クラス転移したけどリセマラされる前にバックレる

シューニャ

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第141話:精霊ビレネー

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今日はビレネー人の人々が定期的に礼拝で集まる日だ...
ニニムやリリナ、ナナリ、ルルナ、ササミ、ココア・・・彼女達もまた――例に漏れずビレネー人の礼拝に参加する為に礼拝堂へと足を運んでいた...

ここでは彼らの故郷であるビレネー山脈のいただきにいるとされる精霊ビレネーに向かって日々の感謝と祈りを捧げる事が主な目的である。

そして同時に、ここはビレネー人同士の情報交換をする場でもあった...

彼らビレネーの同胞からもたらされる情報は彼らのあきないを支える重要な役割を果たしたしており、その広大な情報網から齎される貴重な情報は東はユガンの州都リヴォニアから西はシーザー帝国の果てまで同胞が住んでいる場所でさえあれば――その場所のありとあらゆる情報を知る事が出来る

――この独自の情報ネットワークの情報を活用する事でビレネーの人々は今まで、なんとか自力で生きてくる事が出来た

普段アユムの元で働いているニニム達がビレネー人の礼拝堂に到着しニニムがビレネー人の礼拝堂に入ると...

「あら、ニニムちゃん。だいぶ美人さんになったわね♪」

幼い頃からニニムを知っている近所の太った中年女性がニニムに声をかけてきたのでニニムも笑顔で、これに応じる。普通の民族ならば、これは単なる他愛のない形式的な挨拶をするだけの何気ない光景だが...

「いや~ 本当に美人になったよ。」

「おっと!ルルナちゃん久しぶりだね」

「やあー ナナリちゃん。今日も美人だね♪」

ニニムだけでなくルルナや他の面々も次々と顔馴染みの同胞に声をかけられている。――とは言え・・・別に彼女達は顔が特別広いという訳ではない...

次々と沢山の同胞と会話をする・・・この場景じょうけいは人数からして異様な光景だが――それはビレネー人の人々にとって幼い頃から彼女たちを知っているビレネー人は100人、200人どころの話ではないのが原因だ...

以前にも少し触れたがシーザー帝国に故郷を追われたビレネー人達は様々な民族から財産の収奪や世代を超えた差別や迫害を受けてきた。

そうして行く先々で先住民族から受けた差別的言葉や待遇は彼ら彼女らに【誰も一人では生きられない...】という思いを生じさせ結果的に異様な連帯意識と強い結束を齎したのだ...

その思いは現在でも脈々と受け継がれ、こうした横と横との強い繋がりを形成し続けている...

「そう言えば・・・新しい領主様が今、躍起やっきになって設置させておられる、あのフィ・・・あれ、なんだったけ...」

無論――ここでは領主であるアユムの事も話題に挙がる...

「ああ。フィラメント電球とか言う奴だったけ?」

「そう、そう。それ!・・・最近ウチの居住区画でも設置され始めたんだが・・・アレは本当に凄く明るいな!おかげで気分まで明るくなるよ。」

「そうなのか?ウチの住宅区画では、まだ設置されてないが・・・別に壁掛け松明で十分じゃないか?」

「ああ。俺も設置されるまでは、そう思っていたんだが・・・夜でも昼のように明るくっていう謳い文句は嘘じゃなかったんだな。本当に昼の太陽のように明るいんだ。ビックリしたよ...」

「それは凄いな・・・それがウチでも設置されれば夜中でも仕事が出来るなぁ~」

「俺は――ちょっと、それは嫌だな~ 俺は炎のユラユラと燃える綺麗な姿が好きなんだ。それにお前の言うように――そんなのがあったら夜中まで仕事が出来るじゃないか?領主様は俺たちに夜中でも働けって言うのか?」

男達が電球について話していると、それを聞いていた女性達も同じ話題を話し始めた...

「あの電球とかいう魔導具で手元が明るくなったお陰で夕食の支度がしやすくなってウチでは大助かりだわ」

「私も、そう思います。ウチでも子ども達が居るからアレが設置されてから子どもが暗闇で転ぶ事が少なくなったので...膝を擦りむいて愚図る事が少なくなりました 子どもを宥めるのは地味に大変なんですから回数が少なくなったのは私的わたしてきには、とても有り難かったです」

「そうなんですか~ それは大変ですね。」

電球の話題は次々と別のグループにも議論が飛び火していく...

「ええ、あの魔導具のお陰でユガン人やエレンダ人の不審者や変質者が寄りつかなくなった気がします。でもウチの娘が――『あの魔導具があるお陰で前よりも気が楽になって帰ってこれる気がする』と呑気な事を言っていたので『いくら衛兵が巡回して、あの魔導具がケルダン全体に設置されても安心しちゃ駄目よ!最後自分を守れるのは自分なんだから』っと口を酸っぱくして言ってやったんです。困った子だわ・・・ほんと...」

「それは心配ですね。でも貴女のように若い娘さんがいる人には、あの魔導具が必要でしょう。若い女性や子どもの為にも早くケルダン中に設置されると有り難いですね」

「ええ。それは、そうなんですが...」

無論――領主であるアユムの行動は、その是非に関わらず賛否両論であり...

中にはアユムのインフラ整備に関係ない事を・・・日頃の個人的な困り事や鬱憤うっぷんを無意識に関連付けたがる者が一定数存在する
これは例え異世界と言えども万国共通・・・どの世界・国、人種問わず同じようだ...

