空色の龍の世界で、最下層に生まれた青年は 〜すべてをもっているひと〜

第一章 クイナ

00.空色の龍01

　これは、神が創った箱庭の中の物語。まるで神話のようなお話。

　世界の中心に国一つ。中つ国とも呼ばれるそれは、中草国。
　周りを囲むのは、海の国、空の国、山の国、砂の国。

　世界の中心には美しく輝く金の龍。
　海の国には身体の大きな銀の龍。
　番つがいの二匹はいつも離れず、金龍は永遠の命を持つ銀龍へと囁く。


「あなたの命がある限り、あなたをずっと想っている」

　二匹はいつでも、いつまでも、離れない。

　空の国、山の国、砂の国を守護するのは、金龍の身体から分かたれた三匹それぞれ色の違う龍達。


　そして……この物語の中心は、空の国、西浮国さいぶこく。

　国の全ては空にあり、全ての島は天空に浮かび一帯の空を支配する。
　空の色は綺麗な青色。
　世界にひとつの青色の龍が空を飛ぶと、そこに溶ける色。
　青色の龍は、天空を守護し、同時に銀龍の涙から生まれた鳥たちの守護を担う。
　天災から。
　厄病から。
　神の起こす、全ての気紛れから。

　強い力、強い魔力でおおよそ三百年、守り続ける。
　これは、神話でもなんでもない、実際に空の国で起こったお話。