売られた公爵令嬢と辺境伯の秘密

塔野明里

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1巻

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   プロローグ 朝チュン


 目が覚めたとき、私が最初に見たのは長い黒髪でした。
 朝陽にきらめくその髪は、まるで黒曜石のような輝きを放っていました。
 それは私の髪ではありません。私の髪は菫色すみれいろで、亡くなった母から譲り受けた大切な家族のあかし寝惚ねぼけていても見間違えることはないはずです。
 ということは、これは誰の髪かしら?
 昨晩、私は誰と何をしていたのでしたっけ?
 次に見えたのは、見覚えのない天井でした。美しい装飾の施された柱に支えられた天井とそこに描かれた絵を見つめていると、ピリと身体に痛みが走りました。

「痛い……っ」

 身体の真ん中、おヘソより下のところ。ジクジクと痛む下腹部に手を伸ばすと、自分が何も身につけていないことに気がつきました。
 寝着はおろか、下着すらも穿いていません。

「私……」
「……ん」

 昨夜のことを必死で思い出そうとしていると、突然隣から声がしました。寝返りを打ち、こちらを向いた男性の寝顔。すっと通った鼻筋と彫りの深い顔立ち、薄い唇が小さく何かを呟きます。

「んん、……、ん……?」

 黒髪の隙間から切れ長な目がのぞきました。うっすらと開かれた瞳は私の知っている色と違います。
 昨夜は金色だった瞳が、今は黒色になっていました。

「ヨル様……?」

 頭の中を駆け巡る昨日の記憶。身売り、馬車、娼館、狼……そして……
 そのとき彼が、がばっと身体を起こしました。

「な、な……なんだ……?」

 起き上がった彼もやはり何も身につけていません。盛り上がった筋肉とたくましい腕。昨日その腕に抱きしめられたことを思い出し、顔が熱をもつのを感じました。

「あの……」
「こんなところで何をしている……!?」

 突然の怒鳴り声に私は固まってしまいました。何をと言われても……。どう答えればいいのか分かりません。

「ヨル様……あの……」
「ヨル……? 今私を『夜』と呼んだのか……!?」

 その途端、すごい形相で睨みつけられました。昨晩そう呼ばれていると言ったのは、貴方のはずなのに……?

「私をあんな化け物と一緒にしないでくれ! 君は一体何者だ! 誰の許可を得てここにいる!」

 再び怒鳴りつけられ、ビクリと身体が震えました。

「どうして? 私をここに連れてきたのはヨル様ではありませんか」
「は……?」

 そのとき、部屋のドアが乱暴にノックされました。

「アルベール様? いかがなさいましたか?」

 扉の向こうから男性の声がします。他にも若い女性の声が聞こえます。昨夜は人の気配なんてまったくなかったはずなのに。

「入ってもよろしいですか?」
「いや! 待て、開けるな!」

 彼が言葉をかける前に、部屋の扉が大きく開きました。

「朝からそんな大声を出して、一体どうしたと……」
「朝からうるさ……」
「……っ!」

 部屋に入ってきたのは、使用人らしき三人でした。
 初老の男性は朝早くにもかかわらずぴっちりと執事服を着て、私を凝視しています。
 その後ろに控えるのは、私と同じ歳くらいの侍女服の女性がふたり。ふたりともこぼれそうなくらいに目を見開いていました。

「ち、違う! ……これは」
「イヤァーーー!?」

 響き渡るふたりの侍女の声に、窓の外で一勢に鳥が飛び立ちました。
 どうしてこんなことになったのでしょう。本当なら今頃、私は娼館に売られているはずだったのに。



   第一章


「ソフィア、お前はこれから娼館へ行く」

 この世界でたったひとり、血の繋がった家族であるはずのお父様から言われた言葉。私は両手を強く握りしめ、必死に涙を堪えていました。

「お前ひとりが犠牲になれば公爵家は救われる。賢いお前なら分かるだろう?」

 父の手に握られた娼館との契約書。そこに書かれた金額はたしかに大金でした。

「でも、どうして私が……!」

 私が必死に上げた抵抗の声は、執務室の扉が開く音に掻き消されました。

「あらぁ? まさか可愛い妹のミッチェルを娼婦にするつもりぃ?」

 父の執務室に現れたのは、趣味の悪い真っ赤なドレスを身につけた義母のミシェーラと義妹のミッチェル。
 お母様亡きあと、このふたりが我が家にやってきたせいで、私の幸せな生活はズタズタに壊されてしまったのです。

