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第115話;孤軍奮闘

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猛スピードで街に戻った俺は、あのドデカい羽アリの注意を引くため放置されていたヴァレンド製のカノン砲を見つけた!

この砲なら低仰角ぎょうかくの平射弾道でも高初速で弾の弾着も速いハズなので中距離に見える、あの巨大な羽アリを直接照準に捉え砲撃できるだろう...

そう考えた俺は早速、行動に移る...

砲弾は近くに置いてあったので見つけるのに苦労はしなかったが後装式ではなく前装施条砲ぜんそうしじょうほうだったので装填に時間は掛かるし40キロ前後はあるクソ重い砲弾と装薬を装填するのは骨が折れた...

「ゼェーぜぇーハァ―はぁー・・・どうして、こんな手間のかかる装填方法を採用してるんだよ...めっさ・・・しんどいんですけどおぉぉ...」

装填を終え、目標の未来位置を想像しながら照準を調整してタイミングを見計らう...

(今だ!)と直感で思うタイミングで両耳を押さえ拉縄りゅうじょうを引く!
すると激しい発火炎と爆音と共に砲弾が発射された!

元の世界のカノン砲と違って砲架も駐退復座機ちゅうたいふくざきが無いため砲撃した反動で砲ごと後退してきたので頭を打った!とても痛い!!

だが、おかげ羽アリには命中したらしい...
顎をカチカチ鳴らしながら羽を羽ばたかせコチラに向かって来ている姿が確認できる...

「?!! ひぃえええーー!!!そんなに怒らなくても、ええやん?!!」

人に例えたらタンスに足の小指をぶつけた程度のダメージだと思うのだが巨大羽アリは非常に恐ろしい顔面でコチラにカサカサと轟音を立てながらコチラに猛ダッシュして来ている!あまり激怒ぶりに俺は半泣きだ!

とは言え半泣きになりながらも敵が到達するまでに罠やトラップを設置しなければいけないので、その場を急いで後にする...

***

「ギギギ、ギギギ!カラカラ、カラカラ!!」

しばらくして・・・人語に訳すと、まるで『奴は、どこに消えた!!殺してやる!!』と言っているような女王の不気味な鳴き声がヴァレンドの市街に響いていた
その様子は、まるで自身の羽を焦がした獲物を自身の強力な顎でバラバラに引き裂いてやる!と決意を露わにしているようだ...

(ヤバい・・・漏らしそう...)

アユムは自身の蛮勇を軽く後悔しながらもヴァレンド市街にある八階建ての相当の巨大な龍の銅像の前両足に設置した梱包魔焔爆薬をタイミングを見計らって爆破する!

すると爆破と同時に恐らく何トンとあるであろう龍の銅像が像自体の自重で傾き、女王を押し潰したではないか!

これは勝てる!!!そう思い思わずガッツポーズをとったが...

「よっしゃーぁぁああ!!ざまぁーぁあああ!!!ああ・・・っ?」

像の質量で押し潰された!これは勝った!と思ったアユムは思わず喜んだが爆発により生じた土煙が晴れるとなんと女王は左後ろ足と左中足を失い胴体に少しのヘコみが出来ただけで健在だった!

「・・・と、思っていた時期が私にもありました...」

身の危険を感じたアユムは全力で、その場から脱兎の如き勢いで逃げ出したが――女王アリも危害を加えた相手を逃すまいと決意するかのような咆哮をあげると手負いとは思えぬスピードでアユムを追いかけてきたではないか?!!

(ひぃええええーー!!!空間が揺れるのは女王の咆哮のせいだったのか?!)

逃げながら最初に感じた空間が揺れるような感覚の正体を知ったのも束の間――彼は最初に自身の設置したトラップを飛び越える!

ブービートラップに引っかかった女王の下腹部を爆風が襲うと女王の咆哮が再び響いた!!だが女王はひるむこともなくアユムを追い続けてくるではないか?!!

(うわぁあああああああ?!!マジですか?!!絶殺だぁぁあああああ!!!!)

心胆しんたんを奪う』とは・・・まさに、この事である!言葉はお互いに通じなくても、その形相と行動だけで何を思っているのか解るなんて、もはや異種間疎通と言ってもいいレベルだが強烈な憎悪と殺意という絶対に向けられたくない激情など悪夢以外の何者でもない...

つつしんで、お断り申し上げまーす!」

アユムの、その言葉を体に分からせるように逃げるアユムを追う女王が再び巧妙に仕掛けられたヴァレンド製ワイヤートラップに引っかかった!!

すると今度は上に突き上げるような勢いで硬い鋼鉄の鉄槍が女王の腹部に襲いかかっる!!

「ギィイイイーー!!!!」

怒声なのか悲鳴なのか判別できない強烈な鳴き声がヴァレンド市街に響く!

どうやら先ほどのトラップは、さすがの巨体でも効いたようだ・・・おかげで女王の追ってくるスピードは落ちアユムとの距離は開いた...

(よし・・・やった・・・やってやったぞ...女王アリの激怒していた様子から察するに一度狙った標的を変えるとは考えづらい...ヴァレンド軍に対する女王の背後から奇襲と避難民の退避時間を稼ぐ当初の目的は達成できたと見ていいだろう...)

