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第152話:利益誘導

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昨日は本当にラーイ帝に呼びつけられ乳母のマリーに捕まった本当に大変な一日だった...しかも!その後――今度はサレンドラ皇后に捕まり三杯目のブラックコーヒーを飲むハメになったのだ!

おかげで半日潰れたせいでニニムに『どこでサボってたんですかー💢』っと怒られてしまった...うぅ~(泣)俺のせいじゃないのに・・・酷い...

そんな事も、ありながら領主としての仕事を進めると――ある事に気づく...

「・・・うん?」

目に止まったのはフリーマーケット形式で誰でも商売できるように設置されている区画の位置決め表だ。風呂敷を広げて誰でも出店できる性質から良い場所の取り合いが容易に予想されるので喧嘩に発展しないようにする為に出店における位置決めは公平性を重視してクジによる抽選で決める事となっていたハズなのだが何故か、そこには...

「こ、コラぁー💢に、ニニムぅー💢これは、どう言う事だ💢ダメじゃないかー💢 自由市じゆういちの良い場所をビレネー人同胞で固めたら💢」

明らかにクジ引きなどされていない事が分かるくらい立地の良い場所がニニムと同じビレネー人のお友達で埋め尽くされているではないか?!!いかん!いかんぞー!ニニムー!!俺が不在だった事を良い事に同じビレネー人に便宜を図るなんて!

同胞だから便宜を図ったのだろうが公平公正な経済運営を謳っている自由都市同盟ユガンにおいて身内への利益誘導など断じて許すべきではない!!!
それに――このような事が、まかり通ってしまえばビレネー人以外の人間が誰も自由市で商売しなくなってしまうではないか?!!

勿論――公平公正な領主である俺はニニムにビッシっと注意した!
するとニニムは...

「なんで!別に良いじゃないですかー💢ビレネー人は他では差別されて大変なんですよー💢ケルダンでくらい臣下の私達を大事してくれても良いじゃないですかー💢」

・・・っと領主である俺に逆ギレした挙げ句――『それに私は同胞のよしみで無償で取り計らってあげたんですー💢』と開き直り・・・なんと!『自分達は別の場所で他の民族から差別的扱いを受けているのだから優遇されるべきだ!』と騒ぎ出した!

「私が袖の下を貰って便宜を計ったと言うなら、ともかく――昨日は高級なコーヒーを飲みながら宮廷で遊びほうけていた貴男に何で言われなくちゃイケないですかー💢」

しかも元の世界でコーヒーが発見されて間もない頃に王侯貴族しかコーヒーが飲めなかったのと同様・・・同じくコーヒーが高級品である――この異世界においてはコーヒーをたしなめるのは享楽きょうらくと見なされるので逆にお叱りを受ける始末だ...

(脚注※元の世界ではコーヒーは途上国のコーヒー豆農家が、ありえないほど安い値段で(売値が1キロ1~2円ほど...)買い叩いているので安く飲める)

「それに私達が税金を納めているから貴男も宮廷でも恥を掻く事無くチップを渡せているじゃないでしょう💢違いますか💢」

なかなか耳の痛い正論だが当然――だからっと言って利益誘導が許される訳ではない・・・俺も『いや!ダメだ。だいたい、一部に人間だけ優遇するなんて平等じゃないだろう。』と食い下がる...

「やだ!やだ!やだ!やだ!ビレネー人私たちを大切してくれきゃ!やだ!(ジタバタ!(>∀三∀<)ジタバタ!)」

いつもはクールで聡明そうめいな雰囲気すら感じるニニムだが論争に負けそうになりそうだとでも思ったのだろうか?

ニニムは劣悪なスラム街で育った境遇もあり幼少から栄養不足だったので見た目は14歳くらいにしか見えない身長と体型をしているが実年齢は俺の、たった一つ下の16歳になるにも関わらず...

まるで――おもちゃを買ってもらえなかった子どものように床に伏せて転げ回り出したので『やめろよ?!16歳にもなって恥ずかしい!』と彼女の年齢を持ち出してさとすハメになった!

「じゃ――ビレネー人が立地の良い所で商売をする利権りけんを認めて下さるですね?」

可愛い顔でお願いすれば何でも通ると思っているのか?コイツ?!
ダメと言っているのに、そんな事を言い出したので勿論『そんな事は言っていない』とバッサリ拒否するとニニムは...

「うぅー💢 みんなでサボタージュしてやるー💢」

っと涙目で――なんと!ビレネー人全員を巻き込んで『意図的に仕事をしない』サボタージュを実行すると宣言しだではないか!!

すぅ~・・・ええ?マジで?・・・冗談だよね?・・・ニニムさん?

意図的に就業を拒否するサボタージュは武力によるクーデターより平和的だが、そんな事をされては元の世界の服を参考にルスリス獣人国から原料を輸入して紡績機で作ろうとしているカジュアル衣料品や動物の骨を焼いて混ぜた混ぜたボーンチャイナ白磁製陶器の製造が止まってしまう!

それより、なにより1番困るのは――あの結束の強いビレネー人の事だ。
リリナやナナリ、ルルナも闘争に参加するに違いない!
メイドであるリリナやナナリ、ルルナは俺たちの生活を支えてくれている...

そうなれば俺や梨島の日常生活に支障が出てしまうのは必至!
洗い物もままならないではないか?!!それに朝晩が非常に冷え込む冷たいユガンでシャワーなど浴びれるか!冗談ではない!
何よりストが長引いて――この広い旧庁舎の掃除が行き届かなくなるとか洒落にもならん!!!なんとしてでも今晩の着替えとシャワーは死守するぞ!!

「・・・すぅーーー ちょっと・・・は、話し会おう?ニニムさん?」

当然だが十代で官僚を務めてきたニニムに交渉の場で俺が叶うハズもない...
交渉は容易に決裂しニニムは「では和解の場で会いましょう、領主様。」と他人行儀な態度を取られた挙げ句――

予想通りリリナ達を含めたビレネー人、全員がストライキを起こしたので俺と梨島は耐えられず一日で音を上げ次の日にはビレネー人側の要求を全面的に吞む形で事態は終息させる事態へと発展した...

結果的に俺はニニムに――やり込められる形となったのでケルダンでは立地の良い場所の7割をビレネー人が占有する状況を生んでしまった。この事はケルダンに僅かに住んでいるエレンダ人やユガン人の一部からは不評を買ったことだろう...

唯一の救いはケルダンに住んでいるエレンダ人やユガン人の中にも母体数の多いビレネー人に領主は抵抗する態度を示してしてくれたと評価してくれてる人々がいる事だ。

だが当然ムカつく事に多数派のビレネー人に押し切られる形で要求を吞んだ事で喜んでいる連中もいる――他でもない他の貴族達だ。彼らの多くが、こんな面白そうな事実を他の貴族が聞き逃すハズもない...

『ケルダン伯は自分の領民も黙らせられないのか(ニヤニヤ)』
『まあまあ。そう酷な事を言わずに・・・(ニンマリ)やはり高貴な上級貴族になったとは言えいやしい身分から成り上がったお方には荷が重かったのでしょう...』と影口を叩かれ嘲笑ちょうしょうされたのは言うまでもない事である

もちろん(お前達の部下に元宮廷官僚が居たら説き伏せられたのか?グギギギ!)と問いたくなる気持ちも無くはなかったが新参者はコチラだし影口を叩いたとは言え徒党を組んで潰しに来られたら怖いので余計な波風は立てないでおいてやった。

(顔は覚えたので、よく覚えておけよ💢)・・・そうは思いつつも――やはり気が弱いので何も出来ない領主のアユムであった...
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