上 下
140 / 228

第140話;閑話:進歩は悪なのか?

しおりを挟む
いつものように研究ラボで作業をしているとサラサが不思議そうな顔でアユムの作業を覗き込んでいた...

しばらく無視をつらぬいたが――とうとうえられなくなった俺はサラサに『あのー・・・何か用ですか?サラサさん?』っと問いかける...

するとサラサは『サナイ主任は何をしているいるんですか?この頃は、お越しになってから不思議ふしぎな装置に向かってらっしゃいますが・・・』と問いかけてきたので俺は...

「えっーと・・・コレはね。言っても理解出来ないと思うけどオペレーティングシステムと言ってね。オープンソースコードであるLinuxリナックスを元にコンピューター言語を書き込んでOSを作っているんだよ」

と説明した...

※Linuxは1969年米国AT&Tのベル研究所が開発したUNIXユニックスを元に当時まだフィンランドのヘルシンキ大学の学生であった天才リーナス・トーバルズが『大学に渡されたパソコンに入っているUNIXっていうOS使いにくいな~ そうだ!UNIXを元に自分で改良してしまおう』っと1991年に開発したオペレーティングシステムである。

また当時のUNIXユニックスを作り出したベル研究所やLinuxリナックスを作りだしたリーナス・トーバルズは、これを無償で人々に提供した為...

システムを形作っているプログラムソースコードは全て公開され、今日こんにちではLinuxを元に沢山の派生版や改良版ディストリビューションがネット上に出回っている

ちなみにアユムが開発中のディストリビューションは操作性に優れ扱いやすく『誰にでも使いやすく いつでも最新にアップグレードでき拡張性にも優れ かつ安定したOS』を目指していて画面に表示される画像は、どこぞの窓やリンゴの企業が開発したOSを足して割ったような出来なっている

無論――パソコンのOSを製作するに当たってはハードウェアが、なくてはいけない

ハードウェアには絶縁性の高いプラスチック基板に――まだまだ性能の低いが集積回路しゅうせきかいろ、抵抗器、コンデンサー蓄電器等の多数の電子部品を表面に固定したプリント基板で部品間はエッチング薬品などもちい加工すること加工済みの銅箔どうはく導電体電流を通す性質の物体として用いる事で電子回路を構成している

完全に余談だが接合された部品間には電気の通りを良くする為に銅板や端子、コネクタ部分は鉛とスズの合金であるハンダなどで接合した...

あと画面を出力するテレビは漏斗状ろうとじょう真空管しんくうかんを使用したブラウン管で...
内蔵された電子銃から照射した電子レンズによって収束させた熱電子をビームを放射、放出・加速させる仕組みとなっている...

照射された電子ビームはコイルによる電界でんかい磁界じかいなどの電磁作用でんじさようを利用してを描くように曲げる事が可能で――この曲げられた電子粒子でんしりゅうしが赤、緑、青からなる発光体に衝突しょうとつする事で基本色を発光させるので、これによって様々な色の画像を表示される原理と言う訳だ...

あと、どうでも良い話だが――これらの真空管などの小型化が出来なかったので異世界連中どもと一緒に試作した真空管式コンピューターは大部屋一つ分の大きさになった...

まあ――そんな事は本当に、どうでもいい・・・話を戻すと...

この装置が実用化できれば専用機器を何個も組み合わせて行っていた複雑な計算を高速・大量に出来、数値計算・情報処理やデータ処理、文書の作成に関する作業が簡素化され専用機器のみでは不可能な複雑な情報処理が可能になり膨大な情報を扱えるようになるので...

これまでの生活では知り得ないような物事の見方や考え方が可能になる
よって信頼性の検証がしやすくなるのがパソコンのミソだ――ゆえに結果的に様々な意味で我々の生活は激変するのだとサラサには説明してやったが彼女は案の定、首を捻っていた...

仕方なく俺は更に解りやすく説明する為に、かみ砕く...

「要するに――この機械は誰もが比較的簡単に扱えて書類や物品管理できるだけじゃなく、それらの業務に要する時間を節約できるんだ。それに専用のアプリを使えば動画編集や遊戯とか人々が、より豊かで幸せな生活を送る事が可能になるんだよ」

と小学生レベルまで落としこんで説明してやる...

