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第112話:閑話;善人だけが苦しむ
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シーザー帝国――街道の道中―――
行きに辿って来た立派な石畳の街道を自転車のような車輪が付いた木製スポークホイルの馬車の車列が隊列をなして規則正しく移動していた...
(数時間前までいた帝都グーンが、もう既に豆粒に見える...)
帝都グーンが遠ざかる中――揺れる馬車の中から見た嶺山は刹那――そう思った...今この瞬間――嶺山たちはシーザーから去ろうとしているからだ...
先日――アリュレインから使者がやってきた。使者によると各国が総力をあげて行う一大反攻作戦の準備が整い始めており、その為に先行している勇者たちを除きアリュレインは手透きの勇者たちを呼び戻しているのだという...
シーザー帝国からも強力な戦力であり皇帝の剣と名高い『双大剣のフリューゲル』が嶺山たち勇者一行と共にアリュレインに向かうため1万5千人にも及ぶ大規模戦力を伴って彼らに随伴している...
「壮観だな・・・」
男子生徒の誰かが随伴する中世や近世とも見える軍隊を見ながら、そう呟いたが物思いに浮けっている嶺山の耳には届かなかった。何故なら嶺山紗弓が今回のビレネー坑道での出来事について振り返っていたからだ...
嶺山たち勇者の一行が赴いたビレネー坑道では二足歩行のアリ型魔物の襲撃・・・クラスメイトの岩屋知治と安琢磨の両名の死など様々な事があった...
そして何より一同が驚かせたのが天恵なしと判断され勝手な行動で既に故人だと誰しもが思って止まなかった真井歩の生存が確認された事だった...
***
坂本くんと水谷くんをはじめ朱鷺原さん、鳳さん。更に親友の雪ちゃんまでもが既に死んだと思っていた真井くんを目撃したと言った...
真井君が生きていたと言う喜ばしかったが、その情報は同時にショッキングな事実を私に齎した...
坂本くんと水谷くんが真井くんが所持していた武器の形状――そして朱鷺原さん達が聴いた『嶺山さんを助けようとしたら誤って安くんを殺してしまった』と彼自身が話していた話から彼が同じクラスの同級生を殺めた事実が明るみとなったのだ
私は同級生が同級生を殺めたと言う事にショックを隠せなかったが更にショックだったのは最初こそ動揺していた男子生徒たちが『人間クズがクズに殺されただけだ。気にする事はないよ。嶺山さん』と、すぐに割り切ったドライな態度を見せた事だ。
(どうして・・・どうして、そんなに仲間だった人たちに冷たい態度をとれるの...)
この世界に来てからのクラスメイトの豹変ぶりに嶺山は苦しんで来た特に男子生徒の変わり様は酷いモノだった...天恵を受けた事による万能感のせいで、たがが外れたのか?人間の汚い部分を彼らは隠そうとしない。
だが、それと同時に自分たちの置かれた状況では彼らの方が正しいのだろうか?と、いう疑問が浮かんでくるのも事実だ...それとも真井くんのように天恵さえなければ、みんな違ったのだろうか?
(真井くん・・・なぜ、貴方は自分の手を血に染めてまで私を助けてくれたの?)
自身が安を殺めたわけではないが、そのような疑問が心の中から湧き上がって来る度に結果的に同じ同級生を手にかけさせた自分の脇の甘さと罪悪感で胸の奥を締め付けられる...
無論――その疑問に答えてくれる者はいない...それでも嶺山は自問し答えを探すが帰ってくるのは馬車の揺れる無機質な音と車体の振動だけだった...
行きに辿って来た立派な石畳の街道を自転車のような車輪が付いた木製スポークホイルの馬車の車列が隊列をなして規則正しく移動していた...
(数時間前までいた帝都グーンが、もう既に豆粒に見える...)
帝都グーンが遠ざかる中――揺れる馬車の中から見た嶺山は刹那――そう思った...今この瞬間――嶺山たちはシーザーから去ろうとしているからだ...
先日――アリュレインから使者がやってきた。使者によると各国が総力をあげて行う一大反攻作戦の準備が整い始めており、その為に先行している勇者たちを除きアリュレインは手透きの勇者たちを呼び戻しているのだという...
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そして何より一同が驚かせたのが天恵なしと判断され勝手な行動で既に故人だと誰しもが思って止まなかった真井歩の生存が確認された事だった...
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私は同級生が同級生を殺めたと言う事にショックを隠せなかったが更にショックだったのは最初こそ動揺していた男子生徒たちが『人間クズがクズに殺されただけだ。気にする事はないよ。嶺山さん』と、すぐに割り切ったドライな態度を見せた事だ。
(どうして・・・どうして、そんなに仲間だった人たちに冷たい態度をとれるの...)
この世界に来てからのクラスメイトの豹変ぶりに嶺山は苦しんで来た特に男子生徒の変わり様は酷いモノだった...天恵を受けた事による万能感のせいで、たがが外れたのか?人間の汚い部分を彼らは隠そうとしない。
だが、それと同時に自分たちの置かれた状況では彼らの方が正しいのだろうか?と、いう疑問が浮かんでくるのも事実だ...それとも真井くんのように天恵さえなければ、みんな違ったのだろうか?
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