ホタルとケイのオレンジ

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1.ホタルとケイ

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9月20日火曜日、秋。家のドアをあけると、夏の暑さが玄関を包む。天気は晴天、夏を思わせるほど鋭い光、そして風が吹かないためムシムシしている。

   (あー小籠包は蒸されている時こんな気持ちなのか、これから小籠包食べる時少し早めに蓋を開けてあげよう。)

     立川螢はそんなことを考えながら、県立采玲高校への通学路を歩く。この暑さにやられて足取りは重い。
      
     額からの汗が目に入り視界が霞む。汗だらけの腕で目をこする。かすみ方にあまり変わりはない。暑い、とにかく暑い。通学路には、同じようにだるそうに歩く生徒が多く見られた。多くの女生徒はハンディ扇風機をもち、顔に風を当てている。そんなことを考えているうちに、螢は十字路にさしかかった。

  「立川く、、、ほーたーるっ!!」
                                                          
   十字路の右側から、クラスメイトの佐藤恵ーケイーがショートカットの髪をなびかせながら、螢にむかって走ってくる。

   恵は采玲高校の制服をスカートの裾を上げたり、男子用のネクタイをつけていたりと、かなり気崩している。でも頭はよく成績もいいため、先生から軽い注意程度で済まされている。バレー部。こんな暑い中でも恵を見てると、不思議な気持ちになる。
  
  「恵、朝から五月蝿い。」

   恵に悟られないよう、精一杯いつも通りを演じる。

「相も変わらず螢は、冷めてるなあ。」

 「僕が冷めてるんじゃなくて、恵が明るすぎるだけ、恵のせいで小籠包の気持ちが分からなくなってしまったじゃないか。」

「小籠包?」

「それより5限目の英語の課題写させて。」

「ジュース1本ね」

「なんでだよ。」

   校門に着いた時恵は女友達の羽田透を見つけたようで、小走りで向かっていく。
   
     羽田は僕のクラスメイトで、恵とは1年の頃から同じクラスでかなりのお節介焼き。恵の事が好きで、いつもいる僕を少し、いや、かなり目の敵にしている。その割には僕と恵の事を螢のケイと、恵でケイケイコンビなんていってからかってくる。正直クラスが始まって半年ほど経つけど正直どんな人なのか未だによく分かっていない。

  「じゃあ螢、また教室で!」
 
    僕は手を上げて応える。

    恵の友達は恵と僕を交互に見て、好奇の目を向ける。

     この目にはもう慣れた。恵は案外モテる、一方の僕は冴えない。そんな2人が一緒に登校したり、休みの日に遊びに行ったりすると、大抵の人は、驚いた後に好奇の目を向けてくる。

   「チミ達はいつもラブラブだねぇ~」

「もう!螢とはそんなんじゃないよ!」

「ほんとかなぁ~?」

  本当だよ。恵は、凄いやつなんだ。僕なんかが付き合った所で釣り合わない。恵に釣り合うのは、5年間くらい生徒会長を務めた人くらいだ。まあ、そんな人がいるなら目の前に連れてきて欲しい。
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