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1章 春嬢編
幕間2
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幕間2
マリアが春嬢をやめた。その話題は城下町中にあっという間に広まり、町中の男たちが泣いたとかいないとか。
もともと彼女は住むところがなくて、娼館を選んだだけ。住み込みで経験があり、大金を稼げる。じゃなきゃあんな娘が春嬢なんてするはずない。
まだうっすらと青アザの残る頬を撫でながら、私は窓から王城を眺めていた。
『リリス、今まで本当にありがとう。』
お礼を言うのは私の方なのに。怪我の治療費も休む間の賃金まで補償されるなんて前代未聞だ。私を殴ったのが貴族だったなら、なおさら泣き寝入りするしかない。
すべてマリアのおかげ。そう言っても彼女は否定してたけど。
春嬢を辞め、王城で働くと聞いてもそれほど驚かなかった。マリアが国王陛下に呼ばれ、何をしていたのかは最後まで分からなかったけど、今までで一番いきいきしてたから心配はしていない。
マリアは他の女たちとは違った。こんな場所なのに働くのが楽しそうで、その笑顔には嘘がなかった。
それでもなんとなく彼女を放っておけなかったのは、なんだか彼女が淋しそうだったからかもしれない。
家族もなく帰る場所もない。そんなやつ大勢いる。仕事があって、唯一の家族である妹もいる私は恵まれているほうだ。
ひとり帰る場所もなく、心の内を隠しているマリアは強そうで、しかし儚げだった。
あの子が自分の場所を見つけられたのなら、私も嬉しい。いま少し淋しいのはここを先に出ていった彼女に対する嫉妬のようなものだ。
いつか必ずここを自分の力で出ていこう。妹と暮らす夢を叶え、彼女に会いにいこう。
仕事仲間ではなく、友達として胸を張って。
マリアが春嬢をやめた。その話題は城下町中にあっという間に広まり、町中の男たちが泣いたとかいないとか。
もともと彼女は住むところがなくて、娼館を選んだだけ。住み込みで経験があり、大金を稼げる。じゃなきゃあんな娘が春嬢なんてするはずない。
まだうっすらと青アザの残る頬を撫でながら、私は窓から王城を眺めていた。
『リリス、今まで本当にありがとう。』
お礼を言うのは私の方なのに。怪我の治療費も休む間の賃金まで補償されるなんて前代未聞だ。私を殴ったのが貴族だったなら、なおさら泣き寝入りするしかない。
すべてマリアのおかげ。そう言っても彼女は否定してたけど。
春嬢を辞め、王城で働くと聞いてもそれほど驚かなかった。マリアが国王陛下に呼ばれ、何をしていたのかは最後まで分からなかったけど、今までで一番いきいきしてたから心配はしていない。
マリアは他の女たちとは違った。こんな場所なのに働くのが楽しそうで、その笑顔には嘘がなかった。
それでもなんとなく彼女を放っておけなかったのは、なんだか彼女が淋しそうだったからかもしれない。
家族もなく帰る場所もない。そんなやつ大勢いる。仕事があって、唯一の家族である妹もいる私は恵まれているほうだ。
ひとり帰る場所もなく、心の内を隠しているマリアは強そうで、しかし儚げだった。
あの子が自分の場所を見つけられたのなら、私も嬉しい。いま少し淋しいのはここを先に出ていった彼女に対する嫉妬のようなものだ。
いつか必ずここを自分の力で出ていこう。妹と暮らす夢を叶え、彼女に会いにいこう。
仕事仲間ではなく、友達として胸を張って。
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