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第175話:ファ?!なんでお前ら、ここにおるん・・・?

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同刻――ケルダン郊外、練兵演習中・・・

「ゼェー、ハァー...名誉伯はゼェー、ハァー...なちゅー体力をなさっているんだ...ゼェー、ハァー...(汗)」

隊列と組んで走っていた兵士の一人がボヤくのには理由があった

訓練内容は郊外の丘を目指して60キロ近い行軍装備と武器を持ち市街地から約10キロの道のりを25分以内に駆け上がると言うかなりキツいモノで所属する兵士長達から耳元で怒鳴られると言うオマケ付きで...

これに兵士達と同年代であるアユムも参加していて、自分達・・・比較的体力があるハズの農家の7男8男坊と同じ重量の荷物を背負っているにも掛からず領主のアユムは息すら上がってない所か...

他の兵士長達に混じって走りながら耳元で自分達に罵声を浴びせてくる余裕まで彼にはあり...

しかも30分掛けて――ようやく丘の上に到着し若い兵士勢が全員へばっているにも関わらず領主のアユムはケロッとした様子でテキパキと背負ってきた60リットルのスポーツドリンクを配り出す始末である

これには兵士達も『さすが貴族様だぜ・・・』『やはり流民から上級貴族に任ぜられる方は体の出来から違うな...』『あの方には身体強化魔法か体力増幅スキルでもあんのかよ...』『いや、そう言う力は感じないと魔法兵達が言ってぞ...』『マジかよ・・・領主様は化け物かよ...』と困惑した様子だ

そんな風に兵士たちが困惑していると馬に乗った伝令が馬を飛ばして駆けつけた
何かあったのだろうか?その場にいる全員が聞き耳を立てるが伝令がアユムに耳打ちするとアユムは兵士長を呼び『あと25リットル入ってるから持って帰るように...』と言い立ち去って行った...

***

「キートがシーザーの不審船を?」

「はい、拿捕した連中は無理やり船から降ろしましたが現場のキートの艦長と衛兵隊のオレガノ隊長の判断でシーザー語がお話になれる名誉伯閣下、御自らが直接彼らの話して頂きたいと...」

伝令が来たので何事かと思い話しを聞くと――どうやら海上の輸送ルートを海賊から護るためにケルダンに海軍を整備するにあたって蒸気機関の技術確立する為に既存の船を改造した帆船が目的もなくウチの近海を不審に、うろついていたシーザーの船を引っかけたらしい...

余計な事をしやがって・・・もちろん面倒なので適当に処理して欲しかった俺は『えっ~ それ・・・わざわざ俺がやらないとイケないの...』とごねる
すると伝令は困った顔で...

「はっ!閣下がお忙しく無理を言っているのは十分承知しております。で、ですが...拿捕した奴らはユガン語は解らないとホザいておりまして・・・どう処分すれば良いのか・・・艦長とオレガノ隊長も困っております・・・どうしても名誉伯を呼んで来るようにと私は仰せつかっているので閣下には来て頂きたく!」

伝令をこれ以上――困らせる訳にもいかないと判断した俺はしぶしぶ、言われた通り他の馬に乗って彼に付いていく事した...

***

市街地で最高速度で飛ばし疲れた馬から他の馬に乗り換えて――ようやく現場に着いた。既に斥候隊のエブリを始め弓隊のセーラ騎士のホイットニーとアリーゼ、守衛長のヴェルマも応援に駆けつけている

護衛のユユスは既に同行していたがヤヤハとは現地で合流する事になっていたのでアリーゼとエブリの珍しい組み合わせを見かけたので『やあ、今月だけで7件も物件を燃やした我が騎士アリーゼよ...』と冗談めかしに話し掛けて見るとエブリに

『領主様。ならば――ここに来る途中で8件になりましたよ?』と真顔で返されてしまった...

「捕まえた悪人より燃やした建物の被害者の方が多いじゃないか・・・?」

エブリのからの報告に驚く俺に反応にアリーゼは『いえ!卿!それならご安心下さい!!私が捕まえた犯罪者は65人です!それに比べ被害者の方は死傷者なしの33人です!』と真顔で返され、さらに反応に困る!

つっーかケルダンはゴッ○ム・シティかよ...
あれだけ犯罪組織を潰したのに、まだ犯罪者がいるのかよ?!

