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4 自己紹介とメルからの申し出

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真剣な顔で長い事スマホ画面に見入る美少女。

放っておいたらいつまでも見ていそうな感じだったので、ちょっぴり淋しくなった俺は声を掛けてみた。


「あの~、俺、冬瑠とおるって名前なんだけど、君の名前聞いてもいい?」


美少女は、はっと我に返った様子で、俺の方に顔を向けた。


「ごめんなさい、私ったら自己紹介をしていなかったわね」


彼女は座ったまま背筋を正し、丁寧な口調で自己紹介し始めた。



「私の名前はメラニエ・マリア・ラベンダー。ラベンダー家の末の娘です。もうすぐ16歳になるわ」



「メラニエ……マリア……」


「メルと呼んでちょうだい」


「メル」


「ええ、メルよ」


にっこりと微笑む美少女--メルにつられて俺も笑顔になる。


(やっぱ、可愛い~)


ちょっとの間へらへらしていたが、いかん、にやけてる場合じゃないと気付く。

俺も背筋を正し、自己紹介し直した。


「俺の名前はせり 冬瑠とおる。ええと、兄貴と妹がいる。高2で、俺も16歳。です」


クラスの自己紹介を思い出し、急に緊張する。俺はあれが苦手なのだ。


「せりと……る……」


復唱しようとするメル。


「あっ、せりがファミリーネームなんだ。冬瑠とおるでいいよ、とおる」


「と……ーる? とーる、 トールね」


英語のTALLのアクセントになっている。 アクセントが違っても呼びやすいなら別にいいや。


「トール、私たち同い年なのね。ところで『こうに』というのは職業かしら?」


「職業!? いや、高校生。高校の2年て事で……。え~と、学校なんだけど、にはそういうのないかな?」


『ここ』っていうのは『夢の世界』って意味だったんだけど、そんなことメルにはもちろん分からない。
よし、俺はどこかの国から来た旅人。そういう設定にしようと今決めた。


「学校……、いいわね。私も寄宿学校に通いたかったのだけど、ラベンダー家の子供は皆家庭教師をつけられて、家で勉強するの。ラベンダー家では代々そうするものだとお父様がおっしゃるのよ」  


メルは格式高い家のお嬢様のようだ。
どうりで話し方や、立ち居振る舞いから上品さがにじみ出ている。
ーー木の上で寝ていたのはお嬢様っぽくないが、何か事情があったのだろうーー


メルは話を続ける。


「家で勉強するのが嫌というわけではないの。家庭教師に習うやりかただと、質問する時、他の子の邪魔をしないか気にしなくていいし、自分に合ったペースで学習を進めていけるのも良い面だと思うわ」


(勉強好きなんだな~)

俺は勉強やらテストやらを、しなくていいならしたくないので、メルの勉強に対する真面目な発言に感心する。

 
「でもね……」


ため息をつくメル。


「家ではお友達が出来ないから、それが淋しいわ」


こう言ってから憂い顔で目を伏せるメルを見て、俺は思った。


(まつげ長っ)


メルは突如顔を上げて、俺の方を見た。
俺は、メルが真剣な話をしてるのに(まつげ長っ)とか考えてた事がバレたのかと焦ったが、メルは予想外な事を言った。


「今日初めて会った貴方に、こんな申し出は迷惑かも知れないけれど……、トール、私のお友達になって下さらない!?」




お、……おともだち? 





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