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第28話 公爵と裁判
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第28話 公爵と裁判
その日、カルディアナ王国王城には国中の貴族たちが集まっていた。ある者は戦々恐々とし、またある者はザマァみろと思いながら。
これから国王と皇后の前で開かれるのは貴族裁判。この裁判が注目されるのは、被告人が国の第二王子であること。そして、この裁判の結果次第でこの王国の未来が決まるであろうということ。
そしていま、騎士に連れられカミーユ王子が入廷する。
* * *
王座に腰掛ける国王、皇后は揃って顔面蒼白だ。第二王子であるはずのカミーユはその美貌の面影もないほどやつれていた。ボロボロの服、汚らしい髪。
それを見た周りの貴族たちは皆息を飲んでいる。しかし驚いた顔の裏で笑いを堪えている者がいるのを第一王子のカイン、そしてこの事件の被害者であるクローディアスは見逃さない。
「はは、いい気味ぃ。皆笑ってあげればいいのにぃ。」
「お前は本当に性格が悪いな。」
王座の目の前に跪き、カミーユはうなだれている。実の息子の変わり果てた姿に、皇后アビゲイルは涙を堪えていた。
「僕なんてかわいいものでしょ?これから君が彼らにすることに比べたらさぁ。」
ニヤニヤと嘲笑うカインを睨みつけると、観念したように第一王子は立ち上がる。カインが合図をすると、その場にいる者は皆静まり返り、今か今かと待ちわびていた。
「これよりカルディアナ王国貴族裁判を開廷する。被告人カミーユ・カルディアナ。罪状はフェルナンド公爵邸への放火、及びフェルナンド公爵が後見人を務める渚嬢の誘拐、強姦未遂。」
スラスラと罪状を読み上げるカイン。その話し方ができるなら、いつもそれで話せ。
「父上!これは何かの間違いです!私がそんなことをするはずがないではないですか!」
涙を浮かべ無実を訴えるカミーユ。あの男の手が渚に触れたかと思うと吐気さえ覚える。左手首にくっきりとついた手形。震える彼女の涙。
絶対に許さない。
「しかし、カミーユよ…。目撃者もいるのだ。」
「すべてデタラメです!私は騙されたのです!」
その時、騎士に連れられ一人の女が入廷した。彼女もまたひどくやつれ、元の面影はない。
「ルディア・タナリー!この女に私は騙されたのです!」
泣き崩れる女。かつては社交界の華とまで言われた女ももう終わりだ。
「タナリー侯爵邸からフェルナンド公爵邸の見取り図とカミーユ宛の手紙、そして皇后宛の手紙が見つかりました。」
「わた、私は関係ない!そんなもの知らないわ!」
広間に響いたのは皇后アビゲイルの悲鳴のような声。隣に座る国王は驚愕の顔で妻を見つめている。
「アビゲイル…そなた…。」
「知らない!そんな女知らないわ!」
それを聞いてルディア・タナリーは声を上げ泣き崩れた。
「同じ見取り図を公爵邸に火を放った二人組が持っていました。彼らは放火のあと渚嬢をカミーユの別邸に運び込んだ。」
「嘘だ!」
カミーユの叫びを無視してカインは罪状を読み上げる。
「渚嬢を脅迫し関係を迫った。しかし断られ無理やり押し倒したところを騎士たちに連行された。」
「違う!あの女がせまってきたんだ!火事から救い出した私に体を捧げると!」
思い切り拳を握りしめる。本当に、コイツは救いようがない。
「カインもういい。」
「…もういいの?せっかくいいところなのにぃ。」
立ち上がり、一歩前に出るとざわめいていた会場が静かになった。
「国王陛下。カミーユ王子の判決はいかがされますか?」
「フェルナンド公爵、そなたの怒りは分かる。しかし本人の意見を聞かなければ……。」
知っていた。国王がこの馬鹿を庇うことは。皇后の前では余計にカミーユに重い罰は与えられないだろう。
「陛下。先日のタリシアン共和国との協議の結果をご報告していませんでした。いまこの場でお伝えしてもよろしいでしょうか?」
「……フェルナンド公爵?それとこの裁判に一体なんの関係が…。」
「タリシアン共和国は、カルディアナ王国と平和協定を結ぶことに納得してくださいました。」
貴族たちから喜びの声が上がる。タリシアン共和国は貿易国として取引する利益は大きい。
「しかし、それには一つの条件があります。」
跪き、それでも私を睨みつけているカミーユを睨み返した。
「カミーユ王子が王位継承権を放棄すること。タリシアン共和国の要望はそれだけです。」
カミーユだけでなく、国王、皇后、そしてカミーユを支持していた貴族たち。皆声を失ったように静かになった。
