金色に輝く気流師は、第五王子に溺愛される 〜すきなひとがほしいひと〜

朝子

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ウィレナーズ×ズィーロ編

12.かわいい相手に意地悪したい人 ※

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 その日。
 ユージィンが早くに床につき、自分もそろそろ執事棟へ引き上げるか、と思い始めた頃、久方ぶりに宮の主人であるオスカーが戻ってきた。

 今日帰っても驚かない、とは思っていたが実際に起こると驚くものだ。泥と汗にまみれている様子を見ると無理をおして飛んできたのだろうと推測される。

 お帰りなさいませ、との挨拶を済ませて、自分は執事棟へと足を向ける。
 少し予定が狂った。
 あのままオスカーがおとなしく寝るとも思えないし、仮にオスカー自身が寝ようとしてもユージィンが起き出せばそれこそおとなしく寝るはずもないだろう。
 夜中に一度様子を見に行かないといけないな、と思いながらもウィレナーズは執事棟への帰路を急ぐ。予定は狂ったが、ズィーロをかわいがる時間はあるだろう。散々にかわいがって、それから一度宮の様子を見に戻るか。
 この後の予定を頭で組み立てながら、ウィレナーズは足を早めた。


 ズィーロの身体が(多分)治ったと言われたことで、割と本気で「一緒に風呂に行き全身を洗ってやるぞ」と意気込んで帰宅したウィレナーズは、出端をくじかれた。

 自分の部屋で待っていると思いこんでいたズィーロの姿が見当たらない。ウィレナーズの部屋に置いてあった彼の少ない荷物も片付けられている。

 どういうことだ。
 まさか、何も言わずに出ていったなんてことはないだろうに、いや、用意しておいた夕食はすべて食べられていた。では、ウィレナーズの部屋にいないだけで他の部屋にいるのだろう。わかりきっているはずの事なのに、確かめるまでは胸の奥がゾワゾワ波立つ事を止められない。ズィーロに関しては、自分はある種の病気のような状態になってしまう。

 こうなることも見越して、自分自身にブレーキをかけるつもりでのめり込まないようにしていたんだが……。

 そんな事を考えながらズィーロに与えた部屋へと赴く。やはりというか、ズィーロはそこで眠っていた。掛布もかけず、素っ裸で丸まって眠っている。どういうことだ。素っ裸とは。


「病み上がりだろ、……おい、ロディオ……」


 覆いかぶさるようにしながら、耳元で静かに声をかける。まぶたが揺れて、ガラス玉のような灰色の瞳が覗きウィレナーズをみとめた途端に、へにゃり、と笑みを浮かべると硬質な印象が一瞬で柔らかくなった。


「ウィル……おかえり……おれ、言わないといけないこと……」


 こちらに手を伸ばしてくるから、腕の中に抱きとめながらもなんだ、と答える。


「悪態、ついちゃったよ、ごめんね……あとさ、たくさん、いじわる、してほしいよ」


 昼間人目につかない場所でからかったことを言っているらしい。
 微笑ましい穏やかな気持ちと、喉の奥の方から身体中がざわりと欲情する気配で、この目の前の男を散々にかわいがって、それから精一杯優しくいじめたくなる。


「かわいがって、いじめてほしいって?」
「ん、かわいがって。そんで、いじわるして」


 そう言って、腕の中にいたズィーロが顔を上げてウィレナーズの口をふさぐ。
 すき、ウィル、だいすき、と囁きながら何度も何度も口付ける。合間にぺろりとウィレナーズの唇を舐めてくるから、思わずその舌を甘噛みした。ズィーロは、んん、と声を上げる。甘噛みしたままズィーロの舌先を舐めた。ウィレナーズの首に回された腕がぴくりと震える。
 鼻から息を吸い込んで「俺、ウィルのにおいがすき」などと言って唇を笑みの形にしながら舌を絡めてくる。


「昼の後に……宮の庭園に作った畑仕事をして湯を使ったきりだ……いいのか?」
「ん、ん、うれしぃ……ね、ウィル、俺」
「……ん……?」
「舐めたい、なめ、させて、……」