すると、それまで難しい表情をしていた彼女の顔は花が咲いたようにパッーっと明るくなり目を輝かせながら『そうなんですか!よく解りませんが・・・とりあえず凄い魔導具なんですね!』っと・・・様子から察するに、なんだかよく解らないが便利そうだと言う事は理解してくれたらしい...

――サラサには、このパソコンが世の中の役に立つ事は理解してもらった所で一先ず話は終わったと思い俺が作業に戻ろうすると俺は驚きの声を挙げる!

いつの間にか――事あるごとに俺に絡んでくるシェリス・クロリアーナその人が俺の横に立っていた為からだ!・・・心臓に悪い奴め...

シェリスは恐らく俺とサラサの会話を盗み聞きしていたのだろう...

彼女は、つまらなそうな顔で『あら・・・それは便利そうですわね?でも国防に寄与きよしないモノなんて官職かんしょくに勤める者として如何なものかしら?』っとバカにするような顔で勝手に話に割り込んで来た...

いつの間に近くにいたシェリスに俺がストーカーかと恐怖していると――なんと!
これ、また驚く事に普段は大人しいサラサが『なっ、なんなんですか?!貴女は人が幸せになるなら別に良いじゃないですか?!』っと素早く反応し反論したではないか?!

するとサラサの言葉にシェリスは対して高い服は着ていないにも関わらず貴族時代の上品を気取っているつもりだろうか?・・・没落ぼつらくしたくせに...

ほほに手をあてながらオーホホ!っと高笑いすると『わたくしの高名な元の家では色々な軍需兵器を開発しておりましたのっ!・・・それに比べて、こんな精巧な文字や絵画を表示しかできない程度のモノが国防の何の役立ちますの?役立つなら是非教えて頂きたいモノですわぁ!』っとマウントをとってきたではないか?

それに対して俺は...



(平民の服で先祖の成した過去の功績こうせきに、すがりついて貴族のように振る舞うとは・・・むなしくないのか?・・・お前は...)

むしろ俺のしている事をバカにしているシェリスの態度よりも没落ぼつらくした家の過去の栄光自慢をする彼女の態度が気になってきた...

事あるごとに『本人の言動や態度から察するに家を再興さいこうしたいんだろうな~』と薄々うすうす感じとっていた事もあり――俺には、それが非常に滑稽こっけいに見えて非常に面白く感じたのだ!

あんな恥ずかしい羞恥プレーは俺には出来ない!!!

自分から笑いを取りにくるとかwww
マジでシェリスさんパッナイっす!www マジ、尊敬そんけいっす!www
なんで羞恥心しゅうちしん欠片かけらもない厚顔無恥こうがんむちなことをなんでしようと思ったっすか?!www

・・・っと、そんな感じに彼女の夢の実現が、だいぶ程遠ほどとおそうに見える事を俺が内心笑っている事に恐らくシェリスは勘づいたのだろう...

シェリスは顔を真っ赤にして『も、もしかして・・・貴方、私の家の事をバカにしていますのっ💢』と激怒しピシィ!と人差し指を指し指摘してきた!

もちろん俺は図星ずぼしだった事もあり急いで視線を逸らしたが...

すると案の定――『私の家の事を馬鹿にするなんて!ぜ、絶対に許せませんわ💢』シェリスの逆鱗げきりんに触れ、とうとう『そんな事を思うのなら、この駄作ださくが――どう国防に寄与するのか説明して下さいましぃ💢』と言われる始末だ

だがシェリスの予想に反して彼女の言葉に反応したのは、またしても俺ではなくサラサの方であった!

「そんな!人を不幸にする物を開発するなんて間違っています!!」

俺が(えっ?)と思ったのも束の間...
シェリスは『貴女に話しておりませんのっ💢』と即座にキレたがサラサの方も...

『私は私たちの英知は公共の福利の為に使うべきだと思うんです!!私たちは人を殺める兵器を開発するより人を笑顔に出来るモノを開発すべきです!!人を傷つけるモノを開発するなんて間違ってます!!シェリスさん!』と、彼女にしては珍しくお互い一歩も引かない...

すぅ~・・・平和を説く修道女しゅうどうじょかな...
いつものサラサちゃんとは違う様子に俺もビックリだ!
その後もシェリスとサラサの不毛な応酬おうしゅうは続いた...

