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前編
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「ディアナ・ララ・ダルトン公爵令嬢。あなたとの婚約を破棄します。正式な発表は三日後ですが、その前に私から内々に告げておくことを許されました」
ジュリアン第二王子の言葉にディアナは仰天する。
「そんな…………そんな勝手な! この婚約は、国王陛下の決定! 殿下の一存で破棄できるとお思いですか!?
そこまで、あの名ばかりの聖女に心奪われましたの!?」
「その陛下がお認めになられのです。聖女セリナは、この件には無関係です。では」
ジュリアン第二王子は冷ややかに言いきると、ディアナに背をむけて謁見室を出て行く。
ディアナは呆然ととり残された。
――――オピウムがほしい。
最近、気分転換に常用している香の香りが恋しい。
「う…………ん…………」
ディアナは呻いて身じろぎした。
甘ったるい匂いがからみついて、頭が異様なほど重い。
就寝前に焚いた香の量が多すぎたか。
のろのろ体を起こすと、ばさり、とベッドから本が落ちた。『魔女令嬢となったエリナの高貴な運命の恋』。安っぽい題名のそれを蹴るようにして、レースを縫いつけた寝室履きをはく。
(どうして、こんなに頭が痛いの…………?)
ふらふらベッドから離れて――――それに視線が固定された。
壁にかけられた、金箔の額縁で飾られた大きな鏡。
その中からこちらを見つめる美しい娘。
波打つ月光の髪に、黄昏の空に似た紫の瞳。血色が悪いせいで、なおさら白く見える肌。
「――――違う」
ディアナの頭に声が響き、それがそのままディアナの唇からも吐き出される。
「違うわ…………これは、わたくしじゃない…………!」
「お嬢様? もう起きていらして…………」
朝の支度のために入室してきた侍女の声も耳に届かない。
「わたくし…………わたしは、黒い髪に黒い瞳の…………一般の平民で…………」
「お嬢様?」
「わたしは――――」
『この世界の人間じゃない』
誰かの声が脳裏に響いた。
(わたし…………転生してしまったんだわ! ディアナという公爵令嬢に!!)
「うーん…………」
ディアナはため息をついてうなった。書き物机には何枚もの紙がひろげられて、様々に書き込みがされている。
すべてディアナが書き出した、ディアナと彼女の『前世』に関する記憶だ。
今日一日「具合が悪い」という口実ですべての日課と予定を休み、思い出せる事柄を片端から書き出していったのである。
それによれば、自分の状況はざっと次のとおり。
今の自分の名はディアナ・ララ・ダルトン。
銀髪紫眼の美貌で名高いダルトン公爵令嬢であり、この国の第二王子、ジュリアン殿下の婚約者。
…………が、中身は別人。
自分はもともと別の世界で別の人間として暮らしており、なんらかの事情で死んだあと、この世界にディアナとして生まれ変わったのだ。
(『転生』だわ…………古の時代の迷信と思っていたのに…………)
羽ペンの先でトントンと紙面を叩く。
(昔は…………たしか『リナ』という名前だわ。黒髪黒眼で…………たぶん、貴族ではなく平民。一介の町娘だった。思い出せるのは、それくらいかしら。でも自分が『ディアナ』ではない確信はある…………)
むしろ、多く思い出せるのはこれからの筋書きだった。
「物語の中の世界…………だったなんて」
ディアナ――――『リナ』は肩をおとす。
『リナ』は『前世』で小説を読んでいた。
簡潔に述べると、身分の低い娘が聖なる力を覚醒させて聖女として認定され、それをきっかけに美麗な優れた王子や殿方達と出会い、愛し合うようになる。そして数多の困難や妨害を乗り越えて結ばれ、幸せに暮らす…………という、昔ながらの王道物語だ。
『ディアナ』はヒロインである聖女と愛し合う王子の婚約者で、当然、二人の恋路を妨害して仲を引き裂こうとする。
「知らない女に割り込まれた挙句、愛する婚約者を奪われるのよ? 怒るのは当然でしょう」
リナはそう思うが、世界はヒロインに味方し、ディアナは聖女暗殺未遂の罪によって処刑されてしまうのだ。
「理不尽だわ。ディアナだって、いじわるしたくて悪役になったわけじゃないのに。そもそも悪いのは、ディアナという婚約者がいるのに、ジュリアン殿下に迫った聖女じゃない。それに彼女の誘いにのった殿下も!」
だが今は、そんなことを言っている場合ではない。
「どうにかしないと。このままでは、三日後…………いえ、明後日には正式に婚約破棄! いずれは処刑だわ!! わたしはディアナじゃないのに!!)
