クラス転移したけどリセマラされる前にバックレる

シューニャ

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第227話:謝肉祭と社会勉強

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アナスタシア第三皇女殿下が――何だか暗い表情をしていたので「どうなされたのですか・・・殿下?ご気分でも?」と首を突っ込むと・・・どうやら彼女は以前から庶民が行う祭りに興味を持っていたようで...

現在、城下でやっているお祭りに行きたかったが本人は第三皇女と言う身分でもあるし万が一と言う事もあるかも知れないとの理由で『安全上の懸念から視察は許可できません』と警備を担当する守衛達に止められてしまったらしい...

気の毒だが真っ当な判断だ・・・もし第三皇女が誘拐されたとなれば警備の者達は(物理的にも・・・)首が飛ぶ事になる。考えただけでも恐ろしい!

まあ・・・とは言え逆に考えれば誘拐される危険性さえなければ問題ない訳である。「アナスタシア殿下、私めに1つ考えがございます」と言うと――すぐさま準備に取りかかった

***

修道女の服を手配し着替え終わったアナスタシア皇女を城下町の祭りへとお連れすると物珍しいのか?彼女は道行く人々や出し物に目を輝かせておられる。

一応、ヨルミネイトやアリーゼ達が距離を取りながら護衛をしているとは言え目立つお付きの護衛もいない...

服装と言う者は――その人の貴賎を表すと言う言葉もあるが・・・わざわざ描いたソバカスが良い仕事をしてくれている・・・端から見れば嫁ぎ先すらない――どっかの田舎貴族の息女が厄介払いで修道院に押し込まれたのかと見えるくらい完璧だ。

まさか彼女が、この国の第三皇女だなんて・・・これなら誰も思うまい...どっから――どう見ても修道院の修道女である。

もっともテレビや新聞はおろかインターネットもSNSもない――この異世界の人々は皇族のご尊顔など見たこともないのでアナスタシア皇女の顔なんて知らないだろうが...

「まあ☆ 見て下さいサナイ! ブツ切り肉を串に刺しています☆ なんて野蛮なのでしょう☆」

調理の過程を見た所――汚いまな板の上に乗った肉の上をハエが飛び回っているが肉の鮮度自体は良さそうだ・・・焼いているし問題ないだろう...「串焼きですね。食べたいですか、アナ?」と言うと食べると言うので自分の分も含めて注文する。

岩塩が降りかかった串焼き肉を受け取り修道女のアナと言う事になっているアナスタシア皇女に一本を渡した...

炭の香る肉を口に頬張りながら食べているとアナは初めて食べた串焼き肉に感動したようで「まあ~☆ 庶民の皆さまは顎が丈夫なのですね☆ こんな硬くて食べ応えのある――お肉を食べるのは初めてです☆」と喜んでいた。

同時に「胡椒をかければ、もっと獣臭さ気にせずに食べられるのですが・・・民の間では胡椒は一般的ではないのですか?」と疑問をぶつけてきた。

蝶よ花よと大切に育てられてきた為に――まったく当人には悪意がないにも関わらずナチュラルに人を見下し差別してしまっている彼女に少し恐怖を感じつつあったが良い社会勉強になるかも知れない・・・少し彼女にとっての下界について授業をしよう。

そう思い立ち胡椒はルスリス獣人国など特定の国でしか採取出来ない上に流通量や流通ルートが限られている事や...

香辛料としての需要以外に庶民の間での民間療法では病を退しりぞけられると信じられているため医療目的もといまじないの類いで皆が欲しがり価格が吊り上がるので非常に高価である事などを教え...

高位の聖職者や王侯貴族でもない限り胡椒を日常使いする事はないと事を伝えた。
すると彼女は「ふ~ん・・・民草と言う気楽そうな地位でも、なかなか大変なんですねぇ~」と難しい顔する...