「国の国防を否定するなんて💢貴女、本当にユガン人ですのっ💢信じられませんわ💢非国民ですわ💢」

「そんな!シェリスさん酷いです!!私はエレンダ系ユガン人として祖国に誇りを持っています!それに私は人を傷つけて不幸にするようなモノを開発するなんて間違っていると言っているだけじゃないですか?!!」

「まあ~!なんて!おぞましい!!わたくしと同じエレンダの血が流れる人間でありながら――どうして、そんな発想に思い至るのかしら💢貴女の物言いは、まるでシーザーの回し者そのものですわ💢今すぐ、この国から出て行ってくださいましぃ💢」

そんな、やりとりが繰り広げられる中で俺は元の世界の頃につちかったスルースキルを全力で発揮し黙々と嵐が通り過ぎるまで無視し続ける...

「ちょっと💢よくよく考えれば、こうして言い争いになったのは貴方のせいですわ💢ここは貴方も意見を言うべきではありませんことぉ💢」

「サナイ主任は――あの高潔なエヴァ・ラインス女史の師弟ですよ💢貴女みたいな野蛮な考えの人とは違うんです💢私と同じ考えに決まってるじゃないですか💢」



ガ━━|||( ̄■ ̄;|||)━━ン!!? 嵐の方から突っ込んで来た・・・だと...
非常に面倒くさい事になったー!!

・・・えっーと・・・どっちの味方をしよう...

シェリスは臨戦態勢で『売国奴は、この国にはいりませんわ💢仮にも領主である人間が、そのような意見を言うなら保衛部ほえいぶに報告してやりますのっ💢』と本当に密告みっこくしそうな雰囲気だ!

一方――サラサは目を輝かせながら、まるで(サナイ主任!あの野蛮人に言ってやってください!)と――言っているかのような期待の眼差しをして見つめられてしまっている・・・困ったものだ...

しかし――ここで、どっち着かずの態度をとってしまえば、どちらからも失望しっぼうされそうだし――どちらせよ、この状況では・・・そのような態度はとれなさそうだ...

もちろん!文明人である俺は、ここでサラサちゃんの意見を...








「もちろん!シェリスさんの意見が正しいです!!」

否定した・・・理由は言うまでも無く、国家は納税者のうぜいしゃである自国民の生命と財産を守る義務があるからだ!!

べ、別に決してシェリスの保衛部ほえいぶとやらに通報されて思想犯や政治犯として投獄されるじゃないかと半分くらい恐れていたからとかじゃないだからねぇ?!!勘違いしないでよ!!

えっ?半分は恐れていたのかって?
当たり前じゃん!!
個人は国家っという大多数の意見の前には無力なのだ!!
普通に考えて個人的な意見で強制収容所に送られるかもしれんとか怖すぎるわ!!

無論サラサちゃんには『そ、そんな!私はサナイ主任は高潔こうけつな方だって、信じていたのに・・・』と言われた・・・心が痛い!

だが、ここは言わねば・・・

「サラサ。君の言う通り人を傷つけ殺めるのは良くないことだ。だが戦争の犠牲者に貴賤きせんはないだよ。だからこそ我々、国家は英知えいちを進歩させ最悪の事態に備えるんだ。だから、そこに君の説いたような悪など存在しない。あるのは、ただ結果だけだ」

もちろん俺に意見にサラサは食い下がってきた...

「で、でも、そんな進歩で沢山の人が傷ついて死ぬのなら私たちは錬金術士は何の為に研究しているんですか?!人の幸せにする為に研究しているじゃないんですか?!そんな人を不幸にする未来なんて私、いりません!」

うわー・・・なんだか、とっても面倒くさい事を言い出した...
お前は昼ドラのヒロインか何か?

自分の意見が俺に否定されるとは思っていなかったのだろう...
いつになく彼女サラサは涙を目にめ感情的だ!
仕方がない・・・ここは俺なりに向き合って見るか...

「技術は人を殺さない。人を殺すのは―いつだって人間だ、サラサ。非情な現実を言うようだが人の役に立つ技術は、いつだって人を傷つけ不幸に出来るんだ。俺の今、開発している。このパーソナルコンピュータだってそうだ。これは非常に便利で沢山の人々の幸福に貢献する反面・・・」

俺は技術の持つ光と闇の二面性について説いた...

