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エリアナ・ディエムのやり直し
(6)人を排除していた
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12歳を過ぎて入学した学園は、過去に戻る前も六年間通った。
私にとっては二回目の学園生活になるけど、前の時と同じように学園では、私とニアは別々のクラスだった。
前回と同じなら、六年間は一度も同じクラスになることは無いはず。
ニアは、学園でも控えめで大人しい存在だったと思う。
教室の片隅で静かに本を読んで過ごしていた印象しかない。
学園にいた頃はニアとほとんど話していなかったから、正確にはニアがどこで何をしていたのか知らないのかも。
仲の良い友達も知らない。
それで私はどうしてたかと言えば、いくつかあった派閥の中でも、特に華々しいと言える人達の輪の中にいた。
ようするに、高位貴族を中心としたあらゆる序列が上の人達と一緒に行動していた。
先のことなんか考えずに毎日楽しく過ごしていた思い出しかなくて、でも、ニアが控えめな性格になってしまったのも、どう考えてもそこにも原因があるようにしか思えなくて……
家の環境というか、両親以外に何が影響してしまったのか。
こんなことがあったのも覚えている。
ニアは常に学年トップの成績だったけど、両親がニアを褒めたことは一度もなかった。
私の成績が悪いことをニアのせいにする始末で、理不尽極まりなくて、さすがにそれはニアのせいではないでしょと呆れていたけど、私が両親に対して何かを言ったことはなかった。
ニアは、本当に一人で過ごすことが好きだったのかな……
「それでね……エリアナさん、聞いてたかな?」
「あ、ごめんなさい。何?」
教室の自分の席に座って考えごとをしていると、目の前の席にいた女子生徒から話しかけられていたのを忘れていた。
「今度のお茶会に、エリアナさんもどうかなって、私、ぜひ侯爵家の方と仲良くなりたくて」
えっと、この子は確か家柄は子爵家だけど、領地にいくつかの鉱山を抱えている裕福な家の子だ。
柔和な印象を受ける茶色の瞳が、困ったように上の空だった私を見つめていた。
「お茶会……ああ、えっと……」
『貴女の妹さんも一緒にどうかな?ニアさんとも仲良くなりたいの』
『ああ、そんなことしなくていいわ。ニアは人が多い所が苦手だし、それにあの子が来ると場が白けるでしょ?気を使わせたくないわ』
『そんなことは無いと思うけど、ニアさんは人付き合いが苦手なの?』
『そうなの。それに、地味な装いが好きだから、主催する貴女にも迷惑をかけてしまうわ』
ああ……やっていた……
この子にお茶会に誘われた覚えがある。
そして私が、ニアも一緒に誘われていたのに全て断っていたんだ。
思い返せば、ニアと気が合いそうな子とまで会わせないようにしていたのかも。
どうしてそんなことをしてしまったのか。
何となくニアに注目が集まるのが嫌だったからなんじゃないかと、今なら思う。
無意識のうちに、そう思っていたのだと。
自分だけが注目されていないと嫌なのだと。
『あの子には話しかけずにそっとしといてあげて。緊張させてしまったら可哀想だから』
トドメにそう言った。
いくら本当に社交の場が苦手でも、ニアと仲良くなれそうな子との交流の場まで私が握り潰していた。
私があの子の周りから人を排除していた。
ニアにも積極性が無かったと言っても、あの子が孤立する方向に私が仕向けていたようなもので……
「貴女の妹さんも一緒にどうかな?ニアさんとも仲良くなりたいの」
「ニアと相談してもいい?よかったら、お昼を一緒に食べることから始めたら、ニアも参加しやすいと思うの」
「エリアナさんがニアさんを誘ってくれるのなら嬉しい。待ってるね」
目の前の女の子は、そう言って心底嬉しそうに笑ってから前を向いた。
何となくだけど、この子とならニアは仲良くなれるんじゃないかと思っていた。
名前は、確か、ブリジット。
どうやってニアとの関係を改善すればいいのかわからないから、これがきっかけになってくれればいいけど。
だからすぐにでもと思えば、お昼休みになって一緒に昼食を食べようとニアを探しに教室に向かったけど、あの子の姿はどこにもなかった。
クラスの人に尋ねても誰も知らないと言うし、ニアの存在自体を知らない子もいたほどだった。
入学してからの今まで、どれだけ目立たないように過ごしていたのか。
そして、今はどこに行ったのか。
もしかしたら、どこかでオスカーと過ごしているのかな。
そういえば、二つ上の学年にいたオスカーとも交流はなかった。
私は幼い頃から彼のことを知っていたのに、オスカーの話題が周囲から出だしたのは、彼が事業に成功してからだ。
オスカーは学生時代からすでに人を寄せ付けずに、随分と静かに過ごしていたようだった。
ニアを探そうにも学園の敷地は広く、校舎を囲っている頑丈な塀の外側には野外活動用の様々な施設なんかもある。
まさか塀の向こう側に行ったのかと、生徒専用の小さな門を通り抜けて進んでいくと、ボートに乗ることもできる湖が広がっていた。
普段はあまり利用することもないけど、一部の生徒は訓練に使用するとかしないとか。
