198 / 228
第197話:悪の宝石箱
しおりを挟む
アユムが領主の任を一時的に解かれてもケルダンは今日も回る。
朝から列を成して徒歩で出勤しているのはライン工たちだ
その光景は元の世界と変わらないが...
唯一・・・この異世界で異様なのは娼婦から足を洗った多くの女工達やケルダン伯から支援で食料や少額の金銭的保証を実家が受け取ったが為に強制的に学校へ行く事になった子ども達の姿がある事だろう...
いくらユガンが帝国主義に行き詰まり商業の門戸を、より広く開いた自由都市同盟国家に生まれ変わったとは言え子ども達を安心して預けられる学校や保育施設そして――ある程度の収入が保証され女性の働ける職場が整い...
尚且つ裕福な貴族や商人の子弟でもないのに子ども達が教育を受けられるのはケルダンくらいなモノである
「おい、お前が新人か?」
「はい、どうも。お世話になります。」
どうやら・・・ライン工たちは早速、今日の仕事を始めるようだ。覗いてみよう...
「今日は緊急の仕事は入っていないからシフト制じゃないがシフトの時は遅れるなよ。今日、支給された木簡を持っていくのを忘れるなよ!毎日、仕事始めに支給される木簡を忘れると公営食堂で食事の割り引きが受けられなくなるぞ?!気をつけろよ...」
どうやら彼らはケルダンで発行されている木簡について話しているようだ
彼の先輩が言うように低所得者や公営の工場制手工業で働く彼らには――支給される日によって絵柄が違う木簡が支給されていて...
食べていくのが難しい者たちへの救済策として食料の生産から流通、調理、販売が行なわれていて同じく食べていくのが難しかった人々の雇用創出に一役買っている
公営の食堂では低額または無料のメニューが用意されており食べるのには一応・・・
低額メニュー 朝 甘いシリアルとミルクとビレネー芋のポテトサラダ【貧者のコーヒーこと】コーヒーチェリーティー
昼 重曹を使ったライ麦と大麦の雑穀ソーダブレッド、挽肉、ナスと玉ねぎ、カブが入ったビレネーナス ソース仕立ての蕎麦のカーシャ(粥) 野菜のコンソメスープ レモネード風清涼飲料ラムネ
晩 ライ麦と小麦粉の全粒粉パンと豚肉入りキャベツのシチー ローストレッグ ハトムギなど使ったブレンド茶
無料メニュー 朝 蒸かしたビレネー芋とビレネー芋のポテトサラダ【貧者のコーヒーこと】コーヒーチェリーティー
昼 挽肉とカブのオートミール(エン麦の粥)ハトムギなど使ったブレンド茶
晩 蒸かしたビレネー芋 もはや・・・ただのキャベツスープと化したシチー
※ハトムギなど使ったブレンド茶は某企業の十○茶や爽○美茶のような味わいです!
と困らない事になっている...
無料メニューの方は【貧乏人は、これでも食っていろ!】と言わんばかりの貧相なメニューだが・・・これでも働いても食べるのに困っている他の地域の農奴たちと比べれば大変、配慮の行き届いた優しい心配りを感じずにはいられないほど恵まれている食事なのだ。
(うん?木簡の柄が違う?)
「偽造木簡だー!捕まえろー!!」
「うわっ?!ヤべっ!!」
どうやら――つい最近、問題となっている隣のリヴォニアに住む住人が偽装した木簡を使い不正に食事を受け取ろうとしていたらしい。
「くそっ!逃げられた・・・」「なんて逃げ足の速い野郎だ!」
乱れた呼吸をしながら追いかけていた職員達が戻ってきた。彼らの言動から、どうやら逃げたれたようだ
話が逸れたが新人の彼の所へ視点を戻そう...
現在、彼は先輩労働者に工場の製造ラインの案内をされているようだ...