少なくとも、今の彼女にディアナである自覚や自意識はない以上、この状況で「ディアナは悪役だからおとなしく殺されろ」というのは納得いかなかった。
唇をかむ。
(そもそもジュリアン殿下は、以前もそうだったのよ。ろくに宮廷作法も知らない男爵の娘と懇ろになって、あの娘を庇って、わたくしを責めるほど…………待って)
「あ」
脳裏に一つの案がひらめく。
「ああして、こうすれば…………」と、ぶつぶつ呟きながら新しい紙に書き記していく。
「――――やってみるしかないわ。このままなにもせず、ただ断罪されて処刑を待つなんて、できない。わたしは黙って死んだりなどしない、戦って、運命に勝ってみせる――――!!」
白い手をにぎりしめ、己を鼓舞した。
さっそく行動を開始する。
「え? どなたですって?」
クロエは鍵盤を奏でていた指をとめ、侍女に訊き返した。
修道女らしく白い頭巾をかぶった侍女は、淡々と答える。
「ダルトン公爵令嬢です。なんでも、とても大切なご相談があるとかで、どうしてもクロエ様にお会いしたい、と」
クロエは怪訝そうに眉根を寄せ、首をひねった。
「なにかの間違いではなくて? 私は、あの方に相談をもちかけられるような立場ではないわ。別の方と、名前をとり違えているのではない?」
「いいえ。間違いなく、ディアナ・ララ・ダルトン公爵令嬢と名乗られました」
あまりに突然の出来事に、クロエは絶句する。
「いかがしましょう。お断りしますか?」
「いえ…………」
クロエはかろうじて判断する。
「ダルトン公爵は貴族の筆頭。その令嬢を用件も聞かずに帰せば、父の、スワン男爵の立場が悪くなります。――――お通しして」
クロエがピアノから離れて白い頭巾をかぶり、銀のペンダントの位置を直して応接室として使われる部屋に赴くと、本当にダルトン公爵令嬢が待っていた。ぷん、と香の匂いがただよう。
最後に顔を合わせてから数年が経つが、顔色が少し悪い以外は、高価な装いも華やかな美貌も、あの頃とまるで変わらないように見えた。
「使いを先に送らず、失礼したわ。他人に知られるわけにはいかないの」
外套をはおって帽子もかぶったまま椅子に座った公爵令嬢は、あいさつもそこそこに本題に入る。
「貴女に協力を求めたいの」
「…………協力?」
「聖女についてよ」
紫の瞳が暗く輝く。
「あなたも、噂くらいは聞いているのではないかしら? 聖女とジュリアン殿下の関係を」
聖女セリナは貞潔を求められる身でありながら、ジュリアン第二王子と非常に睦まじい。王子にはディアナという婚約者がいるのにも関わらず、だ。
「殿下は聖女との結婚を望んでおられるわ。幼い頃から未来の王太子妃として殿下を支えつづけ、厳しい教育に耐えてきた、わたくしをさしおいて…………本当に不実な御方。わたくしは、こんなにもあの方の犠牲になってきたというのに…………っ」
思わず涙ぐんだダルトン公爵令嬢を、クロエが無言で見守る。
令嬢は「こほん」と咳払いして、表情や気持ちをあらためた。
「貴女に頼みたいのは、これよ」
ダルトン公爵令嬢はクロエの前に十数枚の書類を差し出した。
「これは?」
「聖女の不正の証拠よ」
ぎょっ、と書類を手にとったクロエの顔がこわばる。
かまわず、令嬢はつづけた。
「聖女セリナはコート枢機卿と結託して、大神殿に流れる資金を不正流用しているわ。大神殿と王宮をつなぐ高位官僚の一人、モット卿も一味よ。聖女セリナを看板に立てて、大神殿が国中の民や貴族、王家から集めた巨額の寄付。その一部をコート枢機卿とモット卿が着服して、聖女セリナを加えた三人で山分けしているの。これはその証拠の書類よ」
「まさか…………」
「信じられないでしょうけれど、事実よ」
紫の瞳がまっすぐにクロエを見すえて断言する。
「あなたには使いを頼みたいの。これを、ここの院長に渡してちょうだい」
「どういう意味ですか?」
「国王陛下に、聖女やその一味の不正をお知らせしたいの。これは、わたくしが力の限りを尽くして入手した調査結果。これをお見せすれば、陛下も聖女の本性に気づかれるはずだわ」
聖女と、彼女の後ろ盾となっている高位の者達の不正を暴いて、それを広く知らしめる。聖女の権威が失墜すれば、ジュリアン王子も彼女との結婚を強行できなくなるだろうし、聖女も王宮から追い出されるだろう。
