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翌日から、透子は貸してもらった本を読みはじめた。
家事は二週間ちかい滞在によって勝手を把握し、効率的な手順をあみ出せていたし、乱雑だった室内も一週間の奮闘でほぼ整頓が完了していたため、掃除は格段に楽になっている。
結果、読書に集中できる時間はけっこう長く、透子自身も読むのが早い。また、本は日本に比べて一冊のページ数と文字数が少なく、実質的には五冊で四冊弱の分量だったため、四日間で目を通し終えることができた。
たしかに面白かった。
未来世界を舞台にしているだけあって、空を飛ぶ戦艦同士の戦闘場面があったり、未知の大陸に上陸して未知の種族と交流したり、動物が特殊な手術によって人語を話せるようになっていたり、主人公に想いを寄せていたヒロインの一人が、最先端技術の粋を極めた機械だったり。
(『ス○ーウォー○』というか…………SFというより『スチームパンク』にちかいかも)
文章も読みやすく、筋はダイナミックで、大河的な重厚さも感じさせる傑作だった。
人気があるのも納得だ。透子は満足して読み終えることができた。
一方で、この世界ならではの設定というか、傾向のようなものも見えた。
三部作のほうは、一兵士にすぎなかった主人公が、世界と天空を支配する美しき女王と出会い、恋に落ち、危険な任務を経て武勲を立て、出世を重ねて、最終的には公式に女王の『第一の夫』として認められ、女王と共に世界を治めていく…………という筋書きだ。
この女王はいわゆる『後宮』を抱え、そこには数多の夫と夫候補がいるわけだが、冷酷と評される女王はどの夫にも心を開かず、けれど偶然から主人公と出会い、惹かれあうようになる。
主人公は女王のために誰より大きな功績を立て、最終的には女王の難病を治す薬も手に入れてくることで、下層の出身でありながら『夫の一人』として『後宮入り』するのではなく、女王とただ一人『結婚』して、『唯一の正夫』の座に上り詰めるのである
(世相が出ている)と透子は感心した。
(要は、少女小説でいう「下層出身の侍女ヒロインが、複数の妃を持つけれど誰も愛したことのない、冷酷で強大な権力を持つ皇帝と運命的に出会い、仲良くなりつつ、王宮の陰謀を解決して周囲にも認められて、皇帝の妃になる」系の話の、男女逆転バージョンよね? この世界は一妻多夫が常識だから、こういう筋書きになるんだ)
もう一冊は「科学が発達して、女性の低い出生率と、それに伴う人口の減少を解決できた千年後の世界」という設定で、この世界では八対一だった男女比が三対一まで解消されており、一妻多夫制はほぼ『過去の遺物』となって、「多くの男が妻を得て、一夫一妻にちかい状態を保っている」という設定だ。
主人公はその千年後の世界を生きる田舎の少年で、幼なじみの少女と結婚の約束をしていたが、類稀な頭脳を有した天才と判明して、王都の大学に送られる。そこで身分を隠して大学に通っていた王女と出会い、名門の子弟達から嫌がらせをうけながらも、誰よりも優秀な成績をおさめて王女とも距離をちぢめ、『仕事を捜しに来た』という口実で王都に来た幼なじみの少女も加わって、三角関係がくりひろげられる。
やがて主人公は卓越した頭脳で、最先端技術の結晶である『世界を支える機械頭脳』の異変を察知、その暴走を食い止めるために奔走し、世界戦争をもくろむ『機械頭脳』から暗殺されそうになって、幼なじみの少女が主人公をかばって命を落としながらも、世界を救い、その功績を世界中に称えられて、王女と結婚して終幕となる。
(飛び抜けた実力による立身出世と、高貴な女性に見初められての玉の輿は、この世界でも定番なのかな? この場合は『逆玉の輿』だけれど。『世界戦争を介して人類の滅亡を画策する機械頭脳』って『ター○ネ○ター』っぽいし…………人間の発想って、案外、大きくは変わらないのかも…………)
少なくとも、この世界ではそうなのだろう。
(あの自称・女神様も『あまり差のない世界から《仮枝》を選んだ』って言っていたし)
腹立たしい記憶を思い出してしまい、透子はそれを頭の隅に追いやる。
とにかく、どちらも読んでみて面白い話だった。
(『流行はその時代の世相を映す』って、こういうことかな? こういうのも、専門家にとっては研究したら面白い題材なのかも。あとは…………)
