クラス転移したけど能力が低いのでリセマラされる前にバックレる

第123話:閑話:公聴会

 アメリカ合衆国　ワシントンD.C.東部　
キャピトル・ヒル
アメリカ合衆国議会――公聴会

アメリカ合衆国の国会議事堂にあたるキャピトル・ヒル通称:アメリカ合衆国議会議事堂に参考人として呼ばれた『ペテロ・剛毅ごうき・剣先けんさき』は用意された椅子に不機嫌そうに座っていた．．．

「ワザワザ、はるばる東海岸から呼び出して、すまないね？ミスターペテロ。」

熟年であろう白人男性が西海岸にあるワシントン州に来た彼を形式上ねぎらうが当然ペテロの不機嫌な様子が直るような事はない．．．

「いいえ、礼には及びませんよ オーガスタス上院議員」

ペテロが役職を口にした通りオーガスタス上院議員の首元には議員バッチが光っており役職の高さがうかがい知れる一方でペテロの装いも、また異質であった．．．

彼はネイビーブルーの士官用制服に白い帽子――沿岸警備隊の制服を着込んでおり左胸にはパープルハート名誉負傷章　レジオン・オブ・メリット功績軍団勲章　コーストガードメダル沿岸防衛勲章ブロンズスターメダル銅製勲章　ディフェンス・スーピアリアサービスメダル防衛上級貢献勲章　シルバースター銀製勲章などのロゼット略綬が左胸のリボンラック に付いている

これらの勲章の数は平和な時代が続くこの世界において異常であると共に、ひとめで誰もが合衆国にとって英雄であるわかる証あかしでもあった．．．
　
「ペテロ・剛毅ごうき・剣先けんさき20XX年　アメリカ合衆国軍沿岸警備隊に入隊　その後、士官養成課程プログラムを経て特殊作戦時の従事に関する座学及び技能に合格　海洋保安即応部隊チャーリー小隊に配属される」

「公式な任務では中南米地域からの不法難民の救助に従事。特に20XX年に起きた摘発を恐れた密航業者によるハイチ人難民船転覆事件では赤子を含めた200名を救助。その後の任務においてもDEA――通称アメリカ麻薬取締局と共にメキシコ麻薬カルテルに対する火器ならびに麻薬取り締まりに従事した．．．」

「また非公式任務においては米国においても数百人しか存在しないと言われる最高ランクの戦闘員として中央情報局《CIA》の機密作戦に参加。Tier1 （ ティア・ワン ） オペレーターとして ベネズエラ　ニカラグア　キューバにおける機密作戦では協力者や現地工作員を救助し現地にて敵性勢力の構成員を800名以上殺害。」

「これらの功績から様々な軍事勲章を授与．．．華麗な経歴だな？　パウロ」

「そいつは、どうも・・・上院議員．．．」とパウロが苦々しく答えた．．．
なぜなら・・・それには続きがあるからだ．．．

「だが――君の最後の公式な軍務記録によると密航者救出の際、無抵抗の難民女性を一名射殺したとある・・・これにより君は略式起訴され軍法会議にかけられのち沿岸警備隊を不名誉除隊したとされている」

パウロは怒りを感じた！
彼は無抵抗な人間など射殺していないと思っているからだ．．．
あの時――



天候の悪い日だった．．．
激しく雨が頬を打ちつけて波に揺れるあの日――



あの難民に扮した女が自身抱えていた赤ん坊を海に投げ捨てて懐に隠していた拳銃を向けてきたのだ！
それに気づき持っていたカービンアサルトライフルで胸部と頭部に素早く撃ち抜いのだが・・・結果的、女の持っていた拳銃は赤ん坊と共に海に中へ．．．

不幸にも混乱の中で他の隊員や難民も余所を向いていたり保護される安心から目撃者はなく赤ん坊も死亡・・・彼は乳飲み子を抱えた母親射殺した犯罪者扱いされたのだ！

「回りくどいぞ　6年前の事件について聞きたい訳じゃないだろう？！

議員！！・・・何が聴きたいのか単刀直入に言え．．．」

怒りの籠もった視線をオーガスタスに向けると上院議員は周囲にいた人々と、しばらく密談するとパウロに問いた出した．．．

「では、ありがたく聞かせて貰うがね？ミスターパウロ・・・」

そう言いオーガスタスは、あえて溜めて一拍置くと――とうとう本題を口にした．．．



「君のご子息　ペテロ・アユム・剣先いいや・・・」
「今は母方の姓になっていたね？」

　

「我々が聞きたいのは消えた君のご子息・・・あゆむ・真井についてだ」


そう、この男こそ真井あゆむが12歳の時まで一緒に過ごした父親であった．．．