そうなれば、王子も婚約者への断罪や婚約破棄どころではなくなるはずだ。
(わたしは、その騒ぎに便乗して逃げる。いくら王子でも、あんな不誠実で浮気者の夫なんて御免だわ。結婚しても絶対幸せになれないもの)
今のディアナは『リナ』が目覚めたことで、ジュリアン王子への未練も断ち切れている。
声に力を込め、クロエへ身を乗り出した。
「だから、その書類を院長に届けてちょうだい。ここの院長は、国王陛下の叔母上。院長から陛下にその書類を渡すよう、言伝てほしいの」
「…………」
書類を見つめるクロエは不思議そうに首をかしげている。
「なぜ私に頼まれるのでしょう? ダルトン嬢なら直接、国王陛下にお届けできるのでは?」
「いいえ」
ディアナは、くっ、と唇をかんだ。
「わたくしは今、陛下への謁見は叶わないの。聖女に骨抜きになったジュリアン殿下が、聖女の語ったわたくしへの悪口を鵜呑みにして、わたくしの王宮への出入りをすべて禁じられたのよ。手紙も届けてもらえないわ」
クロエは書類から顔をあげ、灰色の瞳をダルトン公爵令嬢にむける。
「私が、あなた様に協力するとお思いですか?」
「簡単に引き受けるとは思っていないわ。あなたがわたくしを恨んでいることくらい、知っているつもりよ」
クロエこと、クローディア・スワンはディアナ・ララ・ダルトンを恨んでいる。
何故なら、彼女こそがジュリアン王子の以前の恋人だった。
彼女の父、スワン男爵はピアノの名手として知られ、王族のピアノ教師も務める実力者であり、ジュリアン王子も彼の生徒の一人だった。王子は男爵の指導によってたちまち才能を開花させ「殿下が王子でさえなければ、奇跡のピアニストとして音楽史に不滅の名を遺しただろうに」と、大勢の音楽家やピアノ愛好家達を惜しませた。
その縁で、同じく『若き天才ピアニスト』として評判だった恩師の娘、つまりクローディア・スワンと出会い、クローディアはたびたびジュリアン王子の連弾やピアノ二重奏の相手を務めるようになった。
これ自体に深い意味はなく、実力の兼ね合いでそうなっただけのことだ。
第二王子と男爵の娘の演奏は、またたく間に王宮主催の音楽会の花形となった。
(そして、ジュリアン殿下とクローディアも惹かれ合った――――でも、それは間違った行為。殿下にはわたしという婚約者がいたし、まして第二王子と男爵の娘。身分が違うにもほどがあるわ。それを理解せず、もしくは理解していて殿下の寵愛を受け容れたのだから、悪いのは、どう考えてもクローディアじゃない。そして殿下)
『リナ』は心の中で思い返す。
(特にクローディアは、宮廷作法もろくに身についていなかった。スワン男爵は国王陛下もお気に入りのピアニストで、王族のピアノ教師で、功績を認められて男爵位を下賜されたけれど、一代限りの爵位だから、娘とはいえクローディア自身は平民。ジュリアン殿下との演奏のために王宮への出入りは許されていたけれど、『令嬢』も名乗れない低い身分だったから、教養もおそまつ。なのに、殿下の寵愛をかさにきて…………)
脳裏にあの日の光景がよみがえる。
(公の場でシルクのドレスを着用できるのは、貴族のみ。でもクローディアは、公爵令嬢であるわたくしや、高位の友人達が集まったあの場で、最高級のシルクのドレスを着てきて…………それを注意したら大げさに泣き出したものだから、殿下がわたくしに激怒なさったのよ)
要は、ディアナの叱り方が厳しすぎる、と言いたかったらしい。
大勢の前で、クローディアに恥をかかせる形で叱る必要があったのか、と。
(それは、ディアナもキツい言い方になったかもしれないけれど…………不作法はクローディアのほうだわ。なのに『平民なのに厳しい』と被害者面するのは、おかしいのでは? ディアナは間違っていないわ、悪いのはクローディアと、彼女を盲目的にかばった殿下のほうよ)
つくづく、あの時のジュリアン殿下は目の前のこの女に骨抜きにされていたのだな、と『リナ』は実感する。
『リナ』は背筋を伸ばし、名門貴族の令嬢として、気品と優美を見せつけた。堂々と。
「あなたは、わたくしを恨んでいるでしょうね」
あの一件のあと、クローディアは事実上、王宮を追放された。
ジュリアン殿下との仲を引き裂かれ、玉の輿の機会を奪われた彼女にとって、ディアナは憎悪の対象だろう。
