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第193話:セルゲイ近衛騎士団長
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アユムが小貴族達を焼き討ちしていた――その頃
***
――皇居宮殿=皇帝の玉座の間――
「な、何故だ?! 何故なのじゃ?!! 何がそんなに不満だったのだ?!! サナイ~~~?!!」
アユムが自分の許可なく勝手に軍を動かしたと聞いて散々――まさか下剋上か?!!かと右往左往していたラーイ帝の絶叫が玉座の間を駆け抜ける!!
臣下からの報告で――どうやら軍は自分に向けられたモノではないと言う事で少し安心したが...
ラーイ帝からすれば、まさか――いつも自分に忠実なアユムが、そこまで激怒するとは思っても見なかったのだ!!
アユムが軍を興したと言う知らせを受けた時は本人が気が気ではなかったのも無理からぬ事であった!
その後も次々に領軍に新たな動きが逐次、彼に報告されていく...
その報告は――どれも、この異世界の軍事常識では異質なモノであった...
通常――各領主の私兵である領軍は、その土地の防衛を担う事が目的で侵攻能力は皆無に等しい。もちろん侵攻を前提とした部隊を編成しているラルカ公爵の軍や辺境を守る為に大軍を従えさせているメリザエフ公爵の軍なら、その限りではないが...
当然――防衛的性格の軍が侵攻を行なった事例は過去にもあったが今回のように計画が露見する前に戦略目標を達成させた事例は非常に稀な事だ
まず耳を疑ったのは部隊を分けての分進合撃である。
普通――この世界の軍であるならば統制もとれず部隊はバラバラになり行軍どころではなくなるハズだが...
しかしアユムの軍には――それが出来た。
ケルダン領軍は各部隊を分割し別々の地点へ同時侵攻したうえ...
しかも同時刻に攻撃を開始し実際に小貴族達の館の焼き討ちして見せたのだ
これはアユムが各部隊が独自に柔軟に対応出来るように各指揮官に部分的に指揮権を委譲し独自に行軍、戦闘をおこなえるように編成した事と...
また情報と連絡を迅速に処理できるように無線通信馬車を配備してかぎりなく全部隊を指揮しやすく采配していた為であった
もちろん彼の部下達が優秀であると言う前提条件もあるとは言え...
同時侵攻、異なる目標への同じタイミングでの同時攻撃。
無線通信と言うイレギュラーな、ずるい手段を使ったとは言え――いずれも並の軍隊では出来ない芸当であるのは疑いようもない...
当然――この今まで聞いた事も見たことない結末にユガンの軍部は衝撃を受け驚愕した。しかし安易にアユムを廃しケルダン領軍を解体する訳にもいかない事情が彼らにはある...
今やケルダンはユガンの経済を牽引し国家財政を支える重要な領であり皇室に納める上納金もトップクラスに躍り出ているうえ...
アユムはアーレ皇太子を完治させる事ができるかもしれない唯一の人物だ
しかも今回は少し前から小貴族側の妨害工作でケルダンと他の領に対する交易路が一方的に寸断されケルダンから税金や上納金が減った事で上層部も問題にしていた。
アユムは言わば煮え切らない態度のラーイ帝に代わり――それに激怒しただけだ
しかも更に悪い事に同じような問題が他領でも起きる危険もなくないし...
(アユムの事だから――そのうち丸く収めるだろう)と思っていた自分達にも非がなくないにも関わらずアユムを処罰したりすれば噂が広まり諸外国から笑われ威信が失墜するばかりか...
皇室と祖国の為にやったのに罰せられるのかと他の貴族からの求心力まで失いかねない事態に発展しかねない!
「ど、どうすれば良いのだぁぁあああ~~?!!」
ユガンを運営している高級官僚や高級武官も含め会議をしたら――彼らから、そのような具申や忠言諫言が飛び出しラーイ帝は再び困り果て情けなく右往左往した
「ど、どうすれば良いのだ~~?!!サナイ~~?!!」
思わず――ここにはいない問題を引き起こした張本人であるアユムに頼ってしまうくらいの狼狽っぷりである!これには臣下達も額に汗をして苦笑いするしかない...
「陛下、セルゲイ近衛騎士団長が北部軍区からの査察から帰って参りました。」
ラーイ帝が困り果てているとダン近衛騎士副団長から耳打ちで、そのような報告を受けるとラーイ帝の顔は明るく変わる
セルゲイ近衛騎士団長は祖父の代から皇室に仕えてくれている彼がもっとも厚い信頼を置く直属の部下だ。
そして、その報告から間もなく老齢な騎士が入ってきた...
ユガン人らしい巨大な体躯しているが彼の肉体は既に最盛期は過ぎている・・・しかし並の猛者には出せない雰囲気を身に纏っていて猛禽類のような鋭い眼光は誰が見ても只者ではないと感じさせた...
彼は、この国が帝国だった時代より――この国を守護してきた
彼は自由都市同盟ユガンの国防大臣に当たる武力相と言う立場であり――この国の反体制派などに対処する――この国の内務省にあたる保衛部の実権を握る実力者だ
ラーイ帝は『おぉ・・・セルゲイ。本当に良い所に帰ってきてくれた。』と述べると既に状況を把握している様子の彼は...
