クラス転移したけどリセマラされる前にバックレる

シューニャ

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第210話:身内に甘いダメな領主

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アユムが領主に復職して直ぐに――やった事が各民族の代表者や有力者に話を通す事と衛兵隊、守衛隊、領軍の兵士達に特例で恩赦を与える事を条件に職務へ復帰して命令系統へ入るようにした上で...

ニニムとカルティエを仕事に戻して滞っていた給料を支払わせ経済と物流を担うリリナの親達と今後の対応を検討する事であった。

なおヴェルマ守衛隊長率いる守衛隊は給金が滞るまで真面目に仕事をしていたようだが給金が滞ると職務を放棄する部下が続出した為に自身の判断で城壁の門を閉め切って対応したとの事だったが・・・守衛という仕事の性質上、問題ないと判断した為だ

一方、衛兵隊を任せているウサ耳を生やしたオレガノ衛兵隊長は真面目に職務に取り組む――ついでに暴動寸前の問題を起こしていた領民達から手数料と称して貴重品や金品を巻き上げていたようだったが給金のない中で必要最低限の仕事をしていた事を加味し驚くべき事にアユムは彼女を無罪放免とした

当然、オレガノの横暴を許したアユムに対し『なぜ領主様は金銭を脅し取るような衛兵隊長であるオレガノを許すのか?!!』と一部の領民は抗議したが領民の為にケルダンの物流と経済を回すのが先なのと――皇帝であるラーイ帝から税収が採れるように急かされている事実を述べ...

そもそも声高らかに騒いでいる人々も生計を立てる為に窃盗や税金未納、横領など何かしらの犯罪に手を染めていた点に言及すると『全ての犯罪者を取り締まるとケルダンに住む全ての人を逮捕しなければならなくなる』と言い【咎人を許せ!】と言うアリア教の教えを引き合いに出すと彼ら彼女らにオレガノを許すべきだと熱弁を展開し出し始めたのだ!!

勿論――アユムがオレガノを罰したくない理由は『【可愛いは正義!】こんな!可愛いピンク色のケモ耳が生えたオレガノを罰するなんて出来ない!』と言う欲望だだ漏れ本音のせいである

アユムの訳分からないアクロバティック擁護を聞いた領民達は『つまり・・・どういう事だよ?!』混乱し次第に抗議のトーンを落とす!

何故なら神権の代行者たる皇帝から統治を委任されている領主の決定は絶対だからだ。本人達からすれば胸くそ悪い話だろうが物事が穏当に運ぶ為なら煽動罪で逮捕すると言われれば――そう時間は掛からなかった...

これには当の本人であるオレガノもニンマリである!
見る見るとケルダンが衰退していく姿を間近で見ていた彼女からすればアユムが領主に復職すれば――経済と物流の回復に意識を向けるのは当然の流れだと考えていたからだ。

当然、治安面で街を回していくには――どうしても衛兵隊の隊長である自分の力が必要とされるし身体能力で選ばれた以上、兎獣人とのハーフである自分の代わりなど、そう現れない所か...

落ち目だったケルダンの衛兵隊長になりたいと申し出る変人など、いったい何処にいると言うのか?

実際アユムが一時的に解任されケルダンが――うらぶれ始めると直ぐにアリーゼとヴェルマは再就職先と新しい雇用主を探していたしカルティエも(さっさとネルレイア商会に戻りたい――いつになったら戻れるのか?!)と商会を立ち上げた祖父宛の手紙を書き治安が悪いので代わりに配達人へ渡してほしいと依頼されていた所である。

結局の所――アユムという潤滑油がないとケルダンは上手く回らない。
そこをセルゲイ近衛騎士団長と保衛部は見誤っていた。

アユムが帰って来たと言う噂は既に市井しせいに広まっており犯罪者達は復職した領主を恐れ既に我先へと逃げ出し始めているようだ

ついで既に【民族や出自を理由に商品の提供及びに販売価格に差を付けてはならない!】と言う布告が公布されケルダンの物流と経済が回り出し物価が下がるのも時間の問題だろう...

もちろん【彼は身内に甘いダメな領主だ】と憤る人もいるかもしれない!
だが傭兵としてオレガノは見てきた・・・完璧な統治を行なう領主など存在しない...

アユム以外の領主は若い娘を召し上げ手込めにし領民からは高い税を取り立て私腹を肥やし――そのくせインフラなど公共事業と言う形で人々に税を還元しない碌でなしばかり...

しかも魔物や賊から保護されるべき領民に対し最低限の責務すら碌に果たそうとしない!

だが前日に――彼女は見た...
自分と半分は血のつながっているウサギの獣人達・・・彼らと血が繋がっている事にオレガノは嫌悪していた。

故郷で――お前の親は獣姦の趣味があったのか?と、よくバカにされたからだ。
幼心に傷つき自分は何者なのか・・・自身のアイデンティティが分からなかったのを今でも覚えている...

自分はネルレイア人だ!・・・だが、そう思う心の何処かで彼らへの仲間意識も捨てられない自分がいる事に気づいていた...

獣人は盗品と知りながら領軍から横流しされた備品を持っていた。
当然、領主であるアユムは彼らを罰し盗品を取り上げるモノだと思っていたが...

あろう事かアユムは彼らが、なけなしの金で買った事実を知ると『なるほど・・・それは・・・本当は返して欲しかったが購入したのであれば、いくら何でも可哀想だ。』と言って取り返すのを諦めたのだ!

領主であるならば領民の税収で賄われた備品も彼の私財である!
何故、力尽くで取り返さないのか?彼女は問うた。するとアユムは...

「いや、いいんだよ。確かに税金を納めてくれている領民達には申し訳ないが・・・兵士達に中古の官品を使わせるのも――どうかと思っていたし・・・」
「それに盗品とは言え――なけなしの金で買ったと言うのも今にも泣き出しそうな彼らの態度を見れば嘘じゃないと分かった...」
「わざわざ使い古された中古品を無理矢理取り上げる事もなかろう。それにモノは考えようだ・・・新しく公費で買えば領民の懐も潤うと言うモノさ。」

アユムから――その暖かな言葉を聞いてホッとした自分に気づく...
あんなに優しい人はいない...
誰がなんと言おうとアユムは立派な領主である。
内心で――そう思いを秘めるオレガノであった。
アユムが帰還した事でケルダンは再び動き出す...
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