「多少の不便あっても製造ラインの安全装置は絶対に切るな――つい先日も人体感知センサーが触れて、その度にラインが止まるからと言って安全装置を切ったバカが機械に巻き込まれたばかりだ。」
「あと別工場に勤務しているお針子達と女工達を口説こうとはするな、売春婦あがりは【体は、もう売っていないꐦ 】と言って気が強いし既婚女性に当たれば強面の夫が出てくる事もあるからな。」
・・・な、なんて!リアリティーのある生々しい話なんだーー!!!
きっと先輩労働者の実体験に基づいた、ありがたい話に違いない!!!
と新人の彼が思ったのも想像に難しくない...
綺麗な心が汚れる前に学校へと視点を移してみよう。
きっと子ども達の事だ、まだ純粋な心を持っているに違いない。
***
どうやら時間は進んで学校ではお昼の給食の時間に差し掛かっている時間帯らしい...
今日は安価で美味しい大人にも子ども達にも人気であるミートソースのソフト麺(ソフトスパゲッティ式めん)が提供される日のようだ。
※補足だが公営食堂で大人達に一番人気なのもミートソーススパゲッティーらしい
ちなみに同和政策を図るには時間が速すぎると判断された為にクラス分けは結局――民族別になったようである
なお子ども達には給食に加え栄養失調にならないように又は、その改善を目的としたオヤツが配られるよう配慮がなされている。今日のオヤツはカップの容器に入ったプリンアラモードのようだ
兵士を中心とした大人達がサプリメントや栄養素が添加されたシリアルで安上がりに済ませられている事を考えれば誠に贅沢な話である
もちろん子どもではサプリや兵営にて支給される栄養素が添加された様々のフレーバーのシリアルでは食べるのに飽きて拒否するかも知れないと危惧したアユムの配慮だ
「おい!色なしネズミ!プリンアラモード、寄こせよ!」
おや?何かトラブルかな?
「で、でもコレは私達ビレネーの分だもん!」
どうやらエレンダの子ども達がビレネーの子ども達の分のオヤツを横取りしようとしているらしい...
今日の給食当番はササミの友達のククリちゃんのようだ。複数のエレンダ人の男の子に囲まれて脅されている彼女は目に涙を溜めて今にも泣きそうだ・・・なお...
「こらぁ~~!!!何してやがるのですー!!ブッ殺してやるのですよ!!!エレンダ人!!!」
掃除の箒を持ち出して駆けつけたササミがエレンダの男の子達を血が出るくらいボコボコに叩きのめした!明らかにやり過ぎである!!これには担任の先生も駆けつけ...
「手ぬるぅぅーーーぃぃい"い"い"!!!ササミさん!!エレンダ人は学習能力が足りないですからꐦ もっと!骨を、へし折って差し上げるくらい!!ボコボコにしてきなさぁぁーーーぃぃい"い"い"!!!」
・・・と教育者として!
あるまじき教育的指導をササミに教えたではないかーー?!!
どうなっているんだよぉぉおおおーーー?!!この学校!!!
「さあ!!クラス全員で!エレンダの奴らに殴り込みをかけますよ!!!」
「ぉぉおおおーーー!!!」
が、学級崩壊してるぅぅうううーーー?!!
大人なら――ともかく子ども達なら純粋な心を、まだ持っていると思ったのに?!
いったい・・・純粋な心を持った子ども達は何処へぇぇえ"え"え"?!!
とうとう先生同士でも乱闘が始まった!!
もう終わりだよ!!この学校!!!
これ以上、先生同士の乱闘を見ていても仕方がないので市場の方を見に行こう!!
***
「色なしネズミに売ってやる砂糖はない!帰れ!」
「チィꐦ ふざけんなよꐦ このユガン野郎が...後で覚えていろよ...」
「はい、次の方。120ケルダン賤貨になります。」
「はぁ?!ふざけんなよ!さっきのビレネー人は30賤貨だったじゃねぇかよꐦ 」
「さっきのお客様は同胞価格です~~♪お前らには通常価格で売ってやるよ♪嫌なら他の店に行けば?まあ他の店も同胞がやってますけど~~(笑)」
「クソがぁぁあああꐦ 今すぐユガンが出て行け!このユガンに寄生する事しかできないゴキブリ色無しネズミ共がぁꐦ」
「はあ"ꐦ お前が出て行けꐦ ユガンのクソ野郎がぁ!!!」「そうだꐦ ケルダンはビレネー人の街だꐦ 」
「我々は日頃――貴様らユガン人とエレンダ人から差別されているだから損を取り戻しているだけだ!! 」
う~ん・・・市場の大人達は更に仲が悪いようだ...
