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第208話:女神アリア

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「何をおっしゃいますか!正しい神の使徒が豊かに生きる方法は――ただ1つ!額に汗しながら身を粉にして必死に働く事だけのハズです!!」

「そんな事はない!神学を学び徳を積み重ね人々から寄付を受ける事も立派な使徒の生き方だ!貴方の言い方は――まるで寄付そのモノを否定しているように聞こえる!」

他の聖職者達と女神アリアの教えについて時に激しい議論を交わす一方で俺は元の世界に帰還する方法を探り続けていた。
結局の所――書籍程度では重要な事は何一つ分からなかったが...

――この短期間で1つだけ分かった事がある...

どうも帰還の方法に心当たりがある人物は――女神アリア本人だけだと言う事だ。
女神アリアに会いたければ、まずルクルサ教皇に会う必要がある訳だが...

女神アリアに会う為に建前であった神学の勉強に打ち込むと言うのは本末転倒だろう...

こうなったら...
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「へっへっ・・・なんとか猊下げいかのお力添えをお願いできませんでしょうか?」

大司教の何かに大口の寄付をして無事――ルクルサ教皇に謁見の約束を取り付けてやった!!!見ろ!これが俺の力だ!!!思い知ったか!!まったく!金の力は偉大である!!

※いちおう寄付が駄目だった時の為に――ある程度、丸暗記した教義が無駄になってしまったが...

***

カネに物を言わせ・・・ルクルサ教皇――ユニスフィア教皇と同教団の聖騎士長を務めているアイギス聖騎士団長と接触する事に成功した。

ルクルサでは男性優位な社会とは真逆で容姿端麗な女性こそ精霊と神に近いと考えてられている為、女性が高位を務めるのが通念らしい。

幸いエルフ達の間でもケルダンで製造されているブレンド茶は好評らしく教皇も愛飲してくれているとの事で俺に対する教皇の印象は良いようだ。

こうしてルクルサに入れたのも教皇一族に会えたのもラーイ帝が発行してくれた身分証と神学校への推薦状のお陰といった所か...

女神アリアに面会したいと言う話を教皇に申し入れると意外にも――あっさりと面会を許してくれたので肩すかしを食らう

何故、そんなにあっさりと面会を許すのかと遠回しに疑問を彼らに、ぶつけると・・・どうやら――女神は不老不死らしい...マジか?!

しかも教皇一族によれば歴史書を紐解けば過去にも女神を討とうとした不遜な輩がいたらしいのだが...

女神は強力な加護を持っているので普通の武器や魔法では――まず傷つかず挑んだ者は赤子の腕をねじるかの如く――女神によって一捻りで返り討ちにされたとの事だった。

「ひぃぇぇぇ・・・すいません――面会するにあたって女神様の気分を害さないように気を付けておくべき事を教えておいて下さいませんか?」

もしも不興を買うような事があったら笑えないので差し当たって彼女の嫌う事などを教皇に聞こうとしたが『アリア様は温厚な方なので、余程の事を仕出かさなければ大丈夫!』の一点張りで教えて貰えなかった...

その余程の事が――【どの程度のレベルの内容なのか】が聞きたかったんですけどねぇ~~?!!

しかも直ぐに女神アリアに許可が取れたらしく【えっ?面会したいって?・・・直ぐに来てくれても良いよ】みたいな感じで俺が不安を抱えているにも関わらず――その場で女神のいる部屋へ直行させられた!!

いや?!そりゃあ~・・・アポを取ったけど!俺の心の準備は?!!
えっ?無視で良いって?そんな!

***

女神アリアの居る聖域に入ると――聖域とやらは草木や蔓で、いっぱいだった!

自然豊かな空間でキョロッていると『ようこそ・・・女神ヴィネスの勇者に、なり損ねた者よ』と言う声と共に中央の螺旋階段から肩までしかないショートカットで、くすんだ赤毛の美女が下ってきた!

どうやらエルフ達が女神の世話や掃除をサボっている訳ではなそうだ・・・彼女が足を運ぶ度に草木や蔓が床から生えてきている!!
だが、それよりも俺には気になる事がある!!!

(・・・お、大きい!!)

痴女のような大胆な法衣を着ていたユニスフィア教皇やイチジクの葉っぱを模したような服装だった聖騎士長アイギスの爆乳に視線を向けないようにするのも大変だったが女神アリアが、お召しになっている赤いドレスのような服は胸もとが大きく開いていて...

さすが豊穣の女神と言った所だろうか?!!
推計で――Nカップはあろうかと豊かな胸は今にも服からこぼれ落ちそうだ!!!
ハッ?!いけない!!俺とした事が思わず胸の谷間ばかり見ていた!

こんな立派なモノ谷間を見る為に――ここに来た訳ではない!
幸いにも女神アリアは別に怒ってる様子ではない――本題に入る。

「主よ――私の事を、ご存じなら私が――ここに来た理由も貴女様は知っておられるでしょう。私は元居た世界に帰還する簡便な方法を探しています。」

しかし残念ながら女神アリアですら元の世界へ安易に帰れる方法は知らないようで...

『力になってあげたいのだけど・・・残念ながら貴方が思い描くように簡単に他の世界へ往来するような奇跡は女神である私ですら知らないのよ...』と彼女は頬に手を当てながら本当に残念そうな様子で答えられてしまった...

ショックを受けなかったと言えば嘘になるが、そう都合良く物事が運ぶとも最初から思っていなかった・・・良くも悪くも予想の範囲だ。

念の為に、あの時・・・ユニオン王国のどこかの城砦でヒョロガリのおっさんが述べていた魔王を――ぶっ殺した際に同時に消滅するとかいう闇の呪詛が発生するエネルギーを【聖刻のペンダント】に閉じ込める方法と【異界への帰還の書】があるのか?聞いておく...

すると女神アリアによれば後者なら魔王の居城に現れると聞いた事はあるが前者は自分が知らないだけかも知れないが聞いた事がないし【聖刻のペンダント】は、そもそも聖者の魂を閉じ込める為に使用する物で『闇の呪詛が発生するエネルギー・・・云々かんぬん』など、そもそも初めて聞くと言う。

それに加え自分より若い女神であるヴィネスが、そのような事を知っていると言うのは、あまりに不自然だと言うのがアリアの感想のようだ...

「もちろん私が知らないだけで――もしかしたら今はルスリス獣人国にいる一番古い女神・・・月の女神ノクターナルなら知っているかもしれないわ...」

あの時、ユニオン王国のどこかの城砦で聞いた帰還に関する情報に齟齬が生じてきた事を考えれば――あのヒョロガリは本当の事を言っていたのか?
いよいよ雲行きが怪しくなってきた...

女神アリアから得た情報を脳内で反芻しながら俺はルクルサ神権国を後にした...
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