「これが普及すれば身近な例を出せば恐らく・・・いや!間違いなく、この機械で沢山の人の悪口が書き込まれ沢山の人々が言葉の暴力にさらされるだろう。何故なら、この機械では大量の情報を沢山の人々に瞬時に伝えられる反面――悪口やデマを完全に防ぐ手立てなどないに等しいからだ。悪い心を持った人間が悪用すれば心に傷を負い自殺してしまう人だっている出てくるだろう...」

「そ、そんな!そんなの間違っています!そ、それに悪用する人よりも悪用しない人の方が多いと思います!私たちが悪用できないようにすればいいじゃないですか?!」

その指摘にサラサは条件反射的に否定してきたが彼女の言葉に続けて俺は...

「確かに、そうだろうな・・・だが、それは暴論というモノだよ、サラサ。なぜなら君の尊敬している俺の師匠エヴァ・ラインスの作りあげたポーションですら負の側面として麻酔用ポーションの悪用を防げなかった事は、君も一介の錬金術士なら知っているハズだろう...」

俺はサラサの最も尊敬しているラインスの功罪こうざいを例に交えながらポーションが悪用された例に彼女に人に技術悪用されないのが――どれほど難しいか?話しを続けた...

麻薬ポーションは本来――痛みに耐える患者の苦痛を和らげる為の医療用の医療品だったが――だが、このポーションには強い興奮と鎮静効果ちんせいこうかもたらすと同時に触覚しょかくや幻聴などに代表される幻覚症状を始め、意識の混濁こんだく、被害妄想という(麻薬としての効能が十分すぎるほど揃っている)強い副作用が現れるシロモノであり...

そんな訳で当然の事ながら当初から――その危険性は指摘され麻酔ポーションの乱用には死刑も含む厳しい法規制が科された訳だったがラインスも当人も含め大勢の人間が、このポーションの乱用はされないだろう。と考えていった...

もちろん後生の人間は――この結果が間違いであった事を知っている...
それどころか、これが人の金に対する醜悪しゅうあくな欲望がラインス達の予想を越えた瞬間だったと後になって後悔するハメになったのは言うまでもないだろう...

帝政時代のユガンの政情や国情が不安定だった事もあるが――いざ、蓋を開けて見れば麻酔用ポーションはラインスや国の想定越えて中毒性の強い嗜好品しこうひんとして――そして、また刺激的な媚薬びやくとして乱用されまくったのだ!

この世界の記録によれば始めは味を占めた患者が騒ぎを起こす程度だったが治安には徐々にほころびが生じ始める。金に困った汚職医師や汚職錬金術士の横流しから始まったのだ...

やがて何らかのアングラな方法で犯罪組織が麻酔ポーションのレシピを手にいれたのだろう・・・麻酔ポーションは、いつの間にか麻薬ポーションとして法の目を掻い潜り恐るべき速度でユガンどころか世界中に爆発的勢いで浸透しんとう・拡散していった

あと――これは個人的な俺の考察だが、この中毒性と言うデメリットを差し引いてもラインスの作りあげたポーションのメリットが当時、画期的過ぎた事で本人だけでなく国の目も曇った一因だろう...

ともかく、そのような経緯いきさつもあり麻酔ポーションは現在に至るまで麻薬ポーションとして崩壊した家族や、似たような理由で人生と生活が壊れ抜け出せない娼婦達しょうふたち顧客こきゃくとして――その中毒性から乱用され人を苦しめ続けている...

「・・・言うまでも無いが――こんな危険なモノを乱用すれば命の危険もある...サラサ、この世に技術を悪用しない人間なんていないだよ。分かってくれたかな?」

俺は結構――優しく言ったつまりだが・・・しかし、それでもサラサは納得がいかない様子で『で、でも!ラインス先生の作り出したポーションは不幸にした人の数より助けた人間の数の方が多いと思います!!』と反発し反論にもなっていない反論をしてきたではないか?!

これには俺も『すぅー・・・それは世に出て来た技術全般に言えないか...』と指摘し唖然あぜんする

そんな風に俺がサラサの中身のない反論にもなっていない主張に唖然あぜんとしていると俺に続くようにシェリスも『貴女のその主張なら国防を担う武器や兵器だって沢山のユガン人を守り救いますわ!ほら見なさい!わたくしの意見が正しかったじゃありませんのっ!』と再び議論に参戦してきた...