ビレネー人の群衆が「そうだ!そうだ!」と煽り立てるように口々に述べると「出てけ!出てけ!」とシュプレヒコールを挙げ始める!
だが安心して欲しい!!
すぐに騒ぎを聞きつけたオレガノ率いる衛兵隊が到着した!!
きっと――正義感溢れるオレガノが、すぐに解決してくれるに違いない!!
オレガノは関係者の事情聴取をして両者の言い分を聞き事態を把握すると『ふ~ん なるほど・・・』と納得すると...
「なら特別に相手より高い金を払った方に便宜を図ってやろう・・・」
そう、そう。悪い奴を逮捕して・・・って違ぁ"ぁ"あ"あ"あ"ううう!!!
賄賂を要求しただとぉぉーーーお?!!
「そ、そんな?!衛兵隊の隊長が金を要求するんだなんて!!」
「おい!アンタ!うさぎケモ耳女!!お前ふざけんなよぉ~~!!」
「そんな要求が通ると思っているのか?!!領主様が復職したら言いつけてやる!!」
あまりの予想外の展開に先ほどまでケンカしていた両者も珍しく共闘し抗議の声を挙げるが――オレガノは...
「何を言っている?あの方が信を置いている私とお前達の言い分どちらを信頼するかは明白ではないか?それに閣下が任を解かれている内に少しでも稼いでおかなければな?」
「・・・それとも何か?払えないと言うのであれば、ここで全員殺してしまおうか?幸い忌々しい亜人の血が混じっている私がお前達に膂力で負ける訳もないし暴動を制圧に際して死人が出る事は、よくある事だ。」
「仮に――ここに居る全員が不幸にも死んだ所で陛下から任を解かれている閣下もお気になされないだろう...」
と残念ながらマンガのような熱い展開にはならなかった!
彼女が顔に影を落としながら眉毛すら動かす事無く冷酷な声と表情で全員を脅すと凄むオレガノと取り巻きの完全武装の衛兵達にケンカしていた両者は――たじろぎ、おべっかを使いながら有り金ほぼ全てをオレガノ達に巻き上げられた!
「フン!それなり金額だな・・・気分が良い...私の機嫌に免じて今回は特別に両者とも便宜を図って見逃してやろう...これに懲りたら二度と私の手を煩わせないことだな!」
「はい・・・(ギロッ!)っとオレガノの厳しい視線!)ありがとうございます!」と言う両者!その様相は完全に駅前の不良にカツアゲされて哀れみで交通費分だけ返して貰ってお礼を言う被害者の構図である!!!
オレガノ達が去ろうと背中を向けて歩き出すと――両者は『お前らのせいだ!謝罪しろ!!』とお互いを非難した!
すると踵を返して戻ってきたオレガノに『なんだ・・・私への罰金刑だけでは足りないのか?!やはり、しょっ引かれたいのか!!貴様らꐦ 』と激昂され――ようやく両者とも蜘蛛の子を散らすように去っていった!!
他にもオレガノ達が市場を後にすると入れ替わるように勤務中のハズの兵士達が、やって来て結局――軍人の非常食としてはカロリーが摂れないので不適切だとされた領軍から配給品や本来、無料で放出されるべき払い下げ品であるアルファ化された乾燥オーツ麦と粉末チキンスープのオートミールや同じく乾燥オーツ麦とカツオに似た魚で作った荒節《カツオ節》のオートミールを箱単位で食料品に売り...
ちゃっかり自分たちの懐に納める有り様だ!!!
腐ってやがる・・・ここは悪の宝石箱か?!!
もう終わりだよ!!この領!!!