「お義姉様、ひどぉい! 私を売るっていうの!?」

 幼い頃に母を亡くした私ソフィア・レスターは、父とふたり、支え合って暮らしていました。
 亡きお母様から受け継いだ菫色すみれいろの髪と瞳。ほんの数年前までは美しく手入れされていたその髪も肌も、今は日焼けしてしまっています。
 レスター家は公爵という爵位をたまわっているものの領地は農作物を作るのには不向きで、父は輸入業をになう商会を作り、商才を発揮していました。
 父は仕事で家を空けることが多い人でした。それでも優しい使用人たちに囲まれ、私は寂しい思いをせずに済んだのです。
 そんな生活が一変したのは、私が十六歳になった年の春のことでした。

「ソフィア、彼女が新しいお母さんだよ」

 大好きな父から嬉しそうに紹介されたのは、私の母とは正反対の女性。
 義母となったミシェーラは真っ赤な髪と派手な顔立ち。連れ子として義妹になったミッチェルも母親に瓜二うりふたつです。ふたりは私を見下すように笑っていました。

「まぁ、お父様には全然似ていないのね。地味な子」
「私、もっと綺麗なお義姉様が良かったぁ」

 ふたりがやってきて、公爵家の資産はすぐに底をつきました。最高級のドレスを仕立て、宝飾品を買い漁るふたりをいさめる使用人を、父は次々と辞めさせていったのです。
 すべての使用人がいなくなったときも義母は笑っていました。

「使用人がいないなら、貴女がやりなさいよ」

 洗濯、掃除、食事の支度まで私がやるようになりました。使用人のように働かされる私を見ても、父は何も言いません。

「お前が働けば、その分ふたりに贅沢をさせられる」

 私を見る冷ややかな視線。優しく家族想いの父はもうどこにもいないのだと思うと涙が止まりませんでした。
 私が娼館に売られたのはそんな生活が二年ほど続き、成人となる十八歳を迎えてすぐのことでした。

「ではお父様、お元気で……」

 出発の日、そう声をかけても父は返事もしませんでした。

「ああ、これでまた新しいドレスが買えるわ」
「新しいネックレスも揃えないと! マリウス様に釣り合うようにしなくちゃ!」

 義妹の言葉にマリウス様のことを思い出し、私はまた泣きたくなります。
 私には幼い頃に決められた婚約者がいました。マリウス・クイール様。我が家と同じく公爵家の次男です。優しく、私のことを大切にしてくれる彼と、たくさんの時間を過ごしました。
 そんな彼も、義妹のミッチェルに会うと私のことなどかえりみなくなりました。使用人のように働かされる私を見て見ぬふりをしていた彼は、呆気なく私との婚約を破棄。新しい婚約者にはもちろん義妹のミッチェルが選ばれました。

「マリウス様のことは私に任せてね。お義姉様は娼婦になって玉の輿を目指せばいいじゃない?」
「アハハ、馬鹿ね。こんな地味な娘に上客がつくと思うの? せいぜい借金の分くらいは働きなさいよ」

 馬車に乗り込むまでずっと、ふたりの笑い声が聞こえていました。

「なんで……どうしてこんな目にあわないといけないの?」

 公爵家のものとはまったく異なる粗末な馬車。座席は硬く、乗ってすぐに腰が痛くなりました。
 私が売られる隣国の娼館までは馬車で二日ほどかかるとのことでした。
 不安げな私に、御者は窓の外から何度も声をかけてきます。