「なるほど・・・いったい何を安心すれば良いのか分からないが、さすがネルレイアの元神殿騎士だな...」

「はい!卿!私の心は今日も燃やした建物のように正義に燃えています!今日もケルダンの安全のために犯罪者を捕まえてご覧にいれます!Burningヴァーニングです!!」

「そうか・・・燃やした建物の方の保証はしておくから、どうか燃やすのは心だけにしておいてくれ...あと犯罪者も衛兵隊に任せて余計な事はしないように...」

『そんな騎士として目の前の悪行を見過ごす訳にはいきません!!』とアリーゼは言っていたが被害者から小言を言われるのは雇い主の俺なのだ...勘弁して欲しい

アリーゼに一抹の不安を思いつつも気を取りなした俺は一列に並ばされたシーザー人達に舐められないように強気に尋問を俺は開始した...

***

「痛ってな"ぁ"ー💢もっと優しくしろよ!」

船から無理やり降ろされた船乗りの一人が――そう衛兵に文句をつけると流暢なシーザー語で『優しくして欲しければ高級商店にでも行くんだな、シーザー人!』と言う声が聞こえた...

今まではユガン語やエレンダ語の訛りのあるような通訳だったので全員が驚いて声のする方を見ると――どうやら、あの平たい顔した吊目の黒髪の青年が発した言葉のようだ

現れた青年は高圧的な態度で『さて・・・我が栄えあるユガンの皇帝の海でシーザー人が何をしていた!!船長は、どいつだ!!答えろ!!』と言い放った

どうやら衛兵の急に畏まった態度や服装、言動から察するにユガンの貴族様が何からしい...

船長がなかなか名乗り出てこないので黒髪の青年がオロオロし始めると青年は部下らしき衛兵隊長にヒソヒソと、これまたネイティブのような流暢なネルレイア語で問いただし始めた

「oh~ 船長が既に殺されて死んでるだと・・・jesus!」

ジーザス・・・どう言う意味だ?
青年は変わったリアクションと聞き慣れない言語で話したではないか?
いったい何処の出身なんだ?

どうやら彼の部下である者達も彼のしゃべった言語の意味が理解出来ていない様子で?な表情をしている

しかし――そのような疑問が奴隷船の船員達に巻き起こり始めると彼の言語に反応した者がいた...

***

俺が日本語を――しゃべりながらアメリカンなリアクションをしていると『日本語?!』『真井君?!』『お願い!早く助けて!!助けてー!!』日本語が聞こえてきたではないか?!

もちろん俺も驚いたので部下達に船倉を調べさせると――
(ファ?!なんでお前ら、ここにおるん・・・?)

降りてきた連中の顔を見て俺が驚いたのも無理ない――降りてきた連中は桐谷拓哉の取り巻きをしていた女子どもだったのだ!!

「えっーと・・・?何が、どうして――ここに?説明please...」

どうやら憔悴した彼女らの話だけを鵜呑みにするに頼りにしていた桐谷に寝首を掻れ売られたらしいと言う事と彼女達の船員達を怯えて見る様子――押さえつけられ出来たであろう痣や貫頭衣から見える大腿からダラダラと垂れている尿ではない何か...

コチラの質問した問いに暗い顔を除かせ言い淀む事から(あるいは男である)俺には言いたくない話したくない事があると言うだけは分かったので...

「・・・ヴェルマ守衛長!取り敢えず担架3つと馬車を3台用意してくれたまえ!」

詳しい状況は分からなかったが三人とも酷い匂いだし領主の館で暖かいシャワーと食事を食べさせ治療や心理的カウンセリングを受けさせる必要を感じた俺はヴェルマに命じて担架3つと馬車を3台...

それに加え伝令の早馬でルルナやヴァーニャ達に客間と暖かい食事を作っておいてくれるように伝えさせた

「さて残りはシーザーの船乗りどもの処遇だが・・・」

桐谷の取り巻きをしていた女子達に後ろ暗い事があったようだが直接――俺が被害を受けたワケでもないし、殺したいほど憎いワケでもない...

だが、とは言え・・・乗ってきた船でシーザーに大人しく帰ってくれるのが一番だが船長らしき人物を彼らが殺している以上、そのまま解放してもシーザーに帰らずに近海で海賊なんて、やられなんかされでもしたら厄介だ...

犯罪奴隷として漕刑囚か鉱山奴隷にするのが現実的な選択肢だろう...
もちろん前ユガン帝国時代に奴隷制は廃止されたという建前なので、あくまでも事実上の奴隷と言う意味だが...

