上 下
7 / 45
前編

7 ギフト

しおりを挟む
 この国、ディバロ王国の成り立ちは、聖獣との契約から始まる。

 この地を住処とした聖獣との契約により、王家の血筋には必ず三人の能力者、ギフトを持ったものが生まれてくる。

 今までの歴史の中で、ギフトを持ったものが生まれてくるのは、王家の直系とは限らなかった。傍系であったこともある。

 聖獣は争いを好まないから、そのギフトをもった三人が国にとどまり、その地を守り、治める事によって、聖獣の加護が防護壁を作ってくれていた。

 三人が国内にいなければ、防護壁は形を成さない。

 だから、ギフトを持った者が王になるか、要職に就くことが多い。

 ギフトの能力の中には、そこにその人がいるだけで作物が最高の状態に育つなど、過去にはそんな分かりにくいギフトもあったそうだ。

 あの女達の過去の出来事を視て名前だけは知っていたけど、ギフトの事を詳しく知ったのは、学園に入学する少し前。家の蔵書を読む事が許されてからだ。

 今、ギフトを所持している事が判明しているのは、国王ただ一人。

 二人は見つかっていないとされている。

 王家は、国は、ギフト所持者を探している。

 私はそのギフトを持っている。

 でも、誰にも言うつもりはない。

 最初は、これが何なのか理解できなかった。

 何かに触れた時に、突然見える光景。

 人に接する機会が少なかったから、最初にそれを視たのは、食器を触った時だった。

 それを運んできたであろう使用人の、過去、そして今から起こる事がはっきりと脳裏に映し出されていた。

 その使用人は、公爵家の物を度々盗み出しては、お金に換えるような人だった。

 だから、それが見つかって、問いただされて、咄嗟に逃げ出して屋敷の外に飛び出し、直後に馬車に轢かれて血まみれで横たわっているところまでが視えた。

 初めて、人の運命を視た瞬間だった。

 それを視た後、実際にその通りになった。

 轢かれたその使用人がどこかへと運ばれて行くのを、カーテンに隠れて見ていた。

 その使用人に対しては何も思わなかったけど、自分に何が起きているのかその時は戸惑ったものだ。

 それから、誰かが触ったものに触れた時に、その誰かの過去や未来が時々視えるようになった。いつもではないし、自分ではコントロールできないから役に立つのか立たないのか分からない。

 何にせよ、それがギフトの能力だと分かって、私がギフト持ちだと分かって、愉快でたまらなかった。

 無力で小さな自分が、国を脅かす存在になれるのだから。

 これで、あの男とあの女に復讐ができる。

 私はこの学園を卒業したら、この国を出て行く。

 その瞬間が今から楽しみで仕方がない。

 防護壁が消えた瞬間のあいつらの顔を見れないのが残念だ。

 あの妹も、他の人達も、混乱の中で絶望すればいい。

 知るはずもない事を私が知っていると、あの男だけは、私がギフト持ちの可能性があると薄々気づいているのに。

 あの男は散々私を虐待してきた。今更私をギフト所持者だと認めたくもないのだ。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。

風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。 ※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。

【完結】はいはい、魅了持ちが通りますよ。面倒ごとに巻き込まれないようにサングラスとマスクで自衛しているのに不審者好き王子に粘着されて困ってる

堀 和三盆
恋愛
「はいはい、魅了持ちが通りますよー」  休憩時間、トイレからの帰り道。教室の入り口にたむろしている男子生徒に一声かけてから前を通る。手の平をぴんと伸ばし上下に揺らしながら周囲に警戒を促すのも忘れない。 「あはは、押すなよー。あ、うわっ!」  トン☆  それでも。ここまで注意しても事故は起こる。話に夢中になっていたクラスメイトの一人がよろけて私にぶつかってしまった。 「悪ぃ、悪ぃ……げっ! アイリーンじゃん! 気を付けろよなー、俺、まだ婚約すらしてないのに」 「あれれ? 惚れちゃった? んじゃ、特別サービス『魅了ウイ~ンク☆』! ……どう? 魅了されちゃった??」 「されるかっ! サングラスで瞬きすら見えねえっつうの! サングラスにマスクの不審者令嬢なんかに魅了なんてされねーよ!!」  ド……っとクラスに笑いが起きる。  よし! 私の防御は今日も完璧のようだ。  私は強度の魅了持ち。面倒ごとに巻き込まれないようにとサングラスにマスクで魅了スキルを打ち消して自衛しているのに、不審者好きの王子が熱烈に告白してくるようになった。いや、どうすんだこれ……。