 そう目を潤ませながらこちらを見上げて、ウィレナーズの股間に手をのばしてくるのだから思わず流されそうになるが。


「また今度な」


 申し出は魅力的だが、かわいがっていじめると宣言したのだから完遂させてほしい。意図を正しく汲み取ったらしいズィーロは、期待か怯えか、瞳を揺らしながら顎を引いて同意した。


「舐める代わりにちょっと手伝ってくれ」
「うん……? わかった」


 ズィーロを押し倒しながらお願いする。何を手伝うのかも聞かずに素直に言うことを聞くズィーロがかわいい。
 仰向けに寝かせたズィーロの胸に、香油を垂らした。


「ぅんんッ……! なに……?」


 ズィーロの両手を掴み、その胸に置く。


「ここ」
「んッ」
「乳首は触るなよ、色の濃い周りだけ……触っていられるか?」


 ズィーロがウィレナーズに戸惑いの目を向ける。もう少し説明が必要かと思い、ズィーロの指先を摘んで乳首の周りの肌色の濃い辺りに這わせる。


「ここを……」


 そう言いながら、香油を広げるようにゆっくり指先を動かした。


「乳首には触れないように、撫でていてくれ」
「う、ん、んっ乳首、触っちゃ、だめなの?」
「ああ、だめだ。できるな?」
「ん、できる……っ」


 ズィーロは潤んだ目で眉間にしわを寄せながらも、素直に乳輪だけ撫でながらこちらを見つめる。


「かわいいな、ロディオ」


 ちゅ、と触れるだけの口付けをして、自身は下がる。
 ズィーロの股の間に座り、既に半分ほど兆しているズィーロの陰茎に香油を垂らした。股を伝ってお尻の方へ流れてシーツを濡らす様が見える。ぼんやりとこの部屋では今日はもう眠れないなと思いながらも、元々この部屋にズィーロを寝かせるつもりなどなかったウィレナーズからすればここのシーツなど正直どうなってもいい。

 すっかり立ち上がって硬くなった陰茎の側面を触るか触らないかぐらいの強さでゆっくりと撫でた。先の太く膨らんでいる所には触れない。筋が通っている裏の辺りにも勿論触れない。


「う、ああ、……んんッ」


 ぴくりぴくりと腰を震わせ、声を抑えて乳輪を触り続け気持ちよくなっているズィーロを見ているだけで満たされてくる。

 とは言え、見ているだけで満足する気もないので、陰茎の側面をやわやわと撫でながらもズィーロの足首を掴んだ。
 ズィーロはその刺激に喉を鳴らしながら薄っすら目を開きこちらを見つめる。


「期待してるのか?」
「ぅん……なんでも、してほし、っ」


 足を持ち上げて、ズィーロの目を見たまま親指に舌全体を絡めた。指の間に舌を這わせると甲高い声を上げて反応する。指よりも指の間の方が反応が良いので全ての指の間を順番に舐めていった。
 びくりと痙攣して足を引き抜こうとするズィーロを目だけで制して、何度も舐めしゃぶり、吸う。
 そのうちに、ゆっくり撫でていた陰茎の先からも先走りがぷくりと浮かぶ。撫でる手を一旦離して、狭間に指を伝わせながら後孔を探った。
 ズィーロははっと息を荒げてこちらを見つめてくる。だが、まだ指は入れない。這わせ、撫で、やわやわと優しく刺激するだけだ。


「んん、ッ……ウィル、ウィルッ、まだ、乳首、摘んだらだめ……ッ? やっちゃいけない?」


 律儀にも言いつけを守って乳輪だけ撫で続けているズィーロは、直接的な刺激を与えてくれないウィレナーズにそろそろ焦れており、触って貰えないなら自分で触ろうと思ったらしい。


「ロディオ……忘れたのか……? 前回、乳首だけでイッただろう? 今のお前の乳首はどうなってる?」
「ん、っとがってる、勃ってる、触ってってなってるッ……」
「触ったら、漏れてしまわないか?」
「も、っ、漏れちゃ、う、かも、んあっ……わかんないっ」
「それを許したら、意地悪にならないだろ、もう少し触らず我慢しておけ」


