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第222話:わたくしの人徳の成せる業です♪

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本日は宮廷の方に出向いている...
若い頃に天然痘を患ったサレンドラ皇后の瘢痕をマイクロ波よりも波長の短いレーザー使って皮膚表面を焼く事で徐々に痘痕を消していく治療も今日で最後だ

最初は批判的だった宮廷医たちも最近は施術を観に来るようになった。よい兆候だと思う・・・この異世界の医療は元の世界の医療と比べ――まだまだ発展途上...

『人体解剖なんぞしてならん!』と言う――この世界の宗教観による事情から正確な解剖図がない為に宮廷医師ですら人体の構造を正しく理解していないばかりか...

かっ血や焼灼止血法など患者が苦痛を伴う治療は、まだ良い方で中には...

『聴覚の治療には馬糞で発酵させた灰色ウナギを耳に詰めると良い』
『黄疸の治療には羊の糞を混ぜたビールを一晩寝かせて患者に飲ませれば完璧!』『痛風は鳩の糞の膏薬で予防できる』
『水薬を使用する前に傷口にはペストの治療には患部に尿をかけると良い』
など――いささか糞尿に頼りすぎでは?と思うようなユニークな治療が跋扈している

いったい誰が、こんなデタラメを吹聴したのだろうか?患部や傷口に人獣の糞尿を塗るなど・・・ありえない...

他にも『タバコにはハゲを治療する効果がある』『ラジウム水を飲めば――ずっと健康でいられる!』『ルスリス獣人国で確認されている原虫を使えば性感染症が根治する』といった根拠に乏しい論説もあるばかりか...

麻酔や痛み止めの代わりにヒヨスやブライオニー、ヘムロック、ヘンバン、アヘンを当然のように使い・・・治療薬として水銀やヒ素まで処方するカオスっぷり...

タバコに、そんな効果があったなら――みんな既にフサフサだわ・・・少なくともこの世界で治療は受けたくない...

そのような事を思いながらサレンドラ皇后の肌に過度に火傷しないように麻酔成分の入ったクリームオイルを塗り人工ルビーを用いたレーザー照射器で皮膚表面が瘡蓋になる程度に焼いていく...

終わったらサレンドラ皇后に瞬間回復ポーションを飲用してもらって自然に瘡蓋が取れたら終わりだ・・・これで化粧で凹凸を隠さなくて良くなる

皇后に赤みや色素の類いは時間を追っていく事に徐々に引いていくでしょうと伝えると彼女は感激し納得したので――その場を後にした...

***

案の定――乳母のマリーに捕まりコーヒー会に招待された。今はコーヒーを飲みながら宮中メイドであるセセリア、エクリア 、オレアナ、リエアナの宮中での噂話を聞いている...

「ねぇ?知ってる?エルツーク侯ドル卿の事が、またロナフェミア第二皇女殿下に詩を送ったって...」

「えぇ~(ドン引き!)娘と同じ歳のロナ様に・・・なんていとわしい!!」

「あぁロナ様・・・なんて、お労しい!・・・皇族の一員に近付きたいと言うのもあるのでしょうけど、あんな不潔な方に言い寄られるなんて私だったら耐えられない...」

「そう言えば以前もエルツーク侯は第一皇女であるノルフェミナ殿下に言い寄って、お断りされていましたよね・・・」

「そう、そう!言い寄るのに失敗すると『皇女殿下は城の厩番《うまやばん》とも寝る性悪女だ』って周囲に悪い噂を立てるのよねぇ・・・」

「うわぁ・・・悪質...」

他人事ながら皇族相手にようやるわ・・・うん?!つぅーか――アイツにも俺と同い年くらいの娘がいんのぉ?!!初めて知ったんだけど?!!

(まあ俺には関係ないか...)

ドル卿に絡まれて迷惑しているであろうロナフェミア第二皇女を気にも止めず――右から左に聞き流すアユムであったが...
この時、彼は――まさか自分が巻き添えを食らうとは夢にも思わなかったのである!

***

アユムがコーヒーを飲み終えた後――気分転換に宮殿の中庭へと出ると何の騒ぎか人だかりが出来ていたので野次馬、心を出して人混みの中に入ってみると...
なんと!ドル卿とロナフェミア第二皇女がバチバチに、やり合っていた!