紅霞から借りた五冊目。
時間は午後。昼食を終え、済ませるべき家事も夕食の支度以外、すべて済んでいる。
透子は五冊目にとりかかった。
読み進めていくうちに、紅霞がこの本を気に入っている理由がわかってくる。
(ああ、そうか…………)
本は、未来世界ではなく現在を舞台にした恋愛物だった。
この世界では身近な、男性同士の恋愛をテーマにした内容で、日本だったら『BL』に分類されていただろう。
二人の主人公は幼なじみ兼親友で、どちらも最初は「どうにかして好条件の女性と結婚して家庭を作る」ことを夢見ながら、やがて互いに恋心を抱き、この世界ではよくあるけれど、けして公に認められているわけではない男同士という関係に悩み、葛藤し、それでも互いの気持ちを確かめ合って、結婚の約束まで至る。
その矢先、主人公の片方が名家の令嬢に見初められ、主人公の親も息子の婿入りに賛成し、もう一人の主人公も一度は令嬢との結婚を後押しして、涙の別れとなる。
しかし、けっきょく主人公はもう一人の主人公を選び、婿入りの日に恋人と二人で手に手をとって駆け落ちする…………という結末だった。
全体的には恋愛小説の体をとりつつ、青春物の雰囲気も色濃く、繊細な心理描写は男性よりも女性に受けるのでは、と思わせられる。
『駆け落ち』という選択には、物申したいものがあった。しかも『結婚式当日に式場から逃げている』し。
紅霞が「透子には面白くないと思う」と言ったのも、この点を言ったのかもしれない。あるいは「女の透子に男同士の恋愛話は面白くない」と考えたのかもしれない。
だとすれば、透子は「そんなことないですよ」と言ってやりたい。透子自身は読まないが、日本ではBLは多くの女性読者を魅了する一大ジャンルだ。高校時代の友人の涼美ちゃんなんて、BL熱が昂じるあまり、BLの二次創作から作家デビューまで成し遂げてしまった。
(思えば、涼美ちゃんがこの世界に来たら…………泣いて喜んだろうな…………二次創作どころか、その気になれば切符と自動改札機で妄想できる子だったし…………)
実際には、そちら方面には興味のない透子が来ているのだから、現実は皮肉である。
透子はこの本を大事にしている持ち主を想った。
紅霞は何度この本をめくり、大事に保管していたのだろう。亡き伴侶にも、この本を貸したのだろうか。あるいは伴侶から紹介されて読んだ本かもしれない。
二人で読んで、感想を言い合ったりしたのだろうか。「自分達もこんな風になりたい」などと言い合って?
胸が痛んだ。分類するなら『哀しみ』の痛みだった。
それは、早くに亡くなってしまった紅霞の伴侶を偲ぶ哀しみでもあり、二人の願いがあまりにも早く潰えてしまった現実への同情であり、今も紅霞は伴侶一人を想っていて、この先もそれがゆらぐことはないであろう、未来への哀しみでもあった。
(哀しんでどうするの)
透子は自分に言い聞かせる。
この件に関して、哀しんだところで進むものは何もない。透子だって、二年後には帰る予定の三十女だ。勢いだけで動ける十代ではない。
肉体上はどうあれ、相応の責任ある行動がとれるはずだし、とるべきだった。
透子は頭を一つふって、本の感想へと意識を切り替える。
男性が圧倒的に多いこの世界では、男性同士の関係は非公認とはいえ身近なものであり、おそらく同性を好むタイプの男性にとっては「高圧的で強権的な女性を袖にして男の恋人を選ぶ」というのは自然で定番の展開なのだろう。ベタかもしれない。
(紅霞さんの話を総合するに、この本は文学というより大衆向けの娯楽本みたいだけれど、それだけに、世相が如実に反映されているのかも。深いなぁ…………)
紅霞が帰宅したら、また新しく借りて来てもらうよう、頼んでみよう。むろん、賃料は出す。
そんなことを考えながら、今度は紅霞が焚き付け用に持ち帰って来た古新聞を手にとる。
記事に目を通していくうち、ある広告に目がとまった。
(あ、長編小説の募集要項…………)
透子の知る原稿募集というとネットがほとんどだが、日本でも文芸誌や各種レーベルが原稿を募集している。(こちらにも同じようなものがあるんだ)と口もとをほころばせた、その時。
閃いた。天啓だったかもしれない。
(…………『ハーレム物』を出版したら、人気が出るかも…………?)
