クラス転移したけどリセマラされる前にバックレる

シューニャ

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第150話:談話室にて

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余は自由都市ユガン同盟の象徴皇帝ラーイ・エル・ユガン。

今日は朝から内務卿を任せているウィンダムに増税を認めるようにかされて難儀しておったが異世界から来たと言う青年――サナイを寄越すよう従僕に命じるとサナイは直ぐに余の元に馳せ参じてくれたのでウィンダムへの応対を任せている

誠に使い勝手が良く、頼りになる奴よ・・・今はウィンダムと余の目の前で舌戦を繰り広げておる

「ところで・・・増税は、どのような名目で集めるのでしょうか?閣下。その・・・差し支えなければ私めのような下官にも、お聴かせ願えないでしょうか...?」

サナイがウィンダムに問うとウィンダムは『フン――お前が議論に参加するのは不服だが・・・陛下が お決めになった事だ。お前のような下男にも特別に聞かせてやろう』と横柄な言動に似つかわしい態度をとるとウィンダムはサナイに自分の考えを聞かせる

「独身税を課そうと考えている 帝政時代の終わり頃から独身の成人が多いからな」

確かに内務卿のウィンダムの言う通り先代の父――ユーリ帝が領地を有力な諸侯に領土を割譲かつじょうした事で広大な国境線を防衛する必要が無くなり治安維持に掛かっていた予算や軍事予算を経済施策に回す事が可能になり、それによって膠着こうちゃくしていた経済が回り出し...

それに伴いおこなった通行税や流通間接税など減税などの改革が打ち出されていたので市場の物と人が動き出したおかげで多少の無理をすれば若い世代が子どもを育てられるくらいには経済が良くなったが...

しかし残念ながら帝政末期の最悪の不況を脱したと言うだけで依然としてユガン全体の経済は非常に鈍足だ
そのせいで結局の所・・・せっかく子どもが生まれても生活苦からユガンでは捨て子は多く、街路の側溝に生まれたばかりの乳飲み子が大量に遺棄され、そのまま骨になっても放置され続けたり――郊外に置き去りにされギャンサーを初めとした魔物の餌食になるのも別に珍しい事ではない...

ウィンダムから税の名目を聞かされたサナイは「独身税ですか・・・」っと顔をしかめた当然――神経質で気の短い男であるウィンダムは『なにかね――何か不満があるなら言って見たまえ💢』とサナイを叱りつけるとサナイは...

「大変恐れながら閣下・・・どのような税金にも言えますが、その独身税は導入は方法を誤れば税収と得るどころか減ります」と反発するウィンダムにサナイは懸念を伝える

「そもそもユガンで独身が多いのは結婚できるほど金銭的に豊かではない実情があると私めは愚考いたします。閣下は、この国の重要人物であるので私めが異世界から来た人間であるのはご存じかと思いますが・・・かつて私の世界においても子どもを産まない世帯から独身税を徴収する政策を実行した国がございました。」

「古代ローマ帝国 オスマン帝国 イギリス それにアメリカ合衆国のミズーリ州 南アフリカ イタリア ポーランド ソビエト連邦 ルーマニアなど例を挙げればキリがないほどです」

サナイは静かに淡々と言葉を紡ぎ『この中には小さな成果ですが独身税の政策が成功した国もございました。ですが・・・』っと息を一拍おくと...

「ほどんどの国は経済が改善するどころか逆に悪化したのです...とくにルーマニアのように独身税の導入で革命が起きる一因となり政情が崩壊した事で為政者が殺された国家もございました」

「また独身税などの懲罰的な税の徴収は独身・既婚の間で対立を産み それだけでなく『上に政策あれば下に対策あり』という古代中華帝国の古事の言葉を借りるのであれば庶民は偽装結婚などの対策を打ってくるでしょう そうなれば堂堂回どうどうめぐりです」 

「さらに徴収した税金の使い道は貴族の贅沢に使われるとの事ですので税金の使い方としては投資型よりも消費型のお金の使い方に近く、そのやり方ではユガンは――やがて衰退するかと思われます。政策に――このような齟齬そごが生じるのは貴族の品位を保つと言う目的が先行する あまりと手段が熟考されなかったからかと私めは推察いたしますが...」

サナイの意見に――自尊心の高いウィンダムはサナイの意見が気に食わなかったのだろう...『わ、我らが強大な大国であるユガンがそうなるとは限らないだろう💢』っと当然、彼はサナイの意見に反論し反発した

が・・・反発するウィンダムにサナイは問いかけるように『私めはユガン国内の内情は把握しておりませんが・・・この国に余裕があるかないかは既に肌身で感じております。その上で私めは確信を持ってユガンは前述の話に出た後者になると確信しております、閣下。』っと静かに言葉を投げかけると...