だがそれは、平民の彼女が心の奥ではディアナの高貴な生まれや深い教養、それらに裏打ちされた優美と気品に憧れていた裏返しでもあると、前世で小説を読んだ『リナ』は知っている。
令嬢は玲瓏たる声でかつての恋敵に宣言した。
「だからといって、わたくしはあなたに謝罪する気はないわ。わたくしもあなたに恥をかかされた以上、おあいこだもの。それに、あなたのわたくしへの憎しみが本物なら、なおさら今ここで謝ったところで、あなたの溜飲は下がらないでしょう。わたくしには猶予がないの。無駄なことをしている時間はないわ。だから、ここは純粋に取引として話をするわ。具体的には、対価を約束するわ」
「…………対価とは?」
「貴女を還俗させるわ」
ぴくり、とクローディアの表情が動く。
「ジュリアン殿下を誘惑した罪で貴女はこの修道院に送られ、残る一生を修道女として生きなければならなくなった。その未来を変えてあげる。貴女を還俗させるよう、わたくしが国王陛下と院長に話を通すし、還俗に必要な多額の寄付もわたくしが用意する。貴女は『修道女クロエ』の名を捨て、もう一度『スワン男爵の娘、クローディア』を名乗れるようになる」
白い頭巾をかぶったクローディアの視線が手元におとされた。
彼女が着るのは、簡素な紺の上下。首には、聖なる神の印を象った銀のペンダント。
白と紺は、この国では敬虔と聖職者をあらわす色の組み合わせ。
そう、今のクローディアは、世俗を捨てて神に仕える修道女クロエだった。
ダルトン公爵令嬢と問題を起こした結果、クローディア・スワンはもともといた平民の婚約者にも逃げられ、女子修道院に入るほか道がなくなってしまったのである。
だが、まだ二十歳にもならぬ娘が、本気で清貧を尊ぶ暮らしを求めるはずがない。
公爵令嬢がさらに餌をちらつかせる。
「縁談も用意するわ。還俗しても、年頃の女が独り身では体面が悪いものね。一代限りの成り上がり男爵の娘には絶対に持ち込まれない、高貴な出自の裕福な方との良縁を約束するわ。あなたはその方の『夫人』という肩書きで、宮廷に戻ることも可能になる。ついでに、出仕用のドレスもつけましょう。今度は絹を着ても、文句は言われなくてよ?」
ぎっ、とクローディアが眉をつりあげたが、あえて無視する。
下手に出て足もとを見られたら、計画そのものが頓挫してしまうかもしれない。
ここはとにかく強気に出て、なんとしても裏工作を成功させる必要があった。
(でないと、処刑コースまっしぐらだもの!!)
苦悩にゆれる灰色のまなざしで、修道女クロエは書類をなでる。
「少々お時間をいただけますでしょうか。なにぶん、急なお話で…………」
「駄目よ」
即、却下した。
「言ったでしょう、わたくしには猶予がないの。貴女が無理というなら、わたくしはすぐに別の伝手をさがさなければならないわ。今、ここで返事をして」
「――――わかりました」
修道女クロエは書類を手にとり、胸に抱く。
「この書類はお預かります。院長にお渡しすればいいのですね?」
「ええ、明日の朝までに。くれぐれもコート枢機卿やモット卿には気づかれないで」
「承りました」
修道女の返答に公爵令嬢はそっと安堵のため息を吐き、そのまま応接室を出た。
王都唯一の女子修道院の石造りの薄暗い廊下を足早に進みながら、頭は次の準備に移る。
(帰ったら、国を出る支度をしないと)
クロエに証拠は託したが、あれが本当にディアナの断罪に間に合うか、国王が聖女を追放するか、保証はない。念のため、いざという時は国外へ脱出できるよう、準備しておくべきだ。
(国を出たら、身分を隠して生きていくことになるもの。生活資金に金貨や、換金できて持ち運びやすい宝石類をまとめておかないと)
『リナ』となったディアナに身分を捨てる恐れはない。
(もともと前世は平民だったもの。お金さえどうにかなれば、平民として暮らしていくなんて簡単よ。新しい土地で新しい恋をして、幸せな人生を送るの。こんな国に残るより、ずっと楽しいはずだわ。悪役の役回りは、もう御免。わたしは自由に生きるの)
一抹の不安と、それを大きく上回る未来への希望。
相反する二つの感情を抱え、意気揚々とダルトン公爵家の馬車に乗り込んだ。
御者が鞭をふるって、馬車が動き出す。
ジュリアン第二王子の言葉にディアナは仰天する。
「そんな…………そんな勝手な! この婚約は、国王陛下の決定! 殿下の一存で破棄できるとお思いですか!?