「…………っ!」
雷に打たれた気がした。
(だって…………だって、男性が圧倒的に多い世界よ? 男性にうける話なら、確実に売れるんじゃない!? ハーレムは男性向けコンテンツの定番、鉄板設定だもの。そうよ、それこそ「冴えない男主人公がある日を境に突然、学園中の美少女にモテモテに」みたいな…………)
再度、天啓が透子を襲った。
(…………ネット小説…………!!)
「…………っ!!」
『ハーレム』『複数ヒロイン』『異世界転生』『チート能力』『ギャルゲー』といった単語が透子の頭をかけめぐる。
(この世界の平凡な男性が『異世界』に転生、もしくはトリップする。転生先は『未来世界』で、女性がたくさんいる…………)
閃いた。
(いっそ、男女比が逆転している世界…………「女性が圧倒的に多くて、男性というだけで大切にされるハーレム世界に転生した話」とか…………!!)
閃きにとどめを刺された気がした。
「いける!!」という確信が体内を駆け巡る。
紅霞が借りてきた本をあちこちめくりながら、高速で思考を回転させていく。
(そうよ…………この世界でも、恋愛や結婚は重要な関心事なのよ。この三作も突き詰めれば『愛する人と結ばれる』『好条件の人と結婚する』話じゃない。BL物だけは『逆玉の輿』要素を否定しているけれど…………「外見も中身も地位も財産も申し分ない相手と結婚して、唯一の伴侶として末永く愛されて幸せに暮らすシンデレラストーリー」は、こちらでもハッピーエンドなんだ。まして、ここは女性が圧倒的に少ない、男性が余りがちな世界。魅力的な女性との甘い恋愛や幸せな結婚は、日本以上に憧れの、高嶺の花なのかも…………! それに)
透子は貸本二作を比較する。
(片や『一夫一妻が定着しかけている世界』で、片や『後宮を抱えている女王の唯一の正夫になる』結末…………こちらでは一妻多夫が常識だけれど、男性側の根っこの部分には『ただ一人の夫として愛されたい』という願望があるかも…………日本だって、昔は一夫多妻だったけれど、妻側からすれば『私だけを愛してほしい』というのが本音だったろうし…………それなら、複数のヒロインに囲まれての恋愛や結婚は?)
どんどん話の筋が浮かんでくる。
ある日、まったくの偶然から、こことは異なる世界にトリップしてしまった、平凡な男主人公。その世界は男性が圧倒的に少ない女性ばかりの世界で、主人公は男というだけで周囲の女性から大事に扱われる。
(チート設定もあったほうがいいな、大事に扱われる理由と説得力として…………やっぱり『選ばれた勇者』系かな? トリップして、すぐに『勇者だ!』と判明して…………ヒロインは侍女…………従順なメイドに、世界の案内役も兼ねる、勇者様の世話役の王女様。武術や魔法を教えてくれる女将軍とか女魔術師も…………)
するすると概要ができあがっていく。もし、今の透子の思考を視覚化できたら、どんどん枝葉を伸ばしていく木がぴったりだったろう。
話作りは『勢いとひらめきで進む』タイプと『計算で進める』タイプがいる、というが、その説でいえば透子は『計算型』の要素が強かった。「こうしたほうが面白い」という計算を重ねて、キャラやストーリーのパターンを組み合わせていき、平易な文章でつづっていく。
手堅いやり方ではあろうが、反面、完全なひらめき型だった涼美ちゃんのような奇抜な発想や、突き抜けるように活き活きしたキャラ描写には乏しく、「キャラもストーリーも王道と定番とツボを押えて、うまくまとまっているけれど、それだけ」というのが、高校時代からの透子の小説に対する共通する評価だった。