「私が夜な夜な厩番や牢番まで寝屋に誘っていると噂を流しているようねぇ・・・ドル?」

「いやはや――よもや、わたくしがそのような噂話を流しているなどと言う流言を殿下が信じておられるとは・・・誠に驚きですな...」

これは面白い!!終末が気になるので最後まで動向を見守ろう!!

「白々しい態度はお止めなさい!!・・・なんて見苦しい!」

「フフフ・・・そもそも、そのような悪評が立ったのも殿下が私の恋文を無視なされたからでは?」

「受ける訳ないでしょうꐦ そもそも臣下の分際で主君の姫に懸想けそうするなんて恥をお知りなさい!!!穢らわしい!!」

「そんな毛嫌いされるとは・・・フフフ 辛いですなぁ~ 上級貴族の私と殿下の婚姻がなれば当家も安泰。貴女様も姉上のノルフェミナ第一皇女殿下のように行き遅れそうになると言う事もないでしょうに・・・うへっへっへっ」

と下卑た笑みを浮かべるとドル卿はロナフェミアの身体へ舐め回すような視線を送り視姦した!!
これにはもロナフェミアもゾッとした様子で両手で自身の身を守るように腕で包み
嫌悪感を隠すでもなく表情に表し...

彼女はなんと!――自身の手袋を相手の頬めがけて手袋を投げつけ決闘を申し込む行為に及んだ!!

この世界において相手に自身の手袋を投げつける行為は騎士同士が篭手を投げる事が由来であり“貴様なんぞ片手でも十分”であると武人を侮辱する行為である!
これに応じなければしなければ自分は相手より武技に劣る格下であると認める事になる!!!

「殿下・・・一体これがどう言う事なのか、お分かりで?」

「勿論よꐦ エルツーク侯!伝統に則り貴殿に決闘を申し込むわꐦ 」

当然――ドル卿は手袋を拾い受けて立った!!
うぉぉおおおーーー!!!決闘だぁぁあ"あ"あ"あ"!!!!
行く末はどうなるのか?気になったアユムは更に、その場に留まる。

ドル卿は「フン!」と鼻を鳴らすと『それは勇ましい事ですね・・・それで決闘の方法は如何様で?』とロナフェミアに訪ねる...

「代闘士を立てます!わたくしの名誉の為に『我こそはと思う者は』今すぐにでも名乗り出なさい!!」

どうやらロナフェミア第二皇女は代闘士を立てるようだ・・・っーか、ここで募集するんだ...

「誰かーꐦ 誰か私の名誉の為に闘おうと言う忠義のある者は居ないのですかーꐦ この不忠者ーꐦ 」

・・・ところが第二皇女の呼び掛けに答える者はいない♪コレが日頃の行いか♪
悪辣な笑顔を浮かべながらロナフェミアの事を小馬鹿にしていたアユムだったが彼は――この時

自身の周囲の人間がロナフェミアに威圧されて怖ず怖ずと下がっている様子に気付いていなかった!!

彼が気づいた時には自然と――まるで自身が前に歩み出たようになっていおり...

「おおおーーー!!名誉伯!なんと!男らしい!!」

「えっ?」

いつの間にか自身より後ろにいる群集に『えっ?! えっ?!』と驚いてキョロキョロする事しか彼には出来なくなっていた!

「なっ、なんと言う事だ...(震え声)」

アユムが(馬鹿な・・・どうしてこうなった...)と絶望感溢れる表情を浮かべる一方で...

ようやく代闘士が見つかったロナフェミアは焦りの表情から一転し「見なさい♪ これぞ――わたくしの人徳の成せる業です♪」と勝ち誇った表情で胸を張っている!

ちなみにアユムが代闘士に決まった事を見届けたドル卿はフン!と鼻を鳴らし「まあ良い――長いこと目障りだった若造の首を跳ね飛ばしてやるわ!」と殺す気満々の捨て台詞を吐いて去っていく!

こうして――どうしてこうなった・・・と小声で呟くアユムだけが取り残されたのでした...
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