だが女王は未だに健在だ・・・安心は出来ない...
自身の体力が無尽蔵ではない以上――そろそろたたける必要がある

(よし・・・このまま自分自身を囮にして郊外の深い谷間に、おびき寄せよう...)

***

郊外の深い谷間に到着すると俺は早速――最後の梱包魔焔爆薬をがけ沿いに張り巡らせ簡易魔方陣を設置した...

ちょうど――簡易魔方陣を設置し終えるとジャストタイミングで女王は俺のいる場所へと姿を見せる!痛々しいボロボロの姿だが、だが――その外見からは一切 殺意は消えていなかった...心が折れそうだ

(だが!今度こそお別れだ!アリンコ!)

そう意気込みながら使い捨てスクロールで女王を攻撃し自分を餌に崖側へと誘導していく...

(よしよし...しめしめ・・・目論見通もくろみどうり...)

首尾よく女王が崖沿いに移動してくれたので、おかしくて堪らなかった俺は思わず悪い顔でほくそ笑みながら梱包魔焔爆薬を爆破した!

「じゃーな~♪ さらば!アリンコ!」

足場が崩れ満身創痍まんしんそういの女王が転落しまいと踏ん張るが想定内だ!あらかじめ設置しておいた簡易魔方陣で詠唱魔法を唱え追い打ちを追い打ちを仕掛ける...

「オーミュエン...プーラ ズールバ プラーエニ。」

覚えた火焔魔法を唱え終えると頭上に現れた巨大な火の玉が女王へ向かっていく!命中すると同時に激しい爆炎と爆音が女王を襲うと女王は俺の視界から消えていった...

「ようやく落ちたか...手間を掛けさせやがって...」

そう言い残しきびすを返す為に振り返るとトリグ王の一団がコチラに向かって来るのが見えた。

王に話しかけると、どうやら後方の敵が現れたとの情報を受け取った王は少数の護衛を引き連れて女王に対応しようと考えていたようだ...

「そうですか...ヴァレンド内で身の丈に合わない出過ぎた真似をした事を謝罪します。陛下」

事は、どうであれ...外国人が他国で勝手に戦闘行為に及んだのは、あまり良い事ではないと考えたのでトリグ王に謝罪すると幸いにも王は「うむ、許す。我らがいない間に大儀であった。サナイ。」と労いの言葉を述べてくれた。

「私め如きに労いの言葉を賜りありがとうございます。陛下。」

俺は労いの言葉を賜った事に礼を言い女王を撃退した安心感からその場を後にしようとしたが...






「ギェエエエーーーーーーー!!!!!!!!」

(空間が震えるような・・・この感覚...)

嫌な感覚を覚え「そんな、いや?まさか、なぁ~」と青ざめながら振り返ると、

「ギィイイイーーーーーーーー!!!!!!!!!」

なんと――この世界に来て親の顔より見た女王アリが崖から這い上がり再び、その姿を見せたではないか!!!ビックリである!!

「あんだけデカけりゃ自分自身の体重で地面に叩きつけられる力も凄いと考えたけど・・・」

助かったと言うことは恐らく落下中に残った三本の足で絶壁に爪を立てて、踏ん張ったと言う事か?!

(だと、したら・・・なんて頑丈な関節を持っているんだ?!)

あれだけ痛めつけたと言うのに生きて這い上がって来るなんて悪夢以外の何物でもない!しかも女王は、まだやる気満々だ!!

しかし、打てる手は全て打った俺にはもはや――これ以上、考えつく手などない...お手上げである!

(さすがに打つ手なしか...)

俺が諦めかけた――その時だった...
誰かが横から飛び出していった!

「ヌォオオオーー!!!」

なんとトリグ王である!

「ふぁ?!」

単身で飛び出していったトリグ王にも驚いたが側近が一人も王を止めたり共に戦ったりしようともせずボーと突っ立っている事に、さらに驚いた!!

(ええええええー?!!ちょ?!)

もしかしてトリグ王って嫌われているのだろうか?!
だとしたら、ちょっとかわいそう...

刹那思わず、そのような感想抱いたが女王の攻撃の予兆と思われる動作が視線に入ったので「危ない!」と俺は警告の声を発したがトリグ王は避けようともせずに構わず持っていた大斧を振りかざした!!





すると俺は自分の目を疑った...
なんとトリグが両手もった大斧を振るうとドーン!!!!と言う凄まじい衝撃波が生じ女王アリが横転して軽く吹き飛んだではないか?!

(えっえええええええーーーーーーー?!!めっちゃ、強いじゃないですかぁああー王様ぁあああ?!!)

物理法則などクソ食らえとでも言っているような光景に思わず唖然した!開いた口が塞がらない!!あり得ない光景だ!と言うか・・・こんだけ強けりゃー俺の奮戦なんていらなかったんじゃないだろうか?!!

(あんだけ大変だったのに!・・・いや、それでも・・・命がけの奮戦は無意味ではなかったと信じたい...)

トリグ王の無双っぷりに思わず考えさせられてしまうアユムであった...
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