以上――領主がいない間でも少しでも自分の懐を癒やそうとする逞しいケルダンの市場からお届けしました!つづく...
朝から列を成して徒歩で出勤しているのはライン工たちだ
その光景は元の世界と変わらないが...
唯一・・・この異世界で異様なのは娼婦から足を洗った多くの女工達やケルダン伯から支援で食料や少額の金銭的保証を実家が受け取ったが為に強制的に学校へ行く事になった子ども達の姿がある事だろう...
いくらユガンが帝国主義に行き詰まり商業の門戸を、より広く開いた自由都市同盟国家に生まれ変わったとは言え子ども達を安心して預けられる学校や保育施設そして――ある程度の収入が保証され女性の働ける職場が整い...
尚且つ裕福な貴族や商人の子弟でもないのに子ども達が教育を受けられるのはケルダンくらいなモノである
「おい、お前が新人か?」
「はい、どうも。お世話になります。」
どうやら・・・ライン工たちは早速、今日の仕事を始めるようだ。覗いてみよう...
「今日は緊急の仕事は入っていないからシフト制じゃないがシフトの時は遅れるなよ。今日、支給された木簡を持っていくのを忘れるなよ!毎日、仕事始めに支給される木簡を忘れると公営食堂で食事の割り引きが受けられなくなるぞ?!気をつけろよ...」
どうやら彼らはケルダンで発行されている木簡について話しているようだ
彼の先輩が言うように低所得者や公営の工場制手工業で働く彼らには――支給される日によって絵柄が違う木簡が支給されていて...
食べていくのが難しい者たちへの救済策として食料の生産から流通、調理、販売が行なわれていて同じく食べていくのが難しかった人々の雇用創出に一役買っている
公営の食堂では低額または無料のメニューが用意されており食べるのには一応・・・
低額メニュー 朝 甘いシリアルとミルクとビレネー芋のポテトサラダ【貧者のコーヒーこと】コーヒーチェリーティー
昼 重曹を使ったライ麦と大麦の雑穀ソーダブレッド、挽肉、ナスと玉ねぎ、カブが入ったビレネーナス ソース仕立ての蕎麦のカーシャ(粥) 野菜のコンソメスープ レモネード風清涼飲料ラムネ
晩 ライ麦と小麦粉の全粒粉パンと豚肉入りキャベツのシチー ローストレッグ ハトムギなど使ったブレンド茶
無料メニュー 朝 蒸かしたビレネー芋とビレネー芋のポテトサラダ【貧者のコーヒーこと】コーヒーチェリーティー
昼 挽肉とカブのオートミール(エン麦の粥)ハトムギなど使ったブレンド茶
晩 蒸かしたビレネー芋 もはや・・・ただのキャベツスープと化したシチー
※ハトムギなど使ったブレンド茶は某企業の十○茶や爽○美茶のような味わいです!
と困らない事になっている...
無料メニューの方は【貧乏人は、これでも食っていろ!】と言わんばかりの貧相なメニューだが・・・これでも働いても食べるのに困っている他の地域の農奴たちと比べれば大変、配慮の行き届いた優しい心配りを感じずにはいられないほど恵まれている食事なのだ。
(うん?木簡の柄が違う?)
「偽造木簡だー!捕まえろー!!」
「うわっ?!ヤべっ!!」
どうやら――つい最近、問題となっている隣のリヴォニアに住む住人が偽装した木簡を使い不正に食事を受け取ろうとしていたらしい。
「くそっ!逃げられた・・・」「なんて逃げ足の速い野郎だ!」
乱れた呼吸をしながら追いかけていた職員達が戻ってきた。彼らの言動から、どうやら逃げたれたようだ
話が逸れたが新人の彼の所へ視点を戻そう...
現在、彼は先輩労働者に工場の製造ラインの案内をされているようだ...
「多少の不便あっても製造ラインの安全装置は絶対に切るな――つい先日も人体感知センサーが触れて、その度にラインが止まるからと言って安全装置を切ったバカが機械に巻き込まれたばかりだ。」
「あと別工場に勤務しているお針子達と女工達を口説こうとはするな、売春婦あがりは【体は、もう売っていないꐦ 】と言って気が強いし既婚女性に当たれば強面の夫が出てくる事もあるからな。」
・・・な、なんて!リアリティーのある生々しい話なんだーー!!!
