麗しの華が咲く奇跡

琉明

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第1章 選ばれし者

第5話 狐面の登場

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桜華の家からだいぶ歩き隣町まで来ていた。

ヨナ 「ね、ねぇ…そろそろ休憩しない?」

柚吹 「そうね ここで休憩にしましょう。」

琉衣 「俺と晶はそこらへん誰かいないか見てくるわ。」

晶 「いってくるね~」

桜華 「ええ、頼んだわ。」

そう言い琉衣と晶は去っていった。

ヨナ 「あの二人なんだかんだで仲いいね。」

柚吹 「そうね。」

桜華 「まぁ、仲がいいほど喧嘩するって言うじゃない。」

ヨナ 「あははっ、そうだね。」

私も柚吹も桜華と少しずつ仲良くなっていくのを感じている。

柚吹 「さて、ここで昼ごはんにする?」

ヨナ 「そうだね、お腹空いちゃった。」

桜華 「魚でも釣る?そこに釣り竿店あるよ。」

柚吹 「そうね、ずっと野菜や芋ばっかりだったものね。」

ヨナ 「でもかってに使っていいのかな。」

桜華 「なによ今さら、どうせ店主は死んだか化け物になってるか…とりあえず帰ってこないから大丈夫よ。」

柚吹 「私が取ってくるわ 二人はここで待ってて。」

桜華 「なら私は火を起こすわ。」

ヨナ 「あ、私は薪になるのを取ってくる。」

柚吹 「そう、よろしくね。」

そう言い柚吹は釣り竿店の方へ歩いて行った。

桜華 「じゃ、いってらっしゃいヨナ あまり遠くに行かないでね。」

ヨナ 「うん、大丈夫。」

私もそう言いこの場を薪を探すため離れる。

木を探していると木製の家がありそこへ入っていった。

ヨナ 「うわぁ…ひどい…」

その家はぺっちゃんこになっていた。
お陰で薪を取りやすいが…

ヨナ 「……ふぅ…こんなもんかな。」

黙々と薪を集め帰ろうとした時ー

琉衣 「うわぁ!」

晶 「な!なにお前!!」

琉衣と晶の叫び声が聞こえた。

ヨナ 「っ!?琉衣!晶!?」

私はすぐに叫び声がした方向へ走った。
だがー私は誰かの足につまずき転んでしまい薪も散らばってしまった。

ヨナ 「っいった…あれ?足?」

その足を辿り上を見ると私と同じオレンジ色の髪色で狐の面をしている女の子が私を見下ろしていた。

ヨナ 「だ、だれ?」

狐の面に戸惑ってしまった。
何故こんなところでお面をしているのか。
それに相手は何も喋らない。

ヨナ 「あ、あなたは…?どこから来たの?」

喋りかけてもやはり喋らない。

ヨナ 「…?言葉わかる…?」

もしかしたら大洪水の後遺症なのかと思い聞いてみる。

ヨナ 「喋れないの…?」

するとー

狐面 「喋れる。」

ヨナ 「あ、ご…ごめんなさい…どうしたの?こんなところで。」

狐面 「…」

ヨナ 「あ、お昼食べた?よければ一緒に食べる?」

私は喋り続けるが狐の面の女の子は何も喋ってくれない。
どうしようかと思い薪を拾い直しながら喋っていると急に人の気配がなくなった。顔を上げると狐の面の女の子は居なくなっていた。

