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エカチェリーナ *バッドエンド注意
11 魔女の癒し
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張り切るのは最初だけだと思ったけど、王子はその後もよく働いた。
お昼になると、パンに具材を挟んだ簡単な食事まで用意してくれて、さすがに働かせすぎたと思って、お昼を過ぎると家でゆっくりする事を勧めた。
私だって不眠不休の労働をさせたいわけではない。
ゆっくりさせると言っても家に暇潰しになるような娯楽があるわけではないので、庭先にあるお風呂に入るように促した。
天然の小さな温泉で、私が水質も管理している場所だ。
王子はそこが気に入ったのか、しばらく戻ってこなかった。
溺れてないか心配するくらいには、ゆっくりできていたようだ。
「エカチェリーナさん。お風呂、ありがとうございました」
戻ってきた王子を見た。
ホカホカと頭から湯気が立っていた。
「王子、ちょっとこっち来て」
「はい」
王子の首にかけてあったタオルを取ると、
「わっ」
拭きがたりない頭を、ゴシゴシとこすった。
髪質の維持としてはこの拭き方はダメだろうけど、まだまだ寒さが残るこの時期に体調をこれ以上悪くされては困る。
そう言えば、王都に比べて今朝は随分と寒かったと思うけど王子は泣き言を言わなかった。
痩せ我慢かな。
面倒だとしても、王子がここにいる目的は健康を取り戻すため。
「労働の後の温泉は気持ち良かった?」
「はい!あれはオンセンって呼ぶのですね。地面からお湯が湧き出て、不思議で、面白くて、心地良くて」
ここでの生活が自然と王子の療養となるのなら、一石二鳥だけど。
「じゃあ、私も入ってくるので、王子はここから動かないこと」
「はい……?…………あ!」
返事をしながら少しだけ何かを考えていた王子は、答えに行き着いて顔を真っ赤にしていた。
屋外の温泉は、この部屋の窓から見える。
今までは私一人しかいなかったから、別に造りはどうでもよかった。
「動きません!見ません!目をつぶっています!」
その言葉の通り、私が部屋に戻ってくるまで、王子はクッションを頭から被ってソファーに突っ伏していた。
そして、どうやらそのまま寝てしまったようだった。
ソッとクッションをどかすと、すーすーと静かな寝息を立てていた。
随分と穏やかな顔で寝ている。
二日目にして、早くも順応したみたいだ。
久しぶりの安眠なのだろうけど、もう少し警戒心を保って欲しいものだ。
まぁ、子供なのだから仕方がないか。
万が一ソファーから落ちてもいいように、余っているクッションをいくつか床に並べて、王子には毛布をかける。
私も作業をする為に自分の部屋に入った。
これからの事は、まぁ、なるようになるでしょう。
それから私は窓にカーテンを付ける為に慣れない縫い物をして、王子が昼寝から目覚める頃には完成していた。
多少の不恰好は目を瞑る。
「あの、えっと、エカチェリーナさん、寝てて、ごめんなさい。何か僕が手伝える事はありますか?」
王子は惰眠を貪っていたと罪悪感を抱いているようだけど、私は特に気にしていなかった。
「別にいいよ。あなたが元気になって早く城に帰ってくれるのが私にとっては一番のことだから」
カーテンを取り付け終えて王子の方を向くと、何故かとても落ち込んでいるようだった。
私が城から去る事を聞いた時と同じ顔をしている。
私の言葉が嫌味に聞こえたのかもしれない。
「でも、君がいる間は美味しい食事が食べられるから、夕食も楽しみにしてるね」
それを付け加えると、パッと顔を上げて満面の笑みを浮かべていた。
「エカチェリーナさんに喜んでもらえるように頑張ります!本棚にある料理の本を読ませてもらってもいいですか?」
王子はとても単純でわかりやすかった。
つまり、扱いやすいということだ。
「本は好きに読んでいいよ。学院に入るための勉強も必要だろうから、必要なものがあったら言って。今度町に調達に行こう」
「ありがとうございます!」