要は惹きつけるような個性に乏しく、それは自分でも自覚しており、そのため涼美ちゃんのような本格的なデビューは目指さず、趣味の範囲で定期的にネット小説サイトに投稿するにとどまっていたが、ネット小説サイトでは予定調和は歓迎される要素だったらしく、計算で作りあげた典型的な悪役令嬢物や婚約破棄物を投稿すると、それなりのポイントを集めたうえ、ランキングにも何度かあがることができた。
ただ、それも書籍化の話が来るほどのものではなく、謙人と付き合い出して、彼に「出版可能な実力なら諦めなくていいけど、ただの趣味なら社会人としては子供っぽい。夢をあきらめきれない感じでみっともない」と言われ、仕事の忙しさもあって、なんとなく遠ざかっていた。
(今思えば、あんな言葉を真に受けることなかった。「私がやりたいから、やる」で通せば良かったのに)
まして当の発言者は、透子を捨てて他の女と逃げたのだ。
「少しでも謙人の理想に近づきたい」と真剣に努力していた、あの頃の自分が馬鹿馬鹿しく思えてしまう。
とにかく、そういう経緯で、透子は執筆に関しては未経験ではないがプロとも呼べない。
(欠点のオリジナリティについては…………ネット小説の応用…………ハーレム設定その他の『この世界では珍しい要素』に賭けるしかない。女の子キャラは低姿勢の…………従順で控えめなメイド系とか、守ってあげたい系を増やしたほうがいいかも)
何故なら、この世界の女性は基本、肉食系だ。
少なくとも、透子が読んだ本に登場する女性キャラはそうだ。
これは推測するに《四気神》の存在が大きいと思われる。
本の中でも、女性達は《四気神》に守られて男性の暴力や理不尽に怯える必要はなく、『繁殖に必要不可欠で、かつ、稀少な性別』という優位性も有した彼女らは主体的に、自分の意思で、自分が好ましいと思った男性に自分から「結婚して」「夫になって」と求めていく。
この世界では、男性のほうが『選ばれる側』なのだ。
これは先日の紅霞と《四姫神》の件を思い返しても、納得できる。
この世界では『伴侶を選ぶ』のは女性の特権で、男性は己を磨きながら、ひたすら『選ばれる』のを待つ他ないのだ(そして時には紅霞のように『選ばれたくない』男も存在する)。
透子個人としては、それ自体が悪い風潮とは思わない。
女からのプロポーズだってありだと思うし(まあ、自分の場合は謙人からだったけれど)、待つだけでは永遠に気づかれない危険もある。
しかし、この世界の男性はどうだろう?
世界の都合上、男性に生まれた時点で『選ばれる立場』を強制的にさだめられた性別(中には、紅霞のようなイレギュラーの存在もいるが)。
時には「自分も選ぶ側になりたい」と思うこともあるのでは?
ちょうど、選ばれる側になりがちな、もとの世界の女性達の間で『逆ハーレム』という『選べる側になる(もしくは最後まで選ばず、囲まれたまま終わる)』設定が好まれるように。
(やっぱり、ハーレム物でいこう。それで、おとなしくて控えめで可愛くて、主人公を優しく大切に扱って、時に慰め、時に励まし、一途にお仕えしてくれるヒロインをメインに持ってくる。…………一応、なじみのある肉食系女子も入れておいたほうが、とっつきやすいかな? 日本の少女小説や漫画でも『プライドの高い俺様系ヒーローが、ヒロインの前でだけはデレて素直になる』って、定番だし。その逆バージョンと考えれば…………あ、ツンデレお嬢様系?)