「へへ……大変ですねぇ……お貴族様なのに。娼館に売られるなんてねぇ。大丈夫、お嬢様みたいにお綺麗ならすぐにいい客が付きますからぁ」

 下卑た笑いを浮かべる御者が恐ろしい。こんな男と二晩も過ごさないといけないなんて、頭がおかしくなりそうでした。絶対に馬車の外には出ないようにしよう。そう心に決めていました。
 しかし、その決意もすぐに必要なくなりました。暗くなった森の中、私の乗っていた馬車はいつの間にか現れた狼の群れに取り囲まれていたのですから。

「ひ、……あっちへ行け!! なんだ、狼がいるなんて聞いてねぇぞ!」

 馬車の外から御者の情けない声が聞こえましたが、それもしばらくすると聞こえなくなりました。

「誰か……! 誰か助けて!!」

 そう大きな声を出しても、馬車の外からはなんの返事も聞こえません。
 かわりに聞こえるのは、周りを取り囲む狼たちの唸り声だけ。
 小さな窓からは、月明かりも差さない夜空と真っ黒な森しか見えませんでした。
 ドスンという衝撃と共に狼の息遣いをすぐ近くに感じました。体当たりで扉を破ろうとしているのです。薄い板でできた扉を必死に押さえるけれど、それもいつまでもつか分かりません。

「誰か……たすけて……」

 涙を堪えながら、私は必死に扉を押さえつけることしかできませんでした。
 ところが、突然狼たちが怯え始めたのです。

「どうしたのかしら……? 何かいるの?」

 しばらくすると狼たちの唸り声は聞こえなくなり、かわりにキャンッという悲鳴のような甲高い声がしました。

「あれ……? 音が……」

 そのとき、私はもう二度と太陽を見ることはできないのだと思っていました。家族に捨てられ、守ってくれる人もいない。ここで生き延びることができたとしても待っているのは娼婦として生きる未来だけ。
 そんな私を助けてくれる人がいるなんて、誰が想像できたでしょうか。
 いつの間にか馬車の外からはなんの音も聞こえなくなっていました。すると突然馬車の扉が大きく開いたのです。

「きゃあぁあ!!」

 顔を伏せうずくまる私を、大きな何かが見つめているのを感じました。
 熊でしょうか? それとも何か他の猛獣? 怖くて顔が上げられません。

「ふぅふぅ……ふぅ……おんな……?」
「え……?」

 恐る恐る顔を上げると、そこにいたのは見上げるほど大きな男の人でした。真っ黒な髪がぐちゃぐちゃに乱れているせいでよく顔が見えませんが、服には大きな穴があいています。筋肉質な身体と大きな手。
 あたりを見回しても狼はどこにもいません。

「あ、あの」
「おまえ……かわいい……」
「へ……きゃあ!」

 伸びてきた手にあっという間に抱えられたかと思うと、男は私を抱いたまますごい速さで森の中を駆け始めたのです。
 長く伸びた黒髪が顔を隠しているせいで、男の表情は分かりません。男は、器用に木の枝を避け、ねる泥も気にしていません。
 そのときパッと視界が開けました。深い森の中に、突然大きな屋敷が現れたのです。

「こんなところに……お屋敷があるなんて……」

 深い森の中に似つかわしくない豪華な屋敷に驚いていると、男は迷うことなく玄関から中に入っていきました。シックな内装は、生家の公爵家よりも品良く見えます。
 男は階段を上がり、大きな音を立てて扉を開けます。そこはこの大豪邸の主寝室のようでした。