きっと先輩労働者の実体験に基づいた、ありがたい話に違いない!!!
と新人の彼が思ったのも想像に難しくない...
綺麗な心が汚れる前に学校へと視点を移してみよう。
きっと子ども達の事だ、まだ純粋な心を持っているに違いない。
***
どうやら時間は進んで学校ではお昼の給食の時間に差し掛かっている時間帯らしい...
今日は安価で美味しい大人にも子ども達にも人気であるミートソースのソフト麺(ソフトスパゲッティ式めん)が提供される日のようだ。
※補足だが公営食堂で大人達に一番人気なのもミートソーススパゲッティーらしい
ちなみに同和政策を図るには時間が速すぎると判断された為にクラス分けは結局――民族別になったようである
なお子ども達には給食に加え栄養失調にならないように又は、その改善を目的としたオヤツが配られるよう配慮がなされている。今日のオヤツはカップの容器に入ったプリンアラモードのようだ
兵士を中心とした大人達がサプリメントや栄養素が添加されたシリアルで安上がりに済ませられている事を考えれば誠に贅沢な話である
もちろん子どもではサプリや兵営にて支給される栄養素が添加された様々のフレーバーのシリアルでは食べるのに飽きて拒否するかも知れないと危惧したアユムの配慮だ
「おい!色なしネズミ!プリンアラモード、寄こせよ!」
おや?何かトラブルかな?
「で、でもコレは私達ビレネーの分だもん!」
どうやらエレンダの子ども達がビレネーの子ども達の分のオヤツを横取りしようとしているらしい...
今日の給食当番はササミの友達のククリちゃんのようだ。複数のエレンダ人の男の子に囲まれて脅されている彼女は目に涙を溜めて今にも泣きそうだ・・・なお...
「こらぁ~~!!!何してやがるのですー!!ブッ殺してやるのですよ!!!エレンダ人!!!」
掃除の箒を持ち出して駆けつけたササミがエレンダの男の子達を血が出るくらいボコボコに叩きのめした!明らかにやり過ぎである!!これには担任の先生も駆けつけ...
「手ぬるぅぅーーーぃぃい"い"い"!!!ササミさん!!エレンダ人は学習能力が足りないですからꐦ もっと!骨を、へし折って差し上げるくらい!!ボコボコにしてきなさぁぁーーーぃぃい"い"い"!!!」
・・・と教育者として!
あるまじき教育的指導をササミに教えたではないかーー?!!
どうなっているんだよぉぉおおおーーー?!!この学校!!!
「さあ!!クラス全員で!エレンダの奴らに殴り込みをかけますよ!!!」
「ぉぉおおおーーー!!!」
が、学級崩壊してるぅぅうううーーー?!!
大人なら――ともかく子ども達なら純粋な心を、まだ持っていると思ったのに?!
いったい・・・純粋な心を持った子ども達は何処へぇぇえ"え"え"?!!
とうとう先生同士でも乱闘が始まった!!
もう終わりだよ!!この学校!!!
これ以上、先生同士の乱闘を見ていても仕方がないので市場の方を見に行こう!!
***
「色なしネズミに売ってやる砂糖はない!帰れ!」
「チィꐦ ふざけんなよꐦ このユガン野郎が...後で覚えていろよ...」
「はい、次の方。120ケルダン賤貨になります。」
「はぁ?!ふざけんなよ!さっきのビレネー人は30賤貨だったじゃねぇかよꐦ 」
「さっきのお客様は同胞価格です~~♪お前らには通常価格で売ってやるよ♪嫌なら他の店に行けば?まあ他の店も同胞がやってますけど~~(笑)」
「クソがぁぁあああꐦ 今すぐユガンが出て行け!このユガンに寄生する事しかできないゴキブリ色無しネズミ共がぁꐦ」
「はあ"ꐦ お前が出て行けꐦ ユガンのクソ野郎がぁ!!!」「そうだꐦ ケルダンはビレネー人の街だꐦ 」
「我々は日頃――貴様らユガン人とエレンダ人から差別されているだから損を取り戻しているだけだ!! 」
う~ん・・・市場の大人達は更に仲が悪いようだ...