 ズィーロは涙目になりながらも素直にうんうんと首を縦に振り、乳首に触るのはやめたらしい。
 ウィレナーズは、左手の親指を第一関節程までズィーロの後孔に入れながらも、更に足に舌を這わせる。足の甲を骨にそって、くるぶしを甘噛みして、足の裏には唇を吸い付かせて。
 足を右手で持ち上げたまま、唇はふくらはぎを上に辿る。左手の親指はそのまま、やわやわと動かし続けるだけで、深くもしない。後孔がきゅっきゅ、と収縮して指を締め付けてくるのが心地よい。
 ついでに人差し指から小指までを使って、後孔の上に位置する会陰と睾丸を香油の滑りを借りて柔らかく刺激すると、一際高い声をあげて、ズィーロが腰を跳ねさせた。


「ウィルッ! そ、こ、きもちぃ、んん、っ」
「ここか? それとも、こっちか?」


 膝を舐めながらも、指をばらばらと撫でるように動かしながら後孔の周りへの刺激を止めずに聞く。


「どっちも、っ! りょうほ、う、気持ちいいよ、気も、ちっい、っあああ」


 思わず、といったように乳首から手を離して自分の陰茎にズィーロは手を伸ばす。


「こら」


 優しく咎めてその手を右手で止めた。ズィーロの足は肩に、その膝には唇を吸い付かせたままにして、左手は動きを止めない。


「ここを、撫でていてくれと、頼んだだろう?」


 ズィーロの手をその胸へと戻した。途中、指先が乳首をかすったらしく、ああ、と声を上げて仰け反る。亀頭からは先走りがだらだらと流れ落ちる。いい眺めだ。
 唇に笑みすら浮かべてズィーロを見ているウィレナーズを見て何を思ったか、ズィーロは涙目で訴えてきた。


「ウィル、ウィルッ、も、いきたい、うあ、ん、っ」


 一度触ってしまったらもう我慢ができなくなったらしく、自分で乳首をこねるように触り続けて哀願するズィーロに思わずほだされる。


「そこは触るなと言ったのに……」


 意地悪したい、なんて、お互いを高める為の方便に過ぎず、それが良い刺激にさえなればそれで良い。心底からいじめたいわけではないので、「触るな」などと言いながらも、頼まれればいくらでもイかせてあげたくなってしまう。
 仕方ない、という体で後孔に入れたままにしていた親指の腹で中の少し硬くなっている場所をゆっくりと押し上げた。途端、腰を前後にびくりと震わせてズィーロが反応した。丁度良いところに当たったらしい。


「あ、ああ、あぁっ、そこ、そ……こッやぁ!」


 反応が良い場所を押すたび、ズィーロは腰を前後に震わせる。自分で好き勝手に弄っている乳首はもみすぎてすっかり赤くなっている。香油を使っているとは言え痛くはないのか。精一杯大きくなって尖っている様を見ると、痛みはなく感じているのは快感だけだろう。声が断続的に響く。いい、ああ、いきたい、もっとさわって。


「気持ちよさそうだな、ロディオ」
「ん、うん、うん、気持ちぃ、気持ちいぃ、ッいいよ、ウィル、おねが、おねがいっ、おちんちんも、おちんちんも……さわ、って……!」
「……っ」
「おちんちん、さわるっの、っだめなら、も、もう、いれてぁあんんっ入れてってばぁ……!」


 自分でも自覚しているが、ウィレナーズはズィーロの発するその直接的な言い方に酷く弱い。はぁ、と、快楽を逃がすようにため息をついた後、そのままズィーロの腰を抱えた。


「このまま入れて、……平気なのか……?」


 ん、ん、と、喘いでいるのか、同意しているのか、あるいはその両方か……で返事をして、ズィーロがこちらを見上げてくる。


「乳首は……自分で弄ってるのか……?」
「ん、自分で、っこのまま、ぅあんっい、いじ、って、る……!」
「わかった。……いれるぞ」
「はやっ、くっ……!」


 ウィレナーズがゆっくりと入っていくと、後孔を進む途中、その中の硬く凝っている所をウィレナーズの亀頭にぐいと押されたズィーロは、んあああああああっ!と嬌声をあげ、自分で乳首をこねるようにもみながら、その日最初の射精をした。

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