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第10話 人形の噂話
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第10話 人形の噂話
「おはようございます。」
フェルナンド家大きな屋敷の玄関前でクロードを見送ったあと、使用人の方たちに挨拶をしながら二階に戻る。掃除や食後の片付けの手を止め、皆さん私へ挨拶を返してくれる。
市民権を得たあとも、基本的に私の生活は変わらなかった。大きな屋敷の二階にある書庫やクロードの執務室に行くことが増えたくらい。二階に上がれる使用人さんは少ないので、顔を合わせるのは彼の見送りと迎えのときが多い。
「ねぇ奥様って呼んではいけないのよね?」
私が二階に上がると、階下から使用人さんたちの話し声が聞こえてきた。
「しーっ!それはダメだとご当主様から言われているでしょ!」
「どうしてダメなのかしら?あんなに仲睦まじいのに。美男美女で目の保養になるわぁ。」
美男美女?一体なんの話をしているのだろう?
「とにかく、ダメなものはダメよ。正式に婚約されてる訳ではないんだから…。」
婚約?やっぱり何の話か分からなかった。
* * *
「それでぇ?いつ結婚するの?」
近頃、王城の第一執務室には招かれざる客が居座っている。そのせいで私以外の貴族はここに寄りつかなくなった。
第一王子としての仕事を一体誰に押し付けているのか。そいつが不憫で仕方ない。
「カイン王子には関係ないことですから。」
「関係ないわけないじゃん。せっかく助言してあげたのにぃ。冷たいなぁ。」
こいつのせいで帰宅時間が一時間は遅くなっている。彼女は文句も言わず待ってくれているのだ。今日こそ早く帰りたい。
「まぁただの後見人としか思われてないのに結婚なんて無理かぁ。一緒に暮らしてもう3ヶ月なのにねぇ。」
ゲホっ、ゲホっっ。飲んでいた紅茶が気管に入った。
「なっ、なぜそれをっ!」
「君はいつも僕の能力をちょっと過小評価してるよねぇ。このくらいなら僕にだって調べられるよぉ。でも、肝心な愛しの君の姿は誰も見たことないんだって。」
当たり前だ。彼女は私の屋敷から一歩も外へ出ていないのだから。使用人たちにはキツく箝口令をしいている。
「会いたいなぁ。君の氷を溶かした愛しの君。いつ会わせてくれるの?」
「誰が会わせるか。」
ドタドタドタドタっ!バンっ!!
「俺も会いたい!というか会わせろ!!」
招かれざる客二人目。こいつらのせいで仕事は溜まるばかりだ。
「トラヴィスおはよぉ。朝から汗だくだねぇ。」
「朝六時から訓練しているからな!」
この暑苦しい男はトラヴィス・ウェイン。この王国の騎士であり戦闘狂。真っ赤な髪とその背丈の高さと筋骨隆々な身体。戦場で大剣を振りかざし返り血を浴びて笑っている姿はまさに化物だ。
金髪翠瞳のカイン、赤髪のトラヴィス、アイスブルーの髪と瞳の私。同い年であり、幼なじみである私たちは色んな意味で目立つ。これでまた今日も私一人で仕事をする羽目になった。
「なら永遠に訓練してろ。ここへ来るな。」
「やっぱり凄い美人なのか?それとも可愛い系か?お前の女の趣味なんてさっぱり分からん!」
幼馴染3人揃って独身のまま30歳になっていた。こんな奴らに渚を会わせてたまるか。
第二王子であるカミーユとともに大好きな前線に行っていたトラヴィスは、帰ってきてからずっとこの調子だ。さっさと戦場に戻ればいい。
「僕は可愛い系だと思うなぁ。クローディアスって可愛いもの好きだしぃ。」
「なら気をつけないとな!カミーユは可愛いらしい女が大好きだ!」
第二王子であるカミーユが帰都して早一週間。今のところ接触はない。
しかし絶対にこのままで終わるはずがない。私を恨んでいることは間違いないのだから。
「で!?いつ会わせてくれるんだ?」
「お茶会とかしようよぉ。君のだだっ広い屋敷でさぁ。」
うるさい二人を無視して仕事を始める。今日こそ帰宅時間を早めるために。
「おはようございます。」
フェルナンド家大きな屋敷の玄関前でクロードを見送ったあと、使用人の方たちに挨拶をしながら二階に戻る。掃除や食後の片付けの手を止め、皆さん私へ挨拶を返してくれる。
市民権を得たあとも、基本的に私の生活は変わらなかった。大きな屋敷の二階にある書庫やクロードの執務室に行くことが増えたくらい。二階に上がれる使用人さんは少ないので、顔を合わせるのは彼の見送りと迎えのときが多い。
「ねぇ奥様って呼んではいけないのよね?」
私が二階に上がると、階下から使用人さんたちの話し声が聞こえてきた。
「しーっ!それはダメだとご当主様から言われているでしょ!」
「どうしてダメなのかしら?あんなに仲睦まじいのに。美男美女で目の保養になるわぁ。」
美男美女?一体なんの話をしているのだろう?
