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第128話:序章の鼓動
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結果的に徴集兵達による防犯活動は、それなりの効果を挙げた。その理由としてケルダンで大勢を占めるビレネー人の若者を徴集出来た事が挙げられる。
まあ――俺の思っていた通りになったが・・・俺――真井歩がケルダンでの徴兵により犯罪摘発数が右肩挙がりになると確信していたのは訳がある...
それは、ここにユガンでアーレ皇太子の治療の際に宮殿の書庫でビレネー人に関する世俗的・民族的習慣や風習・・・そして文化の書物を読んだ事が大きい...なによりビレネー人に関する世俗は面白く。何より彼らの習慣・風習は特徴的だった...
なんでもビレネー人のコミュニティーは非常に変わった風習を擁していて彼らの国家がシーザーとの戦いで放逐されて以来...
元の世界のユダヤ教徒の人々のように同じビレネー人同士で助け合うという習慣が彼ら彼女らには根ざしていて彼らの中には自身が手に入れた知識や金銭を同じ持たざる同胞に還元し共有する文化があるらしい...
ゆえに彼らは他勢力の犯罪組織による同じビレネー人への加害行為を封じたい意図が明確であり――そのコミュニティーの強い結束力は他勢力からの警邏《けいら》活動に対する買収を防ぐだけでなく同じビレネー人を食い物にしない彼らの民族的性質はケルダンにおける犯罪摘発を促進した...
明らかに態度が、おかしくなった官僚のニニムにビレネー人マフィアを説得させたのもその為で...
彼らの祖先つまり・・・ビレネー人犯罪組織の前身は、かつてシーザー帝国に破れたビレネー軍や元ビレネーの政財界の有力者達で構成されているのは世間一般では広く知られており子どもでもユガン人の衛兵が上記の理由でビレネー人マフィアを恐れている事くらい知っている公然な話だった...
つまりケルダンを、いち早く復興させたい俺にとって彼らを取り込まないという理由は初めからなかった...ただし、これには一つ問題がある...
ライバルが、いなくなった又は少なくなった今、ビレネー人犯罪組織が俺を無視して勝手に犯罪収益を享受する可能性もあるからだ...
まあ、そんな事したら――俺が掲げた大義名分を元に比較的安全に稼げるであろう売春や貸金業の独占権を行使できなくなるが...
(問題はビレネー人マフィアが俺の基盤となるか・・・だが...)
***
その後、どうやらニニムの説得が功を奏した...
一応、リリナやルルナ・・・ナナリの両親にもビレネー人コミュニティーの説得に当たらせたのが功を奏したらしい・・・ここ数ヶ月前からケルダンでのビレネー人マフィアの活動は一斉になりを潜めた...
ここまで彼らが静かになったのは領主である俺の大義名分を元にケルダンでの売春や貸金業を独占出来ている所が大きい。
「ようやく、一つ光明が差してきたな...」
綺麗に掃除された領主専用の執務室で嗜好品としてではなく常用の飲料に向いているとされているアルコール度数の少ないビールを木製ジョッキに注ぎながら窓際に立ったアユムは、そう一人ごとを溢《ごぼ》した..
ビールを喉に流しながら発した――覇気のある強い目つきの、その目線の先には――これから発展していくであろうケルダンの街並みが映されている...
のちにスラムであるケルダンとの取引を渋っていた貴族や商人達は、その青年の目線がケルダンどころか・・・これからを始まる動乱の時代を生き抜く力を秘めているとは・・・まだ誰も知らない...
まあ――俺の思っていた通りになったが・・・俺――真井歩がケルダンでの徴兵により犯罪摘発数が右肩挙がりになると確信していたのは訳がある...
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明らかに態度が、おかしくなった官僚のニニムにビレネー人マフィアを説得させたのもその為で...
彼らの祖先つまり・・・ビレネー人犯罪組織の前身は、かつてシーザー帝国に破れたビレネー軍や元ビレネーの政財界の有力者達で構成されているのは世間一般では広く知られており子どもでもユガン人の衛兵が上記の理由でビレネー人マフィアを恐れている事くらい知っている公然な話だった...
つまりケルダンを、いち早く復興させたい俺にとって彼らを取り込まないという理由は初めからなかった...ただし、これには一つ問題がある...
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まあ、そんな事したら――俺が掲げた大義名分を元に比較的安全に稼げるであろう売春や貸金業の独占権を行使できなくなるが...
(問題はビレネー人マフィアが俺の基盤となるか・・・だが...)
***
その後、どうやらニニムの説得が功を奏した...
一応、リリナやルルナ・・・ナナリの両親にもビレネー人コミュニティーの説得に当たらせたのが功を奏したらしい・・・ここ数ヶ月前からケルダンでのビレネー人マフィアの活動は一斉になりを潜めた...
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