そこまで、あの名ばかりの聖女に心奪われましたの!?」
「その陛下がお認めになられのです。聖女セリナは、この件には無関係です。では」
ジュリアン第二王子は冷ややかに言いきると、ディアナに背をむけて謁見室を出て行く。
ディアナは呆然ととり残された。
――――オピウムがほしい。
最近、気分転換に常用している香の香りが恋しい。
「う…………ん…………」
ディアナは呻いて身じろぎした。
甘ったるい匂いがからみついて、頭が異様なほど重い。
就寝前に焚いた香の量が多すぎたか。
のろのろ体を起こすと、ばさり、とベッドから本が落ちた。『魔女令嬢となったエリナの高貴な運命の恋』。安っぽい題名のそれを蹴るようにして、レースを縫いつけた寝室履きをはく。
(どうして、こんなに頭が痛いの…………?)
ふらふらベッドから離れて――――それに視線が固定された。
壁にかけられた、金箔の額縁で飾られた大きな鏡。
その中からこちらを見つめる美しい娘。
波打つ月光の髪に、黄昏の空に似た紫の瞳。血色が悪いせいで、なおさら白く見える肌。
「――――違う」
ディアナの頭に声が響き、それがそのままディアナの唇からも吐き出される。
「違うわ…………これは、わたくしじゃない…………!」
「お嬢様? もう起きていらして…………」
朝の支度のために入室してきた侍女の声も耳に届かない。
「わたくし…………わたしは、黒い髪に黒い瞳の…………一般の平民で…………」
「お嬢様?」
「わたしは――――」
『この世界の人間じゃない』
誰かの声が脳裏に響いた。
(わたし…………転生してしまったんだわ! ディアナという公爵令嬢に!!)
「うーん…………」
ディアナはため息をついてうなった。書き物机には何枚もの紙がひろげられて、様々に書き込みがされている。
すべてディアナが書き出した、ディアナと彼女の『前世』に関する記憶だ。
今日一日「具合が悪い」という口実ですべての日課と予定を休み、思い出せる事柄を片端から書き出していったのである。
それによれば、自分の状況はざっと次のとおり。
今の自分の名はディアナ・ララ・ダルトン。
銀髪紫眼の美貌で名高いダルトン公爵令嬢であり、この国の第二王子、ジュリアン殿下の婚約者。
…………が、中身は別人。
自分はもともと別の世界で別の人間として暮らしており、なんらかの事情で死んだあと、この世界にディアナとして生まれ変わったのだ。
(『転生』だわ…………古の時代の迷信と思っていたのに…………)
羽ペンの先でトントンと紙面を叩く。
(昔は…………たしか『リナ』という名前だわ。黒髪黒眼で…………たぶん、貴族ではなく平民。一介の町娘だった。思い出せるのは、それくらいかしら。でも自分が『ディアナ』ではない確信はある…………)
むしろ、多く思い出せるのはこれからの筋書きだった。
「物語の中の世界…………だったなんて」
ディアナ――――『リナ』は肩をおとす。
『リナ』は『前世』で小説を読んでいた。
簡潔に述べると、身分の低い娘が聖なる力を覚醒させて聖女として認定され、それをきっかけに美麗な優れた王子や殿方達と出会い、愛し合うようになる。そして数多の困難や妨害を乗り越えて結ばれ、幸せに暮らす…………という、昔ながらの王道物語だ。
『ディアナ』はヒロインである聖女と愛し合う王子の婚約者で、当然、二人の恋路を妨害して仲を引き裂こうとする。
「知らない女に割り込まれた挙句、愛する婚約者を奪われるのよ? 怒るのは当然でしょう」
リナはそう思うが、世界はヒロインに味方し、ディアナは聖女暗殺未遂の罪によって処刑されてしまうのだ。
「理不尽だわ。ディアナだって、いじわるしたくて悪役になったわけじゃないのに。そもそも悪いのは、ディアナという婚約者がいるのに、ジュリアン殿下に迫った聖女じゃない。それに彼女の誘いにのった殿下も!」
だが今は、そんなことを言っている場合ではない。
「どうにかしないと。このままでは、三日後…………いえ、明後日には正式に婚約破棄! いずれは処刑だわ!! わたしはディアナじゃないのに!!)
