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第107話;目的を思い出した!
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次の日――ラウラ王女は予定通りアユムにヴァレンド洞窟国を案内していた...
「こんにちは、ラウラ王女殿下...今日は貴女様――御自らが私めを案内して頂けると聞きました...ヴァレンドの王女殿下の御傍に侍れるとは大変に光栄です。本日は宜しくお願いします。」
アユムはこの異世界での定例に則り通りに礼を尽くすがラウラ王女は待ちきれない様子で...「真井様!コチラが私たちが誇る工業地帯です!」と張り切っているようだ...
梨島日和の方は側近の侍女達がヴァレンドで用意する事となった服採寸を名目に足止めしている...因みに採寸が終わればお茶会も強制的に開催される手筈なので梨島日和がコチラに足を向けるという事は万に一つもなかった。完璧な計画である(ガッツポーズ!)
「うん?何しておられるんですか?ラウラ王女?早く行きましょう」
ラウラが自分に背を向けてガッツポーズをしている姿を不思議に思いながらも紳士らしくラウラをエスコートする...アユムにエスコートされながらラウラは思った...
(こ、こんな、恋人みたいな事・・・こ、これは、もはやデートです!!)
ラウラは恥ずかしさを振り払おうと頭をブンブン振ると『だ、大丈夫ですか...ラウラ王女?ご気分が優れないのですか?』と再びアユムに心配されてしまう...
(ああ・・・真井さま...なんとお優しい...い、いけません!これでは、どちらが案内されているか分かりません!王女として、しっかり案内しなければ!)
「全然、大丈夫です!参りましょう!」
ラウラは気を取り直すと勇み足でズンズンと進んでいった...
***
案内されたヴァレンドの工業地帯は俺が驚く物ばかりであった...
「なっ?まさかアレは!加熱炉と蒸留塔?!なぜ、こんな所に?!」
なんとヴァレンドでは非常に簡易で粗悪とはいえ原油を原料にナフサや石油ガスらしきモノが精製されている!驚くべき事だ!!
どうやら街中に張り巡らされているパイプラインはガス管で燃料を送っていたようだが...確かに王宮だけでなく街中もユガンの街と比べ――かなり明るいと思っていたが、まさかガスランプだったなんてビックリだ!
「っと、言う事は街中にある街灯もガス灯なのか...」
しかも換気の面においてもヴァレンドの街のある空間は無数にある横穴から強風が吹き込んでいる上に同じように他の横穴から空気が出て行くので排気ガスが滞留するという心配がなかった!なんというか・・・異世界で、こんな文明的なモノに出会えるとは感動的だ。
恐らく俺で一人では――こんな重要そうな区画を見る事なんて出来なかっただろう..自ら案内を申し出てくれたラウラ王女には感謝しかない!ここは改めてお礼を言うべきだろう...
「ラウラ殿下。改めて案内して頂きありがとうございます。」
改めてお礼を言うとラウラ王女は顔を赤らめながら「そ、そんな真井様が私にお礼なんて・・・」と言いながら俯いてしまわれた...かわいい...
だが、その後もラウラ王女による工業地帯案内は順調に続く...
***
「あの職人は鉄の採寸をしている職人です。ああやって鉄が熱い内に製品を切り分けて寸法しないと後で――だいぶ手間が掛かるそうなんです。」
その解説に俺は、ある事に気づく...
そう言えば・・・なぜ、この世界では普通のノコギリは勿論のこと弓鋸などのノコギリの類を、あまり見ない...
恐らく鋸は細かい刃を切り出す必要がある上、それぞれの刃を研いでアサリをつけるなどの精密な技術と多大な労力が必要とされるからだろう...
※アサリ;ノコギリ刃を左右に振っていく事。「アサリわけ」などと呼ぶ。
既に冷え切っている鉄製品を切断できないとなると、かなり大変だ...
しかも比較的――工業が進んでいるヴァレンドでさえも工場制手工業だ。元の世界で存在した機械を用いた工場制機械工業など夢のまた夢と言うことか...
俺が自由ユガンに帰ったとしても、まず工作機械であるマザーマシンを作る事がアーレ皇太子を根治させる第一に関門となるだろう...皇太子を救えるだけの高度な医薬品を製造するには大量の化学薬品と工場設備が必要だからだ。
(我ながら一つの文明を前進させるなんて身分不相応の大言壮語だな...)
自分でも(もう、無理ぽ!)と思ったが・・・だが今さらそんな事をなど言えない!
そんな事を言おうモノなら病んだ目をしたアーレ・マッマに『やっぱりウソでしたのね...』っと処刑執行人を呼ばれかねない!!
(ぬぉぉーーーおおお!!!どうすれば、いいんだぁぁあああーーー!!!)
最後に見る光景が頭の無くなった自分の胴体なんてイヤである!!
何が何でも、なんとかしなければ!
その後――完全に今まで忘れかけていた目的を思い出したアユムにラウラ王女が惚れ直してしまったのは言うまでもなかった...