ヨナ 「あれ…?行っちゃったのかな…あ!琉衣と晶 大丈夫かな…!」

琉衣と晶の叫び声の事を思い出し急いで声の方へ向かった。
ー琉衣と晶のところには桜華と柚吹もいた。

ヨナ 「みんな…!」

柚吹 「ヨナ!怪我はない…!?」

ヨナ 「怪我?どうして…?」

柚吹 「琉衣と晶が襲われたの!」

琉衣と晶の方へ目をやると意識が一気に覚める。

晶 「大した怪我じゃないよ。」

琉衣 「ああ、ただの擦り傷だ。」

鉄臭い血の匂いがした。

ヨナ 「なっ…」

これが…大した怪我じゃない…?
琉衣は擦り傷だが晶はお腹のあたりから血が溢れていた。

桜華 「晶、動かないで。」

ヨナ 「どうしたの…これ…」

晶 「襲われたんだよ…」

琉衣 「晶喋んなって…いきなり狐のお面被った女にやられたんだよ。」

ヨナ 「狐の面!?」

柚吹 「どうしたの?」

ヨナ 「さっき琉衣たちの叫び声が聞こえた時 私も狐の面を被った女の子に会ったんだけど…」

琉衣 「なんだと…!?」

晶 「ぐっ…!?がはっ…!」

柚吹 「晶!」

桜華 「同時に違う場所に出るなんて…」

琉衣 「いや、俺らを襲った後すぐに消えた。」

ヨナ 「あ!そういえばその子気配なくいきなり私の所に現れたの!」

柚吹  「なんですって…?」

桜華 「〝瞬間移動能力者〟かしら。」

ヨナ 「瞬間移動…それなら琉衣たちを襲った後すぐに私のところに来れる…」

琉衣 「ああ、だって俺らの時もいきなり現れたんだ 瞬間移動か座標移動以外考えられない。」

晶 「そうだね…仮面の下の顔が見たかったな…っ。」

柚吹 「晶たちの後にすぐにヨナの所に行くなんて計画されていたしか考えられないわ。」

桜華 「狐の面だったからもしかしたらオーガの狐の妖怪だったかもね。」

琉衣 「狐の面だけで妖怪決めかよ…」

柚吹 「もしかしてサラ達の手先!?」

ヨナ 「サラ…!?」

桜華 「他に特徴はなかったの?」

琉衣 「ん~どうだろ…一瞬の出来事だし…」

晶 「髪…」

呼吸を乱しながら晶が喋る。

ヨナ 「髪…髪がどうしたの?」

晶 「ヨナと同じ…オレンジ色だった…っ」

私がみた女の子と同じだ!