ここで捜索を諦めて家に帰ってニアに話せばいいのだろうけど、目の前に存在している湖を見て思うことはあって、そこで足を止めていた。
私にとっては二回目の学園生活になるけど、前の時と同じように学園では、私とニアは別々のクラスだった。
前回と同じなら、六年間は一度も同じクラスになることは無いはず。
ニアは、学園でも控えめで大人しい存在だったと思う。
教室の片隅で静かに本を読んで過ごしていた印象しかない。
学園にいた頃はニアとほとんど話していなかったから、正確にはニアがどこで何をしていたのか知らないのかも。
仲の良い友達も知らない。
それで私はどうしてたかと言えば、いくつかあった派閥の中でも、特に華々しいと言える人達の輪の中にいた。
ようするに、高位貴族を中心としたあらゆる序列が上の人達と一緒に行動していた。
先のことなんか考えずに毎日楽しく過ごしていた思い出しかなくて、でも、ニアが控えめな性格になってしまったのも、どう考えてもそこにも原因があるようにしか思えなくて……
家の環境というか、両親以外に何が影響してしまったのか。
こんなことがあったのも覚えている。
ニアは常に学年トップの成績だったけど、両親がニアを褒めたことは一度もなかった。
私の成績が悪いことをニアのせいにする始末で、理不尽極まりなくて、さすがにそれはニアのせいではないでしょと呆れていたけど、私が両親に対して何かを言ったことはなかった。
ニアは、本当に一人で過ごすことが好きだったのかな……
「それでね……エリアナさん、聞いてたかな?」
「あ、ごめんなさい。何?」
教室の自分の席に座って考えごとをしていると、目の前の席にいた女子生徒から話しかけられていたのを忘れていた。
「今度のお茶会に、エリアナさんもどうかなって、私、ぜひ侯爵家の方と仲良くなりたくて」
えっと、この子は確か家柄は子爵家だけど、領地にいくつかの鉱山を抱えている裕福な家の子だ。
柔和な印象を受ける茶色の瞳が、困ったように上の空だった私を見つめていた。
「お茶会……ああ、えっと……」
『貴女の妹さんも一緒にどうかな?ニアさんとも仲良くなりたいの』
『ああ、そんなことしなくていいわ。ニアは人が多い所が苦手だし、それにあの子が来ると場が白けるでしょ?気を使わせたくないわ』
『そんなことは無いと思うけど、ニアさんは人付き合いが苦手なの?』
『そうなの。それに、地味な装いが好きだから、主催する貴女にも迷惑をかけてしまうわ』
ああ……やっていた……
この子にお茶会に誘われた覚えがある。
そして私が、ニアも一緒に誘われていたのに全て断っていたんだ。
思い返せば、ニアと気が合いそうな子とまで会わせないようにしていたのかも。
どうしてそんなことをしてしまったのか。
何となくニアに注目が集まるのが嫌だったからなんじゃないかと、今なら思う。
無意識のうちに、そう思っていたのだと。
自分だけが注目されていないと嫌なのだと。
『あの子には話しかけずにそっとしといてあげて。緊張させてしまったら可哀想だから』
トドメにそう言った。
いくら本当に社交の場が苦手でも、ニアと仲良くなれそうな子との交流の場まで私が握り潰していた。
私があの子の周りから人を排除していた。
ニアにも積極性が無かったと言っても、あの子が孤立する方向に私が仕向けていたようなもので……
「貴女の妹さんも一緒にどうかな?ニアさんとも仲良くなりたいの」
「ニアと相談してもいい?よかったら、お昼を一緒に食べることから始めたら、ニアも参加しやすいと思うの」
「エリアナさんがニアさんを誘ってくれるのなら嬉しい。待ってるね」
目の前の女の子は、そう言って心底嬉しそうに笑ってから前を向いた。
何となくだけど、この子とならニアは仲良くなれるんじゃないかと思っていた。
名前は、確か、ブリジット。
どうやってニアとの関係を改善すればいいのかわからないから、これがきっかけになってくれればいいけど。
だからすぐにでもと思えば、お昼休みになって一緒に昼食を食べようとニアを探しに教室に向かったけど、あの子の姿はどこにもなかった。
クラスの人に尋ねても誰も知らないと言うし、ニアの存在自体を知らない子もいたほどだった。
入学してからの今まで、どれだけ目立たないように過ごしていたのか。
そして、今はどこに行ったのか。
もしかしたら、どこかでオスカーと過ごしているのかな。
そういえば、二つ上の学年にいたオスカーとも交流はなかった。
私は幼い頃から彼のことを知っていたのに、オスカーの話題が周囲から出だしたのは、彼が事業に成功してからだ。
オスカーは学生時代からすでに人を寄せ付けずに、随分と静かに過ごしていたようだった。
ニアを探そうにも学園の敷地は広く、校舎を囲っている頑丈な塀の外側には野外活動用の様々な施設なんかもある。
まさか塀の向こう側に行ったのかと、生徒専用の小さな門を通り抜けて進んでいくと、ボートに乗ることもできる湖が広がっていた。
普段はあまり利用することもないけど、一部の生徒は訓練に使用するとかしないとか。
ここで捜索を諦めて家に帰ってニアに話せばいいのだろうけど、目の前に存在している湖を見て思うことはあって、そこで足を止めていた。
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