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前編
10 最初の試験
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入学から程なくして、学力をはかるための試験が行われた。
自力で挑まないといけない私は苦戦を強いられたけど、何とか善戦できた私は偉い。
後日、試験結果が張り出され、テオに誘われたからそれを見に行った。
1位はリュシアン。
2位は意外にもテオだった。
努力しているのは、本当らしい。
私は無難なところだが、ローザは5位だった。女生徒のトップだ。
いい点を取っても、悪い点を取っても、どうせあの男には嫌味しか言われない。嫌味で済めばいい方だ。
「へぇー。キーラも成績いいんだな」
「バカにしているの?」
隣に立つテオが、貼り出されたものを眺めて言うけど、
「いや、俺はそれなりにいい家庭教師がついてるけど、キーラは自力でだろ?」
妹には、みっちりと教師がついているけど、私に出すお金はもったいないらしい。机にかじりついて、独学でやらなければならない。
そんな会話をしていると、結果が張り出されている場が騒がしくなった。
見なくても分かる。リュシアンが来たんだ。
「私、先に行ってるから」
リュシアンの視界に入らないうちに、その場を退散しないと、何の厄介ごとに巻き込まれるか分からない。
「俺も行くよ。昼飯にするんだろ?」
「ついてこなくていい!」
そんな問答をしていると、
「テオドール」
その場に良く通る、聴き心地のいい声が響いていた。
私は退散し損ねたらしい。
リュシアンの横にはローザもいて、しきりにテオの顔を見ている。
テオの影に隠れて、頭を少し下げた。
「あ。貴女は、キーラ?ローザの姉君の」
「姉君と呼んでもらえるほどの、殿下の面前に立てるほどの身分ではありません」
頭を下げたまま伝えると、テオの方から盛大なため息をつかれた。
「リュシアン、学年一位おめでとう。今から食事だから、また後でな」
「あ、ああ。呼び止めてすまない、テオドール」
テオは、私の腕を引いてさっさとその場から連れ出してくれる。
「そこまで卑屈になる必要はないだろ」
「貴方は何も知らないからそんなことが言えるのよ。王子と話していたなんて、家にバレたら何を言われるか分からない」
何をされるのかも。
最近こそされなくなったけど、また血が飛び散るほど鞭打たれるのはごめんだ。
「そうなんだな……」
テオは、顔を強ばらせて返答してきた。私の苦労も分かれよ。
プイッと、顔を背けて食堂へ足早に向かう。
ローザにテオといるところを見られたから、また家に帰れば何か言われるかも。めんどくさい。
イライラしながらカウンターで今日のランチを受け取って、隅の方のテーブルへ向かった。
テオは懲りずについてくる。
席につくと、テオも自分の食事をテーブルに置いて私の向かいに座った。
「キーラの妹、めんどくさい奴だな」
「は?何か話しかけられたの?あの子、貴方に興味があるそうだから適当に相手をしてあげてよ。王太子様の側近候補に興味がおありのようよ」
八つ当たりのようにパンをちぎって口にいれる。
まともな食事にありつける大事な栄養補給の場だ。どんなにイラついても、ちゃんと食べなければ、いつまた食事に困る日がくるかわからない。
また食堂内がざわついたからチラッと見ると、リュシアンとローザと数人の取り巻きが王族専用席へ向かうところだった。
また、ローザはこちらを、テオを見ている。
もういい。こうなったら、開き直ってやる。
「俺の果物分けてやるから、機嫌直せよ」
「無理。でも、それは貰う」
テオのお皿のリンゴをフォークに刺して、口にいれる。
そういえば、テオといると胃が満たされる事が多いなと思いながら食事を終えて、ローザができるだけ視界に入らないようにしながら教室へ戻った。
