双子獣人は番も双子でした。。~少女たちは、異世界で虎に溺愛され初めての愛を知る~

塔野明里

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第一章

3話 運命の番

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 私達は8匹のゴブリンを討伐する為に森に入りました。

「あっ、ママ。 人がゴブリンに襲われてるかも!」

「まぁ大変、急ぎましょう!」


 私達はゴブリンに気付かれない様に近づいて、木陰から様子を伺います。
 馬車が停まっていて、ゴブリン達に囲まれていました。
 8匹のゴブリンが、2人の成人男性と対峙しています。

 若い男の剣は折れ、もう1人の中年男は操車用の鞭を持っています。
 戦うと言うよりも、もてあそばれてる感じがしました。


 私はメアリィに目配せして、ゴブリン達に向けて【癇癪玉】を投げることにします。

(3、2、1、それっ!)
(はいっ!)

 ビュンッ! 

 とスリングが風きり音を鳴らしました。
 2つの【癇癪玉】はゴブリン達に向かって、真っ直ぐ飛んで行きます。
 そしてゴブリン達に直接当って、お粉がうまく巻き上がりました。

 バッフン! ブッシャァァァッ!

「ヒギャアアアアアッ……」
「ゲフンッ、ゲフンッ、ゲフンッ、ゲフンッ……!」
「ウゲゲゲゲーッ……!」

 ゴブリン達は動きを止めて、目をこすり鼻や口から激しくむせて、のたうち回っています。


「みんな、魔法攻撃よっ!」

 私とスズちゃんは【石弾】、ケンちゃんは【火弾】、ピーちゃんは【氷弾】を撃ちました。

 ヒュゥゥゥッ、ドォンッ!
 ボワッ、シュゥゥゥッ、バァンッ!
 パリッパリッ、キィィィンッ、ダァンッ!


 あっと言う間に、ゴブリン達の体力は残り僅かに成りました。
 ルイス、ケンちゃん、スズちゃん、ルディくんが武器で止めを刺します。

 ズッシャァァァッ! ビッシュゥゥゥッ!
「ウギャアアアアアッ!」


 ゴブリンと対峙していた2人の男も【癇癪玉】の影響を受けてちょっと苦しんでいました。

「2人の男を【状態異常回復】!」

 シュィイイイイインッ!

「はぁぁ、気持ちいい!」
「おおぅ、楽に成りました。ありがとう御座います」


 馬車の中には、低学年ぐらいの男の子と女の子がいます。

「もう大丈夫だよ」

「「……」」

 2人はおびえて喋れません。

 襲われていた4人にミルクを飲ませクッキーを食べさせると、彼らはようやく落ち着いてきました。


「襲われたのは4人だけだったのですか?」

「いいえ……」

 助けられたお父さんが馭者を見ます。

「馭者と護衛の冒険者と父子の5人でした。護衛の冒険者は1人で逃げてしまいました」

「そうですか……」



 馬と馬車は無事なので、魔石や討伐部位を回収して一緒に街に帰る事にします。

「危ない所を助けて頂き感謝致します」

「いいえ、たまたま通り掛って良かったです」

「その……子供ばかりですけど、森で何をしてらしたのですか?」

「レベリングだよ」
 私が抱いていたケンちゃんが、喋ってしまいました。

「うわっ、ビックリしたぁ!」
 男の子が驚きました。


「驚かしてご免なさい。魔道具人形だと思って下さいね」

「うん……」


「私達はこの近くで冒険者の練習をしてたのです。この動物も仲間なのですよ」

「キュルキュルゥ」(よろしくぅ)

 助けられた子供達は大型犬サイズのカピバラから目が離せません。


「大きいけど大人しいので安心してね」

「「はい……」」


「マリちゃん、マジックバッグがLV2になったよ。『収容量アップ、1メートル以内の物を触れずに出し入れ出来る』だって」

「ふ~ん、それじゃあ回復薬をだして頂戴な」

「オッケー」

 シュィイイインッ!

「はい、マリちゃん」

 ケンちゃんは手の上に出現したポーションをマリエルに渡しました。


 助けられたお父さんは腕に切り傷があって、服に血が付いていたのです。

「この回復薬をどうぞ」

「有難う御座います。でも、私には身に余る高価な物なので御遠慮致します」


「そう……じゃあ、お父さんの傷を【消毒】【治療】【再生】!」

 シュィイイイイインッ!

「うわあっ!?……凄い、跡形も無く傷が直ってる!」


「お父さんの服を【洗浄】【乾燥】【修復】!」

 シュワワワワッ、ヒュゥゥゥゥゥッ、ピッキィィィィィンッ!


「おおっ! 服がこんなに綺麗に元通りに成りました! まるで新品の様です」

「良かったねぇ」


「どうも有難う御座います。高貴な方とは思いましたが、貴方様は王宮の聖女様なのですね」

 彼はマリエルに対して、馬車の中だが深くお辞儀をしました。


「違いますよ、私は普通の9歳の女の子です」(中身はもう25歳ですけどっ!)

「そうですか……」(お忍びなのかな?)


 パッパカパーン!

「今の治療でレベルが上がったわ! 投擲LV1が増えて、光属性魔法がLV6になったの!」

「お嬢様LV6だなんて凄いです! 初めて聞きしました」

「そうなの、ルイス?」

「はい、王宮の聖女様でも光属性魔法LV5だと聞いてますっ!」

「……ゲッ! 皆さん、私は見間違いしたかも知れません。今の話は忘れてくださぁぁい!」

「「「は~い」」」


「ねぇねぇ、お姉ちゃん。 聖女様じゃ無かったの?」
 助けた女の子に聞かれました。

「うん、間違いなの」

「そう、聖女様に成れる様に頑張ってね」

「うん、ありがとう」




 馬車は街の南門をくぐり城下に入りました。

「それじゃあ、私達はここで失礼します。 さようなら」

「どうも有難う御座いました。どうか、お名前をお聞かせ下さいませ」

「通りすがりの見習い冒険者グループで、名乗るほどの者ではありません。 ごきげんよう」


「「お姉ちゃんありがとう」」
「クッキー美味しかったよ~。またね~」

「またね~」
「バイバ~イ」
「キュルキュル~!」
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