例えウィンダムと言えども体感では国の状況が芳しくない事くらいは分かっており 話の筋が通っているサナイの意見に、ぐうの音も出なかった。サナイの反論で暫くウィンダムは怒りのあまり顔を赤くに紅潮させ押し黙ったが――しかし彼はすぐに『手段が良くなかったのであれば・・・ならば人から取れば良いのだろう💢』と騒ぎ出す...

しかし――これもサナイが『イケません。すぐに口減らしの為に老人や子どもが捨てられ家族の数を偽り出します。その結果――さらに少子高齢化が更に進むだけで無く捨てられた人々が犯罪組織に吸収され、国内の治安が乱れます...』

「ならば家畜に税を💢」

「ダメです。税金が余計に掛かると家畜を余計に屠り税金を納めている人々が冬を越せなくなります。」

「なら建物に税を💢」

「なりません。税金のせいで住宅だけでなく生産設備まで取り壊してしまうでしょう。そうなれば『税の集まりが悪い』っと掘っ立て小屋にまで税を課していくのが容易に想像できます。そのような事になれば人々も流石に腹に据えかねるかと...」

「クソ💢ならば人がダメなら木に税金を💢」

「いけません。木に税を課しても人々は自分で薪を作る為――無作為に木を切り倒してしまいます。そうなれば材料費の高騰で住宅価格も上がりますし何より木こり達も怒るでしょう」
「さらに無計画に木を切り倒した事で今まで自然が維持してきた住環境のバランスが変化するので土壌の栄養分が変化したり土地そのものの保水力がなくなったりする訳ですから最悪――作物も育たなくなるかも知れません。まあ一番最悪なのは、それらが原因で地滑りなどの予期せぬ災害が発生する事ですが...」

・・・っとウィンダムの発案を根拠を述べながら丁寧に否定していった為、これにはウィンダムも...

「え"ぇ"ーい"💢 アレもダメ!コレも駄目! いい加減しろ! なら、一体――どれなら良いと言うのかねー!! 反対ばかりしないで対案を出したまえ💢 さぞかし良い対案があるんだろうなァ"ー💢」

とうとう怒り出した・・・しかしサナイはウィンダムが怒るのをワザと待っていたかのように『そうですね・・・ウィンダム卿のおっしゃる事は最もです・・・では死人に課税しましょう』っと訳の分からない事を真面目な顔で言い出したので...

これには余とウィンダムも聞き間違えかと思わず『死人に・・・課税?』っと、まばたきを多くしながら聞き返す

「すいません、言い方が良くありませんでしたね・・・簡潔に述べますと...」

簡単にサナイの話しを纏めると彼は余の祖先である歴代皇帝の祭事さいじを復活させる事を提案した。・・・っと言うのも祭事に献花けんかや、供え物の酒などを国民に供出させる事で――物の値段を意図的に釣り上げられる事が出来れば市場は、ある程度――操作可能であると言う話しをサナイは展開したのだ。
勿論この方法は回りくどいが為にウィンダムは顔を歪めていたが確かにサナイの提案した方法であれば税金に対する反発は少ないであろう...

「なるほど・・・花の需要が高くなれば花の値段を挙がるのは余でも判る」

「そのようにすれば花売りの女達だけでなく少女達も儲かります。そして――なにより酒飲みの多いユガン人たちは密造酒に群がっていますが、こちらは密造酒を買っている人間を辿たどって行けば密造酒を造っているブローカー達は、すぐに見つかるでしょう。しかも密造酒を買っている人間を摘発するより、ずっと簡単です。それに加え――わざわざコチラが徴集する税金の金額を計算せずともブローカー達に計算させて税を納めさせれば纏めて金を絞りとれるので効率的です。」

無論――『店の人間に税の計算をさせるのか?売り上げを誤魔化すじゃなのかね?』っとウィンダムは怪訝《けげん》顔で反論したが『取りはぐれのないようにすれば良いのです 悪い事をしている罪人を締め上げて、その悪人が売り上げを誤魔化せば、どうなるか・・・なにより貴方様は色々と理由をつけて自身の要求を通す事が得意だとお見受けしますが?違いますか?ウィンダム卿?』と嫌みを含んだ発言でウィンダムに応酬する

「なんだと?・・・いやしい成り上がり物の分際でその口の利き方はなんだ?口の利き方に気をつけたまえ💢」

当然――沸点の低い男であるウィンダムはキレたが、そこは余が『よさないか、ウィンダム。サナイも他者を怒らせるようなマネは慎むのだ、有能な貴君の悪い所だぞ』っと両者を諫めておいた

両者とも『申し訳ありません。皇帝陛下。』『お見苦しい所をお見せいたしました。』っと謝罪したので他に議論すべき話題も無い事から『増税は急務ではない事からサナイの献策けんさくを採用する――サナイの意見を聞きながら草案そうあんを作成し提出するように書記官に命じておけ、ウィンダム。』っと彼らを下がらせる

「やれやれ ようやく一つ問題が片付いたな・・・」

談話室に朝から疲れたラーイ帝の声が広い響き渡るのであった...
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