少なくとも、今の彼女にディアナである自覚や自意識はない以上、この状況で「ディアナは悪役だからおとなしく殺されろ」というのは納得いかなかった。
唇をかむ。
(そもそもジュリアン殿下は、以前もそうだったのよ。ろくに宮廷作法も知らない男爵の娘と懇ろになって、あの娘を庇って、わたくしを責めるほど…………待って)
「あ」
脳裏に一つの案がひらめく。
「ああして、こうすれば…………」と、ぶつぶつ呟きながら新しい紙に書き記していく。
「――――やってみるしかないわ。このままなにもせず、ただ断罪されて処刑を待つなんて、できない。わたしは黙って死んだりなどしない、戦って、運命に勝ってみせる――――!!」
白い手をにぎりしめ、己を鼓舞した。
さっそく行動を開始する。
「え? どなたですって?」
クロエは鍵盤を奏でていた指をとめ、侍女に訊き返した。
修道女らしく白い頭巾をかぶった侍女は、淡々と答える。
「ダルトン公爵令嬢です。なんでも、とても大切なご相談があるとかで、どうしてもクロエ様にお会いしたい、と」
クロエは怪訝そうに眉根を寄せ、首をひねった。
「なにかの間違いではなくて? 私は、あの方に相談をもちかけられるような立場ではないわ。別の方と、名前をとり違えているのではない?」
「いいえ。間違いなく、ディアナ・ララ・ダルトン公爵令嬢と名乗られました」
あまりに突然の出来事に、クロエは絶句する。
「いかがしましょう。お断りしますか?」
「いえ…………」
クロエはかろうじて判断する。
「ダルトン公爵は貴族の筆頭。その令嬢を用件も聞かずに帰せば、父の、スワン男爵の立場が悪くなります。――――お通しして」
クロエがピアノから離れて白い頭巾をかぶり、銀のペンダントの位置を直して応接室として使われる部屋に赴くと、本当にダルトン公爵令嬢が待っていた。ぷん、と香の匂いがただよう。
最後に顔を合わせてから数年が経つが、顔色が少し悪い以外は、高価な装いも華やかな美貌も、あの頃とまるで変わらないように見えた。
「使いを先に送らず、失礼したわ。他人に知られるわけにはいかないの」
外套をはおって帽子もかぶったまま椅子に座った公爵令嬢は、あいさつもそこそこに本題に入る。
「貴女に協力を求めたいの」
「…………協力?」
「聖女についてよ」
紫の瞳が暗く輝く。
「あなたも、噂くらいは聞いているのではないかしら? 聖女とジュリアン殿下の関係を」
聖女セリナは貞潔を求められる身でありながら、ジュリアン第二王子と非常に睦まじい。王子にはディアナという婚約者がいるのにも関わらず、だ。
「殿下は聖女との結婚を望んでおられるわ。幼い頃から未来の王太子妃として殿下を支えつづけ、厳しい教育に耐えてきた、わたくしをさしおいて…………本当に不実な御方。わたくしは、こんなにもあの方の犠牲になってきたというのに…………っ」
思わず涙ぐんだダルトン公爵令嬢を、クロエが無言で見守る。
令嬢は「こほん」と咳払いして、表情や気持ちをあらためた。
「貴女に頼みたいのは、これよ」
ダルトン公爵令嬢はクロエの前に十数枚の書類を差し出した。
「これは?」
「聖女の不正の証拠よ」
ぎょっ、と書類を手にとったクロエの顔がこわばる。
かまわず、令嬢はつづけた。
「聖女セリナはコート枢機卿と結託して、大神殿に流れる資金を不正流用しているわ。大神殿と王宮をつなぐ高位官僚の一人、モット卿も一味よ。聖女セリナを看板に立てて、大神殿が国中の民や貴族、王家から集めた巨額の寄付。その一部をコート枢機卿とモット卿が着服して、聖女セリナを加えた三人で山分けしているの。これはその証拠の書類よ」
「まさか…………」
「信じられないでしょうけれど、事実よ」
紫の瞳がまっすぐにクロエを見すえて断言する。
「あなたには使いを頼みたいの。これを、ここの院長に渡してちょうだい」
「どういう意味ですか?」
「国王陛下に、聖女やその一味の不正をお知らせしたいの。これは、わたくしが力の限りを尽くして入手した調査結果。これをお見せすれば、陛下も聖女の本性に気づかれるはずだわ」
聖女と、彼女の後ろ盾となっている高位の者達の不正を暴いて、それを広く知らしめる。聖女の権威が失墜すれば、ジュリアン王子も彼女との結婚を強行できなくなるだろうし、聖女も王宮から追い出されるだろう。