ビレネー人の群衆が「そうだ!そうだ!」と煽り立てるように口々に述べると「出てけ!出てけ!」とシュプレヒコールを挙げ始める!
だが安心して欲しい!!
すぐに騒ぎを聞きつけたオレガノ率いる衛兵隊が到着した!!
きっと――正義感溢れるオレガノが、すぐに解決してくれるに違いない!!
オレガノは関係者の事情聴取をして両者の言い分を聞き事態を把握すると『ふ~ん なるほど・・・』と納得すると...
「なら特別に相手より高い金を払った方に便宜を図ってやろう・・・」
そう、そう。悪い奴を逮捕して・・・って違ぁ"ぁ"あ"あ"あ"ううう!!!
賄賂を要求しただとぉぉーーーお?!!
「そ、そんな?!衛兵隊の隊長が金を要求するんだなんて!!」
「おい!アンタ!うさぎケモ耳女!!お前ふざけんなよぉ~~!!」
「そんな要求が通ると思っているのか?!!領主様が復職したら言いつけてやる!!」
あまりの予想外の展開に先ほどまでケンカしていた両者も珍しく共闘し抗議の声を挙げるが――オレガノは...
「何を言っている?あの方が信を置いている私とお前達の言い分どちらを信頼するかは明白ではないか?それに閣下が任を解かれている内に少しでも稼いでおかなければな?」
「・・・それとも何か?払えないと言うのであれば、ここで全員殺してしまおうか?幸い忌々しい亜人の血が混じっている私がお前達に膂力で負ける訳もないし暴動を制圧に際して死人が出る事は、よくある事だ。」
「仮に――ここに居る全員が不幸にも死んだ所で陛下から任を解かれている閣下もお気になされないだろう...」
と残念ながらマンガのような熱い展開にはならなかった!
彼女が顔に影を落としながら眉毛すら動かす事無く冷酷な声と表情で全員を脅すと凄むオレガノと取り巻きの完全武装の衛兵達にケンカしていた両者は――たじろぎ、おべっかを使いながら有り金ほぼ全てをオレガノ達に巻き上げられた!
「フン!それなり金額だな・・・気分が良い...私の機嫌に免じて今回は特別に両者とも便宜を図って見逃してやろう...これに懲りたら二度と私の手を煩わせないことだな!」
「はい・・・(ギロッ!)っとオレガノの厳しい視線!)ありがとうございます!」と言う両者!その様相は完全に駅前の不良にカツアゲされて哀れみで交通費分だけ返して貰ってお礼を言う被害者の構図である!!!
オレガノ達が去ろうと背中を向けて歩き出すと――両者は『お前らのせいだ!謝罪しろ!!』とお互いを非難した!
すると踵を返して戻ってきたオレガノに『なんだ・・・私への罰金刑だけでは足りないのか?!やはり、しょっ引かれたいのか!!貴様らꐦ 』と激昂され――ようやく両者とも蜘蛛の子を散らすように去っていった!!
他にもオレガノ達が市場を後にすると入れ替わるように勤務中のハズの兵士達が、やって来て結局――軍人の非常食としてはカロリーが摂れないので不適切だとされた領軍から配給品や本来、無料で放出されるべき払い下げ品であるアルファ化された乾燥オーツ麦と粉末チキンスープのオートミールや同じく乾燥オーツ麦とカツオに似た魚で作った荒節《カツオ節》のオートミールを箱単位で食料品に売り...
ちゃっかり自分たちの懐に納める有り様だ!!!
腐ってやがる・・・ここは悪の宝石箱か?!!
もう終わりだよ!!この領!!!
以上――領主がいない間でも少しでも自分の懐を癒やそうとする逞しいケルダンの市場からお届けしました!つづく...
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
539
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる