金色に輝く気流師は、第五王子に溺愛される 〜すきなひとがほしいひと〜

朝子

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オスカー×ユージィン編

12.剣術師団長の愛撫

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 その後、本当にユージィンを癒すのみに留めて帰せば、その自制心の強さは王族内で語り継がれるべきものになった、かもしれない。
 しかし残念ながらオスカーは聖人ではない。

 薄っすら意識が浮上し、自身の腕の痺れを知覚し、すぐにその痺れた右手のひらにささやかな感触。
 日常的に針を刺すせいか、少し硬い指の腹。
 それが、オスカーの手のひらをゆっくりとなぞる。
 起きがけにそんな可愛い様を見せつけられ、ついその手を握ると

「痺れてるのに? ……痺れで、痙攣……?」

 我慢ができず、ユージィンの耳元で笑ってしまった事が引き出したユージィンの反応は、瞬間的にオスカーが聖人にはなれぬと悟るに充分なものだった。
 耳元で喋る度にピクリと反応する肩、つまる吐息、少しだけ力の入る指先。

 明らかに感じているとわかる声音で、そこで喋るのはやめてと切れ切れに言われ、やめる男がいるのか。
 いないだろう。
 いや、いるのか。
 わからないが、俺はやめない。

 そう思いながら、ユージィンの耳に己の唇が触れる距離で名を呼ぶ。途端、声にならない声が、ユージィンの唇から漏れた。
 そもそも、自分はこの異常に耳ざわりの良いユージィンの声が好きなのだ。
 普通の会話ですらその声が酷く好みだと思いながら話していることもあるのに、自身の腕の中にいるユージィンが、もしも、この口で、この声で、喘ぎ声をあげたら。

「……ユージィン……聞いているか?」
「んんっ……!」

 まさか。
 本当に声がオスカーの耳に届くとは。

 オスカーの口元にほとんどくっついている耳を真っ赤にしながらも耐えているユージィンの姿に、もう少しだけ、と欲を出して手を動かす。

 少し痺れていた右手で、ユージィンの、細く長い指をなぞる。
 親指から順番に、密やかに、親指と人差し指の間も辿る。
 そのまま、人差し指から中指の間へ。
 指と指の間をなぞると、ユージィンは、震える。
 第二関節の辺りも好きなようで、そこをオスカーの指が通ると指をピクリと動かしながら震えるので、つい通過した後に戻って更にくるりと撫でるいたずらをしてしまう。

 元々痺れていなかった左手は、ユージィンの腹を通り、しっかりとボタンのしまっている胸元を撫でた。
 寝間着の白くつるりとした薄い生地に、与えられている身体の快感に反応してか、ささやかに浮かび上がる乳首を撫でたい気持ちはあったが、それをしては自分が後戻りできないと見て見ぬ振りをした。
 脳内では、絶対近いうちに飽きるほど撫でて摘んで勃てて舐めて甘噛みしてやると、傍迷惑な上に欲望丸出しの野望を持ちながら。
 それでも少し名残惜しく思う指は、乳首のすぐそばをゆっくり撫でながら鎖骨の間を抜け、顎の下をくすぐるようになぞり唇へと到達する。
 同時に、目の前にある形の良い耳に、自身の舌を這わせた。

「……っく、あ、ぁんっ!」

 本当に、この、腕の中の想い人は信じられないくらいに良い声を出す。
 聞いているこちらがどうにかなりそうだ。

 そう思ったら、欲が出た。
 この声で。
 腕の中で、艶を乗せて発されるこの声で、自身の名を呼んでほしい。
 どうやらユージィンは低く囁くように耳元で声を出される事に弱いらしい。
 相手の弱点をつくのは、戦上手な剣術師団長の得意とするところだ。

「……ユージィン……?」
「も、やっ……! 殿下っ……!」
「ユージィン……、殿下ではなく……オスカーと」
「うんんっ……お、オスカー? さま?」
「様もいらん……。この口で。お前の声で、オスカーと、呼べ」

 そう言いながら、唇に這わせていた指を中に侵入させ、指に当たった少し薄い舌をなぞる。
 唾液を絡ませ、人差し指と中指であやすように、舌を更にくすぐる。くすぐりながら自身の親指で、ぷるりとした唇を撫でる。

「……っよ、べな「いいから、呼べ」

 断るだろうとはわかっていたので間髪いれずに強要した。
 強要しながらも、更に侵入させた親指と人差し指で、その舌を摘んで少しだけ指を震わせた。

「……っん、んんっ! や、……っか、ぉすか、……オスカー……!」

 なんだこの充足感は。
 あまりに幸せな気持ちになり、意図せず耳元で笑うと、それにすら反応して、また、ユージィンが震えた。

「これからは、常にオスカーと。わかったか……?ユージィン……?」
「……んんっわか、わかりました、から、っ!」
「なんだ……? 他人行儀だな、わかりましたなどと……」

 意地悪を言っている自覚は当然ある。

 だが、ユージィンの艶やかな声も、触る右手の気持ち良さも、また、唾液を絡めてその息遣いを感じながら弄る口腔内も、このままずっと続けていたいほど蠱惑的だ。

 とは言え、そろそろ止めなくてはいけないだろう。

 ユージィンは気づいていないようだが、先程から主寝室に続く控えの間が騒がしい。
 近侍らが、宮の主人に声をかけてもいいものか困っている様子が浮かぶ。
 昨夜は宮に近づくなと言われ、今朝は普段起きてくる時間になっても出てこない。
 それはあまりに普段と違い、近侍らも困惑している事だろうと思う。
 思うが……。

 ああ、まだ、もっと、ユージィンを弄り倒して喘がせたい。
 足りない。

「オスカー……! わかったっ、わかったからっ……ん、もうっ……!だめやめて!」

 ……。
 仕方ない。
 弄り倒しは次の機会に持ち越しか。

 今のユージィンの声が隣に漏れ聞こえたようで、外の騒めきがにわかに大きくなった。

 名残惜しくこめかみに口づけるとほぼ同時に、扉を叩く音がした。
 余程の事が無い限り近侍らはこの扉を叩く事は許されていないため、扉を叩く事のできる者が外にいると言う事だ。
 ユージィンが扉の音に反応し肩を揺らしたのを確認し、布団をかけ立ち上がる。

 さて、扉の外にいる者と近侍らを何と言って散らすか。



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