「とにかく、ダメなものはダメよ。正式に婚約されてる訳ではないんだから…。」
婚約?やっぱり何の話か分からなかった。
* * *
「それでぇ?いつ結婚するの?」
近頃、王城の第一執務室には招かれざる客が居座っている。そのせいで私以外の貴族はここに寄りつかなくなった。
第一王子としての仕事を一体誰に押し付けているのか。そいつが不憫で仕方ない。
「カイン王子には関係ないことですから。」
「関係ないわけないじゃん。せっかく助言してあげたのにぃ。冷たいなぁ。」
こいつのせいで帰宅時間が一時間は遅くなっている。彼女は文句も言わず待ってくれているのだ。今日こそ早く帰りたい。
「まぁただの後見人としか思われてないのに結婚なんて無理かぁ。一緒に暮らしてもう3ヶ月なのにねぇ。」
ゲホっ、ゲホっっ。飲んでいた紅茶が気管に入った。
「なっ、なぜそれをっ!」
「君はいつも僕の能力をちょっと過小評価してるよねぇ。このくらいなら僕にだって調べられるよぉ。でも、肝心な愛しの君の姿は誰も見たことないんだって。」
当たり前だ。彼女は私の屋敷から一歩も外へ出ていないのだから。使用人たちにはキツく箝口令をしいている。
「会いたいなぁ。君の氷を溶かした愛しの君。いつ会わせてくれるの?」
「誰が会わせるか。」
ドタドタドタドタっ!バンっ!!
「俺も会いたい!というか会わせろ!!」
招かれざる客二人目。こいつらのせいで仕事は溜まるばかりだ。
「トラヴィスおはよぉ。朝から汗だくだねぇ。」
「朝六時から訓練しているからな!」
この暑苦しい男はトラヴィス・ウェイン。この王国の騎士であり戦闘狂。真っ赤な髪とその背丈の高さと筋骨隆々な身体。戦場で大剣を振りかざし返り血を浴びて笑っている姿はまさに化物だ。
金髪翠瞳のカイン、赤髪のトラヴィス、アイスブルーの髪と瞳の私。同い年であり、幼なじみである私たちは色んな意味で目立つ。これでまた今日も私一人で仕事をする羽目になった。
「なら永遠に訓練してろ。ここへ来るな。」
「やっぱり凄い美人なのか?それとも可愛い系か?お前の女の趣味なんてさっぱり分からん!」
幼馴染3人揃って独身のまま30歳になっていた。こんな奴らに渚を会わせてたまるか。
第二王子であるカミーユとともに大好きな前線に行っていたトラヴィスは、帰ってきてからずっとこの調子だ。さっさと戦場に戻ればいい。
「僕は可愛い系だと思うなぁ。クローディアスって可愛いもの好きだしぃ。」
「なら気をつけないとな!カミーユは可愛いらしい女が大好きだ!」
第二王子であるカミーユが帰都して早一週間。今のところ接触はない。
しかし絶対にこのままで終わるはずがない。私を恨んでいることは間違いないのだから。
「で!?いつ会わせてくれるんだ?」
「お茶会とかしようよぉ。君のだだっ広い屋敷でさぁ。」
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