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第一章 クイナ

07.素直な羽無し ※

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 過去、これ程気持ちよくイけたことがあっただろうか。

 快感の度合いは別として、精通したとき以来の衝撃に襲われたような気さえする。
 カジュリエスは、と言うと、レイルのイったばかりで少し柔らかくなった陰茎を優しくゆったり揉みながら、耳元で「俺のレイル」などとつぶやいている。

 俺の!!!!???? レイル???!!!! 俺の??!! 誰の??!!

 レイルの頭の中は益々衝撃が過ぎてついていけない。
 現状をきちんと理解したいと思うのに、本来なら一度射精して多少落ち着くはずの身体は、その逆、出したことにより更に引きずられて、経験した事のないような興奮がレイルを襲い、まともに状況把握なんてできる気がしない。

 こんなもの、戸惑いしかない。

 さっき、体を診てくれた医官も言っていたじゃないか。

 この身体は発情期に入りかけている、カジュリエスに任せれば大丈夫、あいつが助けてくれるよ、身体をうまく発情期に乗せるには手っ取り早く出すのが良いんだ。出さずに我慢する事も可能だろうけど、発情期を我慢して過ごすのは酷く苦しいだろうからあまりお勧めはしないよ、と。

 そう言われたら、他にすがる相手なんてレイルには思いつかない。

 不特定多数と出会える出会い場にはしばらく行っていないし、カジュリエスとどうこうなる前、カジュリエスが家に来るようになってからは他の誰とも身体を重ねるような付き合いをしてこなかった。

 いや。
 そんな格好つけた言い訳をしてどうする。

 単純な話だ。カジュリエスが好きだから、彼に出会ってからずっと他の誰ともやる気になれなかった。
 今だって、生まれて初めての発情期は他の誰でもなくカジュリエスにそばにいて欲しいと思っている。


「助けて、……」


 考えた事が口から出たらしい。
 言葉に反応して、カジュリエスは両方の手のひらでレイルの頰をおさえ、より一層に熱のこもった瞳でこちらを見つめる。


「俺以外の誰かに助けを求めるなよ、……助けを求めるなら俺にしておけ」
「ん、うん、わかってる、わかってるから」
「わかってるから?」
「お願い、もっと……」
「ん、」


 べろり、と、唇を舐められた。
 その刺激にレイルは震える。進んで口を開き、カジュリエスの長い舌を受け入れる。
 舌同士を絡めて擦り、溢れてきただ液を躊躇なく飲み込む。
 それだけで。たったそれだけの事で、背中全部が総毛立つ程の快感を味わう。話には聞いた事があったが、まさか自身にこれ程強い発情期が来るとは夢にも思っていなかった。

 一度出したはずなのに全く落ち着かない身体、普段より熱く感じる手のひら、触られた所から反応して皮膚には鳥肌が立っていく。
 お腹から腰の辺りが、何もしていないのにじわじわと気持ち良くて意図せず下半身を擦り付けてしまう。


「カジュ、カジュリエス、どうすればいいの、おれ、どうしたら……っ」


 脱がずにいた服を全て取り払われ、自身も脱ぎながらカジュリエスがこちらを見て言う。


「何もしなくていいんだ、ここにいて、俺の好きにさせてくれ……いつもやりたくてできなかったことを、全部させてくれ」
「やりたくて……? 何か、やりたかったのか……?」
「ああ、……発情期じゃなくても俺は、……いつでもおまえをぐちゃぐちゃにして、気持ち良さだけで泣かせてやりたいって毎回思ってたよ」
「おれ、……泣かされるの?」


 既に身体が気持ち良さに染まって涙目なのだが、これ以上に? そんな単純な気持ちで聞いたのに。


「ああ、俺の手で、鳴いて、泣いてくれ」


 聞きようによっては随分と残酷な事を、嬉しそうに言いながら服を脱いだカジュリエスが覆いかぶさってくる。
 なんだか怖くて、でも離れがたくて、それから、カジュリエスとこうしていられるのが嬉しくて、レイルはカジュリエスの首にきつく腕を回した。


