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前編
11 平凡な日常が訪れつつある
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家に帰れば、案の定ローザの突撃があった。
でも、予想に反して、
「テオドール様とお話したの。思った通り、とっても素敵な方だったわ!」
胸の前で両手を組んでそう報告してきただけだった。
「じゃあね!お姉様。私、いい子だから、お部屋に戻って静かに過ごすわ」
それだけ言って、ローザは部屋に戻っていった。
なんなんだ。大人し過ぎて気持ち悪い。
まぁ、でも、私が平穏に1日を終えるのならそれでいい。
深く考えないようにして、この日の課題と予習復習を行い、静かな夜を一人で過ごしていた。
いつどこでローザとテオがどんな会話をしていたのかは知らないけど、基本的にテオは暇さえあれば、私の所にいる。
彼が不在になる時は、大抵リュシアン絡みの用事だ。
そして、そんな時を見計らって、他の貴族達から嫌がらせを受ける。
水をかけられるのは可愛いほうで、土や泥が降ってくるのは帰るまでに綺麗にしなければならないから、授業をサボらなければならなかった。
卒業までの辛抱だと、歯をくいしばる。
でも飽きるのも早いのか、そんな嫌がらせは、1ヶ月ほどで鳴りを潜めた。
後は、誰とも話さない静かな毎日だ。
ああ、テオの事を忘れていた。
テオは、毎日飽きもせずに私に構ってくる。
授業中以外は、用事がなければ必ずと言っていいほど私のそばにいる。
邪険にするのも疲れるほどだ。
変な噂がたっても構わないのかと心配したけど、不思議と何か周りから言われる事はなかった。
家に帰っても使用人扱いなのは変わらないが、あの男もローザも私に必要以上に絡んでこなくなった。
ローザの男癖の悪さも表向きは無くなったように見える。
拍子抜けするほど、穏やかな日々が続いていた。
「それ、面白いか?」
中庭のベンチに座る私の手元を遠慮なく覗き込んで、読書の邪魔をされる。
あとはテオが私の存在を無視してくれたら完璧なのに。
「別に。面白くて読んでるわけじゃない」
読む本がこれしかないから、読んでいるだけだ。
同じ本ばかりずっと眺めているから、内容はとっくに覚えてしまっている。
「図書室で別のものでも借りたらどうだ?」
「余計なお世話」
うっかり泥でもかけられたら、弁償なんかできない。
「ふーん。じゃあ、明日俺んちのオススメでも持ってきてやるよ」
「はぁ?別にいらないし」
「面白い本があれば、いくら俺がいたって気にならないだろ?」
「確かにそうだけど……」
なんか、テオに丸め込まれてないか?
「よし、じゃあ明日な。楽しみに待ってろよ」
宣戦布告するように私に言い放ち、そして翌日に私に持ってきてくれたものは、テオがオススメするミステリーというジャンルのものだった。
「これは俺の私物だから、破れても汚れても気にするな」
そう言われて差し出された本を受け取る。
何も考えずに、警戒せずに受け取ってしまったものだから、その光景が頭の中に流れてきて焦った。
テオが自室らしき部屋の本棚の前で、腕組みをして真剣に本を選んでいる光景だ。
そして厳選した上で取り出したのが、この本だった。
そこまで真剣に選んでくれたものならと、いつもの中庭のベンチに腰掛けて本を開く。
推理小説と言うものを初めて読んだけど、謎を少しずつ紐解いていくところが、私を虜にしていた。
どうやらテオの策にはまってしまったらしい。
隣でテオが飽きもせずに私を眺めているのも気にせず、時間が許す限りそこでその本を読んでいたのだから。
そしてそれが学園での、毎日の光景、日常になっていった。
こんな日々を過ごす事になるだなんて、少し前の私は想像すらできなかった事だ。
でも、予想に反して、
「テオドール様とお話したの。思った通り、とっても素敵な方だったわ!」
胸の前で両手を組んでそう報告してきただけだった。
「じゃあね!お姉様。私、いい子だから、お部屋に戻って静かに過ごすわ」
それだけ言って、ローザは部屋に戻っていった。
なんなんだ。大人し過ぎて気持ち悪い。
まぁ、でも、私が平穏に1日を終えるのならそれでいい。
深く考えないようにして、この日の課題と予習復習を行い、静かな夜を一人で過ごしていた。
いつどこでローザとテオがどんな会話をしていたのかは知らないけど、基本的にテオは暇さえあれば、私の所にいる。
彼が不在になる時は、大抵リュシアン絡みの用事だ。
そして、そんな時を見計らって、他の貴族達から嫌がらせを受ける。
水をかけられるのは可愛いほうで、土や泥が降ってくるのは帰るまでに綺麗にしなければならないから、授業をサボらなければならなかった。
卒業までの辛抱だと、歯をくいしばる。
でも飽きるのも早いのか、そんな嫌がらせは、1ヶ月ほどで鳴りを潜めた。
後は、誰とも話さない静かな毎日だ。
ああ、テオの事を忘れていた。
テオは、毎日飽きもせずに私に構ってくる。
授業中以外は、用事がなければ必ずと言っていいほど私のそばにいる。
邪険にするのも疲れるほどだ。
変な噂がたっても構わないのかと心配したけど、不思議と何か周りから言われる事はなかった。
家に帰っても使用人扱いなのは変わらないが、あの男もローザも私に必要以上に絡んでこなくなった。
ローザの男癖の悪さも表向きは無くなったように見える。
拍子抜けするほど、穏やかな日々が続いていた。
「それ、面白いか?」
中庭のベンチに座る私の手元を遠慮なく覗き込んで、読書の邪魔をされる。
あとはテオが私の存在を無視してくれたら完璧なのに。
「別に。面白くて読んでるわけじゃない」
読む本がこれしかないから、読んでいるだけだ。
同じ本ばかりずっと眺めているから、内容はとっくに覚えてしまっている。
「図書室で別のものでも借りたらどうだ?」
「余計なお世話」
うっかり泥でもかけられたら、弁償なんかできない。
「ふーん。じゃあ、明日俺んちのオススメでも持ってきてやるよ」
「はぁ?別にいらないし」
「面白い本があれば、いくら俺がいたって気にならないだろ?」
「確かにそうだけど……」
なんか、テオに丸め込まれてないか?
「よし、じゃあ明日な。楽しみに待ってろよ」
宣戦布告するように私に言い放ち、そして翌日に私に持ってきてくれたものは、テオがオススメするミステリーというジャンルのものだった。
「これは俺の私物だから、破れても汚れても気にするな」
そう言われて差し出された本を受け取る。
何も考えずに、警戒せずに受け取ってしまったものだから、その光景が頭の中に流れてきて焦った。
テオが自室らしき部屋の本棚の前で、腕組みをして真剣に本を選んでいる光景だ。
そして厳選した上で取り出したのが、この本だった。
そこまで真剣に選んでくれたものならと、いつもの中庭のベンチに腰掛けて本を開く。
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どうやらテオの策にはまってしまったらしい。
隣でテオが飽きもせずに私を眺めているのも気にせず、時間が許す限りそこでその本を読んでいたのだから。
そしてそれが学園での、毎日の光景、日常になっていった。
こんな日々を過ごす事になるだなんて、少し前の私は想像すらできなかった事だ。
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