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6 バブーシュカとベンジャミン ~2匹の生い立ち(4・終)~
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がらんとした隠れ家の倉庫でバブーシュカとベンジャミンは、野良猫母さんと他の子猫達が帰って来るのを待っていましたが、その場所に長くとどまる事はできませんでした。
なぜなら、雑に積み上げられていた木箱が、人間の去った後しばらくしてから崩落してしまったのです。
ミシミシ…… バキッ ミシミシミシ…………
崩落の前に、まず不吉な物音がし始めたので、その音に怯えた2匹は倉庫の西向きにある窓のそばまで避難しました。
隠れ家の倉庫から外へ出る時、野良猫母さんと子猫達はいつもその窓から出ていたのです。窓は常時、猫が通れるだけの隙間が開いていました。
早めの避難のお陰で、幸い2匹が木箱の下敷きになって怪我をすることはありませんでした。
けれど、木箱が崩れ落ちた時の大きな音と振動には、2匹とも心臓が飛び出すかというぐらい驚かされました。
崩落が始まった直後に、2匹は倉庫の窓から外へ転がり出て、無我夢中で走りました。
ベンジャミンが先に走って、バブーシュカが後ろに続きました。
倉庫からだいぶ離れた知らない場所に来たので、バブーシュカはベンジャミンに向かって叫びました。
「お兄ちゃん、どこ行くの? お兄ちゃん、お母さんは?」
しかし、ベンジャミンは完全にパニックを起こしていて、どこへ向かうともなく走り続けています。
バブーシュカが鳴いて呼びかけても全く気付きません。
バブーシュカはベンジャミンを見失わないように、ただただ懸命に後を追いかけて走りました。
*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*
バブーシュカの当時の記憶はここからぷっつりととぎれています。
ここから先は、もう『タンジェリン家のバブーシュカ』になってからの記憶だけしかありません。
お腹が空いたらタンジェリン家でご飯を食べて、眠くなったら家の中や、庭、テラスなど、どこでも気が向いた所で眠り、ベンジャミンと一緒に遊ぶ、平和な毎日の繰り返しの記憶です。
バブーシュカとベンジャミンが家族である他の猫達と別れてから、タンジェリン家にたどり着くまでのいきさつは、バブーシュカが思い出した時にお話しできるかもしれません。ひとまずはここまでーーーーーー。
*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*
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