「えぇ・・・確かに皇族や貴族は格式張った事を気にする必要があり、その地位ゆえの大変さ有るとは存じますが民草には民草ならではの苦労が御座います。『隣の芝生は青く見える』・・・私めの故郷の諺ですが・・・」

「意味は【他人のモノは自分の持っているものより良いモノに見える】と言う意味です。どうか貴女様の心の片隅にでも――この言葉を止めておいて下さい、アナ・・・他人を羨んではイケません。いま自分の与えられているモノを大切なさって下さい...」

コチラの諫言に「はい、ありがとうございます・・・サナイ。」とアナスタシア皇女は素直に聞き届けてくれた・・・素直で大変よろしいー!!
やはり――こう言う若い時から下々からの忠言、諫言を聞き入れる癖を付けておかなければ!

人間は年を食うと――どうしても忠告を聞き入れたくなくなるモノだ
学校の教師しかり・・・社会人の先輩やら上司やらしかり大人になればなるほど・・・コチラの言い分が正しければ正しいほど・・・指摘したら精神異常の殺人犯の如く逆ギレしてキレ散らかす事になるである...

(ああ言う大人にならないようにしたいが哀しいかな・・・いずれは自分も、ああなるのかも知れない...)

・・・と遠い目をしながら元の世界の大人達を思い出し歩いているとアナの足が止まっていたので引き返す...

どうやら目を輝かせているあたり・・・露店の蝶の髪飾りに目を奪われていたようだ・・・って?!アレはウチの子ども用のプラスチック製の商品ではないかぁ?!!

ケルダンで買えば賤貨一枚にもならないオモチャを銅貨一枚で転売するとは――なんとあくどい?!!

子ども食い物にしている・・・とは言え経済とは、こう言うモノだ...
輸送や野盗対策の護衛などの諸経費を入れても法外だと思うが...

「安物ですが・・・欲しいのですか?アナ。」

アナスタシア皇女は縦に振り「はい☆サナイ☆もしかして買ってくれるのですか☆」と言うので懐から銅貨を取り出して店主に渡す。別に社会勉強を兼ねて値段交渉をしても良いが・・・飽くまでもお忍びだ。無駄に注意を引くのは避けるべきだろう

アナが買ったばかりの髪飾りを付けてくれてと、せがむので付けてやる・・・すると彼女は満足そうに『初めて国の所有物ではない自分の為だけの所有物を殿方からプレゼントされました♪ありがとうございます、サナイ』と謝意を伝えてくれ...

余程――嬉しかったのか市中の謝肉祭から帰った後も付けていて『・・・恐れながら、そろそろ――その髪飾りを外しませんか・・・殿下』と遠慮しがちに言ったが結局、城内に帰ってからも付けたまんま...

結局、夕食時まで付けて・・・





周囲の者、全員にバレましたっ!!

「あらっ?アナっ?!どうしたのっ?!その髪飾りは?!」

「なんじゃぁっ?!アナ?そのチープな髪飾りは?」

皆驚きである!!
言うまでもなく『第三皇女の身に何かあったら、どうする気だったんだꐦ』セルゲイ近衛騎士団長には激怒され「ずるい!」「私も行きたかったです...」と他の姉妹は羨ましがられロナフェミア皇女からは...

「きぃ~~~!!どういう事よ!サナイ!そんな楽しそうな事に――この私を連れて行ってくてないなんて!!やっぱり殿方は全員、年下の女の子だけには優しくするのね!・・・えっと、なんて言うだったかしらꐦ そうよꐦ 思い出したわ!」

『ロリコンよ!ロリコン!』と一歳年下の妹君をお忍びで祭りに連れて行っただけなのに、とても人聞きの悪い事を言われた!なんと!人聞きの悪い!!サナイめは悲しゅう御座います!ロナ様!
これもウチのクラスメイトの女子達が異世界で現代のスラングを広めたお陰であるꐦ
まったく!いらない事ばかりしやがってꐦ

余談だがセルゲイ近衛騎士団長には距離を置きながらケルダンの騎士や兵士長達が私服で護衛に附いていた事を説明したが結局「言い訳するなぁあ"あ"あ"!!」と激怒させただけでラーイ帝が『もう、その辺でよかろう・・・許してやってくれ、セルゲイ』と止めてくれるまでネチネチとお叱りを賜ったのは言を俟たない...続く
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