「ん、……わかった……嬉しい、カジュリエス」
「……そうだな、俺も、……嬉しい」


 そう言い、カジュリエスはレイルのふとももを撫でる。出会ってからずっと彼はこのオレンジ色の脚を撫でるのが好きだと言っていた。
 それから、長い舌で、レイルのピンク色の舌を更に舐め上げる。この舌を舐めるのも好きだと言っていた。

 カジュリエスが背中を撫でる。背骨をなぞるように、それから、羽になりきれなかった名残を撫でるように。

 身体が小さい上に、大きな羽もなく、脚も強くない。言葉は悪いが、西浮国の人種の中ではほぼ最下層にいるであろう事はレイルはちゃんと自覚していた。

 自覚しているからと言ってコンプレックスに思わないわけではなかったが、それよりも、目の前にいて自分に対して心底興奮してくれているらしいカジュリエスが、この脚を、舌を、好きだと言ってくれるから。

 もう、それでいいや、と思った。
 目の前のこの人が本当にそのままの自分を認めてくれているのだとしたら、卑屈になることなんてない。認めてくれる人の前で、わざわざ自分を下げてどうする。
 そして、最初から自分を、番と思ってくれていたのだとしたら。何も遠慮する事なんて、なかったんだ。


「ね、ねぇ、カジュリエス……おれにも、させて、おれも、いつもずっとやりたくて、できなかったこと、たくさんあるから、先に、おれに、」


 させて、と囁きながら、レイルはカジュリエスに乗り上げた。カジュリエスは少し驚いた顔をしながら、それでもにこりと微笑み、ああ、と答えてくれた。

 くちゅくちゅと、できるだけ唾液を絡ませながらカジュリエスの大きく長い陰茎を刺激する。
 いつかカジュリエスのモノを舐めたいと思っていた。カジュリエスが、いつもしてくれるはレイルの腰を震わせる程に気持ちがいいから。夢に出てくるほどにやりたかった事ができて、レイルは満足する。これは、夢じゃなくて現実だ。

 でも、やっぱりカジュリエスのように喉の奥まで咥える事が出来ない。慣れていないことと、何より彼のモノが大きすぎる。普段コレをお尻で受け入れていたのか、凄いなおれ、と感慨深く思いながらも愛撫を続ける。
 両手を添えて支えながら、先の膨らんだ所を執拗に舐める。唇で吸い付きながら、尖らせた舌で段になっている所をなぞって刺激する。
 ぷくりと先走りが出てきたのが見えて、先端の切れ目が入っている所を重点的に吸う事にした。
 流れ出た唾液で滑らかになった手のひらを上下に動かす。唇で吸いながら、舌で味わいながら、裏筋を擦るように手を動かしながら、レイルはどんどん没頭していく。
 レイルがいじり倒している陰茎の持ち主は、先程から息を詰めながらもレイルの頭を優しく撫でている。これは夢では無く、現実だ。その指の動きすら気持ちが良くて、なんだかゾクゾクしてしまう。


「レイル……」
「んん、……?」
「レイル、っ、そろそろ、離せ、出るぞ」
「ん、いい、らして」


 舐めながらも口に出される事を了承し、すぐに亀頭の部分を大きく開けた口ですっぽり覆った。そうして、手の動きを早める。同時に裏筋と、それからその下の方にある2つの玉をやんわり揉み込んだ。