ご機嫌な様子で料理本を手に取る王子を眺めて、有能な子犬がうちに来たと思えばいいかと自分の中での妥協点を見つけていた。
お昼になると、パンに具材を挟んだ簡単な食事まで用意してくれて、さすがに働かせすぎたと思って、お昼を過ぎると家でゆっくりする事を勧めた。
私だって不眠不休の労働をさせたいわけではない。
ゆっくりさせると言っても家に暇潰しになるような娯楽があるわけではないので、庭先にあるお風呂に入るように促した。
天然の小さな温泉で、私が水質も管理している場所だ。
王子はそこが気に入ったのか、しばらく戻ってこなかった。
溺れてないか心配するくらいには、ゆっくりできていたようだ。
「エカチェリーナさん。お風呂、ありがとうございました」
戻ってきた王子を見た。
ホカホカと頭から湯気が立っていた。
「王子、ちょっとこっち来て」
「はい」
王子の首にかけてあったタオルを取ると、
「わっ」
拭きがたりない頭を、ゴシゴシとこすった。
髪質の維持としてはこの拭き方はダメだろうけど、まだまだ寒さが残るこの時期に体調をこれ以上悪くされては困る。
そう言えば、王都に比べて今朝は随分と寒かったと思うけど王子は泣き言を言わなかった。
痩せ我慢かな。
面倒だとしても、王子がここにいる目的は健康を取り戻すため。
「労働の後の温泉は気持ち良かった?」
「はい!あれはオンセンって呼ぶのですね。地面からお湯が湧き出て、不思議で、面白くて、心地良くて」
ここでの生活が自然と王子の療養となるのなら、一石二鳥だけど。
「じゃあ、私も入ってくるので、王子はここから動かないこと」
「はい……?…………あ!」
返事をしながら少しだけ何かを考えていた王子は、答えに行き着いて顔を真っ赤にしていた。
屋外の温泉は、この部屋の窓から見える。
今までは私一人しかいなかったから、別に造りはどうでもよかった。
「動きません!見ません!目をつぶっています!」
その言葉の通り、私が部屋に戻ってくるまで、王子はクッションを頭から被ってソファーに突っ伏していた。
そして、どうやらそのまま寝てしまったようだった。
ソッとクッションをどかすと、すーすーと静かな寝息を立てていた。
随分と穏やかな顔で寝ている。
二日目にして、早くも順応したみたいだ。
久しぶりの安眠なのだろうけど、もう少し警戒心を保って欲しいものだ。
まぁ、子供なのだから仕方がないか。
万が一ソファーから落ちてもいいように、余っているクッションをいくつか床に並べて、王子には毛布をかける。
私も作業をする為に自分の部屋に入った。
これからの事は、まぁ、なるようになるでしょう。
それから私は窓にカーテンを付ける為に慣れない縫い物をして、王子が昼寝から目覚める頃には完成していた。
多少の不恰好は目を瞑る。
「あの、えっと、エカチェリーナさん、寝てて、ごめんなさい。何か僕が手伝える事はありますか?」
王子は惰眠を貪っていたと罪悪感を抱いているようだけど、私は特に気にしていなかった。
「別にいいよ。あなたが元気になって早く城に帰ってくれるのが私にとっては一番のことだから」
カーテンを取り付け終えて王子の方を向くと、何故かとても落ち込んでいるようだった。
私が城から去る事を聞いた時と同じ顔をしている。
私の言葉が嫌味に聞こえたのかもしれない。
「でも、君がいる間は美味しい食事が食べられるから、夕食も楽しみにしてるね」
それを付け加えると、パッと顔を上げて満面の笑みを浮かべていた。
「エカチェリーナさんに喜んでもらえるように頑張ります!本棚にある料理の本を読ませてもらってもいいですか?」
王子はとても単純でわかりやすかった。
つまり、扱いやすいということだ。
「本は好きに読んでいいよ。学院に入るための勉強も必要だろうから、必要なものがあったら言って。今度町に調達に行こう」
「ありがとうございます!」
ご機嫌な様子で料理本を手に取る王子を眺めて、有能な子犬がうちに来たと思えばいいかと自分の中での妥協点を見つけていた。
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