「きゃっ……!」

 部屋の中央に置かれた大きなベッド。普通の大人なら五人は眠れそうな寝台に私を下ろし、男がじっと見つめてきます。

「ふぅ……ふぅ……」

 静かな部屋に男の息遣いだけが響きます。暗い部屋の中には窓からの月明かりだけ。

「あの……」

 私が声をかけると、男の肩がビクリと震えました。

「先程は……危ないところを助けてくださってありがとうございました」

 男が誰であろうと助けられたことには変わりありません。それがたとえ化け物のような人であっても。

「ここはどこなのでしょう? 私、あの山向こうの街まで行かなくてはいけなくて……」

 そこまで言って言葉が出てこなくなりました。
 本当は行きたくなんかない。私を捨てた家族のために、お金のために娼婦になんかなりたくない。

「うぅ……」

 今頃になって涙が出てきました。狼が怖かったのか、これからの人生が怖かったのか。あとからあとから涙があふれて止まらないのです。

「お前……泣いてるのか?」
「ごめんなさい……どうしたらいいのか、分からなくて……。もう私、死んでしまったほうがいいのかもしれません」

 彼がもし化け物ならば、私を食べてくれないでしょうか。このまま娼館に売られるよりも、そのほうがよっぽどいいような気がしました。

「しぬ……? お前死ぬのか?」

 私は必死に涙を拭いながらこれまでのことを話しました。彼は私の話に静かに耳を傾けてくれています。

「ああ……そういえば、娼館との契約書を馬車の中に置いてきてしまいました……」

 逃げ出した御者はどうなったのでしょう? ボロボロに壊された馬車を見て、私は死んだと思われるでしょうか?
 話し終え顔を上げたそのとき、彼の長く伸びた前髪の隙間から金色の瞳がチラリと見えました。

「綺麗……貴方の瞳は夜空に浮かぶ月のようですね」

 途端、彼が後ろに飛び退きました。そのまま部屋の壁に背中をつけて顔を両の手でおおいます。

「きれい? お前、今、俺の目を綺麗だと言った?」
「はい、綺麗です。満月みたいで」

 誰かに話を聞いてもらえた。それだけで嬉しかったのです。スッキリした気持ちで思ったことをそのまま口にしてしまいましたが、何か良くないことを言ったでしょうか。

「申し遅れました……私はソフィアと申します。貴方のお名前をお聞きしてもよろしいですか?」

 壁を背にし、暗い部屋の中に立つ彼の表情はやはり分からないままです。
 けれど、それに怯えることはありませんでした。もう私は死んだようなもの。恐怖心が麻痺しているのかもしれません。

「名前はない……俺は化け物だから」

 しばらくして聞こえてきた答えに私は驚きました。

「お名前がないのですか?」
「ない……皆、俺を『夜』と呼ぶ」

 夜? ヨル……様? 化け物?

「ではヨル様とお呼びしてよろしいですか?」

 暗闇の中で彼が大きく頷いたのが見えました。

「ソフィア……」
「はい」

 一歩一歩ヨル様がこちらに近づいてきます。やはりとても背が高い。私より頭三つ分くらい高いのではないでしょうか。首も肩もガッシリとしていて、手も足も本当に大きい。

「ソフィアは、捨てられたのか?」
「はい……もう帰るところもありません。ヨル様、どうか私のことを食べてくださいませ。本当に化け物ならばどうか」

 もうどうなっても良かったのです。家のことも、家族のことも、そして自分自身のことも。

「食べる――ソフィアを食べてもいいのか?」
「はい……もう思い残すことはありません」

 私は本当にどうかしていました。今いる屋敷のことも、彼の身につけているもののことも考える余裕なんてありませんでした。
 よく見れば気づけたはずなのに。彼が化け物などではないことに。

「ソフィアは、捨てられた。帰るところもない。娼館にも行きたくない」

 彼は何かを確かめるようにそう口にしました。ゆっくりと私の目の前に立った彼は、どこか嬉しそうです。

「なら俺がもらう」
「……え?」
「ソフィアは、今日から俺のもの」

 ベッドに押し倒された私におおい被さるようにヨル様が顔を寄せてきました。
 食べられる……! そう思った瞬間、彼の唇が私の口を塞ぎます。

「ンっ、んん……?」

 戸惑う私の中を分厚い舌がこじ開けていきました。ゆっくりと歯をなぞり、上顎うわあごを味わうようにう舌。そのまま互いの舌を根本から絡ませます。
 口元からふたりの唾液が混ざり合いながら流れていきました。