人に嫌われ役を押し付けておいて――やはり自分が正しかったと見るや、また口を挟みに来るとは、流石さすが没落ぼっらく貴族!清々すがすがしいほど、やり口が汚い!!

そんな感じに彼女の態度をうとましく思いながらもシェリスに色々と思う所もあるが・・・サラサもサラサだと俺は感じていた。
理由はやり口はアレだがシェリスは至極しごくまっとうな事を言っているからだ...

サラサの意見は『通報したら犯人が逮捕されて犯罪者にされてしまう!逮捕されて犯罪者にされる人が可哀想だ!』と主張するのと大差ない。

敵国に戦争を仕掛けられたら人が死ぬかも知れない反撃をする国家とは形が違うとはいえ――家に強盗が入ってきたら普通、誰だって犯罪者を通報するのは、どこの国であれ同じであるハズだ...まさか異世界にもお花畑がいるとは思わなかったが...

「ともかくだね。傷ついて不幸になる人間が出てくるかもしれないというだけで発明を世に出しませんと言う事にはならない訳だよ。同じ話でね?これは話の流れ的に言い出しにくかったんだけど――軍事技術と民生利用みんせいりようできる技術は切っても切り離せないモノなんだ。武器や兵器の開発に利用できるテクノロジーなんて星の数ほどあるんだから武器や兵器を開発しないなんて出来ないよ。何せコチラが作らなくても敵国は作るんだからね。」

俺はサラサに非難される覚悟を決め自分の今、作業しているパソコンが軍事利用できる事を彼女達に告白する事にした...

「この機械魔導具だって兵器そのものにならなくても開発した武器や兵器と組み合わせる事で敵に見つかる前に敵の現在地を素早く特定したり敵がコチラの存在に気づかない内に把握できる索敵や情報収集を可能としたり遠方の敵を――より正確に攻撃する為の照準制御や弾道計算とかの火器管制が可能になるんだよ」

当たり前だが、その話しを聞いたサラサには...『そ、そんな!サナイ主任!どうしちゃたんですか?!!人を殺せるモノを作るなんて!そんなのおかしいです!!あの世で、きっとラインス先生も泣いてらっしゃいます💢考え直して下さい!』と涙目で反発されたが...

サラサとは対照的にシェリスは俺の言葉に気を良くしたのか満面の笑みで『フフン、皇帝陛下から信任を任された者として当然ですわ!』と、いつの間にか機嫌を直していた...

「いや・・・その・・・ねぇ~?サラサちゃん・・・領主として領民を守らない訳には...それに国を守る事は決して恥じゃないと言うか...」

もちろんシェリスには『そんな売国奴は無視すれば良いのですわ!』と言われたが...いや!君は今後、サラサと仕事しないから良いかも知れないが・・・俺は立場上そうはいかないのだよ!・・・ホント勘弁して欲しい...

「この話は、そろそろ――ここまでにしたいんだけど?終わらせて良いかな?他にやる事もあるから」

あまりにも話が長引いたので強引に話を終わらせると彼女達も、それぞれの持ち場へと戻った...

言うまでも無いがサラサは、その後も困惑こんわくした顔で『そ、それでも私は技術は人を幸せにする為に使われるべきだと思います...サナイ主任は――もし、自分の発明で沢山の人が亡くなっても平気なんですか...』と落ち込んだ声でグッサと心に刺さる言葉を、ひとり愚痴ぐちっていた...

いったい、どうすりゃ正解だったんですかね?!(白目)
気まずい雰囲気の漂う中でその後、俺が一体どうしたらサラサが機嫌を直してくれるか?頭の隅で考えながら作業をしたのは言うまでもない...

とは言え・・・そんな考えも自宅である旧庁舎に帰ると吹き飛んだ!
新しい剣で人を切りたくてウズウズしていたヨルミネイトにササミが、いつも通り無礼を働き抜剣したヨルミネイトに追い回された挙げ句、俺を盾にするかのように俺の後ろに隠れたのだ!

当然、俺は『子どものした事だ。あまり目くじらを立てるんじゃない...』とヨルミネイトをたしなめたがヨルミネイトは『卿!騎士として最後の善行です!どいて下さい!どうして、そのクソガキをかばうんです!』と彼女の興奮が冷めるまでが大変だった...