「無茶するな、離せ、レイル」
「や、や、やら、はなふぁない、のまふぇて」
「おい、やらしいが過ぎるぞ」
「ふふ、なぁにふぉれ……」


 亀頭を唇全部を使って吸い、精液の出てくる狭間を尖らせた舌で飴を転がすように舐めた。両手にきゅ、と少しだけ力を入れて上下に動かす。


「く、そっ、……後でみてろ、」


 カジュリエスがレイルの頭を撫でていた手を止めて、軽く押さえるようにしてきた。

 ちらりとカジュリエスの顔を上目で見れば、眉間にシワを寄せて歯をくいしばりながら、こちらを見下ろしてくる。そんな酷く気持ち良さそうな様子のカジュリエスと目があう。
 夢で見たのと同じ表情だ。だけど、夢と違うのは、においも、味も、体温も感じられる所だ。
 自分を見てくれた事が嬉しくて、レイルは瞳だけで微笑むと、唇と舌に力をいれる。
 途端、喉の奥から唸るような声を出したカジュリエスの手に力が入り、すぐに、どろりとレイルの口腔内に粘つくような液体が出された。
 自分の口で気持ちよくなり更にはイッてくれた事に益々興奮して、吸い上げるように顎を動かしていたら大きな手のひらにその顎をすくうようにして外されてしまった。


「飲むなよ、出せ」
「……もう飲んじゃった、から、出せない」


 顎や喉を優しく触りながらもカジュリエスは「大丈夫か? 気持ち悪くは? おえってなりそうなら言え」と気づかいつつもうろたえているようだった。
 レイルは思わず笑ってしまう。


「カジュリエスだって、いつも飲んでる」
「俺は良いんだ。俺の身体は生まれつき毒を飲んでも安全に消化できるようにできている。
 それに、お前の精液はうまい」
「ちょ、まっ、待って、なんて事言うんだ、うまいとか……そんな事、もう、ばか、もう」
「レイル……恥ずかしいのか、顔が真っ赤だ」
「っ、そんな事言われて恥ずかしくないやついないだろ、くそ」
「そうか? 俺を喜ばせたいなら恥じらっててもいいが、そうでないならやめとけ。俺が益々燃え上がるだけだ」


 本当に、なんて事を言うんだ、この男は。
 自分の体液を飲まれ、その上美味しいなどと言われて、恥ずかしがらない人間がこの世にいるわけないだろう。
 どれだけ恥ずかしいのか、カジュリエスも味わえばいいのに。

 レイルは、未だレイルの顎を撫でていたカジュリエスの手をはらい、じりじりと上に乗り上げていく。膝でカジュリエスの陰茎を刺激しながら首筋に顔を甘えるようにしてうめて……あれだけ出してもまだ硬さを失っていない陰茎を膝に感じて胸が高鳴った。早くコレを入れて欲しい。


「ね、カジュリエスのも、……美味しかったよ、今度は、……今度はさ、おれの、お腹の中でその美味しいの、……出して……ッ?」


 噛み付くように口を塞がれて、上下が入れ替わったのを認識したのはその直後だ。
 唇を噛まれ、長い舌で口蓋を奥まで舐められ、吸われ、ようやく鼻で息をついた時には、レイルの後孔には既に長い指が一本入っていた。


「んんん、ぅ、ん、っか、カジュリ、エス!」
「今のはかんっぜんに、お前が、」


 悪い、と囁きながら、乱暴に指を増やされた。
 その乱暴なやり方すら、普段以上に快感を増長させているなんて、自分の身体なのに、なんだか怖い。
 怖いけど、気持ちが良い。相変わらず口腔を好き勝手に舐められ、たまに噛まれ、そしてぐちゃぐちゃと指を動かされる。
 気付けば早くも指は三本だ。
 普段そんな乱暴なやり方をされたら、きっと眉をしかめながらもそれでも何も言わずにいてしまうのだろうが、今のレイルは気持ちが良すぎて嬌声を止められない。


 きもちい、もうや、やだ、きもちいい、いれて、はやく、いれて


 カジュリエスに好き勝手にされて、いつもより酷くされているのに関わらず快感に染まる身体を持て余しながら、そんな事を何度も口走った気がする。
 それでもなぜか普段より意地悪だったカジュリエスは、なかなか入れてはくれなかったのだけど。



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