を見ながら黄昏ていた。

  その姿が妙に様になってて、終始瑠魅に見惚れていたため、まともに質問に答えてなかったのはここだけの話だ。
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