ー晶の傷口が…

桜華 「大丈夫、死にはしないわ。」

柚吹 「ヨナと同じ…」

琉衣 「なんか知ってんの?」

柚吹 「いえ、ただオーガにはオレンジ色の髪の人なんてたくさんいるわ。」

ヨナ 「そっか…そうだよね…」

桜華 「…?」

柚吹 「…ただの一般人でしょう…大洪水のせいで精神が不安定になってるかも…」

本当にあの女の子はただの一般人なのだろうか。
精神不安定のようには見えなかったが…。

ヨナ 「そうかもね…可哀想に…」

琉衣 「おい、精神が不安定になってるやつに瞬時にこんなことできるのかよ。」

桜華 「どうかしらね、私にはわからないわ 医者じゃないし。」

晶 「あの女…次会ったら絶対倒す…」

ヨナ 「晶…その前にじっとしてよ…手当てするから…」

起き上がろうとしている晶を止める。

晶 「…ありがと」

晶がふてくされながら私に御礼を呟く。

柚吹 「この襲撃…なにか裏があるのかしら…」

桜華 「そう考えたほうがいいかもね。」

ヨナ 「うん、私もそう思う。」

琉衣 「…柚吹とヨナの妖怪の話はますます真実味がでてきたな。」

ヨナ 「ー…」

晶 「いてっ」

包帯をきつく締めすぎたみたいだ

ヨナ 「ごめん!私…ボーッとしてた…」

柚吹 「大丈夫?顔色悪いけど…少し休んだほうが…」

ヨナ 「大丈夫だよ 気にしないで 」

晶 「ありがと、もういいよ。」

包帯を巻き終わり

ヨナ 「痛くない?」

晶 「ちっとも~」

そう言いながら立ち上がる晶

桜華 「…二人とももういいよね、お昼の支度の途中だったでしょ 。」

柚吹 「そうね  ヨナは晶と一緒にいて薪を燃やしてくれる?」

ヨナ 「わかった、まかせて。」

琉衣 「じゃあ俺はそこに落ちてる釣り竿で魚でも釣ってくる。」

桜華 「私が持ってきたのよ 私は何をすればいいの。」

柚吹 「薪はもうあるし 近くにあるスーパーとかで飲めそうな水とか持ってきてほしいな あとついでになんかあったら食料も。」

桜華 「わかったわ じゃぁ 。」

桜華はスーパーの方へ向かい
琉衣は海へ向かった。

柚吹 「私は…何しようかしら薪は足りるし…」

ヨナ 「歩くのはつかれるし晶も怪我してるから車とかで移動するのはどうかな?」

晶 「いーじゃんそれ。」

柚吹 「でも私運転したことないわ。」

ヨナ 「大丈夫だよ琉衣に任せよ?」

柚吹 「琉衣 運転できるの?」

晶 「あー…そーいや琉衣のやつ運転できるとか自慢してたな~」

ヨナ 「運転してるとこはみたことないんだけどね。」

柚吹 「そう、なら動きそうな車探してくるわ。」

ヨナ 「気おつけて。」

柚吹は海とは別方向の方へ歩いて行った。

晶 「そういえば柚吹 運転できないんだよね、どうやってここまで持ってくるの?」

ヨナ 「あ、そういえば…柚吹!!」

私は大声を出し柚吹を振り向かせる。

柚吹 「なーに!?」

ヨナ 「運転できないならどうやってここまで持ってくるの!!?」

柚吹 「地面に氷をはって!滑らせて持ってくるわ!!」

晶  「なんだちゃんと考えてたんだ。」

ヨナ 「そうだね、よかったよ。」

柚吹は再び私たちに背を向けて歩いて行った。

晶 「でもさっすが妖怪だね~地面に氷をはるなんて人間の能力者には無理だろうね。」

ヨナ 「晶…妖怪って、信じてるの?」

晶 「信じたら駄目なの?」

ヨナ 「駄目ってわけじゃ…」

晶  「君も妖怪でしょ」

ヨナ 「ー…そうかもね。」

晶といろんなことを話していると最初に琉衣が戻ってきた。

晶 「琉衣だ、早かったね。」

ヨナ 「釣れたの?」

琉衣の片手にはバケツがあった。
バケツを覗くと人数分の魚があった。

琉衣 「釣れたから戻ってきたんだっての。」

晶 「へぇ~琉衣 釣りできるんだぁ…」

ヨナ 「大きいの釣れたね。」

琉衣 「当たり前だろーさっそく串に刺して焼こうぜ。」

晶  「塩があったらもっといーんだけどな~」

琉衣 「うるせぇな 文句言うなよ。」

ヨナ 「仕方ないよ。」

桜華 「そう言うと思った ちゃんと塩もってきたわ。」

ヨナ 「桜華! 桜華も早かったね!」

そこには買い物用のカートを引きながらこっちに向かってくる桜華の姿があった。

晶 「塩あるの?」

桜華 「ええ、運良くあってね 塩焼きにと思って。」

琉衣 「桜華ないす!!よかった さっそく塩ふろうぜ!」

桜華 「任せるわ。」

そう言い桜華は琉衣に塩を渡す。

ヨナ 「他には何があるの?」

桜華 「んとね…水に…缶詰に缶詰に…それしかないわ。」

晶 「塩かけすぎないでよ。」

琉衣 「あーもうお前我儘だな!」

その時 とある一部の地面に氷がはられた。

ヨナ 「なにっ!?」

すると向こうの方から車が滑ってき氷がはられていないところで止まった。

晶 「やっと戻ってきたみたいだね。」

柚吹 「私が一番遅かったのね、待たせたわね。」

車の背後からは柚吹が姿を現した。

ヨナ 「柚吹、おかえり!」

桜華 「綺麗なの選んできたんでしょうね。」

柚吹 「当たり前でしょう ヨナを乗せるんだから 琉衣、これ運転できる?」

琉衣 「うん、大丈夫任せといて。」

晶 「ヨナ、悪いけどさばの缶詰あけてくれる?」

ヨナ 「うん、わかった。」

柚吹 「車の中に食料、飲料、毛布を入れといたわ 運良くあったから持ってきたの。」

琉衣 「気がきくじゃん。」

桜華 「私は果物の缶詰がいいわ。」

ヨナ 「あ、じゃあこれだね。」

桜華にミックスフルーツの缶詰を開けて渡す。

桜華 「うん、ありがとうヨナ。」

琉衣 「んーっいい感じに焼けてるじゃん うまいわー。」

ヨナ 「ほんと、おいしいね。」

柚吹 「私、熱いものはあまり食べないから…缶詰にするわ。」

そして皆 食事をすませー

琉衣  「おーい出すぞー早く乗れ。」

ヨナ 「うん、荷物はこれぐらいでいいかな。」

桜華 「まぁ、足りなかったらまたどこかの無事な建物からとればいいのよ。」

晶 「そーそー。」

そして琉衣が車を運転し私たちはまた別の町へ向かった。

柚吹 「早くオーガに帰らないとー…」

ヨナ 「柚吹なにか言った?」

柚吹 「いえ、なんでもないわ。」

私はーいえ、私たちはーこれから来る悲劇をまだ知る由はなかった。
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