最初は積極的な肉食系女子にふりまわされながらも、成長するにつれ、か弱い女性を守れるような強さを得て、立身出世も果たす…………そんなストーリーでいってみよう。
(問題は舞台設定…………流行は未来世界だけれど…………)
未来世界なら、透子は簡単だ。それこそ日本を舞台に書けばいい。
しかし日本社会をそのまま書いて、どこまでこの世界の読者に理解できるだろう。
(スマホとかパソコンとか…………一から説明する必要があるし、説明してもイメージが伝わるか微妙だし…………そっくり日本を持ってくると、世界の説明だけで終わりそう…………)
そもそもスマホなんて、毎日、使っていても、その仕組みはさっぱりな代物だ。
それよりも貸本みたいなスチームパンク系の世界設定にしたほうが、イメージがわきやすいだろう。
透子はそのまま構想を練りつづけ、日が暮れているのにも気づかなかった。
「ただいま」という玄関の紅霞の声で我に返る。
「おかえりなさい!」
慌てて玄関に迎えに行き…………とんでもない事実に気がついた。
「すみません! 少し待ってください!! 夕食の支度を忘れていました…………!」
家事は二週間ちかい滞在によって勝手を把握し、効率的な手順をあみ出せていたし、乱雑だった室内も一週間の奮闘でほぼ整頓が完了していたため、掃除は格段に楽になっている。
結果、読書に集中できる時間はけっこう長く、透子自身も読むのが早い。また、本は日本に比べて一冊のページ数と文字数が少なく、実質的には五冊で四冊弱の分量だったため、四日間で目を通し終えることができた。
たしかに面白かった。
未来世界を舞台にしているだけあって、空を飛ぶ戦艦同士の戦闘場面があったり、未知の大陸に上陸して未知の種族と交流したり、動物が特殊な手術によって人語を話せるようになっていたり、主人公に想いを寄せていたヒロインの一人が、最先端技術の粋を極めた機械だったり。
(『ス○ーウォー○』というか…………SFというより『スチームパンク』にちかいかも)
文章も読みやすく、筋はダイナミックで、大河的な重厚さも感じさせる傑作だった。
人気があるのも納得だ。透子は満足して読み終えることができた。
一方で、この世界ならではの設定というか、傾向のようなものも見えた。
三部作のほうは、一兵士にすぎなかった主人公が、世界と天空を支配する美しき女王と出会い、恋に落ち、危険な任務を経て武勲を立て、出世を重ねて、最終的には公式に女王の『第一の夫』として認められ、女王と共に世界を治めていく…………という筋書きだ。
この女王はいわゆる『後宮』を抱え、そこには数多の夫と夫候補がいるわけだが、冷酷と評される女王はどの夫にも心を開かず、けれど偶然から主人公と出会い、惹かれあうようになる。
主人公は女王のために誰より大きな功績を立て、最終的には女王の難病を治す薬も手に入れてくることで、下層の出身でありながら『夫の一人』として『後宮入り』するのではなく、女王とただ一人『結婚』して、『唯一の正夫』の座に上り詰めるのである
(世相が出ている)と透子は感心した。
(要は、少女小説でいう「下層出身の侍女ヒロインが、複数の妃を持つけれど誰も愛したことのない、冷酷で強大な権力を持つ皇帝と運命的に出会い、仲良くなりつつ、王宮の陰謀を解決して周囲にも認められて、皇帝の妃になる」系の話の、男女逆転バージョンよね? この世界は一妻多夫が常識だから、こういう筋書きになるんだ)
もう一冊は「科学が発達して、女性の低い出生率と、それに伴う人口の減少を解決できた千年後の世界」という設定で、この世界では八対一だった男女比が三対一まで解消されており、一妻多夫制はほぼ『過去の遺物』となって、「多くの男が妻を得て、一夫一妻にちかい状態を保っている」という設定だ。
主人公はその千年後の世界を生きる田舎の少年で、幼なじみの少女と結婚の約束をしていたが、類稀な頭脳を有した天才と判明して、王都の大学に送られる。そこで身分を隠して大学に通っていた王女と出会い、名門の子弟達から嫌がらせをうけながらも、誰よりも優秀な成績をおさめて王女とも距離をちぢめ、『仕事を捜しに来た』という口実で王都に来た幼なじみの少女も加わって、三角関係がくりひろげられる。
やがて主人公は卓越した頭脳で、最先端技術の結晶である『世界を支える機械頭脳』の異変を察知、その暴走を食い止めるために奔走し、世界戦争をもくろむ『機械頭脳』から暗殺されそうになって、幼なじみの少女が主人公をかばって命を落としながらも、世界を救い、その功績を世界中に称えられて、王女と結婚して終幕となる。
(飛び抜けた実力による立身出世と、高貴な女性に見初められての玉の輿は、この世界でも定番なのかな? この場合は『逆玉の輿』だけれど。『世界戦争を介して人類の滅亡を画策する機械頭脳』って『ター○ネ○ター』っぽいし…………人間の発想って、案外、大きくは変わらないのかも…………)