「国王、判断をお願いいたします。」
震えながら国王は黙り込んだ。さて、コイツの一言でこの国の未来が決まる。
その日、カルディアナ王国王城には国中の貴族たちが集まっていた。ある者は戦々恐々とし、またある者はザマァみろと思いながら。
これから国王と皇后の前で開かれるのは貴族裁判。この裁判が注目されるのは、被告人が国の第二王子であること。そして、この裁判の結果次第でこの王国の未来が決まるであろうということ。
そしていま、騎士に連れられカミーユ王子が入廷する。
* * *
王座に腰掛ける国王、皇后は揃って顔面蒼白だ。第二王子であるはずのカミーユはその美貌の面影もないほどやつれていた。ボロボロの服、汚らしい髪。
それを見た周りの貴族たちは皆息を飲んでいる。しかし驚いた顔の裏で笑いを堪えている者がいるのを第一王子のカイン、そしてこの事件の被害者であるクローディアスは見逃さない。
「はは、いい気味ぃ。皆笑ってあげればいいのにぃ。」
「お前は本当に性格が悪いな。」
王座の目の前に跪き、カミーユはうなだれている。実の息子の変わり果てた姿に、皇后アビゲイルは涙を堪えていた。
「僕なんてかわいいものでしょ?これから君が彼らにすることに比べたらさぁ。」
ニヤニヤと嘲笑うカインを睨みつけると、観念したように第一王子は立ち上がる。カインが合図をすると、その場にいる者は皆静まり返り、今か今かと待ちわびていた。
「これよりカルディアナ王国貴族裁判を開廷する。被告人カミーユ・カルディアナ。罪状はフェルナンド公爵邸への放火、及びフェルナンド公爵が後見人を務める渚嬢の誘拐、強姦未遂。」
スラスラと罪状を読み上げるカイン。その話し方ができるなら、いつもそれで話せ。
「父上!これは何かの間違いです!私がそんなことをするはずがないではないですか!」
涙を浮かべ無実を訴えるカミーユ。あの男の手が渚に触れたかと思うと吐気さえ覚える。左手首にくっきりとついた手形。震える彼女の涙。
絶対に許さない。
「しかし、カミーユよ…。目撃者もいるのだ。」
「すべてデタラメです!私は騙されたのです!」
その時、騎士に連れられ一人の女が入廷した。彼女もまたひどくやつれ、元の面影はない。
「ルディア・タナリー!この女に私は騙されたのです!」
泣き崩れる女。かつては社交界の華とまで言われた女ももう終わりだ。
「タナリー侯爵邸からフェルナンド公爵邸の見取り図とカミーユ宛の手紙、そして皇后宛の手紙が見つかりました。」
「わた、私は関係ない!そんなもの知らないわ!」
広間に響いたのは皇后アビゲイルの悲鳴のような声。隣に座る国王は驚愕の顔で妻を見つめている。
「アビゲイル…そなた…。」
「知らない!そんな女知らないわ!」
それを聞いてルディア・タナリーは声を上げ泣き崩れた。
「同じ見取り図を公爵邸に火を放った二人組が持っていました。彼らは放火のあと渚嬢をカミーユの別邸に運び込んだ。」
「嘘だ!」
カミーユの叫びを無視してカインは罪状を読み上げる。
「渚嬢を脅迫し関係を迫った。しかし断られ無理やり押し倒したところを騎士たちに連行された。」
「違う!あの女がせまってきたんだ!火事から救い出した私に体を捧げると!」
思い切り拳を握りしめる。本当に、コイツは救いようがない。
「カインもういい。」
「…もういいの?せっかくいいところなのにぃ。」
立ち上がり、一歩前に出るとざわめいていた会場が静かになった。
「国王陛下。カミーユ王子の判決はいかがされますか?」
「フェルナンド公爵、そなたの怒りは分かる。しかし本人の意見を聞かなければ……。」
知っていた。国王がこの馬鹿を庇うことは。皇后の前では余計にカミーユに重い罰は与えられないだろう。
「陛下。先日のタリシアン共和国との協議の結果をご報告していませんでした。いまこの場でお伝えしてもよろしいでしょうか?」
「……フェルナンド公爵?それとこの裁判に一体なんの関係が…。」
「タリシアン共和国は、カルディアナ王国と平和協定を結ぶことに納得してくださいました。」
貴族たちから喜びの声が上がる。タリシアン共和国は貿易国として取引する利益は大きい。
「しかし、それには一つの条件があります。」
跪き、それでも私を睨みつけているカミーユを睨み返した。
「カミーユ王子が王位継承権を放棄すること。タリシアン共和国の要望はそれだけです。」
カミーユだけでなく、国王、皇后、そしてカミーユを支持していた貴族たち。皆声を失ったように静かになった。
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