そうなれば、王子も婚約者への断罪や婚約破棄どころではなくなるはずだ。
(わたしは、その騒ぎに便乗して逃げる。いくら王子でも、あんな不誠実で浮気者の夫なんて御免だわ。結婚しても絶対幸せになれないもの)
今のディアナは『リナ』が目覚めたことで、ジュリアン王子への未練も断ち切れている。
声に力を込め、クロエへ身を乗り出した。
「だから、その書類を院長に届けてちょうだい。ここの院長は、国王陛下の叔母上。院長から陛下にその書類を渡すよう、言伝てほしいの」
「…………」
書類を見つめるクロエは不思議そうに首をかしげている。
「なぜ私に頼まれるのでしょう? ダルトン嬢なら直接、国王陛下にお届けできるのでは?」
「いいえ」
ディアナは、くっ、と唇をかんだ。
「わたくしは今、陛下への謁見は叶わないの。聖女に骨抜きになったジュリアン殿下が、聖女の語ったわたくしへの悪口を鵜呑みにして、わたくしの王宮への出入りをすべて禁じられたのよ。手紙も届けてもらえないわ」
クロエは書類から顔をあげ、灰色の瞳をダルトン公爵令嬢にむける。
「私が、あなた様に協力するとお思いですか?」
「簡単に引き受けるとは思っていないわ。あなたがわたくしを恨んでいることくらい、知っているつもりよ」
クロエこと、クローディア・スワンはディアナ・ララ・ダルトンを恨んでいる。
何故なら、彼女こそがジュリアン王子の以前の恋人だった。
彼女の父、スワン男爵はピアノの名手として知られ、王族のピアノ教師も務める実力者であり、ジュリアン王子も彼の生徒の一人だった。王子は男爵の指導によってたちまち才能を開花させ「殿下が王子でさえなければ、奇跡のピアニストとして音楽史に不滅の名を遺しただろうに」と、大勢の音楽家やピアノ愛好家達を惜しませた。
その縁で、同じく『若き天才ピアニスト』として評判だった恩師の娘、つまりクローディア・スワンと出会い、クローディアはたびたびジュリアン王子の連弾やピアノ二重奏の相手を務めるようになった。
これ自体に深い意味はなく、実力の兼ね合いでそうなっただけのことだ。
第二王子と男爵の娘の演奏は、またたく間に王宮主催の音楽会の花形となった。
(そして、ジュリアン殿下とクローディアも惹かれ合った――――でも、それは間違った行為。殿下にはわたしという婚約者がいたし、まして第二王子と男爵の娘。身分が違うにもほどがあるわ。それを理解せず、もしくは理解していて殿下の寵愛を受け容れたのだから、悪いのは、どう考えてもクローディアじゃない。そして殿下)
『リナ』は心の中で思い返す。
(特にクローディアは、宮廷作法もろくに身についていなかった。スワン男爵は国王陛下もお気に入りのピアニストで、王族のピアノ教師で、功績を認められて男爵位を下賜されたけれど、一代限りの爵位だから、娘とはいえクローディア自身は平民。ジュリアン殿下との演奏のために王宮への出入りは許されていたけれど、『令嬢』も名乗れない低い身分だったから、教養もおそまつ。なのに、殿下の寵愛をかさにきて…………)
脳裏にあの日の光景がよみがえる。
(公の場でシルクのドレスを着用できるのは、貴族のみ。でもクローディアは、公爵令嬢であるわたくしや、高位の友人達が集まったあの場で、最高級のシルクのドレスを着てきて…………それを注意したら大げさに泣き出したものだから、殿下がわたくしに激怒なさったのよ)
要は、ディアナの叱り方が厳しすぎる、と言いたかったらしい。
大勢の前で、クローディアに恥をかかせる形で叱る必要があったのか、と。
(それは、ディアナもキツい言い方になったかもしれないけれど…………不作法はクローディアのほうだわ。なのに『平民なのに厳しい』と被害者面するのは、おかしいのでは? ディアナは間違っていないわ、悪いのはクローディアと、彼女を盲目的にかばった殿下のほうよ)
つくづく、あの時のジュリアン殿下は目の前のこの女に骨抜きにされていたのだな、と『リナ』は実感する。
『リナ』は背筋を伸ばし、名門貴族の令嬢として、気品と優美を見せつけた。堂々と。
「あなたは、わたくしを恨んでいるでしょうね」
あの一件のあと、クローディアは事実上、王宮を追放された。
ジュリアン殿下との仲を引き裂かれ、玉の輿の機会を奪われた彼女にとって、ディアナは憎悪の対象だろう。