視界の隅では、王族専用席で当たり前のように給仕を受けているローザの姿と、締まりのない顔でそれを見る取り巻きと、穏やかな顔でその場に静かに居るリュシアンが映っていた。
自力で挑まないといけない私は苦戦を強いられたけど、何とか善戦できた私は偉い。
後日、試験結果が張り出され、テオに誘われたからそれを見に行った。
1位はリュシアン。
2位は意外にもテオだった。
努力しているのは、本当らしい。
私は無難なところだが、ローザは5位だった。女生徒のトップだ。
いい点を取っても、悪い点を取っても、どうせあの男には嫌味しか言われない。嫌味で済めばいい方だ。
「へぇー。キーラも成績いいんだな」
「バカにしているの?」
隣に立つテオが、貼り出されたものを眺めて言うけど、
「いや、俺はそれなりにいい家庭教師がついてるけど、キーラは自力でだろ?」
妹には、みっちりと教師がついているけど、私に出すお金はもったいないらしい。机にかじりついて、独学でやらなければならない。
そんな会話をしていると、結果が張り出されている場が騒がしくなった。
見なくても分かる。リュシアンが来たんだ。
「私、先に行ってるから」
リュシアンの視界に入らないうちに、その場を退散しないと、何の厄介ごとに巻き込まれるか分からない。
「俺も行くよ。昼飯にするんだろ?」
「ついてこなくていい!」
そんな問答をしていると、
「テオドール」
その場に良く通る、聴き心地のいい声が響いていた。
私は退散し損ねたらしい。
リュシアンの横にはローザもいて、しきりにテオの顔を見ている。
テオの影に隠れて、頭を少し下げた。
「あ。貴女は、キーラ?ローザの姉君の」
「姉君と呼んでもらえるほどの、殿下の面前に立てるほどの身分ではありません」
頭を下げたまま伝えると、テオの方から盛大なため息をつかれた。
「リュシアン、学年一位おめでとう。今から食事だから、また後でな」
「あ、ああ。呼び止めてすまない、テオドール」
テオは、私の腕を引いてさっさとその場から連れ出してくれる。
「そこまで卑屈になる必要はないだろ」
「貴方は何も知らないからそんなことが言えるのよ。王子と話していたなんて、家にバレたら何を言われるか分からない」
何をされるのかも。
最近こそされなくなったけど、また血が飛び散るほど鞭打たれるのはごめんだ。
「そうなんだな……」
テオは、顔を強ばらせて返答してきた。私の苦労も分かれよ。
プイッと、顔を背けて食堂へ足早に向かう。
ローザにテオといるところを見られたから、また家に帰れば何か言われるかも。めんどくさい。
イライラしながらカウンターで今日のランチを受け取って、隅の方のテーブルへ向かった。
テオは懲りずについてくる。
席につくと、テオも自分の食事をテーブルに置いて私の向かいに座った。
「キーラの妹、めんどくさい奴だな」
「は?何か話しかけられたの?あの子、貴方に興味があるそうだから適当に相手をしてあげてよ。王太子様の側近候補に興味がおありのようよ」
八つ当たりのようにパンをちぎって口にいれる。
まともな食事にありつける大事な栄養補給の場だ。どんなにイラついても、ちゃんと食べなければ、いつまた食事に困る日がくるかわからない。
また食堂内がざわついたからチラッと見ると、リュシアンとローザと数人の取り巻きが王族専用席へ向かうところだった。
また、ローザはこちらを、テオを見ている。
もういい。こうなったら、開き直ってやる。
「俺の果物分けてやるから、機嫌直せよ」
「無理。でも、それは貰う」
テオのお皿のリンゴをフォークに刺して、口にいれる。
そういえば、テオといると胃が満たされる事が多いなと思いながら食事を終えて、ローザができるだけ視界に入らないようにしながら教室へ戻った。
視界の隅では、王族専用席で当たり前のように給仕を受けているローザの姿と、締まりのない顔でそれを見る取り巻きと、穏やかな顔でその場に静かに居るリュシアンが映っていた。
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