「ふぁ……ハァ、ヨル様? 何を」

 そのとき初めて彼の顔を間近に見ることができました。切れ長な目、スッと通った鼻筋。薄い唇がぬらぬらと卑猥ひわいに濡れています。

「ソフィアを食べる」

 そのまま乱暴に服を脱がされ、下着も靴もぎ取られました。裸になった私を金色の瞳がジッと見つめています。

「ひぁ……、やだ、そんなところ……」

 触れたら壊れてしまうとでもいうように、無骨な手が肩や背中、太ももや尻をゆっくりと撫でます。

「やわらかい……」

 必死に胸を隠した両手もあっさりと開かれました。夜のひんやりした空気に触れた胸が勝手に震えてしまいます。

「見ないで……ください」

 私の言葉が聞こえなかったのか、ヨル様は小さく首を傾げながらさらに顔を近づけてきました。

「ひぁ、ん」

 胸の先に彼の鼻息がかかり、自分でも驚くほどいやらしい声が出てしまいました。

「ふぅ……、ふ、ソフィアは俺のモノ……」
「きゃぁっ! アンッ……」

 大きな口が私の胸先に吸い付きます。胸の先を転がすように分厚い舌が舐め上げる感覚に自然と腰が浮いてしまいました。
 私はただ与えられる感覚を必死に堪えることしかできません。

「ダメ、舐めないで……」
「ソフィアは甘い……匂いも味も、どうしてこんなに甘いんだ……?」
「ひぁ……!?」

 ちゅうちゅうと吸い上げられるたびに、上げたことのない声が出ます。彼は何かを確かめるようにやわやわと胸を揉みしだいていきました。

「ソフィア……ソフィア……」

 必死に羞恥に耐えている私の目の前に、いつの間にかヨル様の顔がありました。彼の顔は驚くほど整っていて、金色の瞳も、通った鼻筋も、とても美しい。

「やっぱり、ヨル様はとても綺麗です」
「ほんとうか!?」

 一瞬、ヨル様が泣きそうな顔をした気がしました。

「本当です。嘘なんかつきません」

 そのままゆっくりと唇が重なりました。先程の食べられてしまいそうな口づけではなく、そっと触れるような優しい口づけ。

「ん……や、ダメです、耳は嫌……」

 耳たぶをかじるように咥えられたかと思うと、そのままぬるりと舌が入ってきました。耳のひだをひとつひとつ確かめるように舌がっていきます。
 舌はそのまま首筋を撫で、身体中を舐め回しました。

「いや、もう舐めないで……、お願い」
「イヤだ、まだココ舐めてない」

 イヤイヤと首を振る私を無視して、太ももの間に彼の手が入り込みます。必死に力をこめても彼にかなうはずもなく、そのまま大きく足が開かれてしまいました。

「イヤぁ……」

 誰にも見せたことのない秘所。暗い部屋の中で金色の瞳がジッと見つめています。

「濡れてる」

 ダメ! と言う前に、彼の口がソコに埋められました。

「アァっ! ん、……ンンっ、アン!」

 ジュルッという卑猥ひわいな音を響かせ、彼の舌が執拗しつように舐め上げます。自分でも触れたことのない場所に走る感覚が、だんだんと羞恥から快感に変わっていくのを感じました。

「ひぅ……、イヤぁ……。そんな、入れないで」

 私の中にぬるりと何かが入り込んできました。彼の舌は分厚く、いやらしく私の中をいじっていきます。
 こぽりと何かがあふれる感覚に驚きました。

「嫌じゃない、たくさんあふれてくる」
「アァ……ん、ンっ」

 ジュルジュルと音を立てて、彼はソコを舐め続けます。

「ハァ、ハァ……暑い」

 やっと解放されたと思っていると、ヨル様が着ていた服を脱ぎ始めました。
 筋肉質な大きな身体が汗でしっとりと濡れています。ぐったりしている私の前で、彼は躊躇ちゅうちょなくすべてをさらけ出しました。

「ひ、ぁ、そんなに、大きいのですか?」

 初めて見る猛々たけだけしい雄。私の手首くらいはありそうな太さと大きさに、そのとき初めて怖くなりました。

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