(まったく、ササミにもヨルミネイトにも困ったモノだな...)と思いながら俺がいつも通りのルーティンでとこに就くとまくらからサクッ!っというクランキーな音と共にザラッとした触感しょっかんが伝わったので(アレ?枕の触感がおかしい・・・)と感じた俺は枕の中身を確認すると――なんと、そこには...

つい最近――俺が異世界連中と一緒に作ったキャ○ツ太郎ふうの駄菓子であるお菓子が、てんこ盛りに入っていた!!

「ファ?!なんじゃぁぁあああ!!!こりゃ!!!」

いや!こんなロクでもない事をするのは一人しか居ない!
ヨルミネイトをたしなめておいて自身が激怒するのも我ながら如何いかがなモノか?とも思ったが複数の仕事の掛け持ちで疲れて帰って来ていた事もあり怒りを抑えきれなかった俺は犯人の名前を叫びながら探し回った!!

「さ、ササミぃぃいいい💢どうして俺の枕にキャ○ツ太郎が詰め込んであるんだぁぁあ"あ"あ"」

もちろん――これには、ちゃんとした理由がある!俺の枕にキャ○ツ太郎を詰め込んだのも許せないが食料自給率の低い――この世界において食い物を無駄にするような事をするような行動は子どもとは言え度が過ぎていると感じたからだ!!いや!もちろん俺の枕の羽毛を全部出してキャ○ツ太郎を詰め込んだのが主な理由だけども!

無論――俺の怒声を聞いたササミはスグに『ヤ、ヤバいのですー!!イタズラがバレたのですぅー!!』と逃げ回ったが俺はスグにササミの首根くびねっこを持って捕まえる事に成功すると...

「ササミぃ💢今日は俺の枕に仕込んだキャ○ツ太郎を全部食べきるまで絶対に寝かせないからなぁぁあ"あ"あ"💢」

と怒鳴り散らし泣きわめくササミにキャ○ツ太郎ふうの駄菓子を無理やり口に押し込んだ!

当然、騒ぎを聞きつけてやって来た梨島には『か、可哀想だよ~ 止めてあげて! ねぇ?真井君...』と言われたがササミの、(あっ、やった!コレ許されるじゃねぇ?)と、まるで言っているかのようなナメ腐った顔を見た俺は『いや!世の中には取り返しのつかない過ちもあるんだよ!梨島さん!』と拒否しササミにキャ○ツ太郎を食べる事を再び強要した!

もちろんキャ○ツ太郎ふうの駄菓子は一晩で食べられる量ではなかったので翌朝もササミには木皿いっぱいのキャ○ツ太郎を食べる事を俺が強要した言うまでもない事だろう...ササミ!許すまじ💢

それでも食べきれなかったキャ○ツ太郎は梨島にも頼んで食べてもらい・・・(俺も食べたが💢)リリナ達もササミに文句を言いながら食べ何とか食べ終える事が出来た。

ちなみに、おやつにキャ○ツ太郎を食べたココアは「おいしいのれすぅ」と言いながら喜んで食べてくれた!本当にササミと違って良い子である...ササミにはスラム街の出身と言う事もあり態度の悪い面については大目に見ていたが態度に関しては是非ともココアを見習って貰いたいものだ...

(だが逆にココアがササミに毒されないように気をつけねば...)

なお既にサラサとの一件の事など、すっかり忘れていた俺は天使のようなココアがササミに毒されないように今後――気をつける事を心に誓ったがサラサと顔を合わせて再び頭を抱えたのは言うまでもない...

ちなみにサラサに会って開口一番に言われたのが『一晩かけて、よくよく考えればラインス先生は初めから麻薬ポーションを作ろうとしたんじゃありませんよね!やっぱり最初から兵器に使おうとしている人達は、わたし間違っていると思います!!』だった

(今日も長い一日になりそうだ...)

そう思いながらサラサの扱い方を覚える為に彼女の言い分を聞きつつ『はい、はい。そうだね、そうだね。』と相づちを打ちながら、やり過ごすアユムなのでした...
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

転生したから思いっきりモノ作りしたいしたい!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:369pt お気に入り:4,900

王命なんて・・・・くそくらえですわ

恋愛 / 完結 24h.ポイント:333pt お気に入り:3,080

その復讐、私には快適でしかないのですが!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:1,125

異世界に転生した俺が、姫勇者様の料理番から最強の英雄になるまで

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:803

処理中です...