この世界では元の世界と違って下の階級に属する人間は職業選択の自由が少ないか、そもそも選択できないかの、どちらかしかない...

彼らも運が良ければ事実上の奴隷である階級の者同様に水汲み奴隷か?農業奴隷にでもなって自分を買い取るか、良い仕事ぶりが評価されて解放される。または故人となった慈悲深い主人の遺言などで解放される事だろう...

もちろん運が悪ければ娯楽用の剣闘士か?俺が経験したように戦争用の使い捨て剣奴にされてしまうだろうが――いずれにしろ美少女でもない汚いおっさんどもを、そこまで優遇してやる義理はない!!

俺が船乗り達の列に指を指し『シーザー人どもを拘束しろ!』と言うと事件は起きた!なんと拘束の指示を出した途端にシーザーの船乗り共が暴れ出して逃走を試みようとしたのだ!!

当然――衛兵達も『無駄な試みは止めろ!』『武器を捨てろー!』と言いながら取り押さえようとしたが船乗り達はカットラスを抜いて『ふざけんな!!』『シーザーになんて帰らない!』『俺ら街に受け入れないなら、ぶっ殺してやる!!』『シーザーに帰ろうがユガンで奴隷になろうが、どうせ死ぬんだ!!てめぇーらをぶっ殺して好きなように生きてやる!!』と暴れまわり何人かが俺を人質にしようと肉薄してきたではないか?!!

「待ちやがれぇぇえ"え"え"💢」
「ちょょぉぉお"お"お"?!!ヒィィイ"イ"イ"!!!イヤァァア"ア"ア"ーーー!!ユユしゅー!!ヤヤハぁー!!!たしゅけてぇぇえ"え"え"!!!」

男として!貴族として!!非常に情けないが・・・一対多数では分が悪い!彼、彼女の後ろに急いで下がると自衛用の短剣を抜くと護衛のユユスとヤヤハに高い給料分の仕事をして貰う事した!

新人騎士ユユスは、ともかく――さすが元傭兵のヤヤハだ!
複数人相手にしても表情一つ変えない!
ヤヤハの活躍に興奮した俺は何人かを剣で薙ぎ払い岸壁から海に蹴り落とすと調子に乗って...

「いいぞ!いいぞ!カッコイイぞー!ヤヤハ!やっちゃえ!!!」

っと彼女を応援した!
そして、そう調子に乗ったのが悪かったのだろうか・・・?
倒れていた船乗りの一人に不用意に近づき過ぎて倒れた男に足を捕られると...

「・・・ん?!あ"っ?!!ア"ア"ア"ア"ア"!!!!」

なんと男の持っていたナイフで右脇腹を刺されたのだ!!!
ちょー痛ぇぇぇえええ!!!
血がドバドバと・・・イヤァァ"ァ"ァ"!!!し、死ぬ!!!

俺の悲鳴を聞いたユユスに『領主様?!』と驚かれたが、もう遅い!

「この野郎ー!よくも、やってくれたなぁーーー!!」

俺は相手に再び引き倒し地面にキスさせると足先で顔面を思いっきし蹴り上げておいた!!!ユユスは俺の行動にドン引きしていたが刺されたので仕方がない!

自分の着ていた服を裂くと刺された場所を急いで痛み止め入りのヨウ素消毒液で消毒を施すと――あのカニの化け物であるギャンサーの甲羅から作った止血剤を振りかけて応急手当をしている頃には戦いは終わっていた...

シーザーの船員達は殆どが息絶えていたが少数が逃げた為、衛兵隊のヴェルマとオレガノが『追えぇぇえ"え"え"!!!逃がすなぁぁあ"あ"あ"!!』と走っていく姿が見える...
エブリとセーラは俺が刺された事もあり、まだ息のある奴らにトドメを刺して入念に行っているようだ

ちなみにシーザー人船員達が暴れている時に『きゃー!!!』と金切り声をあげていた元桐谷の取り巻き女子どもは失禁して呆然とするほど恐ろしかったらしい

いや、まあ・・・原因は彼女達を守る為にホイットニーが何人も水刃でバラしてアリーゼが何名かをローストにして消し炭にしたせいなんだけど...

「ひでぇー光景だなぁ?!!まあ俺の責任なんだろう・・・けど?」

鼻孔びこうに人の肉が焼ける匂いを感じながら(アレ?これ本当に俺の責任か?)と若干、違和感を感じさせられたアユムなのであった...
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