勿論――アユムが彼ら彼女らの為にしてきた事は概ね好調な事もありビレネー人の人々に将来への夢と希望を彼は配り続けている事は間違いない...

いずれにせよ・・・今すぐ一揆が起こる雰囲気でもないのは皇帝の代理であるアユム統治者にとっても良い兆候である...

ただ一人・・・ササミを除いては...

「クソ領主様は心もア●コも小さい短小包茎野郎なのですー💢イタズラでキャ○ツ太郎を枕に詰めただけで、凄く怒りやがったのですよ!!きっと、かわいいササミに嫉妬していやがるのです!」

当然――ササミがアユムを嫌いなのには理由があった...

ササミは毒親の元に生まれた...
兄弟姉妹は沢山いたが別にコレと言って楽しい事はなく・・貧しかった...

典型的な貧窮家庭でササミは育ったためダメでクズな性格の両親から生まれたササミの家族はクズ揃いだが――それでもササミは幾らかマトモに育った方だ...
・・・彼女は自身の両親や兄弟姉妹を大切にしている...

ゆえに口減らしで奉公に出された時にササミは一言の文句も言わなかった...

だが――ササミは、まだ10歳の子ども・・・実家から離れるのは悲しかったし家を離れる前日は一人で枕を濡らすほど泣いた...

だからこそ家庭から引き離される原因となったアユムがササミは嫌いだった...
大好きな家族と引き裂かれたササミがアユムに辛く当たるのも無理からぬ事である

だが当然――そう言った類いの発言をすればルルナやメイド達、良識を持った周りの大人達からは咎められる...無論――理由は言うまでもなく不敬罪で罰せられる可能性があるからで...

アユムは何回も余程の事をしない限りササミを叱らないが、これが普通の貴族なら命の危険があるほど鞭打ち・・・さらに良心のない貴族なら即斬首刑になるのが通常だ

はっきり言って、それらに他の貴族比べたらアユムは、ほぼ聖人君子である

だからこそササミは、つい最近リリナ、ナナリ・・・特にルルナから『まったく💢アンタは!領主様が――たまたま、お優しくて貴族ぽくないだけんだからね!他の貴族なら即殺されても、おかしくないだから💢』っと厳重に注意されてばかりだ

だが!ササミ的には、|またそれが気に食わない!!
理由は勿論――みんな領主であるアユムの味方ばかりしてササミを悪者にばかりするからで結果的にササミは『グヌヌ・・・そうやってササミのせいにしていればいいのですよ...』とイジけざるを得ないからである!

これは、まだ子どものササミにとっては(何という理不尽なのですか💢?!!)っと逆ギレするくらいには理解し難い事であった...

無論――ササミとて頭の片隅ではアユムがしてくれた事を理解している...
具体的にはビレネー人同士の自助・共助だけでは、どうにもならない貧困家庭向けの無料の食料配給、上水道も少しづつだが整備されワザワザ一キロ以上離れた水源から水を運んでくる重労働から、みんなが解放されつつある事...

無料の食糧配給が定期的に実施された事で兄弟姉妹達が、ひもじい思いをする事は無くなった事、それに付け加え――なかでも嬉しかったのはメイド達にと手荒れ防止用に支給される手荒れ防止クリームのお陰で痛い思いをする事が無くなった事など...

本当に――それだけはササミもアユムには感謝していたのだ!

だから、そのお礼を込めてビレネー人の同胞に融通して貰ったキャ○ツ太郎をお茶目っ気からくるイタズラ心でアユムの枕に詰めてやったら喜ぶと思ったのに事もあろうに!

アユムは激怒して自身に無理矢理食べるよう強要したのだ💢

(恩を仇で返されたのです💢)

自分だったら枕にお菓子が沢山入っていたら嬉しいのに💢
アユムの顔を見る度に、そう思わずにはいられない!

(今、思い出してもムカつくのです💢)

ゆえにササミ的には頭で理解していても心情的にはアユムの事を受け入れられていない!もし――ここがRPGの世界なら、こう表示されているだろう!

【ササミは根に持っている】―――っと!

ちなみに先日――同じようにヨルミネイトに無礼を働いたら、なんと!
顔を真っ赤にしてロングソードを抜剣して追いかけて回されたのだ!

ゆえにササミは思った!

(な、なんのですかぁあ"あ"あ"?!あ、あの危ない奴はー?!!子ども相手にマジになって!!や、ヤバい奴なのですぅぅうう!!!)

あれ以来――用事はココアに押し付けるなどしてササミはヨルミネイトには近づいていない...

一般的にはヨルミネイトの反応の方が――この世界では一般的なのだが・・・スラム街で貴族や騎士に接する機会などなかった事や、まだ10歳で世間の常識など知らないササミからして見れば彼女ヨルミネイトは単なる危険極まりない――大人げないヤバい奴という認識で留まっていて、アレが世間一般でのスタンダードなんて教えられても信じられなない!

(本当に殺されるかと思ったのです💢)

果たして・・・まだ幼いササミがアユムの優しさに気付くのは――いつ頃になるのだろうか?

(出来れば命を失う前に・・・早く気付いて欲しい...)

そう精霊ビレネーに同胞やルルナ達は祈ったのは言うまでもない...
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