少なくとも、この世界ではそうなのだろう。
(あの自称・女神様も『あまり差のない世界から《仮枝》を選んだ』って言っていたし)
腹立たしい記憶を思い出してしまい、透子はそれを頭の隅に追いやる。
とにかく、どちらも読んでみて面白い話だった。
(『流行はその時代の世相を映す』って、こういうことかな? こういうのも、専門家にとっては研究したら面白い題材なのかも。あとは…………)
紅霞から借りた五冊目。
時間は午後。昼食を終え、済ませるべき家事も夕食の支度以外、すべて済んでいる。
透子は五冊目にとりかかった。
読み進めていくうちに、紅霞がこの本を気に入っている理由がわかってくる。
(ああ、そうか…………)
本は、未来世界ではなく現在を舞台にした恋愛物だった。
この世界では身近な、男性同士の恋愛をテーマにした内容で、日本だったら『BL』に分類されていただろう。
二人の主人公は幼なじみ兼親友で、どちらも最初は「どうにかして好条件の女性と結婚して家庭を作る」ことを夢見ながら、やがて互いに恋心を抱き、この世界ではよくあるけれど、けして公に認められているわけではない男同士という関係に悩み、葛藤し、それでも互いの気持ちを確かめ合って、結婚の約束まで至る。
その矢先、主人公の片方が名家の令嬢に見初められ、主人公の親も息子の婿入りに賛成し、もう一人の主人公も一度は令嬢との結婚を後押しして、涙の別れとなる。
しかし、けっきょく主人公はもう一人の主人公を選び、婿入りの日に恋人と二人で手に手をとって駆け落ちする…………という結末だった。
全体的には恋愛小説の体をとりつつ、青春物の雰囲気も色濃く、繊細な心理描写は男性よりも女性に受けるのでは、と思わせられる。
『駆け落ち』という選択には、物申したいものがあった。しかも『結婚式当日に式場から逃げている』し。
紅霞が「透子には面白くないと思う」と言ったのも、この点を言ったのかもしれない。あるいは「女の透子に男同士の恋愛話は面白くない」と考えたのかもしれない。
だとすれば、透子は「そんなことないですよ」と言ってやりたい。透子自身は読まないが、日本ではBLは多くの女性読者を魅了する一大ジャンルだ。高校時代の友人の涼美ちゃんなんて、BL熱が昂じるあまり、BLの二次創作から作家デビューまで成し遂げてしまった。
(思えば、涼美ちゃんがこの世界に来たら…………泣いて喜んだろうな…………二次創作どころか、その気になれば切符と自動改札機で妄想できる子だったし…………)
実際には、そちら方面には興味のない透子が来ているのだから、現実は皮肉である。
透子はこの本を大事にしている持ち主を想った。
紅霞は何度この本をめくり、大事に保管していたのだろう。亡き伴侶にも、この本を貸したのだろうか。あるいは伴侶から紹介されて読んだ本かもしれない。
二人で読んで、感想を言い合ったりしたのだろうか。「自分達もこんな風になりたい」などと言い合って?
胸が痛んだ。分類するなら『哀しみ』の痛みだった。
それは、早くに亡くなってしまった紅霞の伴侶を偲ぶ哀しみでもあり、二人の願いがあまりにも早く潰えてしまった現実への同情であり、今も紅霞は伴侶一人を想っていて、この先もそれがゆらぐことはないであろう、未来への哀しみでもあった。
(哀しんでどうするの)
透子は自分に言い聞かせる。
この件に関して、哀しんだところで進むものは何もない。透子だって、二年後には帰る予定の三十女だ。勢いだけで動ける十代ではない。
肉体上はどうあれ、相応の責任ある行動がとれるはずだし、とるべきだった。
透子は頭を一つふって、本の感想へと意識を切り替える。
男性が圧倒的に多いこの世界では、男性同士の関係は非公認とはいえ身近なものであり、おそらく同性を好むタイプの男性にとっては「高圧的で強権的な女性を袖にして男の恋人を選ぶ」というのは自然で定番の展開なのだろう。ベタかもしれない。
(紅霞さんの話を総合するに、この本は文学というより大衆向けの娯楽本みたいだけれど、それだけに、世相が如実に反映されているのかも。深いなぁ…………)
紅霞が帰宅したら、また新しく借りて来てもらうよう、頼んでみよう。むろん、賃料は出す。
そんなことを考えながら、今度は紅霞が焚き付け用に持ち帰って来た古新聞を手にとる。
記事に目を通していくうち、ある広告に目がとまった。
(あ、長編小説の募集要項…………)
透子の知る原稿募集というとネットがほとんどだが、日本でも文芸誌や各種レーベルが原稿を募集している。(こちらにも同じようなものがあるんだ)と口もとをほころばせた、その時。
閃いた。天啓だったかもしれない。
(…………『ハーレム物』を出版したら、人気が出るかも…………?)
