余命1年の君に恋をした

パチ朗斗

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1話 出逢い

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  冬が過ぎて春を迎えた。適当に過ごしていた春休み。気付くと既に入学式がある四月十日だ。と言っても既に入学式を終えて下校中なのだが。

  俺は去年高校に入学して、今日で晴れて高校二年生だ。

  久々に自転車を漕いだせいか、はたまた家の中でぐうたらしていたせいか、そんなにスピードを出していないのに、かなり疲労している。

  俺の家は大きな森の手前にある。その近くにある空き地の中央には樹齢千年の桜の木がある。

「あら、蓮ちゃん。早い帰りね」

「あぁ、八百屋のばっちゃん。今日は入学式だから午前中で帰れるんだよ」

「そうなの?今日も八百屋うちに来るのかい?」

「どうだろう?もしかしたら行くかも」

「是非いらっしゃい」

「わかったよ」

  俺の住む町は田舎だからだいたいみんなが顔見知りだ。今日高校に入学した新入生はほとんどが知人だ。

  うちの高校は特出したものは無いが、先輩後輩の仲がこの上ないほど良い。

  住宅街を抜けると、田んぼが両側にある道に出る。秋になると金色の海のように綺麗になる。

  右側には俺の住む家がある。もちろん、まだ遠いが。

  だが、自分の家に帰る時、いつも最初に目に入るのは自分の家でも大きな森でもなく、千年桜だった。

  あれはいつからか俺の中でお守りみたいな物になっていた。

  俺は桜に対する知識が無いのでどんな種類の桜かは知らない。両親は、ただ桜が咲いているな、程度にしか思っていないので、この千年桜に全く興味が無い。

「はぁ……しんど」

  俺は道端に自転所を止めて、桜のある空き地に足を踏み入れる。

「誰だ、あの子?」

  俺の視界に映ったのは桜の木の下にうつ伏せで倒れている人だった。季節外れの白いワンピースを着ていた。服装や骨格からして女性だと思う。

  もちろん遠目で見ただけなので完全には判断できないが、さすがにワンピースを男性が着ているのは想像でもしたくない。

  まぁ、人それぞれ趣味は違うし、男性がタンクトップのワンピースを着ていようとも………。ごめん、無理かも。

  そんな事を考えながら小さめの歩幅で桜の木(倒れている人)の方に歩いていく。

  近づくにつれてハッキリとしたシルエットが見えてきた。

「ふぅ……」

  艶のある髪だ。ロングのストレートって言うの?まぁ、とにかく長い髪だ。骨格もまぁ、男性と言うよりは女性っぽい。

  まぁ、男性ではような気はする。最近では男の娘と言うものもあるので、断言は出来ないけど。

  ずっと眺めていると犯罪だと思われてしまうし、この辺にしておこう。それに、他にやることもあるし。

  俺は桜の木の下まで移動して、上を向いて桜の花を見た。そして、視線を下げて今度は足元にうつ伏せで倒れているその女性?の方を見た。

「顔が見えないからアレだけど見えるところだけ見るとかなり美人だな」

  身長は俺よりも少し小さいくらいか?じゃあだいたい俺と同い年か?でも、こんな子今まで見たことないぞ。

  この町の人なら一回は最低でも会っているはずだし……。

「ま、まさか……!?」

  転校生かッ!?こんな田舎に転校してくるなんて……物好きな人も居るもんだな。

「春とは言え、その服はさすがに寒いだろ」

  それにしても、なんでこの桜のところに居るのだろう?確かにこの町でかなり目立つ場所ではあるが……。

  半分考えることを放棄した俺はいつも桜の木にするようにしゃがみ込む。

  制服でなければ正座するのだが、制服を汚すことを考慮すると出来るだけ地面に制服はつけたくない。

  しゃがみ込んだあと顔の辺りで二回拍手してから一礼をした。

「さて、どうしようか」

  立ち上がり右下に倒れ込む女性?を見た。この場に置いていくのは気が引ける。

「と言ってもさすがに家には連れて行けないし……」

  両親が居るかは分からないけど、やっぱり家に連れ帰るのは犯罪の匂いがする。

「だからってこの場に置いていくのはなぁ……」

  俺はどうすれば良いか悩みに悩んだ。結果から言って何も思い浮かばなかったが。

  万策尽きたと思い、考えるのをやめた。

「んん……」

「っ……!!!」

  人の声がしたので慌てて周囲を見た。だが、近くに人影はみつからなかった。

  周囲に人が居なかったので視線をその倒れている女性?に戻した。

「あなたは誰?」

「…………」

  さっきまで倒れ込んでいたその女性は女の子座りしてこちらを見ていた。

  起きたばかりだからだろうか。片手で目を擦りながらこちらを上目遣いに見てくる。

  マジの美少女やんけ。やべぇ、このレベルの美少女はアニメだけでしか見たことないから耐性が皆無だ。緊張してきたぞ。

「あっ……と君はなんでこんな場所に?」

  何とか絞り出せたのはこんな言葉だった。まぁ、無難だと思う。

「分からないの」

「へっ?」

  予想だにしない答えに素っ頓狂な声を出してしまった。とても恥ずかしいです、はい。

「ここは、どこなの?」

「っ……!」

  首をコテンをさせてそう聞いてきた。今までにこういうあざとい仕草をする女子には会ったことがある。

  だが、アレは言わば狙ってやっているのだ。しかし、これは天然!何の画策もなし(多分)のこれは破壊力が違う。

「ちょ、たんま」

「????」

  これ以上は本当にやばい。俺の理性が崩壊しそうだ。もう直視出来んて!

「君の家はどこにあるの?」

「家?」

  もう!仕草一つ一つが可愛いんだよ!

  俺はこの女性に背を向けながら質問をすることにした。

「何か自分の事で覚えてることとかない?」

  もう相手に任せよう。俺の質問が悪いのかもしれないし。

「分からない……何も覚えてないの」

「…………」

  えぇと……あの、どうすれば良いでしょうか?
    
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