「私にお任せ下さい。陛下」
と、ただ述べたのだった...
***
――皇居宮殿=皇帝の玉座の間――
「な、何故だ?! 何故なのじゃ?!! 何がそんなに不満だったのだ?!! サナイ~~~?!!」
アユムが自分の許可なく勝手に軍を動かしたと聞いて散々――まさか下剋上か?!!かと右往左往していたラーイ帝の絶叫が玉座の間を駆け抜ける!!
臣下からの報告で――どうやら軍は自分に向けられたモノではないと言う事で少し安心したが...
ラーイ帝からすれば、まさか――いつも自分に忠実なアユムが、そこまで激怒するとは思っても見なかったのだ!!
アユムが軍を興したと言う知らせを受けた時は本人が気が気ではなかったのも無理からぬ事であった!
その後も次々に領軍に新たな動きが逐次、彼に報告されていく...
その報告は――どれも、この異世界の軍事常識では異質なモノであった...
通常――各領主の私兵である領軍は、その土地の防衛を担う事が目的で侵攻能力は皆無に等しい。もちろん侵攻を前提とした部隊を編成しているラルカ公爵の軍や辺境を守る為に大軍を従えさせているメリザエフ公爵の軍なら、その限りではないが...
当然――防衛的性格の軍が侵攻を行なった事例は過去にもあったが今回のように計画が露見する前に戦略目標を達成させた事例は非常に稀な事だ
まず耳を疑ったのは部隊を分けての分進合撃である。
普通――この世界の軍であるならば統制もとれず部隊はバラバラになり行軍どころではなくなるハズだが...
しかしアユムの軍には――それが出来た。
ケルダン領軍は各部隊を分割し別々の地点へ同時侵攻したうえ...
しかも同時刻に攻撃を開始し実際に小貴族達の館の焼き討ちして見せたのだ
これはアユムが各部隊が独自に柔軟に対応出来るように各指揮官に部分的に指揮権を委譲し独自に行軍、戦闘をおこなえるように編成した事と...
また情報と連絡を迅速に処理できるように無線通信馬車を配備してかぎりなく全部隊を指揮しやすく采配していた為であった
もちろん彼の部下達が優秀であると言う前提条件もあるとは言え...
同時侵攻、異なる目標への同じタイミングでの同時攻撃。
無線通信と言うイレギュラーな、ずるい手段を使ったとは言え――いずれも並の軍隊では出来ない芸当であるのは疑いようもない...
当然――この今まで聞いた事も見たことない結末にユガンの軍部は衝撃を受け驚愕した。しかし安易にアユムを廃しケルダン領軍を解体する訳にもいかない事情が彼らにはある...
今やケルダンはユガンの経済を牽引し国家財政を支える重要な領であり皇室に納める上納金もトップクラスに躍り出ているうえ...
アユムはアーレ皇太子を完治させる事ができるかもしれない唯一の人物だ
しかも今回は少し前から小貴族側の妨害工作でケルダンと他の領に対する交易路が一方的に寸断されケルダンから税金や上納金が減った事で上層部も問題にしていた。
アユムは言わば煮え切らない態度のラーイ帝に代わり――それに激怒しただけだ
しかも更に悪い事に同じような問題が他領でも起きる危険もなくないし...
(アユムの事だから――そのうち丸く収めるだろう)と思っていた自分達にも非がなくないにも関わらずアユムを処罰したりすれば噂が広まり諸外国から笑われ威信が失墜するばかりか...
皇室と祖国の為にやったのに罰せられるのかと他の貴族からの求心力まで失いかねない事態に発展しかねない!
「ど、どうすれば良いのだぁぁあああ~~?!!」
ユガンを運営している高級官僚や高級武官も含め会議をしたら――彼らから、そのような具申や忠言諫言が飛び出しラーイ帝は再び困り果て情けなく右往左往した
「ど、どうすれば良いのだ~~?!!サナイ~~?!!」
思わず――ここにはいない問題を引き起こした張本人であるアユムに頼ってしまうくらいの狼狽っぷりである!これには臣下達も額に汗をして苦笑いするしかない...
「陛下、セルゲイ近衛騎士団長が北部軍区からの査察から帰って参りました。」
ラーイ帝が困り果てているとダン近衛騎士副団長から耳打ちで、そのような報告を受けるとラーイ帝の顔は明るく変わる
セルゲイ近衛騎士団長は祖父の代から皇室に仕えてくれている彼がもっとも厚い信頼を置く直属の部下だ。
そして、その報告から間もなく老齢な騎士が入ってきた...
ユガン人らしい巨大な体躯しているが彼の肉体は既に最盛期は過ぎている・・・しかし並の猛者には出せない雰囲気を身に纏っていて猛禽類のような鋭い眼光は誰が見ても只者ではないと感じさせた...
彼は、この国が帝国だった時代より――この国を守護してきた
彼は自由都市同盟ユガンの国防大臣に当たる武力相と言う立場であり――この国の反体制派などに対処する――この国の内務省にあたる保衛部の実権を握る実力者だ
ラーイ帝は『おぉ・・・セルゲイ。本当に良い所に帰ってきてくれた。』と述べると既に状況を把握している様子の彼は...
「私にお任せ下さい。陛下」
と、ただ述べたのだった...
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