「…………っ!」
雷に打たれた気がした。
(だって…………だって、男性が圧倒的に多い世界よ? 男性にうける話なら、確実に売れるんじゃない!? ハーレムは男性向けコンテンツの定番、鉄板設定だもの。そうよ、それこそ「冴えない男主人公がある日を境に突然、学園中の美少女にモテモテに」みたいな…………)
再度、天啓が透子を襲った。
(…………ネット小説…………!!)
「…………っ!!」
『ハーレム』『複数ヒロイン』『異世界転生』『チート能力』『ギャルゲー』といった単語が透子の頭をかけめぐる。
(この世界の平凡な男性が『異世界』に転生、もしくはトリップする。転生先は『未来世界』で、女性がたくさんいる…………)
閃いた。
(いっそ、男女比が逆転している世界…………「女性が圧倒的に多くて、男性というだけで大切にされるハーレム世界に転生した話」とか…………!!)
閃きにとどめを刺された気がした。
「いける!!」という確信が体内を駆け巡る。
紅霞が借りてきた本をあちこちめくりながら、高速で思考を回転させていく。
(そうよ…………この世界でも、恋愛や結婚は重要な関心事なのよ。この三作も突き詰めれば『愛する人と結ばれる』『好条件の人と結婚する』話じゃない。BL物だけは『逆玉の輿』要素を否定しているけれど…………「外見も中身も地位も財産も申し分ない相手と結婚して、唯一の伴侶として末永く愛されて幸せに暮らすシンデレラストーリー」は、こちらでもハッピーエンドなんだ。まして、ここは女性が圧倒的に少ない、男性が余りがちな世界。魅力的な女性との甘い恋愛や幸せな結婚は、日本以上に憧れの、高嶺の花なのかも…………! それに)
透子は貸本二作を比較する。
(片や『一夫一妻が定着しかけている世界』で、片や『後宮を抱えている女王の唯一の正夫になる』結末…………こちらでは一妻多夫が常識だけれど、男性側の根っこの部分には『ただ一人の夫として愛されたい』という願望があるかも…………日本だって、昔は一夫多妻だったけれど、妻側からすれば『私だけを愛してほしい』というのが本音だったろうし…………それなら、複数のヒロインに囲まれての恋愛や結婚は?)
どんどん話の筋が浮かんでくる。
ある日、まったくの偶然から、こことは異なる世界にトリップしてしまった、平凡な男主人公。その世界は男性が圧倒的に少ない女性ばかりの世界で、主人公は男というだけで周囲の女性から大事に扱われる。
(チート設定もあったほうがいいな、大事に扱われる理由と説得力として…………やっぱり『選ばれた勇者』系かな? トリップして、すぐに『勇者だ!』と判明して…………ヒロインは侍女…………従順なメイドに、世界の案内役も兼ねる、勇者様の世話役の王女様。武術や魔法を教えてくれる女将軍とか女魔術師も…………)
するすると概要ができあがっていく。もし、今の透子の思考を視覚化できたら、どんどん枝葉を伸ばしていく木がぴったりだったろう。
話作りは『勢いとひらめきで進む』タイプと『計算で進める』タイプがいる、というが、その説でいえば透子は『計算型』の要素が強かった。「こうしたほうが面白い」という計算を重ねて、キャラやストーリーのパターンを組み合わせていき、平易な文章でつづっていく。
手堅いやり方ではあろうが、反面、完全なひらめき型だった涼美ちゃんのような奇抜な発想や、突き抜けるように活き活きしたキャラ描写には乏しく、「キャラもストーリーも王道と定番とツボを押えて、うまくまとまっているけれど、それだけ」というのが、高校時代からの透子の小説に対する共通する評価だった。
要は惹きつけるような個性に乏しく、それは自分でも自覚しており、そのため涼美ちゃんのような本格的なデビューは目指さず、趣味の範囲で定期的にネット小説サイトに投稿するにとどまっていたが、ネット小説サイトでは予定調和は歓迎される要素だったらしく、計算で作りあげた典型的な悪役令嬢物や婚約破棄物を投稿すると、それなりのポイントを集めたうえ、ランキングにも何度かあがることができた。