***
(さ、真井様が私にお礼を・・・)
ラウラは嬉しさの、あまり頬に手を当てながらブンブンと顔を振る!
(し、臣下の子達が言っていたように――こ、ここは攻めるべきでしょうか?!)
ラウラ王女は作戦が行われる前に事前に臣下の者達から言い含めれていた事を回想した...
『良いですか、ラウラ様。既成事実ですよ!既成事実!』
『そうです、王女殿下。今日は真井様と既成事実を作るまで帰ってきてはいけません!分かりましたね!』
臣下の娘たちから、そんな事を言われたがラウラは迷っていた...
(ほ、本当にそんなこと・・・生娘の私がして真井様に軽蔑されないでしょうか?!)
ラウラは何よりアユムに嫌われる事を恐れていた...だからこそアユムに嫌われる事への恐怖を感じざるを得ない...それに何より王である父親に相手を認めてもらいたいとはいえ婚前まえ交渉などして良いモノなのか?っと、迷っているのだ...
だが同時に臣下の者たちに言われた事があったのも思い出さずにはいられなかった...
『殿下!もし躊躇なさる事があったら、こう考えて見て下さい。真井殿に――もし貴女様以外に好きなお方が出来た時――貴女は笑顔で彼を諦められますか?決めるのは殿下ご自身ですが・・・よくお考えになって下さい。』
『真井さまが・・・他の方と結婚...』
アユムと他の女性との結婚する光景が目に浮かぶ...
(うがぁあああ!!!さ、真井さまが他の女とぉぉおおお!!!そんな未来は絶対に阻止しなくてはなりません!!)
内心で自分の妄想に発狂しながらも(こ、ここは致し方ありません!)とラウラは覚悟を決め勇気を出してアユムに話しかける!
「さ、真井様!この後――その・・・よろしければ!」
『この後――エッチをしませんか?!』っと口に出しかけたがアユムが真剣な表情で製造工程を記録する顔を見上げると何も言えなくなるどころか...
(さ、真井さま!なんて凜々しい!!)
結果的にアユムはやるべき事を思い出したがラウラ王女はやるべきを忘れ――ずっと、その後も黙々と記録を取り続けるアユムに見とれ続けたという...
ラウラ王女の工場地帯案内は失敗に終わり臣下の娘達で構成されているヴァレンドのメイドたちの頑張りは不意になってしまったが...
『きっと、もう一押しに違いありません!』
・・・っとラウラを応援する声が今後も絶えることはないだろう...
絶対に...
「こんにちは、ラウラ王女殿下...今日は貴女様――御自らが私めを案内して頂けると聞きました...ヴァレンドの王女殿下の御傍に侍れるとは大変に光栄です。本日は宜しくお願いします。」
アユムはこの異世界での定例に則り通りに礼を尽くすがラウラ王女は待ちきれない様子で...「真井様!コチラが私たちが誇る工業地帯です!」と張り切っているようだ...
梨島日和の方は側近の侍女達がヴァレンドで用意する事となった服採寸を名目に足止めしている...因みに採寸が終わればお茶会も強制的に開催される手筈なので梨島日和がコチラに足を向けるという事は万に一つもなかった。完璧な計画である(ガッツポーズ!)
「うん?何しておられるんですか?ラウラ王女?早く行きましょう」
ラウラが自分に背を向けてガッツポーズをしている姿を不思議に思いながらも紳士らしくラウラをエスコートする...アユムにエスコートされながらラウラは思った...
(こ、こんな、恋人みたいな事・・・こ、これは、もはやデートです!!)
ラウラは恥ずかしさを振り払おうと頭をブンブン振ると『だ、大丈夫ですか...ラウラ王女?ご気分が優れないのですか?』と再びアユムに心配されてしまう...
(ああ・・・真井さま...なんとお優しい...い、いけません!これでは、どちらが案内されているか分かりません!王女として、しっかり案内しなければ!)
「全然、大丈夫です!参りましょう!」
ラウラは気を取り直すと勇み足でズンズンと進んでいった...
***
案内されたヴァレンドの工業地帯は俺が驚く物ばかりであった...
「なっ?まさかアレは!加熱炉と蒸留塔?!なぜ、こんな所に?!」
なんとヴァレンドでは非常に簡易で粗悪とはいえ原油を原料にナフサや石油ガスらしきモノが精製されている!驚くべき事だ!!
どうやら街中に張り巡らされているパイプラインはガス管で燃料を送っていたようだが...確かに王宮だけでなく街中もユガンの街と比べ――かなり明るいと思っていたが、まさかガスランプだったなんてビックリだ!
「っと、言う事は街中にある街灯もガス灯なのか...」
しかも換気の面においてもヴァレンドの街のある空間は無数にある横穴から強風が吹き込んでいる上に同じように他の横穴から空気が出て行くので排気ガスが滞留するという心配がなかった!なんというか・・・異世界で、こんな文明的なモノに出会えるとは感動的だ。
恐らく俺で一人では――こんな重要そうな区画を見る事なんて出来なかっただろう..自ら案内を申し出てくれたラウラ王女には感謝しかない!ここは改めてお礼を言うべきだろう...
