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8話 決意
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8話 決意
夜会からマキシム様に送られて家に帰ると、なぜか両親はすでに彼がロックスフォード家の子息だと知っていました。あたふたと挨拶を交わす両親の横で、妹と弟は彼の顔を見てまた泣き出し我が家は大騒ぎです。
その日は結局、まともに彼と話ができないままでした。
一体わたしの何を気に入って、結婚などと言い出したのでしょう。ベッドの中でいくら考えても答えなど出るはずもなく、私はいつの間にか眠っていました。
翌日もさらに次の日も、マキシム様は我が家に獲物を持ってきてくださいました。鹿、鶏、さまざまな野菜や果物。我が家の食卓は彼のおかげで突然豪華になり、私が食料を探す必要はなくなりました。
そして嬉しいことに、デュークとの縁談は白紙に戻ったようです。このサーシェルという地方都市では大貴族であるカザック家も、王国の要であるロックスフォード家には敵わないと悟ったようでした。それ以降、デュークは私を見かけると逃げるように立ち去るようになりました。ざまぁみろです。
残った問題はただひとつ。マキシム様のことです。
夜会の翌週には視察でいらっしゃったアーカス様は首都に帰られました。しかし、マキシム様率いる第4騎士団は災害支援のためにサーシェルに留まることになったのです。
* * *
最初、この縁談はなんとしても断るつもりでした。だってそうでしょう?私の家とロックスフォード家では格も位も違いすぎます。それこそ持参金だって、いくらになるか分かりません。
「そんなものいらん。」
ある日、両親とともに縁談を断るつもりでその話をするとマキシム様は不思議そうな顔でそうおっしゃいました。
「しかし、ロックスフォード家に嫁ぐとなればそれなりに揃えなくてはならないでしょう?持参金がなければ衣装や生活必需品さえ揃えられません。」
「必要なものはこちらで全て揃える。なにも心配することはない。」
彼の眼差しはいつだって真っ直ぐで、私は貴族の建前などどうでもよくなってしまったのです。
「マキシム様はどうしてそこまでしてくださるのですか?私は何も持っていません。美しい容姿も貴族の位も、もちろんお金もありません。私を妻にしても何も得がないのですよ?」
自分で言っておきながら悲しくなってしまいました。しかし、マキシム様はさらに不思議そうな顔になるのです。
「俺は君がいてくれたらそれでいい。それ以外に必要なものがあるのか?」
あまりに正直な言葉に私も両親も何も言えなくなってしまったのです。
毎日毎日我が家にやってくるマキシム様と話していると、彼が大貴族であることを忘れてしまうのです。いい意味で気安くて妹と弟も少しずつ慣れてきたらしく、最近では一緒になって遊んだりしています。
彼といろんな話をしました。怖い顔のせいでお見合い相手に泣かれたこと。アーカス殿下との出会い。ご両親のこと。
決して同情ではありません。でも、好きになったという気持ちとも違うと思います。
ただこの人は私が居てあげないとダメかもしれないと思ってしまったんです。この気持ちをなんと言ったらいいのでしょうか。
若い頃の私には分かりませんでした。
縁談を受けるかどうかを判断するためと言いながら、彼の両親に会いに行くことになった頃には私の気持ちは決まっていました。
そのあとはあっという間でした。ご両親は泣きながら私を歓迎してくれて、その優しさに彼の人の良さの源を見た気がしました。
「縁談をお受けします。どうぞよろしくお願いいたします。」
私の返事にマキシム様とご両親はまた泣きながら喜んでくださいました。
結婚するまでも、してからも、息子たちが生まれてからも。私はずっと幸せです。これが愛じゃなくて、一体なんだというのでしょう。
夜会からマキシム様に送られて家に帰ると、なぜか両親はすでに彼がロックスフォード家の子息だと知っていました。あたふたと挨拶を交わす両親の横で、妹と弟は彼の顔を見てまた泣き出し我が家は大騒ぎです。
その日は結局、まともに彼と話ができないままでした。
一体わたしの何を気に入って、結婚などと言い出したのでしょう。ベッドの中でいくら考えても答えなど出るはずもなく、私はいつの間にか眠っていました。
翌日もさらに次の日も、マキシム様は我が家に獲物を持ってきてくださいました。鹿、鶏、さまざまな野菜や果物。我が家の食卓は彼のおかげで突然豪華になり、私が食料を探す必要はなくなりました。
そして嬉しいことに、デュークとの縁談は白紙に戻ったようです。このサーシェルという地方都市では大貴族であるカザック家も、王国の要であるロックスフォード家には敵わないと悟ったようでした。それ以降、デュークは私を見かけると逃げるように立ち去るようになりました。ざまぁみろです。
残った問題はただひとつ。マキシム様のことです。
夜会の翌週には視察でいらっしゃったアーカス様は首都に帰られました。しかし、マキシム様率いる第4騎士団は災害支援のためにサーシェルに留まることになったのです。
* * *
最初、この縁談はなんとしても断るつもりでした。だってそうでしょう?私の家とロックスフォード家では格も位も違いすぎます。それこそ持参金だって、いくらになるか分かりません。
「そんなものいらん。」
ある日、両親とともに縁談を断るつもりでその話をするとマキシム様は不思議そうな顔でそうおっしゃいました。
「しかし、ロックスフォード家に嫁ぐとなればそれなりに揃えなくてはならないでしょう?持参金がなければ衣装や生活必需品さえ揃えられません。」
「必要なものはこちらで全て揃える。なにも心配することはない。」
彼の眼差しはいつだって真っ直ぐで、私は貴族の建前などどうでもよくなってしまったのです。
「マキシム様はどうしてそこまでしてくださるのですか?私は何も持っていません。美しい容姿も貴族の位も、もちろんお金もありません。私を妻にしても何も得がないのですよ?」
自分で言っておきながら悲しくなってしまいました。しかし、マキシム様はさらに不思議そうな顔になるのです。
「俺は君がいてくれたらそれでいい。それ以外に必要なものがあるのか?」
あまりに正直な言葉に私も両親も何も言えなくなってしまったのです。
毎日毎日我が家にやってくるマキシム様と話していると、彼が大貴族であることを忘れてしまうのです。いい意味で気安くて妹と弟も少しずつ慣れてきたらしく、最近では一緒になって遊んだりしています。
彼といろんな話をしました。怖い顔のせいでお見合い相手に泣かれたこと。アーカス殿下との出会い。ご両親のこと。
決して同情ではありません。でも、好きになったという気持ちとも違うと思います。
ただこの人は私が居てあげないとダメかもしれないと思ってしまったんです。この気持ちをなんと言ったらいいのでしょうか。
若い頃の私には分かりませんでした。
縁談を受けるかどうかを判断するためと言いながら、彼の両親に会いに行くことになった頃には私の気持ちは決まっていました。
そのあとはあっという間でした。ご両親は泣きながら私を歓迎してくれて、その優しさに彼の人の良さの源を見た気がしました。
「縁談をお受けします。どうぞよろしくお願いいたします。」
私の返事にマキシム様とご両親はまた泣きながら喜んでくださいました。
結婚するまでも、してからも、息子たちが生まれてからも。私はずっと幸せです。これが愛じゃなくて、一体なんだというのでしょう。
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