だがそれは、平民の彼女が心の奥ではディアナの高貴な生まれや深い教養、それらに裏打ちされた優美と気品に憧れていた裏返しでもあると、前世で小説を読んだ『リナ』は知っている。
令嬢は玲瓏たる声でかつての恋敵に宣言した。
「だからといって、わたくしはあなたに謝罪する気はないわ。わたくしもあなたに恥をかかされた以上、おあいこだもの。それに、あなたのわたくしへの憎しみが本物なら、なおさら今ここで謝ったところで、あなたの溜飲は下がらないでしょう。わたくしには猶予がないの。無駄なことをしている時間はないわ。だから、ここは純粋に取引として話をするわ。具体的には、対価を約束するわ」
「…………対価とは?」
「貴女を還俗させるわ」
ぴくり、とクローディアの表情が動く。
「ジュリアン殿下を誘惑した罪で貴女はこの修道院に送られ、残る一生を修道女として生きなければならなくなった。その未来を変えてあげる。貴女を還俗させるよう、わたくしが国王陛下と院長に話を通すし、還俗に必要な多額の寄付もわたくしが用意する。貴女は『修道女クロエ』の名を捨て、もう一度『スワン男爵の娘、クローディア』を名乗れるようになる」
白い頭巾をかぶったクローディアの視線が手元におとされた。
彼女が着るのは、簡素な紺の上下。首には、聖なる神の印を象った銀のペンダント。
白と紺は、この国では敬虔と聖職者をあらわす色の組み合わせ。
そう、今のクローディアは、世俗を捨てて神に仕える修道女クロエだった。
ダルトン公爵令嬢と問題を起こした結果、クローディア・スワンはもともといた平民の婚約者にも逃げられ、女子修道院に入るほか道がなくなってしまったのである。
だが、まだ二十歳にもならぬ娘が、本気で清貧を尊ぶ暮らしを求めるはずがない。
公爵令嬢がさらに餌をちらつかせる。
「縁談も用意するわ。還俗しても、年頃の女が独り身では体面が悪いものね。一代限りの成り上がり男爵の娘には絶対に持ち込まれない、高貴な出自の裕福な方との良縁を約束するわ。あなたはその方の『夫人』という肩書きで、宮廷に戻ることも可能になる。ついでに、出仕用のドレスもつけましょう。今度は絹を着ても、文句は言われなくてよ?」
ぎっ、とクローディアが眉をつりあげたが、あえて無視する。
下手に出て足もとを見られたら、計画そのものが頓挫してしまうかもしれない。
ここはとにかく強気に出て、なんとしても裏工作を成功させる必要があった。
(でないと、処刑コースまっしぐらだもの!!)
苦悩にゆれる灰色のまなざしで、修道女クロエは書類をなでる。
「少々お時間をいただけますでしょうか。なにぶん、急なお話で…………」
「駄目よ」
即、却下した。
「言ったでしょう、わたくしには猶予がないの。貴女が無理というなら、わたくしはすぐに別の伝手をさがさなければならないわ。今、ここで返事をして」
「――――わかりました」
修道女クロエは書類を手にとり、胸に抱く。
「この書類はお預かります。院長にお渡しすればいいのですね?」
「ええ、明日の朝までに。くれぐれもコート枢機卿やモット卿には気づかれないで」
「承りました」
修道女の返答に公爵令嬢はそっと安堵のため息を吐き、そのまま応接室を出た。
王都唯一の女子修道院の石造りの薄暗い廊下を足早に進みながら、頭は次の準備に移る。
(帰ったら、国を出る支度をしないと)
クロエに証拠は託したが、あれが本当にディアナの断罪に間に合うか、国王が聖女を追放するか、保証はない。念のため、いざという時は国外へ脱出できるよう、準備しておくべきだ。
(国を出たら、身分を隠して生きていくことになるもの。生活資金に金貨や、換金できて持ち運びやすい宝石類をまとめておかないと)
『リナ』となったディアナに身分を捨てる恐れはない。
(もともと前世は平民だったもの。お金さえどうにかなれば、平民として暮らしていくなんて簡単よ。新しい土地で新しい恋をして、幸せな人生を送るの。こんな国に残るより、ずっと楽しいはずだわ。悪役の役回りは、もう御免。わたしは自由に生きるの)
一抹の不安と、それを大きく上回る未来への希望。
相反する二つの感情を抱え、意気揚々とダルトン公爵家の馬車に乗り込んだ。
御者が鞭をふるって、馬車が動き出す。
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