ヤンデレ妹にゾンビ♀として死者蘇生されました

ぽんすけ

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第一章 九重蓮ーコルチカムー

6話 妹の能力がハイスペックすぎる

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 火照った顔を冷まそうと、僕がリビングに戻ってきた時だった。ピンポーンとインターホンが鳴り、僕は思わず体をビクッとさせた。

 た、宅配便? しまった! それは予想していなかった!

 今この家には僕しかいない。だけど、この姿で人前に出て大丈夫なのか? 見たこともない他人からすれば、ただの女の子にしか見えないかもしれないが。

 あまり口を開かなければ大丈夫か? でも、もしもということもありうる。

 と、とりあえず、インターホンの画面を見てみよう。もし宅配便でなく、何かのセールスだったら尚更でられない。

 だけど、画面に映っていたのは宅配便の人でもセールスの人でもなかった。

「……っ」

 ほぼ反射的に、僕は唇を噛んでいた。画面越しにいたのは、僕が働いていた会社のクソ上司だった。

 なんであいつが家に!? またも憎きその顔を見ることになり、沸々と怒りが込み上げてくる。

 クソ上司は頭をガシガシと撫で、やがて誰も出てこないから諦めたのか、何かを家のポストに入れ去っていった。何を入れたのか、画面越しからでもチラッと見えた僕は、クソ上司が完全にいなくなってから玄関まで行きポストの中を確認した。そこには、僕のスマホがあった。

 一瞬何で僕のスマホをクソ上司が持っている? と思ったが、すぐに思い出す。僕が死んだあの日、職員室にスマホを置き忘れたまま学校を出てしまったんだ。スマホがないことには気づいていたけど、あの日はもうクソ上司と顔も合わせたくなかったため、次に日に取りに来ようとしていたんだった。

 そのおかげで、スマホだけは電車の衝突被害を免れ無事だった。

 ……………………衝突被害?

 自分で言ったその単語に、何か嫌な予感を覚えた。

 ……そうだ。僕はただ死んだんじゃない。電車へと身投げをしたんだ。それが意味することにたどり着く。



 確か電車の走行を妨げれば、如何なる事由にしろ、損害賠償を負う責任が生まれる。自殺の場合でも、それは変わらないはずだ。

 つまり、僕が死んだ今となっては、その責任を負うのは僕の親族になる。寧は当然損害賠償なんて払えるわけもないのだから、責任を負うとなれば両親の二人しかいない。

 途端に顔が青ざめてくる。

 いくら無意識とはいえ、僕は一番やってはいけない方法で自殺をしてしまったんじゃないか?

 両親と仲が良くないとはいえ、二人に責任を負わせようなんてことは考えたこともなかったのに。

 僕はスマホを手にしたまま、呆然と立ち尽くしてしまった。


 しかし、家に帰ってきた寧が告げた事実で、僕の抱えていた不安は杞憂に終わった。

「それなら大丈夫よ。その責任は、お兄様が生前に勤めていた会社に擦り付けてやったから」

 寧は計画通りというように、愉快気に笑みを浮かべる。

「な、擦り付ける!?」

 とんでもない事実に、僕は思わず聞き返していた。

「もとより悪いのはあいつらよ。お兄様が身投げをしてしまったのは、あいつらがお兄様を精神的にも肉体的にも苦しめ追い詰めたからよ……!」

 寧が苛立ちげに言う。

「だ、だからって、そんな簡単に責任を押し付けるなんてことできるのか?」

 会社側が悪いと立証するのだって簡単じゃないはずだ。それに、クソ上司を含め、僕の職場のやつらは皆狡猾で、隠し事や逃げ口を作るのが上手い。今回だって、あいつらはあらゆる手を使って逃れるだろう。

「ふふっ、あまり寧をなめないでほしいわね、お兄様。あいつらごとき、寧の本気の前では雑魚もいいところだわ」

 寧がまるで怨念をぶつけるかのように語る。

 えっと……もしかして本当にやっちゃったの?

 嬉しいという感情よりも、ただただ呆然としてしまう。そんな呆然とする僕に、寧はさらに衝撃的なことを告げた。

「それだけじゃないわよ。寧のあいつらへの憎しみはこんな程度で済むものじゃない。責任を押し付けた過程で、あいつら全員を会社から追い出してやったわ!」

 …………は? あまりに突飛なことに、口をボカンと開けてしまう。

「そして、寧が学校の管理者の座を奪い取ってやったわ!」
「いやいやいやいや!? 待ってくれ!?」

 さすがにそろそろストップを掛けないと頭が追いつかない。

「あいつらを追い出した? そして寧が学校の最高責任者だって?」
「ふふっ、そうよ」

 嘘のようなことを、寧はサラッと言ってしまう。

 寧は今年16歳になったばかりで、まだ子供だぞ? そんな寧がクソ上司たちを追い出しあげく、学校の最高責任者になっただって? そんなのいくら何でも無茶苦茶だ。

「だからお兄様は難しいことは考えなくていいって言ったでしょ。難しいことや面倒事は、全部寧が片付けてあげる」

 本当に寧は、僕よりも年下の妹なのか? あまりにも現実離れした手回しに、頭を抱えたくなってくる。

「ふふっ。お兄様を苦しめたあいつらは今頃路頭に迷っているでしょうね。とても愉快だわ! お兄様を苦しめた罰としては、まだまだ全然足りないけれど!」

 寧の言う事が本当なら、確かにいい気味ではある。今は素直に喜べそうもないけど。

「……あれ? でも寧は何で学校の管理者になったんだ?」

 学校の管理者はいわば最高責任者だ。つまり学校を運営する立場にある。何のためにそんなことをするんだ?

「ふふっ。ここからが本題ね。お兄様、寧は今から大事なことを言うわ」

 さっきまでの憎しみの感情はなりを潜め、寧は小さくコホンと咳払いをして、その大事なことを告げた。

「お兄様には、これから

 ……………………え?

「はぁぁーーーーーー!?」

 連続に次ぐ連続のとんでも発言を受け、僕は今までにないくらいの声量で叫んでしまった。
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