裏切りの公爵令嬢は処刑台で笑う

千 遊雲
恋愛
公爵家令嬢のセルディナ・マクバーレンは咎人である。 彼女は奴隷の魔物に唆され、国を裏切った。投獄された彼女は牢獄の中でも奴隷の男の名を呼んでいたが、処刑台に立たされた彼女を助けようとする者は居なかった。 哀れな彼女はそれでも笑った。英雄とも裏切り者とも呼ばれる彼女の笑みの理由とは? 【現在更新中の「毒殺未遂三昧だった私が王子様の婚約者? 申し訳ありませんが、その令嬢はもう死にました」の元ネタのようなものです】

幼稚な貴方と婚約解消したい。

ひづき
恋愛
婚約者の浮気癖にブチ切れて暴れたら相手が記憶喪失になって口説いてくる。 婚約解消して欲しい!破棄でも可!

愛を語れない関係【完結】

迷い人
恋愛
 婚約者の魔導師ウィル・グランビルは愛すべき義妹メアリーのために、私ソフィラの全てを奪おうとした。 家族が私のために作ってくれた魔道具まで……。  そして、時が戻った。  だから、もう、何も渡すものか……そう決意した。

悲劇の令嬢を救いたい、ですか。忠告はしましたので、あとはお好きにどうぞ。

ふまさ
恋愛
「──馬鹿馬鹿しい。何だ、この調査報告書は」  ぱさっ。  伯爵令息であるパーシーは、テーブルに三枚に束ねられた紙をほうった。向かい側に座る伯爵令嬢のカーラは、静かに口を開いた。 「きちんと目は通してもらえましたか?」 「むろんだ。そのうえで、もう一度言わせてもらうよ。馬鹿馬鹿しい、とね。そもそもどうして、きみは探偵なんか雇ってまで、こんなことをしたんだ?」  ざわざわ。ざわざわ。  王都内でも評判のカフェ。昼時のいまは、客で溢れかえっている。 「──女のカン、というやつでしょうか」 「何だ、それは。素直に言ったら少しは可愛げがあるのに」 「素直、とは」 「婚約者のぼくに、きみだけを見てほしいから、こんなことをしました、とかね」  カーラは一つため息をつき、確認するようにもう一度訊ねた。 「きちんとその調査報告書に目を通されたうえで、あなたはわたしの言っていることを馬鹿馬鹿しいと、信じないというのですね?」 「き、きみを馬鹿馬鹿しいとは言ってないし、きみを信じていないわけじゃない。でも、これは……」  カーラは「わかりました」と、調査報告書を手に取り、カバンにしまった。 「それではどうぞ、お好きになさいませ」

王子は婚約破棄を泣いて詫びる

tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。 目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。 「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」 存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。  王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。

[完結]「私が婚約者だったはずなのに」愛する人が別の人と婚約するとしたら〜恋する二人を切り裂く政略結婚の行方は〜

日向はび
恋愛
王子グレンの婚約者候補であったはずのルーラ。互いに想いあう二人だったが、政略結婚によりグレンは隣国の王女と結婚することになる。そしてルーラもまた別の人と婚約することに……。「将来僕のお嫁さんになって」そんな約束を記憶の奥にしまいこんで、二人は国のために自らの心を犠牲にしようとしていた。ある日、隣国の王女に関する重大な秘密を知ってしまったルーラは、一人真実を解明するために動き出す。「国のためと言いながら、本当はグレン様を取られたくなだけなのかもしれないの」「国のためと言いながら、彼女を俺のものにしたくて抗っているみたいだ」 二人は再び手を取り合うことができるのか……。 全23話で完結(すでに完結済みで投稿しています)

処理中です...