ただ、それも書籍化の話が来るほどのものではなく、謙人と付き合い出して、彼に「出版可能な実力なら諦めなくていいけど、ただの趣味なら社会人としては子供っぽい。夢をあきらめきれない感じでみっともない」と言われ、仕事の忙しさもあって、なんとなく遠ざかっていた。
(今思えば、あんな言葉を真に受けることなかった。「私がやりたいから、やる」で通せば良かったのに)
まして当の発言者は、透子を捨てて他の女と逃げたのだ。
「少しでも謙人の理想に近づきたい」と真剣に努力していた、あの頃の自分が馬鹿馬鹿しく思えてしまう。
とにかく、そういう経緯で、透子は執筆に関しては未経験ではないがプロとも呼べない。
(欠点のオリジナリティについては…………ネット小説の応用…………ハーレム設定その他の『この世界では珍しい要素』に賭けるしかない。女の子キャラは低姿勢の…………従順で控えめなメイド系とか、守ってあげたい系を増やしたほうがいいかも)
何故なら、この世界の女性は基本、肉食系だ。
少なくとも、透子が読んだ本に登場する女性キャラはそうだ。
これは推測するに《四気神》の存在が大きいと思われる。
本の中でも、女性達は《四気神》に守られて男性の暴力や理不尽に怯える必要はなく、『繁殖に必要不可欠で、かつ、稀少な性別』という優位性も有した彼女らは主体的に、自分の意思で、自分が好ましいと思った男性に自分から「結婚して」「夫になって」と求めていく。
この世界では、男性のほうが『選ばれる側』なのだ。
これは先日の紅霞と《四姫神》の件を思い返しても、納得できる。
この世界では『伴侶を選ぶ』のは女性の特権で、男性は己を磨きながら、ひたすら『選ばれる』のを待つ他ないのだ(そして時には紅霞のように『選ばれたくない』男も存在する)。
透子個人としては、それ自体が悪い風潮とは思わない。
女からのプロポーズだってありだと思うし(まあ、自分の場合は謙人からだったけれど)、待つだけでは永遠に気づかれない危険もある。
しかし、この世界の男性はどうだろう?
世界の都合上、男性に生まれた時点で『選ばれる立場』を強制的にさだめられた性別(中には、紅霞のようなイレギュラーの存在もいるが)。
時には「自分も選ぶ側になりたい」と思うこともあるのでは?
ちょうど、選ばれる側になりがちな、もとの世界の女性達の間で『逆ハーレム』という『選べる側になる(もしくは最後まで選ばず、囲まれたまま終わる)』設定が好まれるように。
(やっぱり、ハーレム物でいこう。それで、おとなしくて控えめで可愛くて、主人公を優しく大切に扱って、時に慰め、時に励まし、一途にお仕えしてくれるヒロインをメインに持ってくる。…………一応、なじみのある肉食系女子も入れておいたほうが、とっつきやすいかな? 日本の少女小説や漫画でも『プライドの高い俺様系ヒーローが、ヒロインの前でだけはデレて素直になる』って、定番だし。その逆バージョンと考えれば…………あ、ツンデレお嬢様系?)
最初は積極的な肉食系女子にふりまわされながらも、成長するにつれ、か弱い女性を守れるような強さを得て、立身出世も果たす…………そんなストーリーでいってみよう。
(問題は舞台設定…………流行は未来世界だけれど…………)
未来世界なら、透子は簡単だ。それこそ日本を舞台に書けばいい。
しかし日本社会をそのまま書いて、どこまでこの世界の読者に理解できるだろう。
(スマホとかパソコンとか…………一から説明する必要があるし、説明してもイメージが伝わるか微妙だし…………そっくり日本を持ってくると、世界の説明だけで終わりそう…………)
そもそもスマホなんて、毎日、使っていても、その仕組みはさっぱりな代物だ。
それよりも貸本みたいなスチームパンク系の世界設定にしたほうが、イメージがわきやすいだろう。
透子はそのまま構想を練りつづけ、日が暮れているのにも気づかなかった。
「ただいま」という玄関の紅霞の声で我に返る。
「おかえりなさい!」
慌てて玄関に迎えに行き…………とんでもない事実に気がついた。
「すみません! 少し待ってください!! 夕食の支度を忘れていました…………!」
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