「ラウラ殿下。改めて案内して頂きありがとうございます。」
改めてお礼を言うとラウラ王女は顔を赤らめながら「そ、そんな真井様が私にお礼なんて・・・」と言いながら俯いてしまわれた...かわいい...
だが、その後もラウラ王女による工業地帯案内は順調に続く...
***
「あの職人は鉄の採寸をしている職人です。ああやって鉄が熱い内に製品を切り分けて寸法しないと後で――だいぶ手間が掛かるそうなんです。」
その解説に俺は、ある事に気づく...
そう言えば・・・なぜ、この世界では普通のノコギリは勿論のこと弓鋸などのノコギリの類を、あまり見ない...
恐らく鋸は細かい刃を切り出す必要がある上、それぞれの刃を研いでアサリをつけるなどの精密な技術と多大な労力が必要とされるからだろう...
※アサリ;ノコギリ刃を左右に振っていく事。「アサリわけ」などと呼ぶ。
既に冷え切っている鉄製品を切断できないとなると、かなり大変だ...
しかも比較的――工業が進んでいるヴァレンドでさえも工場制手工業だ。元の世界で存在した機械を用いた工場制機械工業など夢のまた夢と言うことか...
俺が自由ユガンに帰ったとしても、まず工作機械であるマザーマシンを作る事がアーレ皇太子を根治させる第一に関門となるだろう...皇太子を救えるだけの高度な医薬品を製造するには大量の化学薬品と工場設備が必要だからだ。
(我ながら一つの文明を前進させるなんて身分不相応の大言壮語だな...)
自分でも(もう、無理ぽ!)と思ったが・・・だが今さらそんな事をなど言えない!
そんな事を言おうモノなら病んだ目をしたアーレ・マッマに『やっぱりウソでしたのね...』っと処刑執行人を呼ばれかねない!!
(ぬぉぉーーーおおお!!!どうすれば、いいんだぁぁあああーーー!!!)
最後に見る光景が頭の無くなった自分の胴体なんてイヤである!!
何が何でも、なんとかしなければ!
その後――完全に今まで忘れかけていた目的を思い出したアユムにラウラ王女が惚れ直してしまったのは言うまでもなかった...
***
(さ、真井様が私にお礼を・・・)
ラウラは嬉しさの、あまり頬に手を当てながらブンブンと顔を振る!
(し、臣下の子達が言っていたように――こ、ここは攻めるべきでしょうか?!)
ラウラ王女は作戦が行われる前に事前に臣下の者達から言い含めれていた事を回想した...
『良いですか、ラウラ様。既成事実ですよ!既成事実!』
『そうです、王女殿下。今日は真井様と既成事実を作るまで帰ってきてはいけません!分かりましたね!』
臣下の娘たちから、そんな事を言われたがラウラは迷っていた...
(ほ、本当にそんなこと・・・生娘の私がして真井様に軽蔑されないでしょうか?!)
ラウラは何よりアユムに嫌われる事を恐れていた...だからこそアユムに嫌われる事への恐怖を感じざるを得ない...それに何より王である父親に相手を認めてもらいたいとはいえ婚前まえ交渉などして良いモノなのか?っと、迷っているのだ...
だが同時に臣下の者たちに言われた事があったのも思い出さずにはいられなかった...
『殿下!もし躊躇なさる事があったら、こう考えて見て下さい。真井殿に――もし貴女様以外に好きなお方が出来た時――貴女は笑顔で彼を諦められますか?決めるのは殿下ご自身ですが・・・よくお考えになって下さい。』
『真井さまが・・・他の方と結婚...』
アユムと他の女性との結婚する光景が目に浮かぶ...
(うがぁあああ!!!さ、真井さまが他の女とぉぉおおお!!!そんな未来は絶対に阻止しなくてはなりません!!)
内心で自分の妄想に発狂しながらも(こ、ここは致し方ありません!)とラウラは覚悟を決め勇気を出してアユムに話しかける!
「さ、真井様!この後――その・・・よろしければ!」
『この後――エッチをしませんか?!』っと口に出しかけたがアユムが真剣な表情で製造工程を記録する顔を見上げると何も言えなくなるどころか...
(さ、真井さま!なんて凜々しい!!)
結果的にアユムはやるべき事を思い出したがラウラ王女はやるべきを忘れ――ずっと、その後も黙々と記録を取り続けるアユムに見とれ続けたという...
ラウラ王女の工場地帯案内は失敗に終わり臣下の娘達で構成されているヴァレンドのメイドたちの頑張りは不意になってしまったが...
『きっと、もう一押しに違いありません!』
・・・っとラウラを応援する声が今後も絶えることはないだろう...
絶対に...
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