金色に輝く気流師は、第五王子に溺愛される 〜すきなひとがほしいひと〜

オスカー×ユージィン編

01.気流師とその能力

　ユージィンは気流師だ。
　気流師とは、その名そのもの、身体を流れる気を視ることができ、それを生業としている。


　ユージィンは、人間専門の気流師だ。
　気流師の専門は人間専門の他に、動物や、大地等、多岐にわたるが今は置いておく。


　例えば。
　身体を流れる気の動きを視る事ができれば、次にその身体のどの部位がどのように動くのかもわかる。
　動いている本人が意識しようとしまいと、高い所から低い所へ水が流れる事が誰の目にも見えるように、身体が動き出す方向に気は流れる。

　それが、ユージィンには視える。

　体術師ではないので、気の流れが視えた所で実際の格闘などの動きについていくことはできないが、対魔術に関しては全ての流れを把握できる。
　どの魔術師が、どの属性の、どの種類の、どの程度の規模の魔術を発動させようとしているのかが、ユージィンの眼にはしっかり視える。


　例えば。
　身体を流れる気の停滞、錯綜具合で、その身体が何かしらの状態異常に陥っているのがわかる。
　正しい修業を治めれば、状態異常の種類を突き止めることも、また、それを治療することもできる。

　治療に於いて、大抵の人体専門の気流師は至極細い針を使う。

　気の流れを読み、どこに針を打てばその流れを停滞させることができるか、逆に、流すことができるのかを修行によって学ぶ。
　人間の感覚を針1本で操る事ができるようになるため、痛みに苦しむ患者の「痛みの気の流れ」を止め、その痛みを感じないようにする事もできる。

　痛みに限らず、人間の感覚すべてを針1本で操ることができる気流師は、重宝もされるが、ある意味では畏れられる。
　しかし、気流師の特異な能力はその畏れを補って余りある才気であることは明らかだ。
　その為、大抵の国では下手に締め付けて飼い殺すよりも良い条件で囲い込むことこそが国の為とされ、気流師は国に対して仇をなす気にはならない程破格の待遇で召し抱えられている。

　そもそも、気流を視る事が出来るか否かは先天的に「視える目」を持って生まれなくてはならず、これに関しては努力や修業で補えるものではない。

　生まれついて気流が視えなければ、どれだけ気流師に憧れ、なりたいと思ってもなることはできない。
　気流が視え、その上で正しくも厳しい修業を終え、初めて気流師と名乗る事ができる。

　尚、正しくも厳しい修行を終えた気流師は、気流師でもあり、医術師でもあるために、気流医術師と呼ばれる事もある。

　ちなみに言うと、気流は服の上からでも視える。裸程はよく視えないが、身につけているものが布であれば透けるように視える。肌が視える訳ではなく、まるで匂いや体温が可視化されたかのように気の流れだけが視える。

　それが気流師だ。

　政府の要職につき、賢く聡明、どういうわけか性根は限りなく穏やかな者が多く、人を思いやることもでき、財産があり一生食べるに困らない、全国民の憧れる花形職業であり、選ばれし民とも言えるわけでもあり。
　と、なれば。
　全国民憧れの気流師様は、遊び相手どころか結婚相手は選び放題、気流師様が選ばない事はあったとしても、逆に選ばれない事なんてあるわけがない。

　それを踏まえて、再度冒頭に戻る。


　ユージィンは、気流師だ。


　しかも、誰よりも見目麗しいと評判の気流師だ。